木陰で微睡んでいる蒼井の元に月歌が訪れて、他愛ない話が始まる。

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ヘブンバーンズレッドの二次創作SSです。ヘブンバーンズレッド2章クリア以降に読むのをおすすめします。なんてことはない日常の一コマ的な文章です。


陽だまりの夢~蒼井SS~

「ぽかーん」

 気持ち良い風が頬を撫でる。

 木陰の中でビャッコと一緒に何をするでもなく、木漏れ日を浴びながら暇な時間をただ過ごしている。

 空は蒼く、陽の光は暖かい。

 つい、微睡んでしまうような心地よい緩やかな時間だ。

 こうしていると世界がキャンサーの脅威に襲われているのが嘘のようだ。本当は何もかもが夢で、現実はとても平和な世界なのではないだろうか。

 

「蒼井ーーーー!!」

 

 大声で私を呼ぶ声が聴こえる。

 

 茅森さんだ。

 茅森月歌。セラフ部隊31Aの隊長。元She is Legendというバンドのギタリスト兼ボーカルで天才的な才能を持っていたらしい。

 言動はエキセントリックなことが多いが、仲間思いで常に部隊のみんなのことを考えている。また、他の部隊の人たちと積極的に交流をしている姿も見られる。

 私とは()()ちゃんとした部隊長だ。

 

「蒼井、昼寝してたのか?」

「はい、ビャッコと一緒にちょっと休んでました」

「そうか、今日はあったかくて気持ちいいもんな」

 

 そう言って茅森さんは隣に腰を下ろす。

 近くに座ると彼女の顔がすこし近づいてどきどきしてしまう。

 茅森さんの容姿は女性の私が見ても見惚れてしまうほど綺麗で、木漏れ日で照らされる様はまるで映画の1シーンのような現実味さえ感じられないほど、美しいものだった。

 

「どうした? 蒼井?」

 

 ――――――っは!

 いけない、つい茅森さんの顔をずっと見続けてしまった。具体的には45秒くらい。

「茅森さん、私に用事があったんじゃないですか?」

 私は自分が茅森さんに見惚れていたことを誤魔化すために、適当な話題を振った。

「いや、蒼井を見つけたから呼んだだけだよ」

「そうなんですか」

 

 

 話題が終わった。

 

 

 私はいつもこうだ。もうちょっと、他の隊長たちみたいにみんなと上手く喋れるよう、トークの勉強をしておけば良かった。学校の勉強ばかりしていたから、こういう時どういう話題を振って、会話を盛り上げるか全く分からない。ああ——あたしって……。

 

「蒼井はそういや、よくここにいるよな。ここ好きなのか?」

 私が自己嫌悪の沼に沈んでいるところ、茅森さんが話しかけてくれました。

「どうなんでしょう。考えたこともありませんでした」

 確かに私はよくここに来る。しかし、これといった理由は思いつかない。

 気づけばビャッコと一緒にここで何をするでもなく、時間を過ごしてることが多くなった。

「でも……、そうですね。好きなのかもしれません」

 このゆっくりと時間が流れる、なんでもないひと時が私は気に入ってたのかもしれない。

 

「大胆な告白キタ――――――!!」

「蒼井、あたしのことが好きだったんだな……。けど、あたしにはユッキーという人生のパートナーが――」

 突然、私が茅森さんに告白して振られたみたいになった。いや、それより和泉さんが茅森さんと夫婦みたいになってるけど、和泉さん的にはいいのだろうか。

「ち、違いますよ……! この場所が好きって意味ですよ」

 後半の和泉さん部分はスルーした。

「ここでビャッコと一緒に何も考えずに、ぼーっとしてると、自分がセラフ部隊の隊長をしてるのも、世界がキャンサーに襲われてるのも何もかもが夢なんじゃないかって」

「蒼井……」

 

 ビャッコの背中を撫でる。戦闘の時は勇ましいその姿も今は可愛らしく、ふわふわふな毛並みが心を穏やかにしてくれる。

「ふふっ……、こんなことを言ってはいけませんね。すみません、忘れてください」

「まっ、たまにはいいんじゃないか。そういうこと言っても」

 茅森さんは身体を少し伸ばしながら軽やかに話を続ける。

「あたしだって、バンドしてたと思ったらセラフ部隊に気づいたら入隊してたし、そしたらすぐに31A部隊の隊長になってキャンサーと戦ってんだぜ。今時ゲームでもこんな設定ないぜ。現実感ないっての」

 確かに言われると冗談みたいな話だ。元売れっ子ロックバンドのボーカル兼ギタリストがなんで最新の兵器を扱って人類の平和のために戦っているのか。私はゲームには詳しくないが、逆に1週回って新しいのではとすら思える。

「確かに茅森さんは特に経歴がすごいですよね」

「蒼井だってすごいじゃないか。ハイパーなんちゃらでなんでも覚えられるんだろ。エスパーみたいですごいじゃん!」

「ハイパーサイメシアですよ、茅森さん。なんでも覚えることはできても他の隊長さんみたいにちゃんと部隊を纏めたり指揮することはできないのでたいしたことないですよ」

 

 そうほんとにたいしたことない。

 いつまでも続くあの地獄のような日々。

 部隊のメンバーが一人、また一人と居なくなっていく恐怖。

 いつの間にか同期のセラフ部隊の隊員は誰一人居なくなった。

 私は誰も守ることが出来ずに、ただ一人無様に生き残ってしまった。

 決して色あせる事のない、私の罪。

「おーい、月歌ー!」

「あ、ユッキーたちだ」

 31Aの部隊の皆さんがこちらに向かってきます。

「食堂で昼飯食べる約束だったろー。遅れるぞー!」

「さすがユキさん、茅森さんに対する気遣い」

「愛ね」

「愛ですね!」

「愛やな」

「ちっが――――――う!!!!!!」

 

 31Aの皆さんはいつも賑やかでつい圧倒されてしまいます。

 皆さん、個性が強いので茅森さんもよくこの部隊を纏めていると思います。

 そんなことを言ったら、ユキさんからすごい数のクレームが来そうですが。

「さて、蒼井も一緒に昼飯行こうぜ!」

 茅森さんは立ち上がりながら、そう誘ってきました。

「いいんですか?」

 自分なんかが一緒にいて邪魔になったりしないかと、不安に思いながら聞き返しました。

 我ながらなんとネガティブなんだろう。

「メシはみんなで食べた方が美味しいだろ?」

 茅森さんの答えはとてもシンプルで、私は自分のことが恥ずかしくなってしまいます。

「そうですね。ビャッコも行きましょう」

「ヴァウ」

 暖かい陽だまりのような茅森さんの手を私は握り、歩き出す。

 歩きながら、茅森さんとユキさんは何かを言い合っていますが、周りはいつものことだと特に止めるでもなく気にしていません。そうかと思えば話はちゃんと聞いていたようで、会話に急に入ってきて、ユキさんをからかいます。

 

 私は気が付けば笑っていました。

 何が楽しいのか面白いのか私には分かりません。

 それでも自然と笑いがこみ上げてきて、つい笑ってしまいました。

 それを見た茅森さんがまた嬉しそうに何か喋ってます。

 ああ、本当に。

 私がこんな誰かと笑いあえるだなんて……。

 まるで夢のような……陽だまりの名残。

 

 

 

 

 

 

 

 ゆめ……ゆめを……みていました。

 それはとてもあたたかくて……なつかしい……。

 ゆめのことはもうおもいだせないけど……とてもだいじなことだったきがする。

 

 めのまえにひとがきました。

 そのひとはなにかをはなしているけれど……なにをいっているのかわからない。

 となりにそのひとはすわって……そらをみあげている。

 わたしもみあげる。

 そのそらはとてもあおかった――――――

 わたしは……このそらをどこかで……みた……。

 ――――――♪♪

 うた……うたがきこえる。

 となりのひとがうたっている。

 わたしはこのうたをしっている。

 わたしはたしかにこのうたをきいた。

 ()()()()()()()()()()

 ()()()()()()()

 

 しばらくしてとなりのひとはさっていきました。

 わたしはさっきのひとがみあげたそらをみている。

 そらはあおくどこまでもきれいで……いつかこのそらのことをおもいだしたいとおもいながらねむりにつきます。

 

 しあわせなゆめがみれるといいな

 

 


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