灰被りのアンモビウム   作:麦茶漬け

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-エリンジウムの花言葉は、『秘めた思い』-
初投稿です。よければ見てってください。


ニーゴ編
エリンジウム


星乃霞side

 

星乃霞は、朝に寝るのが好きである。

人間の活動において普通は他の人が起床する時間に寝る、これほど気持ちいいことはない。

読者諸君もそうだろう?夜に寝るよりも朝だったり昼に寝るのはこの上ないほどの気持ちよさのはずだ。

つまり、俺が朝に二度寝をすることは必然であり、邪魔できる奴なんていな━

 

「霞?もう朝なんだから起きなよ」

 

いた。どうやら我が姉君はこの崇高な睡眠を邪魔するつもりらしい。

このようなことがあってはよいのだろうか。いや、悪い。

 

「…あと5分」

「そんなこと言って、今起こさなかったらどうせ起きないでしょ。」

 

精一杯の抵抗に毛布にくるまるも、すぐに引きはがされ、効果なし。眠いからね仕方ないね。

 

「…一歌さん。朝の男は獣なのです。そう簡単に近づいては襲われますよ。」

「訳わからいこと言ってないで早く起きて。」

 

糠に釘とはこのことだろうか。これでは、気持ちの良い睡眠ができないではないか。

むしろもうすっかりと目が覚めてしまった。仕方ないので体を起こしてぐっと伸びをする。

目の前には、黒髪がきれいな俺の姉(仮)である星乃一歌がいる。

 

「やっと起きた。おはよう、霞」

「おはよう、一歌。いつも悪いね」

「…本当に思ってるなら自分で起きれるようになってよ」

「それはできない約束だ。俺の恋人は束縛が強くてね、俺一人では飲み込まれてしまう」

「はぁ……早くリビングに来てね」

 

それだけ言うと、一歌は部屋を後にした。

俺もパパっと着替えてリビングに向かう。

 

「おはよう、父さん、母さん」

「あら、おはよう霞」

「おはよう。また一歌に起こしてもらったのか?いい加減一人で起きれるようになりなさい」

「そういわれてもねぇ…ベッドが離してくれないんだから無理だよ」

 

()()()()()()()()に挨拶をして席に着く。

テーブルにはすでに料理が並んでいて、一歌が食事をしている。

 

「いただきます」

 

両手を合わせて、食事を始める。

 

「…うん、今日も母さんの料理はおいしいね」

「ふふっ、ありがとう」

 

()()()()()()()()()()()()()()()

 

もう慣れてしまった感覚に、苦笑いしながら、食事を進める。

ふと、前を向くと、ちらちらと一歌から視線を感じる。

大方、何か話題を探しているところだろう。

 

「ね、ねぇ霞。学校ではどう?友達とかできた?」

「最近そればっかり聞いてるよね?ほかに話題ないの?」

「うっ…」

 

お決まりの会話である。話題がないなら振らなけりゃいいのに。

 

「クラスには中学からの友達もいるんだし、特に問題ない。楽しくやっているよ」

「そ、そうなんだ…」

 

この会話を最後に、お互い黙ってしまう。

やはり、()()()()()()()()()()()()()が、一歌とはどうも距離ができてしまう。

まあ、年頃の男女なのだからこうなるのは仕方ないだろう。

どこぞの東雲姉弟もぎすぎすしてる感じだったし。

その後は、特に会話もないまま、食事も終わり、身支度を済ませる。

 

「今日はどこか寄っていくの?」

「そうだね。杏のとこに行ってから帰るから遅くなるかも」

「わかったわ。あんまり遅くならないようにね。」

「はーい。行ってきます」

 

 

 

 

登校中、イヤホンを付けて歩道を歩く。

最近はすごいね。耳をふさがないで音が聞こえるイヤホンがあるなんて。

 

「…♪……♪♪」

「…おっはよ~っ!!」

「おわぁぁっ!!!」

 

突然後ろから声を掛けられ、つい変な声が出てしまう。

 

「…杏、大声で後ろから声かけるのはやめてって言ったよね?」

「あははっごめんね?霞ったら反応が面白いから」

 

反省の色も見せないこいつは白石杏。

中学からの付き合いで、中学では三年間同じクラス、

高校でも同じ神山高校1年A組に所属している腐れ縁だ。

 

「今日もうちに来るんでしょ?」

「もちろん。行かなかったらお前に何されるかわかったもんじゃないからね。」

「なにそれ、いつも嫌々来てるってわけ!?」

「冗談だよ冗談。嫌なわけあるもんか」

「…次変なこと言ったらぶつわよ」

「……申し訳ありませんでした」

 

相変わらず冗談の通じないやつだ。

杏はぷりぷり怒って先に行ってしまう。

俺も急いで後を追った。

 

 

 

 

 

白石杏side

 

授業中、退屈な私は隣のあいつを見た。

星乃霞。

中学から、ずっと一緒のクラスの腐れ縁。

霞は、こちらに目もくれず、授業を真剣に聞いているようだ。

普段から、よく冗談を言ったりふざけている奴だけど、意外と真面目な奴だ。

黒に近い灰色の髪は、短く切りそろえられていて、清潔感がある。

黒板に向けられている瞳は、澄んだ緑色で、ずっと見ていると引き込まれそうになる。

 

「……?」

「―っ!!??」

 

此方の視線に気づいたのか視線が合ってしまい、思わずそっぽを向いてしまう。

ちらっと霞の方を見ると、興味がないのか、また黒板に向き合っていた。

 

(……人の気も知らないで)

 

私は、星乃霞が好きだ。

この気持ちに気づいたのは、割と最近。

何か明確な出来事があったわけではない。中学3年間を共に過ごしてきたこと、

私の『夢』を近くで応援してくれているうちにだんだんと惹かれていった。

だけど、この気持ちは霞には伝えられない。

あいつは、恋愛に興味ないってずっと言っているし、きっと私が告白しても

他の子みたいに振られるだろう。

 

霞は校内でもそれなりの有名人で、学年問わず、いろんな人から相談を受けることがある。

どんな相談事でも親身になって聞いて、解決案をだしてしまう。

容姿のいい男の子にそこまでされて、惚れてしまう子も少なくない。

そんな子が勇気を出して告白しても『恋愛に興味ない』と断られてしまう。

恋愛をする気がないのに、女の子をその気にさせることから、

霞は『勘違いさせ王』なんて呼ばれたりする。

そんな霞に告白しても、玉砕するのがわかりきっている。

だったら、この気持ちを胸に秘めながらあいつと過ごしていこうと思う。

 

(でも、好きって伝えられる日が来たら良いな)

 

私の心で、エリンジウムが揺れている。

 




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