星乃霞side
二限目の授業も終わり、昼休み。
いつものように杏と机をくっつけて弁当を広げる。
「やっとご飯だ~、ボクお腹ペコペコだよ」
今日は珍しいやつも一緒だ。
暁山瑞希。
髪をサイドテールにまとめている奴。
普段学校にめったに来ないことから、クラスメイトから距離を置かれているが、
俺や杏は特に気にしていないため、よくつるんでいる。
「瑞希、もう少しちゃんと学校にきたらどうなんだ?」
「えー、いいじゃん補修はちゃんと受けてるんだからさ」
「普段から学校に来てたら補習受けなくていいと思うんだけど…」
俺や杏の言葉に小首をかしげる瑞希。
いちいち仕草があざとい奴だ。
「あ、そうだ!」
「…?なに?」
急に何かを思い出したように手をたたくと、
瑞希はこちらに視線を向けてきた。
「霞ってさ、作曲とか動画編集とかできたよね?」
「できるけど…それがどうかした?」
「―よかったら、ボクのいるサークルに入らない?」
突然の誘いに驚いて固まってしまう。
前々からこいつが、音楽系のサークルに入っているの知ってたけど、
まさか誘われるとは…
「急な誘いだね、どうして?」
「今は4人でやってるんだけど、もう1人ぐらいメンバーが増えたら、
作業効率も上がるかなって思ってさ。それでどう?入る気ない?」
ふーむ…どうしようか。
面白そうだしやってみるのも…いやでも、それだと―
「ち、ちょっと待ったぁ!霞がサークル入ったら、
うちに来る時間減っちゃうじゃん!」
予想通り、杏が食いついてきた。
杏のやつは何かにつけて俺を路上ライブや店に誘ってくることが多い。
なぜなのかは知らないけど、他のとこに行こうとするのを嫌うのだ。
「大丈夫大丈夫!活動は夜中だから、放課後とかは時間あるよ」
「…ならまぁ……」
なんだか煮え切らない様子だが、一応は納得したようだ。
「それなら、お言葉に甘えて入らせてもらおうかな」
「おっけ~、グループの招待とかはまた後からするね!」
面白そうだし、俺の今の
誘いを受けることにした。
そのあとは、何気ない会話をしながら、昼休みを過ごした。
( ゚∀ ゚)
さらに時間は過ぎて、放課後
「―さ、行くよ霞!」
授業中の退屈そうな様子から、一変して元気いっぱいな杏が寄ってきた。
「はいはい、わかってるよ」
荷物をまとめて二人で教室を出る。
向かうは『WEEKEND GARAGE』。
杏の父親が経営するカフェだ。
・
「こんにちは~」
「いらっしゃい…お、霞かよく来たな」
「ただいま~」
「おかえり、杏。さっさと着替えてこい」
「はーい」
彼は、白石謙さん。
杏の父親で、WEEKEND GARAGEのオーナーで、元ミュージシャン。
何でも、かなりの人気があったらしく、
今でも彼目当てに店へ訪れる人もいるぐらいだ。
「いつものでいいか?」
「はい、おねがいします」
なんだかんだ、このお店の世話になってから、だいぶたった。
来るたびに同じ注文しかしないため、謙さんも、慣れた手つきで用意してくれる。
「…ほい、いつも杏につき合わせて悪いな」
「いえいえ、俺も、ここに来るの好きですから」
ほどなくして、キャラメルラテと、ホットドッグが目の前に並ぶ。
キャラメルソースのたっぷりかかったキャラメルラテに、
ケチャップとマスタードがこれでもかとかけられたホットドッグ。
どちらも、謙さんが俺用に作ってくれるもので、試しに食べた杏が、
『あっま!それに辛ぁっ!!こんなの食べられないでしょ!』
なんて言っていた。俺からすると、ちょうどいいんだけどな…
「はーむっ…あ~やっぱおいしいなぁ~」
「ははっそりゃあよかった。しかし、料理を出してる俺が言うのもなんだが、
あんましそんなものばっか食ってたら、体壊すぞ?」
「美味しいものは、体に悪いもの。もしも体を壊したら、
その時の自分が何とかします」
「相変わらずだな…」
謙さんは苦笑いを浮かべた。
「…にしても、お前さん随分といい顔をするようになったな」
「…あの時の俺、かなりひどかったですもんね」
「初めて会ったときに比べりゃあかなりの変化だ。いいことじゃねえか」
「それもこれも、杏と謙さんのおかげですよ。二人に出会ってなかったら、
今の俺はいません」
「俺も杏も何もしちゃいねえよ。変わったのは
お前さんが変わろうと思って行動したからだ」
「…そうですかね」
初めて、この店に来た時、俺には何もなかった。
色も感情も、生きる気力も。
でも、今はあの時から、随分と変わることができた。
それは、杏や謙さん…何よりも、音楽に出会えたから。
失ったものは、まだたくさんある。
だけど、いつかはそのすべてを―
「なにを話してるの?」
感慨にふけっていると、着替えてきた杏がやってきた。
杏は、学校終わりのカフェタイムの間、この店の手伝いをしている。
「俺がこの店に来た時のことをね」
「あの時に比べて、霞もよく笑うようになったてな」
「あ~!たしかに、初めて会った時なんて、ピクリとも笑わなかったしね」
「変われたのは俺たちのおかげだってよ」
謙さんの言葉を聞いた杏がにやりと笑った。
「え~私には、何も言わないくせにそんなこと思ってたんだ」
「…直接言えば、調子に乗るだろう?あえて言わなかったのさ」
謙さんからの思わぬ暴露をきいて、杏は上機嫌の様子。
そのまま、軽い足取りで接客に向かった。
「まったく…」
「ははっ、余計なこと言ったか?」
「いえ、むしろありがとうございます。
直接だと気恥ずかしくて伝えられませんから」
「そうか。…杏のこと、これからも頼むぞ」
「ええ、任せてください。」
その会話を皮切りに、俺は、ひと口かじりついたホットドッグを
再び食べ始めた。
(´∀`*)
「…よし、片づけはこれでオッケー!」
「父さん、カフェタイム終わったから、出かけてくるね!」
「ああ、また路上ライブか。他のミュージシャンとケンカするんじゃないぞ」
「わかってるってば!もうそんな子供じゃないのに……じゃ、行ってきます!
ほら、霞行くよ!」
「はーい、じゃあ謙さんまた来ます」
「おう、杏が問題起こさないよう見ててくれよ」
「父さん!」
会計を済ませ、WEEKEND GARAGEを後にする。
・
「よし!マイクもばっちりだし、そろそろ歌おうかな」
「おーがんばれ~」
「…て、あんたも歌うのよ!ほらマイク」
「はいはい」
杏からマイクを受け取って、軽く声出しをする。
そうこうしてるうちにぞろぞろと人が集まってきた。
「お、杏ちゃんに霞!
今日のライブも頑張ってな」
「二人ともー!今日は、友達も連れてきたんだよ。応援してるね!」
「ふふ、みんないつもありがとう!
今日も思いっきり歌っちゃうね!」
「応援ありがとね~
テンション上げすぎて、倒れないようにね~」
ほどなくして、曲が流れ始めてくる。
杏がライブで歌う時、よく歌う曲だ。
「――♪―♪」
「♪―♪―――」
杏のやつ、今日は、かなり調子がいいみたいだ。
よく声が伸びている。
曲が始まってから、かなり人が増えてきた。
ギャラリーの盛り上がりがよくわかる。
情熱的な赤色で、あたり一面が染まっていく
(これだ…!この景色が、俺は大好きなんだ!)
思わず夢中になってしまうほど、この時間は特別で、楽しいものだった。
・
「ふぅ、今日もみんなノってくれたし、
最高のパフォーマンスができた気がする!」
「お疲れさま、とても楽しいライブだったよ」
ライブはあっという間に終わってしまい、さっきまでいたギャラリーも
帰っていった。
「うん、お疲れ~
…でも、まだまだ足りないよね」
満足げかと思ったけどそうではないようだ。
「もっと練習しないといけないし、
何より一緒にイベントをしてくれる相棒を探さないと出し…」
杏がじっとこちらを見つめてきた。
「誰かさんが相棒になってくれたらな~?」
「…前にも言ったけど、その話には乗れないね」
白石杏には夢がある。
それは、いつか、父親である謙さんが開いた最高のイベント
『RAD WEEKEND』に負けないイベントをすること。
そのために、一緒にその夢を目指す相棒を探しているところだ。
俺もいままで何度も誘われているが、毎回断っている。
「なんでよ!私たち2人なら最高のイベントができるって!」
「……まだ、わからないんだ」
「わからない…?」
「自分の音楽がわからないんだよ。
今の俺がやっている音楽は、全部お前からの貰い物なんだ」
あの日、杏の路上ライブを見た時、世界が変わった。
俺も音楽がやりたいと思ったし、実際に杏の隣でライブもたくさんしてきた。
でも、そのすべては貰い物で、俺自身の音楽ではない。
俺自身が作る音楽を見つけられるまで、杏の相棒にはふさわしくない。
それが、俺が杏の誘いを断り続ける理由であり、瑞希の誘いに乗った理由だ。
「…はあ、分かった。
とりあえずはあきらめる」
「とりあえずって…」
「早く見つけてよね、その"自分の音楽"ってやつ。
もし、あんたがそれを見つける前に私が相棒を見つけられなかったら
相棒になってもらうから!」
「…ああ、約束する」
何とか、杏を説得することができた。
杏には悪いけど、俺以外の相棒を見つけてくれることを願うばかりだ。
「霞以外の相棒か…
大変だけど、やってやろうじゃん!」
杏の方も、いつものあいつに戻ったみたいだ。
「私は『RAD WEEKEND』に負けない、
最高のイベントをやるんだから!」
杏がそう意気込んでいた時、
「って、何?急にスマホが光って……」
急に杏のスマホが光りだした。
「ねえ霞、『untitled』っていう知らない曲が
プレイリストに入ってるんだけど…」
「なにそれ?知らないうちに入れてたんじゃないの?」
杏のスマホを見ると、確かに、『untitled』という曲があった。
杏が間違えたり自分で入れなかったら、
知らない曲がプレイリストに入らないと思うけど…
そう思い顔を上げたその瞬間―
「わっ、まぶしい……っ!?」
「えっ、ちょなになに!?」
俺たちは光に包まれた。
執筆してたら、想定よりも長くなっちゃったので、二つに分けます…。
ふとした疑問なんですが、1話当たり何文字くらいが読みやすいですかね?
良ければ教えてくれると嬉しいです。
感想、誤字・脱字あればぜひお願いします。
1話ごとに何文字くらいが見やすい?
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1000未満
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1000~2000
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2001~3000
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3001~4000
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4001以上