星乃霞side
本日何度目かの光が収まって、俺の部屋に戻ってきた。
「Mistear!聞こえる!?いるなら返事して!」
ヘッドフォンをつけると、俺を呼ぶ声が聞こえた。
「今戻ったよ」
「よかった~。戻ってくるのが遅かったから、心配したよ」
「ごめんね、雪とちょっと話してて」
「…雪と、何を話してたの?」
「ひとりじゃ限界があるって説得しようとしたけど、振られちゃいました」
「……そうなんだ」
全員無事に帰ってきたみたいだけど、みんなの声色は暗かった。
「あんたも、あいつのこと気にしてるの?
本人がひとりでやるって言ってるんだから、戻ってこないでしょ!」
えななんは、さっきからずっと雪に対して怒りを抱いている。
確かに向こうから拒絶してきたから、彼女の言う通りではあるが、
「―それでも、俺はあの人を救うよ」
「…っ」
「……なんでそこまでしようとするのよ」
「うーん、雪に言った理由とは異なるけど」
「俺と雪が似ているから、かな。」
「雪とMistearが似ている…?」
「うん。俺も、雪と同じで自分がわからなくなった時があったんだ。
今は、前に比べてだいぶ取り戻せたけどね。」
「だから、分かるんだ。このままじゃあ、雪は自分を見つけられない。
周りの人の助けがないと、きっと本当の想いは見つけられない。」
「これが彼女を助けたい理由かな。」
俺の話をみんな静かに聞いてくれていた。
それからしばらく、沈黙が続いた。
「…理解してくれとは言わないよ。失った痛みは、
失った人にしかわからないから。」
「とにかく、これから俺は、彼女を救うために動く。
しばらくは、こっちの活動に出られないかもしれないけど、ごめんね」
それじゃ、といってボイチャから抜けた。
しかし、『彼女を救う』といっても、どうしようか。
「やっぱり、曲を作るしかないかな」
まふゆさんに直接会えない以上、彼女を救う曲を作りながら、
機を見計らうしかない。
幸い明日は休日だ。杏からの練習の誘いも断っているし、
今日は徹夜で作業をしよう。
彼女が消えようとするまで、時間はもうないから。
(´△`)
宵崎奏side
雪に続いて、Mistearも来なくなって、1週間がたってしまった。
私は、いつものようにパソコンに向かって、曲を作っていた。
…いや、最近は、曲を作ろうとするたび、雪がちらついてしまう。
私の曲は、雪を救えていなかった。
そのことが、頭の中で巡って、思うように作業が進まなくなっている。
今日は、家の食べ物がなくなってしまったので、仕方なく出かけていた。
(早く帰って、曲を作らなきゃ)
買い物を済ませてまっすぐ帰ろうとすると、
「…歌?」
どこからか、歌が聞こえてきた。
なぜかその歌を聴くと、胸が締め付けられ、
つい歌が聞こえる方に足が向かってしまった。
「―♪――♪」
歌の主は、すぐに見つかった。
暗い灰色の髪に、澄んだ緑色の青年。
以前セカイで出会った、Mistear…星乃霞だ。
周りには、彼の歌を聴くために足を止めている人が多数いた。
「…っ」
前に聴いた曲とは違う曲だけど、
ギターを弾きながら、懸命に歌う霞の姿に、
胸が締め付けられて、とても暖かいと感じた。
気付いたら、私も足を止めて彼の歌をずっと聞いていた。
ふと、彼の後ろにあるギターケースに目が向く。
「…え」
そのギターケースには、ストラップがついていた。
ローダンセを持ったくまのストラップ。
あれは、私が小学生の時に、友達の『かすみ』から貰ったものと同じ。
やっぱり、彼が…!
(゜ロ゜)
星乃霞side
あれから1週間、曲を作り続けたけど、
満足のいく『まふゆさんを救う曲』は完成しなかった。
むしろ、作業に打ち込むたびに考えがまとまらず、
今日は久しぶりに路上ライブをすることにした。
気分転換と、もしかしたらまふゆさんに会えるかもしれないと思ったからだ。
しかし、やはりというべきか彼女は来なかった。
「…ありがとうございました」
足を止めて歌を聴いてくれた人たちにお辞儀をして片づけをする。
「…あの」
「はい?なんですか…て、奏さん?」
突然声をかけられて振り向くと、そこには、長い髪にジャージ姿の、
宵崎奏さんだった。
「もしかして、聴いてくれてたんですね。ありがとうございます」
「…すごくいい歌だった。」
「貴方にそう言ってもらえると、頑張った甲斐がありますね」
それだけ言葉を交わして、お互い黙ってしまう。
改まって話すと、やっぱり気まずい。
「…私のこと、覚えてない?」
静寂を破ったのは、そんな奏さんの言葉だった。
「覚えてない?…すみません、前にどっかで会いましたっけ?」
覚えがなかったから、素直に答えると、彼女は少し悲しそうな顔で、
「…くまのストラップ」
ギターケースについてるストラップを指さした。
これは、小学生のころ一つ上の友達にプレゼントしたおそろいのストラップ。
確かこれを渡した相手は…あ、
「…思い出した」
「……すみません。今思い出しました」
そう、彼女がストラップを渡した相手。宵崎奏だ。
・
あの後、場所を変えて話そうということで、近くのファミレスに寄った。
その際に、彼女から敬語はやめてほしいとのことだったので、
敬語を抜いて話すことにした。
「…まさか、ほんとに忘れてたなんて」
「ほんとごめんって。あんまり、昔のことそのものを覚えてないんだ」
ちょっと不機嫌な奏をなだめる。
「…とにかく、せっかく会えたんだし、今直面してる問題について話そう」
「うん、そうだね」
そこから、奏と現状について情報交換をした。
どうやら、雪のこと抜きで曲作りに苦戦しているみたいだ。
こちらも、雪を救う手段が見つかってないことを伝え、とある提案をした。
「ねえ、奏。ふたりで曲を作らない?俺が作詞と編曲をやる。
奏は作曲をしてほしい。それならきっと雪を救えるはずだ」
しかし、奏の反応は、あまりよくなかった。
「…私の曲じゃあ、雪を救えない」
セカイでの、雪からの言葉にいまだ囚われているみたいだ。
「うーん。むしろ、奏じゃないと救えないと思うけどね」
「…どうしてそう思うの?」
ひと呼吸いれて、うつむいてしまった奏に答える。
「雪は、奏の曲を聴いて、救われた気がしたって言っていた。
あれは紛れもない本当のことだよ。」
「だから、奏の曲は雪に届く。俺はそう思ってるよ」
「でも、今のままじゃ足りな―」
「じゃあ、足りるまで作ろうよ」
俺の言葉に、奏が顔を上げる。
「今すぐに、雪を救う必要はないと思うんだ。今しなくちゃいけないことは、
消えようとする雪を止めて、ひとりじゃなくすること」
「大丈夫。俺が、俺たちがいる。一緒に、雪を救う曲を作り続けよう」
奏は、しばらく黙っていたが、
「…すこし、考えさせて」
迷いながらだけど、きっと、前向きな返答。
そう感じられる返事だった。
「わかった。決まったら教えてね」
「でも、急かすつもりじゃないけど、時間はあまり残されてないよ」
「うん。必ず、返事をする」
話が一応まとまったので、ファミレスを後にする。
奏と別れて帰路につくとき、奏から
「…ありがとう、霞。私は、今まで霞がそばにいたから、頑張ってこれた」
そう言われた。
そばにいた、というのは多分ストラップのことで、
彼女は今まで、大切にしてくれてたんだろう。
「今までじゃなくてこれからも、だよ」
「…うん」
暗かった奏の表情も、随分と明るくなった。
別れを告げて、お互い家路についた。
帰ったら、また作曲の続きだ。
( ̄∀ ̄)
翌日、奏から連絡が来た。
昨日の提案の答えが決まったらしい。
ナイトコードを開くと、すでにみんなボイチャに参加していた。
すぐに俺もボイチャに入った。
「みんな久しぶり。元気してた?」
「Mistear!ほんとに久しぶりじゃん!」
「来てくれたんだね。ありがとう」
「もちろん。それで、答えは決まったんだね?」
「うん。わたしは雪のために曲を作る。雪を、救いたいから」
俺の問いかけに奏は自信をもって答えてくれた。
「それが聞けて嬉しいよ。それにしても早かったね?」
「セカイでミクと話して、雪を救いたいって改めて思ったんだ」
「そっか…。じゃあ、一緒に作ろう……雪を救う曲を。
それで、Amiaとえななんはどうする?」
奏からは、返事をもらったので、今度は、Amiaとえななんに質問する。
「ボクは、ふたりがセカイに行くときに一緒に行くよ」
「KやMistearみたいになにかはしてあげられないけど、
ボクも、雪がいなくなって寂しいって気持ちは伝えていいと思うんだよね」
「私は行かない。雪にどんな事情があるか知らないけど、
どちらにせよ、雪のためにあんな所に行きたいとは思わない」
ふたりにそれぞれ真逆の回答をもらう。
「うん。わかった。曲ができたら、3人で、セカイに行こう」
今後の予定を決めて、チャットをミュートにして俺は作詞を進める。
曲は、奏が最高のものを作ってくれるから、あとは俺が詩を載せるだけ。
歌詞をノートにまとめながら、考えるのは、まふゆさんのこと。
あの人は、本当は『消えたい』なんて思っていない。
だから、俺たちで気付かせてあげなければならない。
自然とペンを持つ手に力がこもる。
「絶対に、ひとりにさせないよ。まふゆさん」
o(-`д´- o)
あれから数時間作業して、Kから、曲が完成したと連絡がきた。
あまりにも速いペースだ。それだけ、雪を救いたいという想いが強いんだろう。
かく言う俺も、歌詞は完成しているので後は
曲を聴いてそれに合わせて歌詞を調整するだけだ。
「…うん、やっぱり暖かいな」
この曲なら、きっと雪に届くはずだ。
俺は急いで歌詞を調整して、曲に歌を載せて、ついに完成した。
改めて完成したものをKに送り、準備ができたので、Amiaにも連絡を入れる。
「K、Mistear!曲ができたって本当!?」
「うん。今送るね」
Amiaは、送られた音源を聴き始めた。
「…こんな曲になったんだね。きっと届くよ、この曲」
「ありがとう」
Amiaにも聞いてもらった後、えななんがボイチャに入ってきた。
「えななん?起きてたの?」
「…作業してただけ。それで、曲できたの?」
「うん。えななんも、聴いてくれる?」
えななんも、渋々とだが、曲を聴いてくれた。
「…やっぱり、Kの曲は暖かいね。……ちゃんと、戻ってきてね」
「もっちろん!それじゃあ、行こうK、Mistear!」
「うん。―雪に、会いに行こう」
KとAmiaは、そのまま『Untitled』を再生して、セカイに行ってしまった。
俺は、少しやることがあるので、残った。
「…あんたは行かないの?」
「いえ、行きますよ?でもその前に、
素直になれないお姉さまにお話しを、と」
「……なによ」
俺の態度にちょっとイラついている様子。
…早く言ってしまわないと、怒鳴られそうだ。
「前に、理解する必要はないといいましたよね。だから、貴女の選択に
あーだこーだは言いませんよ。」
「でも、ひとことくらい言ってやったらどうですか?」
「Amiaだって、自分の気持ちを伝えに行くんですから、文句の一つくらい
言っても許されますよ」
必要なことを伝えて俺もセカイに向かう。
彼女にこういった焚き付けは必要ないかもしれないけど、念のためだ。
まふゆさんは、ニーゴのみんなで救わないと。
アンケートなんですけど、ある程度集まったので、締め切ります。
多くの方が、4001文字以上に票を入れられていたので、その方向で執筆を進めます。
答えてくださった方、ありがとうございます!
また意見が欲しい時にアンケートを取らせてもらうので、
その時はご協力よろしくお願いします。
1話ごとに何文字くらいが見やすい?
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1000未満
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1000~2000
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2001~3000
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3001~4000
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4001以上