星乃霞side
セカイに着くと、すでに奏たちはまふゆさんと接触していたみたいだ。
「…うるさい!私はひとりで消えたいの!もう放っておいて!」
「こんなの……いらない!!」
作った曲を聴かせようとしたのであろう、差し出された奏のスマホを
まふゆさんがはねのけようとする。
急いで駆け寄り、まふゆさんの振り上げた腕をつかんだ。
「そんな乱暴しちゃだめですよ、まふゆさん」
「…霞まで。……出てってよ」
「私のことなんて何もわからないくせに、勝手に入ってこないでよ!!」
「……わかるよ」
また俺たちを拒絶しようとしたまふゆさんに声をかけたのは、奏だった。
俺は、つかんでいた手を放してまふゆさんをじっと見つめる。
そのまま奏が話し出した。
「雪、前に私たちに行ったよね。本当は消えたいんでしょって」
「そうだよ。わたしも、本当は消えたくて仕方がない」
「私は…私の曲で、大切な人を不幸にしたから」
「…え?」
奏の大切な人…。
確か、俺と最初に出会ったときには、母親を亡くしていたから、
もしかして、お父さんを?
「私には、作曲家だったお父さんがいて、お父さんはずっと
自分の音楽でたくさんの人を幸せにしたいって思って頑張ってた」
「そんなお父さんみたいになりたくて、曲を作り始めた」
「でも、私の曲でお父さんを追い詰めてしまった」
「元気づけようとして聴かせた曲で、お父さんは絶望して、倒れて…
もう曲が作れなくなった」
そんなことがあったんだ…。
奏の父親にはあったことはなかったけど、いつも父親の話をしていたから、
よほど大切な人だったんだろうし、そんな人を自分のせいで傷つけたことに絶望したんだろう。
「だから、どうしようもなく消えたくなった。」
「でも、お父さんはこれからもわたしに曲を作り続けるんだよって。
―だから、わたしは」
「誰かを救う曲を作り続けなきゃいけない。そう思って生きてる。
絶望している人でも救える曲を、消えたくても作り続けるしかないって」
「……」
奏の話を、まふゆさんは静かに聞いていた。
しばらく静寂が続いたが、まふゆさんが口を開いた。
「Kは、お父さんに呪われてるんだね。消せない呪いがあるなんて、かわいそう」
「でも、Kの呪いなんてどうでもいい。わたしを巻き込まないで」
「Kは、自分が救われたいから、私を救おうとしているだけ。
そんなの、お互い見苦しいだけじゃない」
奏の話を聞いても、まふゆさんにあまり変化は見られなかった。
しかし奏は、あきらめずに話をつづけた。
「…そうかもしれない。でも」
「それでも…呪いだとしても。雪に私の曲が届いたって知ったから。」
「だからわたしは、わたしの曲で雪を救いたい。可能性が残されてるなら、
絶対に救いたい」
奏の瞳が、じっとまふゆさんをとらえている。
それでも、まふゆさんは変わる様子がない。
「認めるなんて、潔いね。でも、その曲を聴いても、どうせ変わらない。
少し救われて、また消えたくなる思いが強くなるだけ」
「だから、もう放っておいて」
「雪……!」
「まふゆさん……」
Amiaと俺が彼女に声をかけようとした時、
「ふざけないでよ!」
絵名さんの怒鳴り声が聞こえた。
「えななん!どうしてここに!?」
「そいつに、一言いいに来たの」
ずかずかとまふゆさんの前まで歩いてきた絵名さん。
よかった。ちゃんと来てくれたみたいだ。
「自分を探せないとか、消えた方がいいとか、ぐちゃぐちゃ言ってるそいつが、心底むかつくから!」
「なんであんたは、私の欲しいものを持ってるくせに、
消えたいとか、平気で言えるわけ?」
「…?何を言ってるの?私は何も持ってない、ずっと」
まふゆさんは絵名さんの言ってることがわからず、少し困惑してるみたいだ。
それを聴いた絵名さんか、怒涛の勢いで、言葉を投げた。
「あんたには才能がある!すごい作品が作れて、
そんなあんたの作品を待ってて、期待してくれる人がたくさんいる!!」
「私が、欲しくてたまらないものを、あんたは持ってる…」
「あんたの曲が頭から離れないの!あんたみたいな勝手なヤツ大っ嫌いなのに、
あんたの曲はもっと…もっと聴きたいって思ってる!!」
「嫌いなのに、嫌いなのに…!心のどこかで、雪に消えてほしくないって…
もっと雪の曲が聴きたいって、思ってる…!!」
「だから…消えないで…、作りなさいよ……っ」
「才能があるんなら、才能がない人の分まで苦しんで、作りなさいよ!!
消えるなんて……絶対に、許さない!!」
言いたいことを言い終わったのか、絵名さんは黙ってしまった。
しかし、絵名さんの心からの叫びを聞いても、まふゆさんは特に反応を示さない。
「…私の曲がすごいかどうかなんて、そんなものどうだっていい。
私がほしいのは、すごい曲でも、誰かの称賛でもない。
私はただ―見つけたかっただけ」
「でも、そんなの無理だってわかったから、もうどうでもいいの。
あなたにはわからないかもしれないけど」
「……っ!雪、あんたね…!!」
「そっかそっかー。ボクは雪の気持ちちょっとわかるな~」
「Amia…!?」
また怒鳴りそうになった絵名さんを止めたのは、
意外にもまふゆさんへ共感を示した瑞希だった。
「ほら、天才だろーがお金持ちだろーがカワイイ子だろーが、
キツいことってあるし?」
「雪がどんだけすごい曲作れても、一番ほしいものが手に入らないなら、
雪にとっては意味ないと思うんだよね〜」
「だからボクは、雪が消えたいなら好きにすればいいと思うよ」
「ボク達が色々言ったところで、雪の問題は雪にしかわかんないんだからさ」
「……なら」
「…でもさ、なんとなく、ボク達って似てるような気がしたんだ」
共感してくれる瑞希に、それならと話を終わらせようとしたまふゆさんだったが、
瑞希がそれを遮って話をつづけた。
「周りに少しずつ自分の形を変えられそうになってるところとかさ。
それに抵抗したり、受け入れたりして―」
「そうやって必死になってるうちに疲れて、
全部どうでもよくなっちゃう。…そんな感じが、似てるなって」
「あんまり、この気持ちをわかってくれる相手っていないからさ」
「だからボクは……雪がいなくなったら、ただ寂しいって思うよ」
「…………」
瑞希からの想いに、またまふゆさんが黙ってしまう。
「…勝手なとこばっかり……」
まふゆさんが、そんなことをつぶやいた。
「勝手に嫉妬して、勝手に共感して、勝手に救おうとして…」
「私は、消えたい。これが私の本当の想いなの」
「…雪。それでもわたしは、雪を救いたい」
「…っ。もう、疲れたの……!」
奏の言葉に、まふゆさんの感情が爆発した。
「希望があるかもって…まだ、見つかるかもって思うのが」
「だったら、最初から見つからないって思えてた方が楽だった」
「もう、救われるかもって、思いたくない!!」
感情を爆発させたまふゆさんにみんな声が出せない。
まふゆさんの感情の吐露をただ聞くことしかできなかった。
「もう疲れたの!!探しても、探しても、探しても探しても探しても!!」
「見つからなくって…っ。また探して、違うって、絶望して……」
「――もうこれ以上……どうしようもないじゃない……っ」
「―わたしがつくり続ける」
震え声になってきたまふゆさんに奏はそう宣言した。
「たとえ、この曲で本当に雪を救えなかったとしても、救えるまで作り続ける」
「雪が自分を見つけられるまで―ずっと作る」
「たとえお父さんの呪いだとしても―」
「わたしはもう、わたしの目の前で誰かが消えるのを見るのは嫌なの」
奏の言葉に、まふゆさんが一歩あとずさりする。
「でも…でも……っ!Kだって、本当は消えたいんでしょう!?」
「……うん、そうだよ」
「だからもし、わたしが絶望して、消えそうになったら」
「その時は雪が“まだ見つかってない”って言ってくれればいい」
「………そう言ってくれたら、わたしはずっと作り続けられるから」
「……何それ。…自分が何言ってるかわかってるの?
そんなの、もうひとつ呪いを増やすようなものじゃない!」
「私が私を見つけられるまで、Kはずっと曲を作り続けなくちゃいけない!
それを……!!」
奏を見て、まふゆさんは言葉が続かなかった。
「…………」
「どうして…そこまで……」
「それは――わたしの、ただのエゴだよ」
まふゆさんの問いかけに、少し微笑んで奏が答える。
「どの道わたしは、ずっと曲を作り続けなきゃいけない。
だから、雪の分が増えたってなんでもないよ」
「それに、わたしはひとりじゃない。そばで、支えてくれる人がいるから。」
そう言い奏はこちらに顔を向けた。こちらも、微笑んでうなずく。
「………わからない」
「見つかるまで、どれだけかかるかもわからない。
見つからないまま終わるかもしれない」
「それでも……本当に、やるの?」
「うん」
「…………」
まふゆさんはまた黙ってしまった。
そこで、俺も彼女に声をかける。
「もう、いいんじゃないですか、まふゆさん?」
「……霞」
「貴女はひとりじゃないですよ。奏が、瑞希が、絵名さんが。
そして俺がいます」
「…っ」
「貴女が自分を見つけられるまで、そばにいます。
先の見えない暗闇で、貴女が迷っても、貴女を見つけ出します」
「…どうしてそこまで」
「前にも言いましたよね。貴女に救われたからだって」
まふゆさんと初めて出会ったのは、
俺がひとりで路上ライブを始めて間もない頃だった。
あの頃は、路上ライブをしても誰も立ち止まって聴こうとしない、だれも見向きもしなくて、
やはり自分にはできないのか、辞めてしまおうかと思っていた。
そんな時に彼女に出会った。
まふゆさんは、俺の路上ライブの初めての観客だった。
そして、その時にまふゆさんから言われた言葉のおかげで、
俺は路上ライブを続けようと思うことができた。
「『すごくあたたかい曲だった。』貴女にそう言われたから、今の俺がいる。
だから、恩返しがしたいんです」
また、まふゆさんはうつむいて黙ってしまった。
俺も、それ以上声をかけずに、まふゆさんの返答を待った。
「霞は、本当にずっとそばにいてくれるの?」
「もちろん。貴女が救われるまで、ずっとそばにいますよ」
俺の返事に、まふゆさんは少し微笑んで。
「………。なら、もう少しだけ……探してみるよ……」
「……雪」
「K。本当に……ずっと作り続けてくれるんだよね?」
「……うん。大丈夫だよ、雪。絶対に、いつか救ってみせるから」
それを聞いたまふゆさんの顔は、すごく穏やかだった。
感想、誤字脱字あればお願いします。
それと、新しくアンケートを取りたいと思います。
ニーゴのストーリーが終わった後、ビビバスの方に移りますが、
さらにその後は現状どうするのか決めてないので、見たい話に投票をお願いします。
選択肢以外に読みたい話があれば、感想の方にしていただけると、嬉しいです。
今回のアンケートは、ビビバスのストーリーが終わるまで続けます。
ビビバスストーリーの後に見たい話は?
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他ユニットとの絡み
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ビビバスのイベントストーリー
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ニーゴのイベントストーリー
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霞の過去回想