ありふれない錬成師は最高最善の魔王の力で世界最強を超越する   作:天元突破クローズエボルハザード

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ハジメ
「神を騙る悪が蔓延る異世界"トータス"にて、最高最善の魔王、南雲ハジメは、自らの道を阻むガハルドをぶちのめすため、仲間達と共に帝城へと乗り込んだ。
道中、不敬極まった門番のせいで無駄な時間を取らされ、シアが不安定になるというアクシデントもあったが、そこは魔王らしくゴリ押しで突き破った。
そして、ガハルドとの対談を終えたその時、謎の人物が乱入してきたのであった。」

「ねぇ、ハジメ君。今回ってたしかリリィが……。」
ハジメ
「どうした?中身おっさんな鈴はこういうの大好きでしょ?」

「それはどういうことかな?一度、南雲くんとは私に対する認識について話し合う必要があるかな?」
ハジメ
「それはいいな。
以前から香織に余計な知識を植え付けたことについて、こちらもO☆HA☆NA☆SHIしたかったんだよねぇ。」

「…鈴は過去を振り返らない方がイインジャナイカナーとオモイハジメマシタ。」
ハジメ
「切り替わり早いなオイ。まぁ、そろそろ襲撃開始も近いし、切り上げようか。」

「う、うん……。それじゃあ、第7章第8話」
ハジメ・鈴
「「それでは、どうぞ!」」


89.Rの思い/皇女の乱入

突如、応接室に乱入してきた、いろんな意味で異様な人物。

え~と、金髪縦ロール系お嬢様、高笑い、語尾が"ですわ"系、吊り目のゴージャス系……

属性てんこ盛りだなオイ。そして何故か、ガハルドや近衛騎士らしき者達は頭が痛そうだ。

ああ、来ちゃったか……みたいな顔しているし。

 

リリアーナ「あ、あの、トレイシー皇女殿下。いきなり何を――」

ハジメ「?リリィ、知っているのか?」

リリアーナ「え、えぇ。

ガハルド皇帝陛下のご息女で、第一皇女のトレイシー・D・ヘルシャー皇女殿下です。」

……俺は一度ガハルドとトレイシーを交互に見てこう言った。

 

ハジメ「血は争えない、という訳か。」

ガハルド「どういう意味だ、こら。」

そのままの意味に決まってるだろ、という言外の声にガハルドはふんっと不機嫌そうに鼻を鳴らした。

その皇女殿下は、声をかけてきたリリアーナをチラッと一瞥すると、

 

トレイシー「まぁ、貴女もいたのね、腹黒姫。」

リリアーナ「誰が腹黒ですか!」

トレイシー「いつも、へらへらへらへらと笑って、腹の中では利益奪取の算段ばかり立てている貴女のことでしてよ。

以前から言ってますでしょう?わたくし、貴女が嫌いなのですわ!」

いや、それ面と向かって相手に言うことか普通?

 

リリアーナ「ト、トレイシー様も相変わらずストレートですね……。」

トレイシー「お兄様と結ばれて皇太子妃になったなら、率先して根性を叩き直してやろうと思っていますわ!覚悟しておきなさい!この国ではただ腹黒いだけでは生き延びていけなくってよ!」

トレイシーのストレートな物言いに、幼少期から式典やパーティーなどで面識のあるらしいリリィは、相変わらずだと馴れた様子で苦笑いを浮かべている。

 

しかし、「お兄様」か……恐らくはこいつの兄がリリィの婚約者だろう。

どのような人物か探す手間が省けるな。それだけでも、この皇女の登場には感謝する。

しかし、何だろうか……この、面倒くさいツンデレ感あるような雰囲気は。

後に、それについてガハルドに聞いてみたところ……

 

ガハルド「元々執着心が強くてな、リリアーナ姫にも執心していたそうだ。」

リリアーナ「え!?ちょっと待ってください、陛下。

あの時、面と向かって嫌いだと言われたんですが!?」

ガハルド「昔から口ではそう言ってたが、あいつ、姫のことめちゃくちゃ好きだぞ?」

リリアーナ「それなんてツンデレ!?

昔から会う度に腹黒とか笑顔が気持ち悪いとか散々言われてきましたけど!」

ガハルド「いや、嘘じゃない。

まだ小さい姫が、計算と笑顔を武器に大人と渡り合う姿を見てな、どうやらいたく感心したらしい。

あいつは、基本的に他人には無関心なんだ。気に入った相手じゃないと、いちいち絡んだりしない。」

とのこと。

 

まぁ、それはさておき、何故そんな彼女がここにやってきたのかが気になる。

と思っていると、件のトレイシーは何故か俺の方を向き……

 

その場に跪いた。

 

ハジメ「!?」

リリアーナ「ト、トレイシー皇女殿下!?」

ガハルド「……。」

その場にいた全員、ガハルド以外は驚愕に満ちていた。無理もないだろう。

現に俺も驚きを隠しきれないでいる。すると、トレイシーは口を開いた。

 

トレイシー「お待ちしておりました、我が魔王。」

ハジメ「……はい?」

思わず素の口調に戻ってしまうほどの衝撃であった。この子は今、何と言った?

我が魔王……?俺は思わずガハルドに「どういうこと!?」と視線を送る。

すると、ガハルドは不機嫌そうに、その訳を語った。

 

ガハルド「この前、お前が放った殺気が帝城を包んだだろ。

それに見せられた此奴は、ずっとお前を捜しまわっていたんだよ。」

ハジメ「あの時かぁ~……いや、それはそれでおかしいだろ!?」

まさかの俺自身の行動が原因と聞き、思わず頭を抱えたくなった。

いや、何故そこで第一皇女がこっち側に来るんだよ!?思わず、スパイ説を疑う程に衝撃的だった。

 

そして、事情を知らない面子がどういうことかと聞いてきたので、リリィが当時の出来事について説明した。

すると、全員が納得といった表情で俺を見た。何でさ!?

 

トレイシー「この度は是非、貴方様にお会いしたく馳せ参じました。どうぞ、よしなに。」

ハジメ「は、はぁ……理由はよく分からんが……目的はなんだ?」

流石に動揺していたとはいえ、そこで気を緩めるつもりはない。

このトレイシー、本当の目的はなんだ?ガハルドの娘だ、きっと腹に何か黒いものでも抱えているに違いない。

 

トレイシー「勿論、貴方様にお仕えさせていただくことですわ!殺気だけであの圧ですもの!

私、誰かに仕えられるのは飽きるほどしてまいりましたが、我が魔王にならばその逆がふさわしいと思いましてよ!

あぁ、今にもこの体が、この御方と死合って愛を確かめろと叫びたがっておりますわァ!!!」

うわぁ……よりにもよって戦闘マニアかよ。てかそもそも、俺に何のメリットもないんだが?

 

ハジメ「……ならば、メリットを示せ。言っておくが、自分を好きにできる等とほざくなよ?

私は、お前の父親のように、女なら誰彼構わず喰らいつく様な盛りの獣ではない。」

ガハルド「どういう意味だ!?てか、さりげなくディスってんじゃねぇよ!

女誑しなら、テメェの方が上手だろうが!」

ハジメ「心外だ、私は正直に自分の気持ちを伝えられて、地獄だろうと共に行く気概を見せる女性にしか手は出さん。

美人なら誰でも口説いて屈服させようとする貴様にだけは言われたくはない。」

ガハルド「その気もないのに自然に美人口説き落としているテメェにだけは言われたくねぇ!」

何だ、皆。その「五十歩百歩でしょ……。」と言いたげな目は。

 

トレイシー「メリットですか……では、こちらはいかがでしょうか?」

そう言って彼女が、ティオやレミアにも負けない豊満な胸の谷間から取り出したのは……

トレイシー「こちらの……不思議なアーティファクトでは不満でしょうか?」

……ガハルドが以前、これ見よがしに見せつけてきたアナザーウォッチだった。

 

ガハルド「うおぉい!?何でそれをお前が持っているんだよ!?」

トレイシー「陛下の部屋に突g…しのb…入って拾いましたわ!」

ガハルド「嘘つけ!あそこには見張りもいたし、鍵もかけてあったんだぞ!?」

トレイシー「軒並みなぎ倒(スマッシュ)してきましたわ!あの程度の守りでは、私の忠誠心は砕けませんわ!」

オイオイ、こいつはとんだじゃじゃ馬娘じゃねぇか……。

まさか、自分の父親だろうと平気で売り飛ばすとはなぁ……強かだねぇ。まぁ、気持ちは伝わった。が、

 

ハジメ「トレイシー皇女、お前の心意気は確かに伝わった。だが、それは真に本物か?」

トレイシー「勿論!陛下が大事そうにしまっていたものですわ!本物に間違いありません!」

ハジメ「それはどうかな?

ガハルド、私が貴様であるなら、そんな重要品、迂闊に盗まれるような場所にはおかないだろう。

あれがカモフラージュ用の偽物なら、本物は肌身離さず持っているのが常だ。そうであろう?」

ガハルド「チイッ、相変わらず勘のいい野郎だ。こうなること自体前から予想はしていたしな。」

 

そう、これが本物とは限らない。半分だけ力を宿した贋作(デッドコピー)の可能性もあった。

アナザーウォッチは、本来真偽は見抜けないのが当たり前だが、オーマジオウ状態の私にはわかる。

もしこれが偽物だった場合、本物も後から作動させれば本物だと信じ込ませることが出来る。

かといって、これが本物だった場合、起動すればすぐに包囲されかねん。

どちらにしろ面倒事にはなっていただろうな。

 

ガハルド「てか、トレイシー!何でお前がそれを持っているんだよ!?」

トレイシー「それ?"エグゼス"のでしょうか?」

ミレディ「え!?エグゼスってあのエグゼス!?バッドが使っていた"魔喰大鎌(まぐいたいれん)エグゼス"!?」

おや、どうやらミレディはあの鎌を知っているようだ。

というか、あんな禍々しいオーラを纏う大鎌、どこから取り出したのやら……スカートの中だったりして。

 

ハジメ「ほぅ……ガハルド。そのアーティファクトはいつ、どこで、誰が見つけた?

知らないのであれば、勝手に調べるが。」

ガハルド「あぁ?あれは、初代皇帝がウルの湖底で発見したんだよ。」

ウルの湖底だと?そういえば、"水妖精"の宿のオーナーから聞いたことがあるな。

古来から精霊のような"尊き何か"が宿っているという言い伝えがあり、宿の名も、その伝承からつけたらしい。

 

ハジメ「成程、初代皇帝は、余程の野心家だったと見受けられる。

傭兵団の身でありながら国を興しただけはあるな。そして、そんな伝承すら求めたわけか。

新たな力のために。」

ガハルド「おう。何が力になるか分からねぇからな。

何せ、腹の底では教会にすら支配欲を向けていたって話だ。」

ハジメ「カカッ、信仰心の薄さは血筋か。」

肩を竦めるガハルド。情報からして、ミレディ達解放者の後の時代に発掘されたという訳か。

 

ミレディ「そのエグゼスね……前の使い手――

バッドが"次の使い手が見つからなかったら、湖の底に沈めてくれ"って言っていたんだ。」

ハジメ「!そうか……偉大な戦士であったのだな。そのバッドという者は。」

ミレディ「うん……

生涯独身でリア充に殺意向けていたけど、解放者の副リーダーだった、凄い奴だったよ。」

ハジメ「……前半の説明のせいで、後半の説明が薄れているのだが。」

さっきまでの悲しそうな雰囲気が台無しだよ……ミレディ、狙ってやったな?いつか化けて出られるぞ?

 

ガハルド「話を戻していいか?

その湖底には小さな教会っぽい廃墟があるらしくてな、そこに石版と一緒にあれが安置されていたんだと。」

ハジメ「ほぅ、ではその石板には大方、神への反逆について書かれていたのではないか?」

ガハルド「鋭いな、その通りだ。石板にはこう書かれていた。

"――魔喰大鎌エグゼス。神に仇なす者へ捧ぐ。"とな。」

神に仇なす者、か……確かに我々に相応しいかもしれんが……それには致命的な弱点もあるな。

 

ハジメ「トレイシー嬢、それは一度触れれば、離れていても強制的に魔力を喰われる代物だ。

高速魔力回復でもない限り、お前では難しいぞ?」

ガハルド「ハッ、流石は最高位の錬成師。見ただけで分かるか。

因みにだが、建国以来、エグゼスの"使い手"と呼べるレベルで使いこなせたのは初代以外にはトレイシーしかいねぇ。」

 

成程、大鎌という武器自体、著しく扱いが難しいというのもあるが、それ以上に、要求される魔力量が、使用していない時でも尋常ではない。

それこそ、ユエ達クラスの魔力を保有しているか、死ぬまで戦い、魔力()を喰らい続けるか、の2択しかあるまい。

ある意味呪いの武器だな……意外にも、バッドのリア充爆発の呪いもあったりしてな。

トレイシーが平気なのは、使い手が女性だから、というのもあるのかもしれん。

 

ハジメ「まぁ、いずれにしろどちらも簡単には受け取れんが……そうだな。

エグゼスは私も改良してみたいのでな。メンテナンスがてら触らせてもらいたい。それではどうかね?」

トレイシー「まぁ!改良していただけるので?」

ハジメ「そうだな……砲撃や大剣に変形したり、可変して携行性が増したり、鎌の範囲内の敵を察知したり、伸縮自在の鎖鎌にしたり、高熱を発して敵を瞬時に焼き尽くしたり……

変成魔法習得できたら、阿修羅スタイルもありか。斬り口が薔薇の花びらみたいに散る機能もいいな。」

すると血筋なのか、ガハルドもトレイシーと一緒に身を乗り出してきた。

 

トレイシー「なんですの!なんですのっ、その素敵なオプション!スタイリッシュ!」

ガハルド「ホントだなオイ!阿修羅スタイルとか絶対カッコいい奴だろ!おい、南雲ハジメ!

トレイシーやるから、その阿修羅何とかのアーティファクト、よこせ!」

ハジメ「何故貴様にまで作ってやらねばならんのだ。抑々変成魔法は未収得だ、だからそれはできん。」

ホント、どうしてここだけは似ているのか。

もしトレイシー嬢が既に皇位を継いでいたら、求婚されかねなかったな……あぶねぇ。

 

ハジメ「まぁ、他にも破格のアーティファクトはあるが……

どうやらお前の父親に命を握られたも同然の様なのでな。このままでは夜も心配で手が付けられない。

果てさて、どうしたものかなぁ?」

ガハルド「オイオイ、そこで俺に責任転嫁かよ。それとトレイシー、それをこっちに向けるのを止めろ。」

トレイシー「いえ、この子ったら魔力を求めているようで……お父様、一回喰われてみません?」

ガハルド「食われてたまるかッ!そんなことしたら、コイツの飛空艇に乗れねぇだろ!」

乗る前提かい。乗せるとすら言ってないのに、勝手に決めやがって……まぁいい。

そんなに搭乗がお望みなら、遠慮なく載せてやろう……敗戦の証として、な。

 

ハジメ「まぁ、それについては今夜のパーティーの後で、詳しく語り合おう(面接しよう)ではないか。」

トレイシー「仰せのままに。」

リリアーナ「ハジメさん!?今何かとんでもないルビがあったのは気のせいですか!?」

ガハルド「おいっ、南雲ハジメ!勝手に人様の人材を引き抜くんじゃねぇよ!」

そんな二人のツッコミを無視して、私は皆を連れて応接室を後にした。さぁて、噓つきの時間の始まりだ!

 


 

ハジメ達が出ていき、雫達と二、三話をしたあと、リリアーナはパーティーの準備の続きをするため部屋に戻り、ヘリーナを筆頭に、帝国側の侍女達を交えてドレスの選別などに精を出す。

 

「まぁ、素敵ですわ、リリアーナ様!」

「本当に……まるで花の妖精のようです」

「きっと、殿下もお喜びになりますわ!」

既に何十着と試着を済ませた果てに選ばれたドレス候補の一つを試着して、姿見の前でくるりと回るリリアーナに、周囲の帝国侍女達がうっとりと頬を染めてお世辞抜きの賛辞を送る。

14歳という少女と女の狭間にある絶妙な魅力が、淡い桃色のドレスと相まって最大限に引き立てられていた。

侍女の一人が言ったように、まさに花の精と表現すべき可憐さだった。

 

ヘリーナ「ふっ、当然でしょう。」

リリアーナ「ヘリーナ、どうして貴女が胸を張っているのですか。」

何故かドヤ顔のヘリーナに小さく笑ってから、リリアーナ自身も納得したようで、一つ頷く。

いくらこれが政略結婚であり、皇太子であるバイアス・D・ヘルシャーが父親に似た極度の女好きで、過去何度か会った時も、まだ10にも届かない年齢のリリアーナを舐めるような嫌らしい視線で見やり、そのくせ実力は半端なく、王国に来た時も下級騎士を"稽古"と称して(いたずら)に嬲るという強さをひけらかす嫌な人間であったとしても、夫になる相手であることに変わりはない。

 

なので、パートナーとして恥をかかせるわけにはいかないし、自分の婚約パーティーでもある以上、リリアーナも最大限に着飾ろうと思っていた。

――ハジメへの思いを押し殺してでも、全ては国の為と割り切るように。

それでも尚、ハジメとの思い出が脳裏をよぎる。それはこの結婚に対する消しきれない不安のせいか。

 

リリアーナとて女の子だ。

ハイリヒ王国の才女と言われ多くの人々から親しまれようと、女の子らしい憧れくらいある。

ピンチの時に、颯爽と現れる王子様を夢見たこともあるし、偶然の出会いに惹かれあって、多くの障害を乗り越えながら結ばれるというラブストーリーを妄想したことだってある。

 

今回だって、きっとハジメが何とかしてくれる、そう思っていた。だが、それは有り得ない未来だ。

リリアーナは聡明であったが故に、幼い頃から自分に課せられた使命とも言うべき在り方を受け入れていた。

だから、心の底では嫌悪感を抱く相手であっても、立派な妻になろうという気持ちは本当であり、今夜のパーティーも立派に皇太子妃として務め上げようと決意していた。

 

と、その時、突然、部屋の外が騒がしくなった。

そして何事かと身構えるリリアーナ達の前でノックもなしに扉が開け放たれ、大柄な男が何の躊躇いも遠慮もなくズカズカと部屋の中に入ってきた。

リリアーナに付いてきた近衛騎士達が焦った表情で制止するが、その男は意に介していないようだ。

 

???「ほぉ、今夜のドレスか……まぁまぁだな。」

リリアーナ「……バイアス様。いきなり淑女の部屋に押し入るというのは感心致しませんわ。」

バイアス「あぁ?俺は、お前の夫だぞ?何、口答えしてんだ?」

リリアーナ「……。」

注意をしたリリアーナに、鬱陶しそうな表情と粗野で横暴な言葉で返したのはリリアーナの婚約相手であるバイアス・D・ヘルシャーその人である。

 

外見は父親であるガハルドに似ている。年齢は26歳。相も変わらず度の過ぎた横暴ぶりだ。

数年前と変わらない、粗野で横暴な雰囲気を纏い、上から下までリリアーナを舐めるように見る。

リリアーナの背筋に悪寒が走った。

これなら10人中10人が目の前の男よりも、誰にでも優しく接するハジメの方を選ぶだろう。

リリアーナだってそうしたいくらいだった。

 

バイアス「おい、お前ら全員出ていけ。」

バイアスは、突然、ニヤーと口元を歪めると侍女や近衛騎士達にそう命令する。

戸惑う彼女達に恫喝するように再度命令すれば、侍女達は慌てて部屋を出ていった。

しかし、近衛騎士達は当然渋り、ヘリーナなど露骨に不審と憤りを瞳に浮かべている。

それを見てバイアスの目が剣呑に細められたことに気がついたリリアーナは、何をするかわからないと慌てて近衛騎士達を下がらせた。

 

ヘリーナ「何かありましたら、必ず大声をお上げください。

ロード(陛下)も直ぐに駆け付ける事でしょう。」

去り際にヘリーナが小さな声で耳打ちする。リリアーナも小さく頷いた。

最後まで心配そうにしながら全員が部屋を出て扉が閉まる。

 

バイアス「ふん、飼い犬の躾くらい、しっかりやっておけ。」

リリアーナ「……飼い犬ではありません。大切な臣下ですわ。」

バイアス「……相変わらず反抗的だな?

クク、まだ10にも届かないガキの分際で、いっちょ前に俺を睨んだだけのことはある。

あの時からな、いつか俺のものにしてやろうと思っていたんだ。」

そういうと、バイアスは、顔を強ばらせつつも真っ直ぐに自分を見るリリアーナに心底楽しげで嫌らしい笑みを浮かべると、いきなり彼女の胸を鷲掴みにした。

 

リリアーナ「っ!?いやぁ!痛っ!」

バイアス「それなりに育ってんな。まだまだ足りねぇが、それなりに美味そうだ。」

リリアーナ「や、やめっ!」

乱暴にされてリリアーナの表情が苦痛に歪む。

その表情を見て、ますます興奮したように嗤うバイアスは、そのままリリアーナを床に押し倒した。

リリアーナが悲鳴を上げるが、外の近衛騎士達は気が付いていないようだ。

 

バイアス「いくらでも泣き叫んでいいぞ?

この部屋は特殊な仕掛けがしてあるから、外には一切、音が漏れない。

まぁ、仮に飼い犬共が入ってきても、皇太子である俺に何が出来るわけでもないからな。

何なら、処女を散らすところ、奴等に見てもらうか?くっ、はははっ!」

リリアーナ「どうして……こんな……。」

リリアーナが、これからされる事に顔を青ざめさせながらも、気丈にバイアスを睨む。

 

バイアス「その眼だ。反抗的なその眼を、苦痛に、絶望に、快楽に染め上げてやりたいのさ。

俺はな、自分に盾突く奴を嬲って屈服させるのが何より好きなんだ。

必死に足掻いていた奴等が、結局何もできなかったと頭を垂れて跪く姿を見ること以上に気持ちのいいことなどない。

この快感を一度でも味わえば、もう病みつきだ。リリアーナ。

初めて会ったとき、品定めする俺を気丈に睨み返してきた時から、いつか滅茶苦茶にしてやりたいと思っていたんだ。」

そう語るバイアスの表情には、言葉通りの醜さが滲み出ていた。

 

リリアーナ「あなたという人はっ……!」

バイアス「なぁ、リリアーナ。

結婚どころか、婚約パーティーの前に純潔を散らしたお前は、どんな顔でパーティーに出るんだ?

股の痛みに耐えながら、どんな表情で奴等の前に立つんだ?あぁ、楽しみで仕方がねぇよ。

例の婚約者だった、魔王とか言う餓鬼にも見せてやりたいなぁ?」

 

たとえ、嫌悪感さえ抱く相手だとしても、妻として支え諌めていけば、いつかきっと立派な皇帝になってくれる、いや、自分がそうしてみせると決意したリリアーナの心に早くも亀裂が入る。

リリアーナは悟ったのだ。

目の前の、今にもこぼれ落ちそうな涙を必死に堪えるリリアーナを見てニヤニヤしている男は、ある意味、正しく"帝国皇太子"なのだと。

 

バイアスに恥をかかすまいと選んだドレスが、彼の手により引きちぎられる。

シミ一つない玉の肌が晒され、リリアーナは羞恥で顔を真っ赤にした。

両手を頭の上で押さえつけられ、足の間にも膝を入れられて隠すことも出来ない。

 

バイアスは、ニヤついたまま、キスをするつもりなのか、ゆっくりと顔をリリアーナに近づけていった。

まるで、リリアーナの恐怖心でも煽るかのように目は見開かれたままだ。

片手で顎を掴まれているので顔を逸らすことも出来ないリリアーナは、恐怖と羞恥で遂にホロリと流れた自身の涙にすら気づかずに、ふと思った。

 

望んだ通りの結婚なんて有り得ないと覚悟はしていたけれど、こんなのはあんまりだと。

本当は、好きな人に身も心も捧げて幸せになりたかったと。

それは、王女という鎧で覆った心から僅かに漏れ出た唯の女の子としての気持ち。

だからこそ、リリアーナは心の中で叫んだ

 

――助けて、ハジメさん……!

 

と。

すると、その時。

 

ギュリリィィィ!!!

バイアス「!?うがぁっ!?」

突如、リリアーナの着替えの中から、高速で何かが飛び出したかと思えば、激しい音を上げてバイアスの股間へと体当たりを喰らわせた。

当然、バイアスはリリアーナにキスすることすら出来ずに、股間を抑えて倒れこもうとする。

 

ギュリギュリィィィ!!!

バイアス「ぐぶぉっ!?」

が、それすら許さんと言わんばかりに、いつの間にか高速移動したその何かは、バイアスの顎をかちあげ、後方へとぶっ飛ばした。

そうして、バイアスの上を通り過ぎる途中、その何かが何本かの針を撃ち出し、その首元へと突き刺した。

 

バイアス「いつっ!なんだ?今、くびにぃ……なんら?世界が、まわぁってぇーー。」

リリアーナが、呆然とその光景を見ていると、バイアスは、突然、目を瞬かせながら呂律が回らない様子になり、直後、そのままガクッと意識を失い、その場に倒れ込んだ。

 

リリアーナ「えっ?えっ?」

混乱するリリアーナの前に、その何かは姿を現した。その姿に、リリアーナは見覚えがあった。

それは、ハジメがガハルドとの会談のため、応接室に向かう途中のことであった。

 

ハジメ「そう言えば、リリィ。これ、お守り代わりに肌身離さず持っておいて。

何か、嫌な予感がするから。」

そう言って渡されたのは、ミニカーのようなものだった。

勿論、これもハジメオリジナルのアーティファクトである。

 

ミニカー型小型端末"シフトカー"。

リリアーナの持っているシフトカーは、ハジメが護衛用にタイヤカキマゼールで作成したもので、"ファンキースパイク・マッドドクター・ランブルダンプ・ディメンションキャブ・ミッドナイトシャドー・バーニングソーラー・スパーナF03"といった7つのシフトカーの性能を搭載した、云わばリリアーナ専用護衛マシンである。

因みに名前は、"ラムレイ666"。嵐すら切り裂く王の刃として、リリアーナを守護する、らしい。

 

そして、その性能は正に折り紙付き。

流石に使徒レベルとまではいかないが、アーティファクト武装の帝国兵であろうと難なくぶっ飛ばせる位の実力はある。

また、分身やゲート、眼眩ましに加えて、特殊な効果を持った針を飛ばせるといった、護衛に特化したシフトカーであることが見て取れる。

 

現に、バイアスに打ち込んだのは、"睡眠針・勃起不全針・治癒針・麻痺針"の4つであり、殺害にまでは至っていない。

それにリリアーナは嫌がっていたのに、バイアスは構わず襲い掛かっていたのだ。

なので、正当防衛である。そう押し通せる位の状況に出来てしまう程の優秀さだ。

 

そのラムレイ666は、「皇子(笑)、マジざまぁ!」とでも言うかのようにタイヤ音を上げると、そのままリリアーナの着替えの中へと戻っていった。

リリアーナは、ハッと我を取り戻すとバイアスから距離をとった。

そして、破れたドレスの前を寄せて肌を隠しながら女の子をしたまま、ラムレイの通った場所を見つめた。

 

すると、視線に気づいたラムレイは、赤と黄金の発光を上げた。

それはまるで、製作者の意思を反映しているかのようなサインでもあった。

リリアーナは、ようやく事態を把握して、微笑みを零しながらポツリと呟く。

 

リリアーナ「ありがとう……ハジメさん。」

リリアーナがバイアスの婚約者である以上、今、助けられたところで、それはその場凌ぎでしかないと分かっている。

だが、それでも、今この時、救いを求める呟きに応えてくれたことが、どうしようもなく嬉しかった。

胸元で破れた服を抑えてギュッと握られたリリアーナの両手は、あるいは、他の何かを握り締めているかのようだった。

 


 

応接室を出てお付のメイドに部屋へ案内された私達は、邪魔なメイド達を追い返し、ソファーに座り込んでいた。

そして現在、先程まで腕を組んでいた私がその姿勢を崩したのに気がついたユエが、声をかけた。

 

ユエ「……どう?ハジメ。」

ハジメ「……あぁ、罠の方はもう十分だ。リリィの方もトラブルはあったが……何とか無事だ。

さて、これで後は攻め入るのみか。ククク、楽しくなってきたなぁ。」

そう言って私は、無邪気で悪戯好きな子供のような笑みを浮かべた。

しかし、やはりトレイシー以外は野蛮で無礼極まりないな。

ここらでいっそのこと、恐怖政治でも行ってみるか?そんな物騒なことを思う私であった。

 

ハジメ「さて、気持ちを切り替えるとするか。皆、トレイシーから聞いたと思うけど……

全員真っ赤なドレスだね。何か、印でもつけておこうか?厄介貴族除け用に。」

香織「それいいかも!ハジメ君の女、って感じがしていいし!」

レミア「あらあら、大胆ですね。あ・な・た♡」

吞気かと思うが、実際既に打てるだけの手は打ったしなぁ……。後は時間を待てばいいだけだし。

 

ティオ「ふむ、今夜がパーティーというのは幸いじゃの。人が固まれば、色々動きやすいのじゃ。」

シア「最終的にはパーティー会場に集まることになりそうですね。……上手くいくでしょうか?」

シアが、少し不安そうな表情になる。

何せ、これから自分の家族の未来が決まる一世一代の大勝負が始まるのだ。

緊張しない方がおかしいだろう。

 

ミュウ「大丈夫なの!だって、シアお姉ちゃんの家族で、パパの部下なの!」

そんなシアを励ますように、ミュウが笑顔で答える。

それに同意するかのように、シアのウサミミを私がモフり、ユエが頬をムニり、ティオが髪をナデナデして、香織が手をギュッと握る。

 

微笑む仲間に、シアは込み上げるものを感じているようだった。しかし、涙は流さない。

たとえ、それが嬉し涙でも、まだまだ流すのは早いからだ。

代わりに、いつものようにニッコリと輝く笑みを浮かべた。自分は一人ではない。家族もいる。

恵まれすぎなくらいだと、その思いを隠さずあらわにした笑顔。それでこそ、私達が好むシアの魅力だ。

 

浩介『こちら、アビス。作戦予定配置についた。いつでもオーケーだ。どうぞ。』

ハジメ『!漸くか。ガハルドが本物を取り出したのは確かか?』

浩介『あぁ、序でに偽物もダミーにすり替えてきた。後は本物をどさくさに紛れて奪うだけだ。』

ハジメ『Good!流石は我が友!引き続き頼むぞ、この作戦の鍵はお前にかかっている。』

浩介『フッ、任されよ!我が雄姿、ラナインフェリナ殿にも届けてみせよう!』

ハジメ『……青春してんな~。まぁいい、ここで最大の戦果を挙げてみせろ、深淵卿(浩介)!』

浩介『Yes,My Load!浩介・E・アビスゲート、推して参る!』

 

さて、こちらもやっと手札が揃った。ガハルド、貴様は幾つ手札にカードを持っている?

私は既に債を投げた。もう誰も、このゲームからは降りられないぞ?

そうして、全ての準備とシアの笑顔を確認した私は、仲間達に力強く告げた。

 

ハジメ「さぁ、帝国ゲームを始めようか。手始めにまず、主役達のために舞台を整えるとするか。」

その言葉に、皆同じような笑みを浮かべて力強く頷いた。

それを確認し、私は皆を連れて運命のステージ、帝国主催パーティーの会場へと向かった。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

戦闘狂皇女トレイシーさん、まさかの魔王に仕えます宣言。
まぁ、本作のハジメさんは面倒事諸共吹き飛ばすつもりで威圧を発動しているので、そりゃあ強さの格は段違いでしょう。
エグゼスの初代持ち主については、零書籍版を既読の方ならきっとわかる筈。
彼がどれだけ、婚活に真剣に向き合っていたのかが。

因みに、エグゼスの改良案につきましては、原作宜しく某武器マニアの薔薇娘に加え、恋愛クソザコ分隊長、閃光の友、おっぱい魔人エクソシスト、自称十刃最強、etc……ですかね?
そしてて、リリアーナ姫、未遂で終わったものの怖い思いをしてしまいましたね……。
その護衛を今回買って出たのは、オリジナルシフトカー"ラムレイ666"!
正直もうちょい機能を乗せたかったのですが、あんまり強化し過ぎると今後の製作アーティファクトにプレッシャーがかかるので断念しました。

さて、次回からとうとうハウリア達が大暴れいたします!いざ、首狩りだぁ!
その裏で、秘密の通信をとるハジメと浩介くん。アビスゲートはここからが本領じゃあー!
次回もお楽しみに!

次回予告

帝都の象徴"帝城"にて開かれる、リリアーナと第一皇子の婚約の饗宴。
煌びやかな舞台で、ハジメ達は他を圧倒する程の光景を見せつける。
その裏で、次々と刈られていく帝国兵。蠢くは、大量のウサミミ達。
掲げられる杯を合図に、ハウリア達の反撃が幕を開ける!

次回「謀略と殺戮のパーティー」
目撃せよ、歴史の始まり!

ハジメ「ショータイムで行くぜ!」

もしも、ハジメさんが召喚するとしたら、どのサーヴァント?

  • 勿論我妻、モルガン陛下
  • 本家後輩、マシュ
  • 正義の味方同士、エミヤ
  • 魔王と賢王、ギルガメッシュ
  • 勝ち確の死神、山の翁
  • 影の国の槍姫、スカサハ
  • 最強の母、ティアマト
  • 建築と錬成師、トラロック
  • 武器庫の獣、コヤンスカヤ
  • どう見ても嫌な予感、LA
  • ヒーロータイム、シャルル
  • かつての推し、魔人さん
  • 時空と戦国の魔王ズ、ノッブ
  • 出来る良妻賢母、キャス狐
  • 恋する剣豪、武蔵ちゃん
  • 騎士道か覇道か、アーサー
  • 中国産AI皇帝、即ち朕
  • 恋愛クソザコ、カーマちゃん
  • え⁉未実装⁉オルガマリー
  • その他(活動報告4にコメントを)
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