ありふれない錬成師は最高最善の魔王の力で世界最強を超越する 作:天元突破クローズエボルハザード
「神を騙る悪が蔓延る異世界"トータス"にて、最高最善の魔王、南雲ハジメは、自らの道を阻むガハルドをぶちのめすため、仲間達と共に帝城へと乗り込んだ。
そこへ第一皇女トレイシーが乱入、ハジメへの忠誠を誓った。
一方、婚約準備を進めていたリリアーナは、傍若無人な第一皇子に襲われかけるも、それを警戒していたハジメのアーティファクトで、何とか事なきを得たのであった。
そして日が落ちた今、ハウリア達の逆襲の狼煙が上がったのであった!」
リリアーナ
「あの時は本当に命の危機を感じました……ハジメさんがいてくれなかったらどうなっていたことやら。」
ハジメ
「考えたくもないよそんなこと。第一、とっくにくたばった性犯罪者を今更思い浮かべてもねぇ……。」
リリアーナ
「よ、容赦がないんですね……でもまぁ、ハジメさんが助けに来てくれたのは本当に心強かったです。
ありがとうございます。」
ハジメ
「これくらい、未来の王妃の為なら当然のことさ。
それに、リリィにはやっぱり笑顔が似合っているから。」
リリアーナ
「ふふっ、そう言うことにしておきます♪それでは、第7章第9話」
ハジメ・リリアーナ
「「それでは、どうぞ!」」
日がすっかり落ち、辺りが暗闇で覆われた帝城の一角。
地下牢がある建物の外周を2人の帝国兵が、警備のため決められたルートを巡回していた。
その手には魔法的な火が燃え盛る松明のようなものが持たれており、不埒な侵入者の味方をする夜闇を懸命に払っている。
帝国兵A「はぁ、今頃、お偉方はパーティーか……美味いもん食ってんだろうなぁ……。」
帝国兵B「おい、無駄口叩くなよ。バレたら連帯責任なんだぞ。」
1人の兵士が遠くに見える明かりを眺めながら溜息混じりに愚痴をこぼした。
相方の兵士が顔をしかめながら注意するが、その表情の原因は言葉通りのものではないようだ。
どちらかといえば、"暑い時に暑いと言うと余計に暑い気がするから言うな"と言ううんざり気味の雰囲気が漂っている。
内心では、同じく愚痴を吐いていたらしい。
帝国兵A「だけどさ、お前も早く出世して、ああいうのに出たいと思うだろ?」
帝国兵B「……そりゃあな。あそこに出られるくらいなら、金も女もまず困らねぇしな……。」
帝国兵A「だよなぁ~。パーティーで散々飲み食いした後は、お嬢様方と朝までしっぽりだろ?天国じゃん。
あ~、こんなとこで意味のねぇ巡回なんかしてないで女抱きてぇ~。兎人族の女がいいなぁ~。」
帝国兵B「お前、兎人族の女、好きだなぁ。
亜人族の女は皆いい体してっけど、お前、娼館行っても兎人族ばっかだもんな。」
帝国兵A「そりゃあ、あいつらが1番いたぶりがいあるからな。いい声で泣くんだよ。」
帝国兵B「趣味わりぃな……。」
帝国兵A「何言ってんだよ。兎人族って、ほら、イジメてくださいオーラが出てるだろ?
俺はそれを叶えてやってんの。お前だって、何人も使い潰してんだろ。」
帝国兵B「しょうがねぇだろ?いい声で泣くんだから。」
2人の巡回兵は、顔を見合わせると何が面白いのか下品な笑い声を上げた。
帝国において、亜人は所詮道具と変わらない。ストレスや性欲を発散するための、いくらでも替えの利く道具なのだ。
故に、この2人が特別、嗜虐的な性格なのではなく、亜人を辱め弄ぶのは帝国兵全体に蔓延している常識と言ってよかった。
と、その時、片割れの兵士が建物の影に何かを見たのか警戒したような表情になって声を上げた。
帝国兵B「ん?……おい、今、何か……」
帝国兵A「あ?どうした?」
歩み寄りながら松明を前に突き出し、建物の影を照らしだそうとする兵士。
疑問の声を上げながらもう1人も追随する。
先行していた兵士は「誰かいるのか?」と
しかし、その先に人影はなく「見間違いだったか……」と呟きながら安堵の吐息を漏らす。
そうして、苦笑いしながら相棒を振り返った兵士だったが……
帝国兵B「悪い、見間違い……?おい、マウル?どこだ?マウル?」
そこに相棒の姿はなく、足元に彼が持っていたはずの松明だけが残されていた。
どこに行ったんだと、キョロキョロと辺りを見渡す兵士だったが、周囲に人影はない。
彼の背筋に冷たいものが流れる。
湧き上がる恐怖心を押し殺して、兵士は、咄嗟に落ちている松明を拾いながら、相棒に少し緊張感の宿った呼び声をかけようとして……
帝国兵B「おい、マウル。悪ふざけならッんぐっ!?」
その瞬間、誰もいなかったはずの建物の隙間からスッと2本の腕が音もなく伸びた。
闇の中から直接生えてきたかのような腕の1本には光を吸収する艶消しの黒色ナイフが握られており、片手が兵士の口もと塞ぐと同時に、1瞬で延髄に深く突き立てられる。
一瞬、ビクンと痙攣したあとグッタリと力を抜いた兵士は、そのまま2本の腕に引きずられて闇の中へと消えていった。
そして、いつの間にか、彼が拾おうとしていた松明も消え去り、後には何も残らず、ただ生温い夜風だけがゆるゆると吹き抜ける。
闇の中、風に紛れそうなほど小さな囁き声がする。
???「
???『アルファ、こちら
???「
そんな囁きのあと、全身黒ずくめの衣装に身を包んだ複数の人影が足音1つ立てず移動を開始する。
顔面まで黒い布できっちり隠しているが、目の部分だけは視界確保のために空いており、そこから鋭い眼光が覗いている。
背中には小太刀が2本括りつけられている。
日本人がその姿を見たのなら間違いなく「あっ、忍者!」と言いそうな格好だ。
だが、個人の特定は出来なくとも、残念なことにその正体までは全く忍べていなかった。
なぜなら、覆面の頭上からはニョッキリとウサミミが生えていたからだ。
どこからどう見ても兎人族であり、ハウリア族であった。
彼等は、闇に紛れて建物の影に身を潜める。
そこからそっと顔を覗かせれば、報告通り4人の歩哨が2組に分かれて互いに目視できる位置に佇んでいた。
先程通信していたハウリア族の1人が背後に控える3人にハンドシグナルを送る。
それに頷いた3人はスッと後ろに下がると、まるで溶け込むように夜の闇へと姿を消した。
待つこと数秒。指示した場所から、歩哨の視線が逸れた隙にチカッ!と光が瞬く。
同じく、歩哨の視界に入らないように考慮して、ハウリアの1人がライターサイズの容器の蓋を一瞬だけ開けた。
これは、中に緑光石が仕込まれた簡易の懐中電灯のようなものだ。
合図を送ったハウリアは背後の2人を振り返るとハンドシグナルで指示を出しながら動き出した。
2組の歩哨が互いの姿を視界の外に置いた瞬間、気配を極限まで薄くして一気に接近し、1人が兵士の口と鼻を片手で覆いながら延髄を一突き。
帝国兵「――ッ!?」
もう1人も同じく、片手で拘束しながら別の兵士の腎臓を突き刺し組み倒す。
最後の1人は、歩哨が手放した松明を落ちる前にキャッチして火を消し、その他の痕跡が残っていないか確認する。
そして、一気に建物の影に引きずっていった。
しかし、流石に無音とはいかずもう1組の歩哨が「ん?」と視線を向けた。
その視線の先に先程までいた仲間の姿はない。松明の光もなく暗闇が存在するだけだ。
「あいつらどこに行ったんだ?」と、訝しみながら目を凝らす歩哨は、闇の中で微かに動く人影を捉えた。
何か大きなものを引き摺る姿だ。ぞわりっと危機感が背筋を駆け抜ける。
「何かヤバイ!」と、歩哨は、咄嗟に首元に下げた警笛を吹き鳴らそうと手を伸ばすが……
次の瞬間、その歩哨の首にナイフが突き立てられた。
歩哨は悲鳴を上げることも苦痛を感じる暇もなく、その意識を永遠の闇に沈めることになった。
警笛を握った歩哨の隣では、やはり相方の歩哨も同じようにナイフを突き立てられて絶命している。
同時に、松明の火が消されて建物の影に引き摺られていった。
現在、帝城の至るところで同じような殺戮が行われていた。
既に、複数の詰所に控えていた多くの兵士達が胴体と永遠のお別れを済ました後であり、兵舎で就寝中の兵士達は樹海製の眠り薬によって普段とは比べ物にならないほど深い眠りにつかされていた。
警報が鳴ったとしても、朝までぐっすり眠り、普段の疲れを存分に癒すことだろう。
今宵の空に浮かぶのは繊月。
別名"2日月"と呼ばれる新月の翌日に昇る見えるか見えないかくらいの極細の月だ。
それはまるで、悪魔が浮かべた笑みのよう。
実力至上主義を掲げた者達が最弱と罵った相手に蹂躙されるという、この月下の喜劇を嘲笑っているかのようだった。
『
『
『
『
帝国内のパーティー会場は、流石はと言うべき絢爛豪華さだった。
立食形式のパーティーで、純白のテーブルクロスが敷かれたテーブルの上には何百種類もの趣向を凝らした料理やスイーツが並べられている。
装飾や調度品も中々のものだ……それも幾つ台無しになることやら。
そんな煌びやかなパーティー会場で、俺はオーマジオウのまま、話しかけてくる帝国貴族をやり過ごしつつ、次々と入ってくるハウリア達の報告を聞いていた。
参加している者は全員、帝国のお偉方だ。
ただ、煌びやかな衣装に身を包んでいても文官と武官ではその雰囲気からして丸分かりであり、実力至上主義という国柄からか偉ぶった武官と、どこか遠慮がちな文官達という構図が浮き彫りになっていて武官の方が立場は上のようだと実感できた。
そんな武官達から、俺達は今積極的に声を掛けられている。
何せ、全員が大迷宮攻略者で神代魔法の使い手だ。
俺とユエに至っては、【オルクス大迷宮】の完全制覇を成したこともあり、"強さ"が基準の彼等からすれば何とも興味をそそる存在なのだろう。
勿論、あわよくば個人的な繋がりを持ちたいという下心もたっぷりあるようだが……。
尤も、別の意味の不埒者もいるようだ。
なので、そう言った輩にはご退場願うという意味での"威圧"を喰らわせる。奴等の目的は言わずもがな。
パーティーが始まってから片時も俺達の傍を離れない美貌の女性陣にも強い興味があるようだった。
俺達に話しかけながらもチラチラと背後に控えるユエ達に視線が向いているのでバレバレである。
まぁ、それも無理のないことだろう。
リリィの歓迎と婚約祝いを兼ねたパーティーにおいて、ユエ達の存在は、花を添えるどころの騒ぎではなく、むしろ自分達こそこの会場の主役だと言わんばかりの存在感を放っていた。
シア「ほぇ~~。世の中には、こんな場所があるんですねぇ。樹海では考えられません。」
会場の豪華さにぽか~んとしっぱなしのシアは、ワインレッド色のミニスカートドレス姿だ。
そのスラリと長く引き締まった美脚を惜しげもなく晒している。
しかし、決して下品さはなく、ふんわりと広がったスカートと、珍しく楚々としたシアの雰囲気が彼女の可愛らしさをこれでもかと引き立てていた。
普段は真っ直ぐ下ろしている美しい髪を根元で纏めて前に垂らしている姿も、彼女に上品さと可愛らしさを与えている要因だろう。
ミュウ「みゅ!とってもキラキラなの!」
レミア「あらあら、ミュウったら。初めてのパーティーにはしゃいじゃって…。」
メイル「フフッ、ミュウちゃんもこういうところに来るのは初めてなんだし、良いんじゃないかしら?」
初めてのパーティーに興奮しているミュウは、シアと同じくミニスカート丈のドレスで、リボンやフリルがあしらわれていて全体的にふんわり可愛いデザインであり、活発で明るい女の子といった印象を与える。
そしてそんなミュウを微笑ましそうに見るレミアとメイルは、マーメイドラインのドレスだ。
スタイルの良さが浮き彫りになっているせいか、丈はロングだが薄いレース状なので奥のむっちりした美脚が見えており、ほんわかした雰囲気とはギャップのある色気が滲み出ている。
4人とも並ぶと、2組の姉妹みたいだ。
ティオ「料理も酒も一流じゃのぅ。今のうちに堪能しておかねばもったいない。」
ミレディ「もう、ティオ姉ったら!料理もお酒も逃げないから、しっかり味わおうよ!」
その横で、上品にワインを傾けるティオは、普段の黒い和装モドキと同じような黒いロングドレス姿だ。
しかし、体のラインが出るようなタイプのドレスなので、凹凸の激しいボディラインが丸分かりであり、更に、背中と胸元が大きく開けているので、彼女の見事としか言いようのない美しい双丘が今にもこぼれ落ちそうなほどあらわになっている。
会場の男性陣の視線が、動く度にいちいちプルンッ!と震える凶器に吸い寄せられ、パートナーの女性に嫌味を言われる姿が続出していた。
とはいえ、ベルトや装飾で締められた全体からは"できる大人の女"というイメージを想起させる。
美しいというより格好いいと表現したくなるようなドレスだ。
それに賛同するミレディは、以前カジノに行った際にお披露目した衣装に似ているものを着た、らしい。
いつもの、軽薄な雰囲気はどこに行ったのか、スッと背筋の伸びた美しい姿勢だ。
両手は普段のように振り回されることもなく、上品に体の前に軽く添えられている。
足音が鳴ることもなく、しずしずと歩く姿は気品に満ちている。
流石は元帝国令嬢、マナーは叩き込まれているという訳か。
トレードマークにもなっているポニーテールは下ろされ、豊かで細やかな金糸の髪がふわふわと舞う光景は幻想的ですらある。
ドレスはシンプルでありながら、裾のフリルや腰の後ろにあるワンポイントのリボンが何とも可愛らしい。
耳には真珠の様な真白の宝石が付いたイヤリング。首元には瞳と同じ蒼穹の宝石が付いたネックレス。
どちらも小さなものだが、それが逆に彼女の輝かんばかりの魅力を引き立てていた、と、オスカーがコメントしていた。
まぁ、確かにいつもと違って長いまつげを震わせながら少し目を伏せ、優美な淡い微笑みを浮かべているその姿は、帝国淑女をぶっちぎりで超えるお姫様レベルだ。
ベルさんの教育の賜物、らしい。成程、流石は初代解放者リーダー。
ファッションセンスは段違い、という訳か。
香織「うぅ。私達、すっごく注目されてないかな?」
恵理「無理もないかも。張り切っておめかししたのが仇になっちゃったかな?」
雫「レミアさんのファッションセンスが良いのもあるわね。あの人、楽しそうだったし。」
恥ずかしそうに頬を染める香織は、肩口が完全に露出したタイプのスレンダーラインのドレスを着ている。
ティオほどの激しいボディラインではないが、そのバランスはまさに神の造形。
チャイナドレスのように深いスリットが入った裾からふとした拍子にチラリと覗く美脚や、アップに纏められた銀髪の輝き、色気を感じさせる項は思わず視線を攫われてしまう。
その意見に苦笑している恵理は、アシンメトリーのデザインにフリルが施されたロングドレスを着ており、レミアのファッションセンスの良さに、感嘆する雫はワンピースの上に一枚羽織った少し落ち着きのあるデザインだ。
ユエ「……ん。」
そして、ユエは肩周りと正面のスカート部分が大きく露出しつつも小悪魔的な可愛らしさのあるドレスを纏っていた。
光沢のある生地で、肩口が露出しており、裾はフリルが何段も重ねられ大きく広がっている。
髪はポニーテールにしていて上品な白い花を模した髪飾りで纏められていた。
露出は1番少ないが、白く艶かしい首筋や、やけに目を引く赤いルージュの引かれた唇、そして僅かに潤んで熱を孕んだ瞳がどうしようもなく男の劣情を誘った。
いつもの、外見の幼さと纏う妖艶な雰囲気のギャップからくるユエの魅力が何十倍にも引き立てられている。
部屋で、ユエ達の着替えが終わるまで待っていた我々男性陣も、彼女達が入ってきた瞬間、その溢れ出る魅力にやられて完全に硬直したのも仕方のないことだ。
それに何より、皆ドレスにワンポイントの紋章が入っている。
雫には私と光輝を表す"剣と王冠"、恵理には"トシを表す予言書と杖"、鈴には"龍太郎を表すダンベルと鉢巻"、ミレディには"オスカー印の眼鏡"、メイルには"
とにかく、「これ誰の婚約パーティーか理解してる?ねぇ?してる?」とツッコミを入れられそうなくらいユエ達は魅力的だった。
ちなみに、鈴も十分に着飾っていて、帝国の令嬢方に負けないくらいに華やかだったのだが……
流石に、ユエ達の原動力には数歩及ばず、どうしてもユエ達と比べると大人しい印象だったので、余り目立ってはいなかった。
そして肝心の男性陣はというと、光輝は帝国の貴族令状に群がられて姿すら見えていない。
龍太郎は花より団子、「うんめぇ!」と連呼しながら料理を貪っていて、それを諫めていた鈴も「あ、このケーキ美味し。」と割と貪っていた。
似たもの同士か、とツッコミを入れたくなってしまった。案外お似合いになりそうかもしれんな。
因みにトシは、恵理のガードに回っている。まぁ、そりゃあ過保護気味にもなるわな。
帝国貴族A「それにしても、南雲殿のお連れは美しい方ばかりですな。」
帝国貴族B「全くだ。このあとのダンスでは是非1曲お相手願いたいものだ。」
何をほざいておるのだこの豚共、誰一人貴様等に触れさせるとでも思っていたのか?
『
『
そんな帝国貴族達の半ば本気の言葉を、耳から入る念話の報告を聞きつつ笑顔でかわしていると、会場の入口がにわかに騒がしくなった。
どうやら、主役であるリリィと
文官風の男が大声で風情たっぷりに2人の登場を伝えた。
ザワッ……
大仰に開けられた扉から現れたリリィのドレス姿に、会場の人々が困惑と驚きの混じった声を上げる。
それは、リリィが全ての光を吸い込んでしまいそうな漆黒のドレスを着ていたからだ。
本来なら、リリィの容姿や婚約パーティーという趣旨を考えれば、もっと明るい色のドレスが相応しい。
その如何にも「義務としてここにいます」と言わんばかりの澄まし顔と合わせて、漆黒のドレスはリリィが張った防壁のように見えた。
パートナーの
まぁ、あんなことをしでかしたのだ。当然の対応であろう。
因みに、リリィが入場次第、睨みの一つでもくれてやろうと意気込んでいたであろう愛人共も、出鼻をへし折られたように呆然としていた。
会場は取り敢えず拍手で迎え入れたものの、何とも微妙な雰囲気だ。
そのまま、2人は壇上に上がる。
司会の男は、困惑を残したままパーティーを進行させた。
リリィと
リリィ達の挨拶回りとダンスタイムだ。微妙な雰囲気を払拭しようと流麗な音楽が会場に響き渡る。
会場の中央では、それぞれ会場の花を連れ出した男達が思い思いに踊り始めた。
リリィと
そうこうしている内に1曲終わってしまい、リリィはさっさと挨拶回りに進んでしまった。
イラついた表情で、しかし、挨拶回りは必要なので追随する
微妙に股を気にしている様子だ。
実は、ついさっき目覚めたばかりの挙句、何があったのかリリィを問い詰める間もなくパーティーに駆り出されたとは誰も知らない……私以外は。
『
『
香織「何て言うか、リリィらしくないね。いつもなら、内心を悟らせるような態度は取らないのに……。」
香織が、特に笑顔もなく淡々と挨拶を交わすリリィを見てポツリと呟く。それもそうだろう。
未遂とはいえ、襲われかけたのだ。不満の一つ素直に表しても文句は言われんだろう。
それをガハルドも理解しているのか、笑いを堪えているのだろう。
てっきり、息子に恥をかかせたとか難癖付けて来るかと思ったが……そこはラインをわきまえていたか。
まぁ、だからといって許すつもりはないがな。
ハジメ「さて、我々も踊るとするか。そこのお嬢さん方、
ユエ・シア・ティオ・レミア・香織「「「「「喜んで!」」」」」
雫「…まぁ、お願いしておこうかしら?」
ハジメ「オスカー、やるかい?分身一体位乗り移られても大丈夫だぜ?」
オスカー『では、遠慮なく。メイルは「ミュウちゃんのガードに回るわ!」……だそうだ。』
ダンスが始まってから散々ユエ達を誘おうと男連中がやって来たのだが、ユエ達は私以外の男と踊るつもりは皆無だ。
なので遠慮なく、"威圧"で追い払っておいた。
因みに、トシは既に恵理と踊っており、光輝は、半ば強引に淑女達に連れ出されて慣れないダンスを必死に踊り、龍太郎はひたすら食っている。
鈴は、どこぞのダンディーなおっさんと「ほぇ~。」と流されるままに踊っている。
そして私は当然の如く、分身能力で仲間達をガード。
ミレディは久しぶりにオスカーとダンスを踊っているせいか、とても嬉しそうだ。
メイルは……コメントしないでおく。
元々、王族としてダンスの嗜みがあるユエのリードに合わせて、軽やかに踊る私。
他の分身体も、パートナーに合わせて、流れるように踊る。
楽しげで、幸せそうな表情の美女・美少女たちを侍らせて踊るその姿は、正にハーレム。
それはまるで、星空に桜の花びらがくるくる待っているようであった。
どこかギスギスしていた空気に楽士達も場を盛り上げることだけに必死になっていたのだが、私達の雰囲気に気分が乗ってきたようで楽しげに演奏し始める。
今や、会場の主役は我々となり、誰もが幸せそうにくるくると踊る私達に注目していた。
それを微笑みながら見つめているリリィにも気づいたので、密かに分身体をもう一体出そうとする。
するとユエが視線で、「行ってあげて。」と呼びかけたので、ユエにもう一体分身体を出して、代わりに踊ってもらうことにした。
やがて演奏が終わり、分身達は一斉に仮面を解除、それぞれのパートナー(雫以外)と微笑み合いながら軽くキスを交わす。
その姿に帝国貴族達から盛大な拍手が贈られる。
彼等の瞳には、ただ純粋に称賛の気持ちがあらわれていた。
帝国貴族の令嬢達も「ほぅ」と熱い溜息をついてうっとりとしている。
贈られる拍手に、全員優雅に礼を返す。そして私は、
ハジメ「リリアーナ姫、一曲いかがでしょうか?」
リリアーナ「!えぇ、勿論。喜んで踊らせていただきます。」
そろそろ挨拶回りも大体終わったようなので、リリィに声をかけ、手を差し出した。
それに嬉しそうに返事をし、リリィはその手を取った。
折角注目を集めているので、ダンスホールの中央に導いた。
先程の、ユエ達とのダンスが脳裏に過ぎっているのだろう。
リリィの恥じらうような態度のこともあって注目度は高い。
ゆったりした曲調の旋律が流れ始める。
ゆらりゆらゆらと優雅に体を揺らしながら密着する私とリリィ。
私の肩口に顔を寄せながらリリィがそっと囁くように話しかけた。
リリアーナ「……先程は有難うございました。」
ハジメ「構わないさ、大事な婚約者の為なら。それに……今回の婚約は直ぐに破棄されるからな。」
リリアーナ「!やっぱりそうなるんですね……でも、それでは陛下の「大丈夫さ。」!」
ハジメ「リリィが信じ続けるなら、その夢をかなえてみせるさ。」
私がそう言うと、リリィは私の肩口から少し顔を離し、言葉通り嬉しそうな微笑みを浮かべた。
その笑顔は、先程まで
ハジメ「それと、やはり先程のドレスは惜しいな。あの性欲猿め……やはりガハルドの血筋だな。
トレイシーとは大違いだ。」
リリアーナ「あら、こちらのドレスは似合いませんか?」
ハジメ「勿論、似合っているとも。だが、折角だ。
どうせなら金色をワンポイントにいれても文句は言われんだろう。当てつけとしても、な。」
リリアーナ「ふふっ、そうですね。妻を暴行するような夫にはそれもいい薬になるかもしれませんね。
それより……やっぱりあのお守りを通して見えていたのですね。
……私のあられもない姿も……あぁ、もうお嫁にいけません。」
ハジメ「元々、私が貰うつもりだが?」
よよよっ!と、わざとらしく泣き崩れる振りをしながら再び私の肩口に顔を埋めるリリィを、優しく抱き留める。
リリィはこう思われているのだろう。
今夜が終われば皇太子妃となり、近いうちに暴行されて、愛人達に苛められる哀れな姫。
女の子としてのリリィはもう見られない、と。だがな、貴様等は思い違いをしている。
――≪一体いつから、私がリリィのことを諦めたと錯覚していたのだ?≫
『
『
曲はいよいよ終盤。
私の考えを察したリリィは、体を私に預けて、ただ今この瞬間のダンスを楽しむことにしたようだ。
その間にも、私はリリィのドレスに、先程ユエ達にも刻んだ紋章を金色で刻んでおいた。
そして、余韻をたっぷり残して曲が終わり、名残惜しげに体を離したリリィは、繋いだ手を離さずに少しの間、ジッと私を見つめて……「ありがとうございます。」と呟いた。
咲き誇る満開の花の如き可憐な微笑みと共に。
それは唯の14歳の女の子の微笑み。
余りに純粋で濁りのない笑みは、それを見た者全ての心を軽く撃ち抜いた。
そこかしから熱の篭った溜息が漏れ聞こえる。
そして、僅かな間のあと、先程のダンスに負けないくらい盛大な拍手が贈られた。
その後、リリィは、他の官僚と踊る必要があるようだったので、途中で分かれた私であった。
『
『全隊へ通達。こちら
ほぅ、漸くか。通信を聞いた私は、思わず口角が上がりそうになった。
他の面々にも緊張が走り、通信を聞いているシアは、瞑目して一度深呼吸し、一拍、スッと目を開けた。
その瞳に宿る戦意に、思わず誰もが息を呑んだ。
シア「ハジメさん、ユエさん。」
視線が巡る。香織達にも余さず。それに私は頷き、不敵に笑って言った。
ハジメ「あぁ、今からお前は…"ハウリア族族長の娘"だ。存分に暴れて来い!」
その言葉に、シアもまた不敵に笑うと、
シア「はい、行ってきます!」
そう言ってスゥっと気配を薄めていき、誰にも気づかれずに会場から出ていった。
その背を見送っていると、司会進行役の男が声を張り上げた。
ガハルドがスピーチと再度の乾杯でもするようだ。壇上に上がったガハルドが、よく通る声で話し始めた。
ガハルド「さて、まずは、リリアーナ姫の我が国訪問と息子との正式な婚約を祝うパーティーに集まってもらったことを感謝させてもらおう。
色々とサプライズがあって実に面白い催しとなった。」
そこでガハルドは意味ありげな視線を私に向ける。が、それに私は動じない。
それに益々面白げな表情になるガハルド。同時に、耳元の通信機器から決然とした声が響いた。
『全隊へ。こちら
これより我等は、数百年に及ぶ迫害に終止符を打ち、この世界の歴史に名を刻む。
恐怖の代名詞となる名だ。この場所は運命の交差点。
地獄へ落ちるか未来へ進むか、全てはこの1戦にかかっている。遠慮容赦は一切無用。
さぁ、最弱の爪牙がどれほどのものか見せてやろう!』
ガハルド「パーティーはまだまだ始まったばかりだ。
今宵は、大いに食べ、大いに飲み、大いに踊って心ゆくまで楽しんでくれ。
それが、息子と義理の娘の門出に対する何よりの祝福となる。さぁ、杯を掲げろ!」
兎人族と人間族、二つの種族の長が重なるように演説する。
『10、9、8……』
私達と、蔓延るウサギ達にだけ響く運命のカウントダウン。
カム『魔王陛下。この戦場へ導いて下さったこと、感謝します。』
何も知らない帝国の貴族達。
ガハルドは、会場の全員が杯を掲げるのを確認すると、自らもワインがなみなみと注がれた杯を掲げて一呼吸を置く。
そして、息をスゥーと吸うと覇気に満ちた声で音頭を取った。
念話の向こうも、また、同じく。
『気合を入れろ!ゆくぞ!!!』
『「「「「「「「「「「おうっ!!!」」」」」」」」」」』
『4、3、2、1……』
そして、カウントダウンは遂に――
ガハルド「この婚姻により人間族の結束はより強固となった!恐れるものなど何もない!
我等、人間族に栄光あれ!」
「「「「「「「「「「栄光あれ!!」」」」」」」」」」
『ゼロ。ご武運を。』
その瞬間。
全ての光が消え失せ、会場は闇に呑み込まれた。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
今回、一番苦労したのは恵理のドレス表現です。だって自分、ドレスなんて来たことも無いですしおすし。
正直、ここができなかった間、他が全く筆が進みませんでした。
その分、ここが終わってからはサクサク進みましたね。
因みにワンポイント紋章は、それぞれのパートナーの分です。
(一人だけまだ気持ちが確かではないので、二人分ですが。)
そして例の如く、始末される哀れな帝国兵達。まぁ、今まで好き勝手やって来たんです。
このくらいは当然だと思います。それに、生きたままスマッシュされ続けられるよかマシでしょう。
さて、次回はとうとうハウリア達がガハルドとの直接対決に向かいます!
そして、問題のアナザーウォッチをどう奪い取るのか、待て、次回!
次回予告
闇に吞まれた帝城のパーティー会場。そこに現れたのは、漆黒を身に纏った大量のウサミミ。
遂に始まったハウリア達の逆襲。その圧倒的アンサツ=ジツは次々と帝国の猛者を翻弄していく。
しかし、帝国最強としての面目があるガハルドの強さもまた、彼等との戦争をより激化させていく。
そして、帝城上空にて怪しく笑う影、その正体とは!?
次回「襲・撃・開・幕」
目撃せよ、歴史の始まり!
ハジメ「ハウリア・オンステージだぜ!」