ありふれない錬成師は最高最善の魔王の力で世界最強を超越する 作:天元突破クローズエボルハザード
「神を騙る悪が蔓延る異世界"トータス"にて、"最高最善の魔王"南雲ハジメは、ガハルドからアナザーウォッチを見事奪取することに成功した。
そして現在、ハウリア達とガハルドの対話を聞いている所だ。
一方、別の場所で戦いに向かったシアは、かつての同胞たちの仇を見事討ち果たし、今も尚援軍相手に無双中である。」
オスカー
「あっ、今皇太子の首が転がっていったよ。」
ハジメ
「どうでもいいな、そんなこと。それよりもシアにそろそろ連絡入れるか。」
オスカー
「それもそうだね、欲深成金共がどうなろうと、僕等には関係ないし。」
ハジメ
「あぁ、話で聞いた奴等か。ああいうのは、末代まで祟られちまえばいいのにな。」
オスカー
「ハハハ、少なくともあっちで苦しんでいる頃だよ。こっちはこっちで謳歌させてもらうさ。」
ハジメ
「そりゃよかった。さて、シアもそろそろ片付くってさ。
取り敢えず、その辺の料理を保存食としてタッパーに詰めておくよ。」
オスカー
「吞気過ぎないかい?まぁ、いいけどね。それじゃあ、第7章第12話」
ハジメ・オスカー
「「それでは、どうぞ!」」
ガハルド「……。」
カム「あれが次期皇帝。お前の後釜か……見るに堪えん、聞くに堪えん、全く酷いものだ。」
ガハルド「……言ったはずだ。皆殺しにされても、誓約などしねぇ。怒り狂った帝国に押し潰されろ。」
ガハルドの表情に変化はないな……内心は知らんが、表面上は何も感じていないように取り繕っているな。
カム「息子が死んでもその態度か。まぁ、元より、貴様に子への愛情などないのだろうな。
何せ、皇帝の座すら実力で決め、その為なら身内同士の殺し合いを推奨するくらいだ。」
カムの言う通り、帝国では皇帝の座をかけた身内での決闘が認められている。
その決闘においてならたとえ相手を殺しても罪には問われない。
トレイシーからも聞いたが、強弱だけで決めたところで、政務方面が無能であればそれこそ愚の王朝だ。
それに、ガハルドには正妃の他にも側室が大勢おり、バイアスも正妃の息子というわけではなく側室の子ではあるが、決闘により実力を示したために皇太子となったそうだ。
まさに、実力至上主義、強い者に従え!というわけか。
元よりガハルドには、強いか弱いかが基準であり、息子娘に対して人並みの愛情は持っていないという噂があったりするらしく……
特に感情を押し殺しているようには見えないので、本当なのかもしれない。
むしろ、先程の側近の時の方が怒りをあらわにしたくらいだ。カムの言葉に、ガハルドは鼻を鳴らす。
ガハルド「わかってんなら無駄なことは止めるんだな。」
カム「そう焦るな。どうしても誓約はしないか?これからも亜人を苦しめ続けるか?
我等ハウリア族を追い続けるか?」
ガハルド「くどい。」
あ~あ……さっさと負けを認めておけば、被害がこの程度で済んだものを……。
そう思いながら、俺はカムに密かにサインを送った――存分にやれ、遠慮はいらない、と。
カム「そうか……残念だ。――"
――
突然、ガハルドにとって意味のわからないことを言い出したカム。
訝しそうな表情になるガハルドだったが、次の瞬間、腹の底に響くような大爆発の轟音が響き渡り、顔色を変える。
ガハルド「っ!?なんだ、今のは!」
カム「なに、大したことではない。奴隷の監視用兵舎を爆破しただけだ。」
ガハルド「爆破だと?まさか……!」
ほぅ、ここで爆発か……いいねぇ、爆発はロマンだ!そのまま連続爆破といこうか!
カム「ふむ、中には何人いたか……取り敢えず数百単位の兵士が死んだ。ガハルド、お前のせいでな。」
ガハルド「貴様のやったことだろうが!」
カム「いいや、お前が殺ったのだ、ガハルド。お前の決断が兵士の命を奪った。
そして……"
清々しい程の責任転嫁をしたカムは再び、ガハルドにはわからない言葉を呟く。
するとガハルドは、その言葉に咄嗟に制止の声をかける。
ガハルド「おい!ハウリアっ!」
しかし、ガハルドの言葉も虚しく、二度目の轟音。帝城内ではない。帝都の何処かで大爆発が起きたのだ。
感情を押し殺した声音でガハルドが尋ねる。
ガハルド「……どこを爆破した?」
カム「治療院だ。」
ガハルド「なっ、てめぇ!」
カム「安心しろ。爆破したのは軍の治療院だ。死んだのは兵士と軍医達だけ……
もっとも、一般の治療院、宿、娼館、住宅街、先の魔人族襲撃で住宅を失った者達の仮設住宅区にも仕掛けはしてあるが、リクエストはあるか?」
いいねぇ、正に圧政への倍返し!それでこそ、我が忠臣達よ!
ガハルド「一般人に手を出してんじゃねぇぞ!堕ちるところまで堕ちたかハウリア!」
カム「……貴様等は、亜人というだけで迫害してきただろうに。
立場が変わればその言い様か……"
ガハルド「まてっ!」
亜人族を帝国全体で迫害しておいて、今更関係のない一般人はないだろう?と若干、呆れ気味の声を出すカム。
そして、容赦なく命令を下す。これはガハルドが悪い。
お前だってアナザーウォッチで脅してきたじゃねぇか。なら、やり返される覚悟もあるってことだよな?
そして、三度起きた爆音に、ガハルドは今度こそ、帝国の民が建物ごと爆破されたと思い込んで歯ぎしりをしていた。
もっとも、実際に爆破されたのは帝城に続く跳ね橋だったりする。
帝都で爆破事件が起きれば帝城に報告が来るのは必定なので、唯一の入城ルートを破壊しておいたようだ。
更に言えば、カムの言葉は半ばハッタリで、軍と関係のない場所に爆弾を仕掛けたりはしていない。
この爆弾は、遠隔爆破しているわけではなく、帝都に潜入しているハウリア族の部隊が手動で爆破しなければならないので、そんなに多くの場所には元より設置できなかったのだ。
まぁ、遠隔操作爆弾なんてライダーの中だと、グレア位しか思いつかんし……
それに、たとえ遠隔操作が出来たとしても、カム達はそれを選ばなかっただろう。
何故かって?"帝国と同じにはならない"っていう矜持があるからさ。
必要なら何でもする、そうでないなら嘘ハッタリ詐術でも、使えるものは何でも使って相手を討つ。
それが今のハウリア、我が精鋭たちなのだ。
カム「貴様が誓約しないというのなら、仕方あるまい。
帝都に仕掛けた全ての爆弾を発動させ、貴様等帝室とこの場の重鎮達への手向けとしてやろう。
数千人規模の民が死出の旅に付き合うのだ。悪くない最後だろう?」
とはいえ、傍から見れば言っていることが完全にテロリストだ。
俺ここまで仕込んだつもりはないんだけどなぁ……前に会った、別世界の俺が仕込んだのかなぁ?
そして、容赦ない要求に、即断できず沈黙するガハルド。
その頭の中は目まぐるしく状況の打開方法を探っているのだろうが、妙案は一向に出てこないだろう。
苦みばしった表情と流れる冷や汗が、追い詰められていることを如実に物語っていた。
そして、そんな状態でもカムは全く容赦しない。返答が遅いと言わんばかりに命令を下す。
カム「"
ガハルド「まてっ!」
ガハルドが慌てて制止の声をかける。
そして、苛立ちと悔しさを発散するように頭を数度地面に打ち付けると、吹っ切ったように顔を上げた。
ガハルド「かぁーー、ちくしょうが!わーたよっ!俺の負けだ!要求を呑む!
だから、これ以上、無差別に爆破すんのは止めろ!」
カム「それは重畳。では誓約の言葉を。」
要求が通ったというのに、やはり淡々と返すカム。ガハルドは、もはや苦笑い気味だ。
そして、肩の力を抜くと、会場にいる生き残り達に向かって語りかけた。
ガハルド「はぁ、くそ、お前等、すまんな。今回ばかりはしてやられた。帝国は強さこそが至上。
こいつら兎人族ハウリアは、それを"帝城を落とす"ことで示した。民の命も握られている。故に――」
生き残り達が、ガハルドの言葉を聞いて悔しそうに震えている。
そんな彼等を目に焼き付けるように見て、ガハルドは声を張り上げた。
ガハルド「――"ヘルシャーを代表してここに誓う!全ての亜人奴隷を解放する!
ハルツィナ樹海には一切干渉しない!今、この時より亜人に対する奴隷化と迫害を禁止する!
これを破った者には帝国が厳罰に処す!その旨を帝国の新たな法として制定する!"」
誓約は今、ここになされた。首輪に施された宝石が輝きを放つ。
そしてガハルドは、最後に皇帝として宣言した。
ガハルド「この決断に文句がある奴は、俺の所に来い!俺に勝てば帝国をくれてやる!後は好きにしろ!」
亜人族を今まで通り奴隷扱いしたければ、ヘルシャーの血を絶やせ!受けて立つ!か。
成程、本当に実力至上主義を体現した男だ。
もちろん、この判断には、要求を呑んでも亜人と関わりがなくなるだけで帝国側に害はないという判断も含まれているのだろうが、やはり、直接の戦闘で負かされたというのが大きいようだ。
カム「ふむ、正しく発動したようだ。」
その言葉と共に、会場の一角に集められていた、皇帝一族にスポットライトが降り注いだ。
本来なら会場にいないはずのまだ幼い皇太孫もおり、一様に首から"誓約の首輪"を身に着けている。
……ってあれ?トレイシー……君まで何故、白目をむいたまま立たされているんだい?
しかも、エグゼス諸共鎖でグルグル巻きって……何やらかしたのさ……。
カム「ヘルシャーの血を絶やしたくなければ、誓約は違えないことだ。」
ガハルド「わかっている。」
カム「明日には誓約の内容を公表し、少なくとも帝都にいる奴隷は明日中に全て解放しろ。」
ガハルド「明日中だと?一体、帝都にどれだけの奴隷がいると思って「やれ。」くそったれ!
やりゃあいいんだろう、やりゃあ!」
明日か……やれやれ、文官たちは過労死必死だな。
カム「解放した奴隷は樹海へ向かわせる。ガハルド。貴様はフェアベルゲンまで同行しろ。
そして、長老衆の眼前にて誓約を復唱しろ。」
ガハルド「一人でか?普通に殺されるんじゃねぇのか?」
カム「我等が無事に送り返す。貴様が死んでは色々と面倒だろう?」
ガハルド「はぁ~、わかったよ。お前等が脱獄したときから何となく嫌な予感はしてたんだ。
それが、ここまでいいようにやられるとはな。
…………なぁ、俺が、あるいは帝国が、そこまで気に入らなかったのかよ、南雲ハジメ。」
ガハルドが闇を見通すように私のいる場所を睨む。
が、私はそれを無視して、ミュウとリリィの頭を撫でてあやしながら、"今回は直接は関わっていないぞ~。"というアピールをする。
今は、ハウリア族が主役を張る舞台の開幕中だ。なら、ここで私が出張っては意味が無かろう?
精鋭達の晴れ舞台なのだ、下準備位は別に構わんだろう?
そんな私の態度を、光がないので見えないにも関わらず、答える気がないと察したのか、ガハルドは盛大に舌打ちする。
カム「ガハルド、警告しておこう。確かに我等は、我等を変えてくれた恩人から助力を得た。
しかし、その力は既に我等専用として掌握している。
やろうと思えば、いつでも帝城内の情報を探れるし侵入もできる。寝首を掻くことなど容易い。
法の網を掻い潜ろうものなら、御仁の力なくとも我等の刃が貴様等の首を刈ると思え。」
ガハルド「専用かよ。羨ましいこって。
魔力のない亜人にどうやって大層なアーティファクトを使わせてんだか……。」
ガハルドが苦虫を噛み潰したような表情をするのも無理はない。
なぜなら、亜人と他種族に格差をもたらしているのが戦闘における魔法行使の可能不可能である以上、その前提を崩しかねない亜人によるアーティファクトの使用という事態は由々しきことなのだ。
まぁ、ここにいるハウリア達は全員、私の地獄の特訓を潜り抜けてきた猛者達だからな。
魔力操作が使える以上、そんなもの関係ないだろう。
しかし、だからといって止めさせる事など出来るはずもなく、せいぜい悪態を吐くことしか出来ないだろうな。
「全く、何てことしてくれたんだ!」と、ガハルドが怒鳴りたそうにしていたが……自業自得だろう。
それにしても、魔王の精鋭たるハウリア族が、何処にでも侵入して暗殺できるというのも凄まじく信憑性がある話だな。
抑々だ、私はアナザーウォッチによる存在そのものを人質に取られていたのだ。
その腹いせとして嫌がらせはしたが、ハウリアの襲撃とは全くの無関係だぞ?
全く……人を疑うのも大概にしてほしいものだなぁ。
因みに、常時オーマジオウ状態だったのは、ガタキリバで生み出した分身体を小さくして、魔法トラップの解除と、"遠透石"を使用したカメラの設置、侵入場所の映像を"水晶ディスプレイ"に送るためのビーコン設置を行っていたからだ。
ガッツリ関わっていたじゃないか、だって?とんでもない!
カメラやビーコンは嫌がらせ序でに置いて行ったにすぎない。
それを偶々ハウリア達が勝手に利用しただけだ。
そして、無数に設置された監視カメラの映像は、帝都の外にある司令部に設置されたいくつもの水晶ディスプレイに映し出されて、ハウリア族のオペレーター達が各部隊に"改良版念話石"で通信し、的確で効率的な制圧を可能にしたのだ。
そして、この"改良版念話石"こそ、ガハルドが歯噛みする亜人でも使えるアーティファクト一号だ。
原理は至って簡単だ。
まず、生成魔法により、緑光石や神結晶といった魔力を溜め込む性質の鉱石に"高速魔力回復"を付与、自動回復機能付き魔力タンクを組み込み、同時に"魔力放射"を付与することで常に自然の魔力の収集と放出を繰り返す。
そして、発動用魔法陣を敢えて一部欠けた状態にし、スライド式スイッチを動かすことで、欠けた魔法陣が完成・正しく魔法が発動する、というわけだ。
更に、魂魄魔法やステータスプレートの血に反応する機能を応用して、登録者の血にしか反応しないように出来ている。
これだけで、他の亜人族でも使用可能なアーティファクトが作成できるようになる。
因みに、これらはいわば試作品で、本命はミュウやレミア、それに愛ちゃん先生やリリィ達の為の護身アーティファクトだ。
王都では光輝達の強化に専念していたので、皆の専用武器を作るのをすっかり忘れていたからな……。
そして、これによりハウリア達は、帝都外に設置した司令部や各部隊と綿密な連携を取ることができるようになったというわけだ。
そのため、帝城侵入に際して、ハウリア族専用の隠しカメラも設置済みである。
更に極めて目立たない仕様になっているから、発見は困難だろう。
そして、また、同様の原理で作った、鍵型アーティファクト"ゲートキー"と鍵穴型アーティファクト"ゲートホール"も渡してある。
この2つは対になっていて、ゲートキーは、光沢のある灰色をした掌サイズの鍵状金属プレート、ゲートホールは同じ色合いのチャクラムの様な形状だ。
そして、まず手元の魔法陣に魔力を注いでゲートキーを空間に突き刺し、希望のサイズになったら文字通り鍵のように捻って"開錠"することで、あらかじめ設置しておいたゲートホールの場所に空間を繋げるゲートを開き、転移することが出来るというものだ。
勿論、これは空間魔法・生成魔法・そして魂魄魔法のコンボで作り出したものである。
ゆくゆくはこれを冒険者ギルドに設置し、被害の大きい地域の復興に、迅速に迎えるようにしたいものだ。
まぁ、まさかここで最初に使われるとは誰も思ってはいなかっただろうなぁ……。
因みに、ゲートホールはカメラと一緒に、私が至るところに隠蔽しながら設置しておいたので、ハウリアはいつでもゲートを開いて帝城内に侵入できる。
本当に、帝国側からしたら「何ということをしてくれたんだ!」という状態だろう。
まぁ、"気断石"という石ころ帽子擬きもあったから、それと魔力操作さえあれば、誰でも潜入できそうなので、そこらへんはなんとも言えん。
それに、ゴーグル型で魔法トラップを探査できるアーティファクト"フェアグラス"をハウリアに配備してあるので、魔力操作無しでも、回避は可能だ。
カム「案ずるな、ガハルド。ハウリア族以外の亜人族にアーティファクトが渡ることはない。
お前が誓約を宣誓したところで、調子に乗って帝国を攻めることなど有り得んよ。
もしそうなったら、我等ハウリア族の刃はフェアベルゲンの愚か者に振るわれるだろう。」
その言葉に、ガハルドは、ハウリア族がフェアベルゲンとも独立して、ただひたすら亜人族(実際には兎人族だが)の不遇改善と戦争の回避を望んでいると察したようだ。
まぁ、敗者だからと言って絞めつけ過ぎはよくないからな。
あまり追い詰めすぎると、何をしでかすかもわからん。
ガハルド「そうかい。よーくわかったよ。だから、いい加減解放しやがれ。
明日中なんて無茶な要求してくれたんだ。直ぐにでも動かなきゃ間に合わねぇだろうが。」
カム「……いいだろう。我等ハウリア族はいつでも貴様等を見ている。そのことをゆめゆめ忘れるな。」
その言葉を最後に、スポットライトが消え、会場を静寂が包み込んだ。
シア「ハジメさん。」
私が隣を見れば、シアが戻ってきていた。先程、決着がついたと念話で知らせておいたのだ。
どこか、雰囲気が変わったような、一皮むけたようなシアの微笑みに、俺は一瞬、見惚れてしまった。
シア「全部、終わりましたよ。」
その言葉に、どれほどの意味が含まれているのか正確な所は分からない。
それでも私は、ふっと笑い返して、言葉を贈った。
ハジメ「頑張ったね、お疲れ様。」
それを聞いたシアの笑顔がとびっきりに輝いた。
そして同時に、気配感知がハウリアの撤退を知らせ、念話石を通じて通信が入った。
カム『陛下。こちら
数々のご助力、感謝のしようもありません。』
その通信に、小さく笑って返す。
ハジメ『お前等は俺の民だからな。それに、シアのためでもある。気にする必要はない。
それと、、まだ全て終わったわけじゃない。気を抜くな。むしろ、これから先こそが本当の戦いだ。
"皇帝一族を排しても"等とほざく愚者がいないとも限らんからな。』
カム『心得てますよ、陛下。元より、戦い続ける覚悟は出来ています。
この道が、新生ハウリア族が歩むと決めた道ですから。』
覚悟と覇気に満ちたカムの言葉に、思わず口元が吊り上がる。
そして、混じりけのない純粋な称賛を贈った。
ハジメ『そうか。覚悟は決まったか……是非もなし。全ハウリア族へ告ぐ。』
一拍。
ハジメ『天晴なり、我が精鋭達よ!』
自分達を導いた敬愛する陛下の、掛け値なしの賛辞。
全ハウリア族のウサミミがピンッ!と毛を逆立てながら真っ直ぐ伸びた。噛み締めるような間が一拍。
次の瞬間には、念話石を通して、盛大な雄叫びが上がった。
『オォオオオオオオオオオオオ!!!!』
それは勝利の雄叫び。
数百年の間、苦汁を舐め続けた敗北者の中の敗北者が、初めて巨大な敵に一矢報いた歓喜の叫びだ。
正直なところ、この先、樹海への不可侵・不干渉や亜人の奴隷化・迫害禁止がどこまで守られるかは微妙である。
先程言った通り、皇帝一族を排してでも亜人の奴隷化を望む者達は出てくるだろうし、ただでさえ抽象的な誓約の穴を見つけ出して帝国が亜人族を再び虐げる可能性は大いにある。
だからこそ、ハウリア族の戦いはここからだというのが適切だ。
少なくとも、誓約を課すことが出来たことで、今すぐ、帝国が樹海に攻め入ったり、ハウリア族を追ったりすることはない。
この稼いだ時間で、ハウリア族は数と力を蓄えて、より高レベルの
それこそ、帝国が誓約を克服して万全の態勢になっても、容易に手が出せない程に。
そう、今回の作戦の要は、帝国のトップに首輪を着けて、ハウリア族が帝国に真の意味で対抗できる程に力を蓄える時間を稼ぐことが目的だったのだ。
よって、確かに、今回の戦いは亜人族最弱の種族である兎人族ハウリアの紛れもない勝利なのである。
さて、私もそろそろ政治の話をするか。
ハジメ「これで輿入れ話はおじゃんになるな。リリィ、これでもう大丈夫だよ。」
リリアーナ「!も、もしかして、ハジメさん……?」
そう、私の目的はもう一つ。リリィの輿入れ話の白紙撤回だ。
今回の出来事で、皇帝一族はハウリア達に命を握られたも同然となった。
そうなった以上、いつ死ぬかわからない者にこちらからリリィを嫁がせる、だなどと強気に出てくることも無い。
白紙撤回はやむなし、という結論に至るだろう。
それに加え、先程カムが誓約させた内容もまた、帝国にダメージを与えている。
全亜人奴隷(帝都以外も含む)の解放=帝国全体の労働力低下
ハルツィナ樹海への干渉禁止=奴隷輸入禁止
亜人に対する奴隷化と迫害の禁止=今後一切の亜人冷遇禁止
これらを法律化=取締体制の抜本的な改革と確実に執行される厳罰の体制、帝都以外の町法の周知徹底
以上のことから、帝国はてんてこ舞いになるだろう。
これでもう、王国にも樹海にも亜人族にも、マウントをとることはできない。
あちこち大騒ぎは必至だな。その辺りの対応と鎮圧にも人手を割かなければならない以上、帝国が王国に援助を求める形になるだろう。
ハジメ「まぁ、状況が落ち着いたら、改めてランデルに、皇女を嫁がせる形が最良だろうね。
これでやっと、邪魔はいなくなったよ……遅くなって、ごめんね?」
リリアーナ「!ハジメさん!貴方っていう人は……!」
そう言って私をポカポカするリリィ。それをすぐ傍で、シアとミュウが温かそうに見ている。
今の彼女の眼に浮かんでいるのは、きっと嬉し涙だろう。フッ、ここまで頑張った甲斐があったものだ。
ガハルド「くそっ、アイツ等、放置して行きやがったな。……誰か、光を……
あぁ、そうだ誰もいねぇ……って、ゴラァ!南雲ハジメ!てめぇ、いつまで知らんふりしてやがる!
どうせ、無傷なんだろうが!この状況、何とかしやがれ!」
……全く、少しは感傷に浸らせてもよかろうに。
こちらは通信越しに聞こえてくるハウリア達の歓声に目を細め、同じく作戦の成功に涙ぐみながら飛びついてきたシアを抱き締めて、ミュウとリリィと一緒にモフモフしているのに忙しいというのに……。
しかし……ククッ、転がり回っているガハルドの姿に、思わず笑い声が出そうになるのを耐えるので精一杯だ。
とはいえ、流石に明かりもなしでは話し合いも進められんか。
というわけで、しょうがないので、明かりを出してやることにした私であった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
遂に、ガハルドの敗北宣言が成されました。
因みに、トレイシーがこうなっている理由は、ハジメが彼女のことをハウリア達に説明していなかったことが原因です。
経緯としては、原作と違ってハジメさんという興味を引く人物が現れたので、パーティーにも参加しようとはしていました。
しかし、衣装選びの途中にハウリア達に襲撃され、後は原作通りです。
その後、部屋に置いてあったエグゼスによって、再び起き上がりそうなところを拘束され、現在に至ったという訳です。
そしてわざとらしくも被害者面をするハジメさん。
原作でも登場した魔力操作なしでも使えるアーティファクトに関しては、
まぁ、いずれは全員にスパルタンレッスンをするつもりですが。
その上でちゃっかり、リリィの婚約破棄も達成するという完璧ぶり。
さて、次回はハジメさんのターンです。
昨夜の脅しのお返しも兼ねたハジメさんの要求に、ガハルドの決断は!?
そして、今後の帝国は一体どうなってしまうのか!?待て、次回!
次回予告
次回「解放と女神と故郷への思い」
目撃せよ、歴史の始まり!
ハジメ「これでClimaxだぜ!」