ありふれない錬成師は最高最善の魔王の力で世界最強を超越する 作:天元突破クローズエボルハザード
「神を騙る悪が蔓延る異世界"トータス"にて、"最高最善の魔王"南雲ハジメは、ハウリア達と協力して、ガハルドからリリィの婚約破棄と、亜人の待遇改善を勝ち取った。
そして、その感動を仲間達とともに分かち合い、今度は自分の番だとその一歩を踏み出したのであった。」
ミレディ
「ねぇねぇ、ハジメン。皇帝陛下がなんかゴロゴロ転がっているんだけど……。」
ハジメ
「あぁ、こういう魔物とか迷宮にいそうで面白くね?」
ミレディ
「いや、オーちゃんやリューちゃんの所じゃないんだから……。まぁ、面白いのは確かだけどね!」
ハジメ
「いつもの煽り、行っとく?」
ミレディ
「いや、やらないからね!?何、いつもの煽りって!?」
ハジメ
「まさか、無自覚だったの?もしかしなくても、ベルさんは遠縁の従姉だったのかもしれないね。」
ミレディ
「なんでそこでベルが出てくるのさぁ!?ハァ……もういいよ。じゃあ、第7章第13話」
ハジメ・ミレディ
「「それでは、どうぞ!」」
リリィにミュウを預け、片手でシアを抱き締めながら、私は"宝物庫"から緑光石を取り出し天井に飛ばした。
技能の一つ"光あれ"が付与された緑光石は、天井付近で浮遊すると一気に夜闇を払い、昼間と変わらない明るさをパーティー会場にもたらした。
全体が明らかになったパーティー会場は、まさに"凄惨"という言葉がぴったりな有様だった。
至る所におびただしい量の血が飛び散り、無数の生首が転がっている。
胴と頭がお別れしていない者でも無事な者は一人もおらず、全員が手足の腱を切られて痛みに呻きながら床に這いつくばっていた。
貴族の令嬢方は、恐怖と痛みで失禁しているものも少なくない。
明るくなって会場の惨状を見た瞬間、ショックで意識を失ったのは、ある意味僥倖だろう。
辛うじて意識を保っていた気丈な一部の令嬢達も、視界の端に映ったシアのウサミミを見た瞬間、声にならない悲鳴を上げて白目を剥きながら気絶した。
男でも少なくない者が失禁しながらシアに怯えた目を向けている。
どうやら、ハウリア族の恐怖はしっかりと刻み込まれたよう…いや、約一名、何かに目覚めてしまった者がいた。
トレイシーだった。
アイツ、何故かガハルドがハウリアに敗北宣言した辺りから、身を悶えさせていたし……。
そんな中、完全に無傷な我々は、明らかに浮いていた。
最後まで戦闘を行っていた者達は射殺しそうな程に憎しみの籠った眼で睨んできている。完全にグルだと思われているようだ。
濡れ衣も大概にしてほしいものだなぁ?私達は自分達の身を守るので精一杯だったというのに。
ガハルド「おい、こら、南雲ハジメ。いい加減、いちゃついてないで手を貸せよ。
この状況で女、しかも兎人族の女を愛でるって、どんだけ図太い神経してんだよ。」
ハジメ「なに、シアはか弱いウサギだからなぁ、さっきの襲撃で怯えてしまってな。可哀想に…。
本当に恐ろしい強敵であったなぁ?。私達も、身を守るので精一杯だったよ。」
そんな戯けた事を言いながら、わざとらしく肩をすくめてみせる。
勿論、シアは怯えているどころか、これでもかという位幸せそうな表情だ。
すると、ガハルドの額に青筋が浮かぶ。
詠唱封じに口を裂かれたため話せない者達も、倒れたまま「視線だけで殺してやる!」と言わんばかりの凶悪な眼差しを向けている。
そんな光景に仲間達からは、神経が太すぎると苦笑いを向けられていた。
ガハルド「いけしゃあしゃあと……とにかく、無傷であることに変わりねぇだろ。
お前等に帝国に対する害意がないってんなら、治療するなり、人を呼ぶなりしてくれてもいいんじゃねぇか?」
ハジメ「ほぅ?害意とな?そちらが勝手に我々を脅しては、因縁をつけてきたようにしか見えんが?」
ここで簡単に引き下がっては、奴に頭を下げさせることはできん。
さぁ、ガハルド。貴様の罪を自ら数え、謝罪するがいい。
ガハルド「だぁッ―畜生!分かったよ!
奇妙なアーティファクトで脅したり、リリアーナ姫を人質にとったのは謝ってやるから、さっさと治療しろ!」
態度がまだデカいのが減点対象だが……まぁ、ここらで良いだろう。
ハジメ「良かろう、ただし、貴様の部下達が、治療した瞬間に襲いかかってきそうな殺気を放っている故、その者達はそのまま殺させてもらうぞ?」
ガハルド「いいわけ無いだろ!?おい、お前ら!そこの化け物魔王と周りの奴等には絶対手を出すなよ!
たとえ、クソ生意気で、確実にハウリア族とグルで、いい女ばっか侍らしてるいけすかねぇクソガキでも無駄死には許さねぇぞ!」
生き残ったガハルドの部下達は自分達の主からの生き残れという命令に悔しそうに目元を歪める。
しかしまぁ……盛大に言ったものだなぁ?
ガハルド「ほれ、お前のことを殺したくても、実際に化け物の顎門に飛び込むような馬鹿は、ここにはいねぇ。
俺がさせねぇ。そろそろ出血がヤバイ奴もいるんだ。頼むぜ、南雲ハジメ。」
ハジメ「……はぁ、まぁいいだろう。後でスマッシュも追加しようとは思ったが……
向かってこないならやるに越したことはない。香織、手伝いを頼む。」
香織「うんっ、任せて……"聖典"!」
詠唱なし。魔法陣なし。
魔法名だけで即時発動した回復系最上級魔法の光り輝く波動が、パーティー会場全体に波紋する。
そして、傷ついた者達を瞬く間に治癒していった。
ハジメ「"光あれ"。」
私がそう手を翳せば、傷ついていた者達の体から、大量に出血した後がきれいさっぱりなくなり、青白く褪めた顔に、血色が戻っていった。
序でに、面倒だったが失禁の後も消しておいた。
ガハルド「回復まで化け物クラスかよ。……やってられねぇな。」
ガハルドが香織と私の回復魔法の尋常でない技量に、どこか疲れた表情でぼやいた。
みるみるうちに癒えていく体に、ガハルドの部下達も唖然としている。
最上級魔法の即時発動など、一般的な認識では不可能事なのだから当然だろう。
すると、回復しても意識を閉ざしたままの令嬢方や腰を抜かしたままの貴族達を尻目に、戦闘可能な者は即時にガハルドの周囲に固まり、こちらに向けて警戒心丸出しの険しい表情を向けた。
うん?なんだ?やるつもりか?お?お?
ガハルド「だから、よせっての。殺気なんか叩きつけて反撃くらったらマジで全滅すんぞ。」
部下1「しかし、陛下!アイツ等は明らかに手引きを!」
部下2「そうです!皇太子殿下まで……放ってはおけません!」
部下3「このままでは帝国の威信は地に落ちますぞ!」
面倒そうに嗜めるガハルドに部下達が次々と言い募る。
やれやれ、香織の規格外の回復魔法でその実力の一端を感じ取っていても、身の程を弁えんとはな……。
まぁ、私自身の実力を実際に目で見たわけではないとは思うが、これでもガハルドを半殺しレベルでボコボコにした覚えはあるぞ?
どうやら、彼等の何人かは、基準対象を王国でガハルドと模擬戦した光輝としており、"それならあるいは"と考えてしまっているようだ。
だが残念なことに、今の光輝はステータス面でも技能面でも、ガハルドを上回っている。
おまけに神代魔法も既に3つ取得している。タイマンなら負けるとは思わんな。
とはいえ、ハウリアがもたらした被害は甚大なのもあるか。
何せ、現皇帝とその一族に"呪い"をかけた上に、素行に問題は大ありだったとは言え、次期皇帝陛下の首を刎ね飛ばしたのだから。
彼等も容易には引けない。それは大いに理解できる。
だがな、こちらは婚約者を奪われそうになった上、領地に不法侵攻されたのだ。
この程度の報復で済ませてもらっただけでも、感謝してもらいたいものだがなぁ?
大体、威信なんぞで国が救えるとでも思ったか?貴様等が負ければ、尚のこと言われ放題だというのに。
そんな、息巻く彼等に説教をしようと思ったその時、ガハルドが嘆息しつつ覇気を叩きつけた。
思わず呻き声を上げてふらつく彼等に、ガハルドは彼等以外の会場にいる者達にも向けて威厳に満ちた声を発した。
ガハルド「ガタガタ騒ぐな!言ったはずだぞ、お前等を無駄死にさせるつもりはないと。
いいか、あのフルアーマーの魔王は正真正銘の化け物だ。
たった一人で世界一つ滅ぼすこと位躊躇なくできる、そういう手合いだ。……強ぇんだよ。
その影すら踏めないどころか、影で国を覆いつくせる程にな。
奴に従えとは言わねぇが、力こそ至上と掲げる帝国人なら実力差に駄々を捏ねるような無様は晒すな!」
ビリビリと震えるような怒声に、部下達も会場の貴族達もその身を強ばらせる。
ガハルド「それはハウリア族に対しても同じだ。
最弱のはずの奴等が力をつけて、帝国の本丸に挑みやがったんだ。
いいようにしてやられたのは、それだけ俺達が弱く間抜けだったってだけの話だろう?
このままで済ますつもりはねぇし、奴等もそうは思っていないだろうが……まずは認めろ。
俺達は敗けたんだ。敗者は勝者に従う。それが帝国のルールだ!それでもまだ、文句があるなら俺に言え!
力で俺を屈服させ、従わせてみろ!奴等がそうしたようにな!」
ガハルドの怒声がパーティー会場に木霊する。
腰を抜かしていた者達は視線すら向けられず、ガハルドの周囲の部下達は僅かに逡巡した後、ガハルドの前で頭を垂れた。
自分達が早々にやられた中で、最後まで戦い抜いたのはガハルドなのだ。
そのガハルドの言葉は、主であるという事以上に、重かったのだろう。
ハジメ「潔いな、それでこそ同盟相手だ。では、これにて一件落着ということで。」
私の満足気な言葉に、その場の全員が一斉にこちらを睨んできた。
その眼差しは、言葉にする以上に雄弁に物語っていた。すなわち「お前が言うなっ!この疫病神!」と。
心外だな、帝国は地図から消えず、樹海は同胞を取り戻し、我々王国は輿入れの白紙撤回とアナザーウォッチの回収、そして両国の同盟締結。
これ以上にない終わり方だというのに。そう思いながら、私は肩を竦めたのであった。
ハジメ達に対する敵対心を胸に秘めつつも、無駄死に確定の現実を前に手を出せず歯噛みする帝国の生き残り達が、ガハルドによって纏められ落ち着きを取り戻して少し。
破壊された跳ね橋に梃子摺ったものの何とか沈黙する帝城に乗り込んできた帝国兵達がパーティー会場に到着して再び色々騒動になりつつも、迅速に事態の収拾が図られた。
生き残りの重鎮達が集められ、夜中にもかかわらず急遽開かれた緊急会議で誓約を果たすための段取りが決められた。
途中、会場にいなかった重鎮の一人が誓約内容を聞いて何を馬鹿なと嗤ったのだが……
その瞬間、会議室の明かりが数瞬消えて、再び明かりが戻った時には反対した男の部下の生首がテーブルに乗っているというホラーが発生。
男は青褪めたままただ頷くしかなかった。他の重鎮達もパーティーの悪夢を思い出しガクブルと震える。
その後の話は実に迅速に纏まったようだ。
各所から被害報告を纏めつつ、亜人に対する法律を急ピッチで作成していく(草案はハウリア族の方で用意しておいた)。
この時点で、ガハルドは、実はハウリア族が一般人には手を出していないことを知った。
しかし、誰もいない公共施設が爆破解体されている事実から、いつでも爆破できるという無言のメッセージを受け取って、他にもどれだけの施設に爆発物が仕掛けられているのかと頭を抱えることになった。
そして、夜中の内に、爆発騒ぎで叩き起こされていた兵士達によって、個人所有の亜人奴隷達が、先の魔物騒ぎで更地となった場所に急遽立てられた無数の仮設テントへと案内されることになった。
復興に駆り出されていた亜人奴隷達が収容されている建物のすぐ隣だ。
当然、猛反発が起きるに決まっている。
夜中に突然叩き起されたかと思ったら、所有している奴隷を強制的に没収されるのだ。
特に、奴隷商会においては、商会が潰れるのと同義である。
金銭的補償は後からなされる上に、皇帝の勅命であるとはいえ、容易には納得できないことだ。
それでも、国からの命令である以上、最後は折れなければならないわけだが……
あの手この手で時間を引き伸ばし、駄々を捏ねる者もそれなりにおり、そういう者は大体、翌朝に生首で見つかることになった。
そして、約束の一日が過ぎた翌昼過ぎ、帝都中の亜人奴隷が一箇所に集まるという異常事態に何事かと集まる帝都民を前にして、帝国側からの発表がなされた。
それを聞いた民達には激震が走った。
何故なら、その内容は全亜人族の解放と今後の奴隷化の禁止、簡潔に言えば、そんな皇帝陛下の勅命が、全帝国民を対象に布告されたのだから。
個人所有も、奴隷商も関係ない。淡々と告げられる内容に、唖然とする帝都民達。それも当然だろう。
そしてそれは、ハウリアとの誓約の内容と、それに関して更に細かく定めた法の内容だった。
一切の例外を許さない強権の発動。
帝城の前は、突然の事態にどういいうことかと問い詰める民で溢れかえった。
今まで身近にあって当然の如く便利な道具扱いしてきたものが一気になくなるのだ。
しかも、今後、手に入れることも禁止される。正直、わけがわからないといった様子だった。
そのうち、当然と言えば当然だが文句を叫ぶ輩が出て、それが一気に伝播し猛反発のうねりとなった。
暴動になるのではと、亜人奴隷達を民衆から守る帝国兵達が冷や汗を流し始めた時、ハジメとガハルドが、帝城のテラスから帝国民達に姿をさらした。
そして、ハジメが圧倒的な圧を放てば、皆委縮して黙りこくった。
それを確認したガハルドは、微妙に引き攣った表情で叫んだ。
ガハルド「民達よ!此度の命令には、ハイリヒ王国新国王南雲ハジメ殿から重大な発表がある!
心して聞いてほしい!」
ガハルドの真剣な表情とその覇気に、国民達は国の存亡に関する事か!?と身構えた。
そしてハジメから語られたのは、王国で既に周知されたこの世界の真実。
反逆者と呼ばれた"解放者"達の歴史、エヒトの正体・トータスの真の歴史・繰り返されてきた歴史の陰謀、そして自分達が長い間奴隷扱いしてきた亜人族の根源について……。
どれもこれも信じがたいものばかりであった。
特に一番最後に至っては、帝国の在り方を疑わせるものだった。が、そこはハジメクオリティー。
すなわち、「その亜人族の中でも最弱の兎人族が、ガハルドにこうさせましたがなにか?」と、遠慮なくぶっ放した。
それを聞いた民衆は当然困惑、そして帝城の屋根に大量のウサミミが出現したことで、それが真実であることを彼等は突き付けられたのであった。
勿論、ハジメさんはアフターサービスも忘れない。
ガハルド「此度の亜人解放は、この世界の真の女神"ウーア・アルト"の神託である!見よ、帝国の民よ!
その女神様は、帝国に勇者様と使徒様を遣わされた!」
ガハルドがそう言った途端、空より無数の光が降り注ぎ、そこから銀の翼を広げた
すると、眩く輝きを放った銀の羽が、ふわりふわりと天上より落ちてくる。
世界が煌めき、
更に、光輝の掲げた聖剣が、それに呼応するかのように、白く眩しい光を纏い、天空めがけて光の柱を放った。
これにより、その発表はこれでもかというほど信憑性を高めた。
ガハルド「亜人の解放は、帝国が更に繁栄するために必要なことだと女神様はおっしゃった!
困惑もあるだろうが案ずるな!奴隷を失った者には帝国より補償がある!
私は、帝国の皇帝として、帝国民の愛国心と信仰心を信じる!」
舞い落ちる女神の使徒の証――銀の羽。
それらを手にした帝都民は、一拍、歓声を上げて使徒と勇者と皇帝陛下を称えた。
補償のほどに不安の顔を隠せない者達もいたが、そこは今後のガハルド次第だろう。
ハジメ「うまくいったようだな……まぁ、この後も頑張れよ、皇帝陛下?」
引き攣った笑顔を浮かべるガハルドを、ハジメは小声で茶化したのであった。
そして、部屋の中にはユエ達もいる。香織を神々しく見せる演出要員だ。
世界は輝き、神の威光が降り注ぐ。"ハジメ監督の手によって"。
当然、ガハルドのセリフもハジメの台本だ。
昨夜の内に、軍部や執政部など、帝国の主要機関を担う者達には現状が伝達された。
ほとんどの重鎮がパーティーに出席していたので、情報の共有は速かった。
奴隷解放のためには、帝国民への命令と奴隷達を集める場所がいる。
帝都以外の町にいる奴隷は後々の対応になるにしても、帝都の奴隷だけは約定通り翌日には解放しなければ物理的に首が飛ぶのだ。
実は皇族の一人が、「そんな馬鹿な話があるか!俺は首飾りを外すぞ!」と喚き、本当に首飾りを外してしまい、その後、突然発狂して暴れまわった挙句、糸が切れたように絶命したという事実があり、これが彼等を必死にさせている原因の一つだったりする。
それ故、命がかかっているので、帝国上層部の対応は迅速だった。
とはいえ、問題はある。帝国民に、どう伝えるかだ。
いきなり、奴隷という財産を没収と言われれば、個人所有はともかく、奴隷商などは路頭に迷うことになる。
暴動が起きないとも限らないし、その過程で奴隷達が傷つけられる可能性もある。
そしたら物理的に首が飛ぶ。
頭を抱えるガハルド達に救いをもたらしたのは、さわやかな笑顔のハジメだった。
ハジメ「責任は全部クソ野郎に押し付けちまえばいい。
後、今回は大樹の女神様にも協力してもらうから。それでもダメなら、最終的に俺が分からせるよ。」
そんな恐ろしい発言をさらりとかまして、ハジメは"この世界の真実の伝達&本当の神様の使徒と選ばれし勇者様降臨!銀の羽あげるから奴隷を解放しようキャンペーン!"というシナリオを、ガハルド達に提示したのである。
帝国民も、まさか思いもしないだろう。
「ありがたや~!」と手にしている銀の羽が、実は使徒様の気持ち一つで全てを分解する最凶の兵器に変わるとは。
なお、先程の香織の回復魔法の波紋は、彼等を心地よくする以外に、心身共に傷ついているだろう亜人奴隷達をまとめて癒やすためである。
帝国兵達の手によって次々と回収され、奴隷の首輪を外されていく亜人奴隷達が、今この瞬間もコロシアム跡地の方に見える。
それを横目に、ガハルドはハジメの方へ振り返った。そして、
ガハルド「クソガキと言ったのは撤回する。お前は悪魔だっ!」
ハジメ「魔王だけど?」
テラスで聖剣をかかげたままの光輝を含め、龍太郎達も、それどころかユエ達も強く頷くのだった。
それに対して、天然なのか狙って言ったのかよくわからない返しをするハジメであった。
それから後、帝国兵総出で奴隷解放に当たったため、全ての亜人達から枷が外されるまで、さほど時間はかからなかった。
数千人規模の亜人達は、未だ何が起きているのか理解できない、理解できても信じられないといった様子だ。
ただ、呆然としたまま帝都の外に先導する光輝に従っている。
帝都の外に出ても、何度も帝都を振り返り、これは帝国側の新たな遊びか何かでは、逃げ出した途端、酷い目に遭うのではと、戦々恐々としている。
そんな亜人達の度肝を抜く事態が発生。
空から、巨大な船が降りてきた。巨大なコンテナが甲板に増設された逢魔号だ。
ポカンッと口を開けて硬直すら彼等は、直後、甲板の上で元気に手を振る一人の兎人族の少女を見た。
彼女――シアは、凜と響く声で、亜人達が心の奥で期待していた言葉を叫んだ。
シア「みなさぁ~~~ん!助けに来ましたよぉ!もうみんなは自由ですぅ!
みんなでっ、お家にっ、フェアベルゲンにっ、帰りましょう!」
癒やされた傷、背後の帝都、外れた枷、先導する勇者、未知の乗り物そしてそんな乗り物の上で、迎えに来たという同族の少女。
現実が、あり得ないと諦めたはずの未来が、彼等の心に押し寄せた。一拍。
『ワァアアアアアアアアアアッ!』
大地を揺るがすほどの大歓声が上がった。
晴れ晴れとした青空の下、帝都の外壁を背にしつつ、数千人に及ぶ亜人達が家路につく。
有り得ないと思っていた現実に、誰も彼もが涙を流し、隣の者同士抱き合って喜びをあらわにしている。
彼等の中には、心身共に酷い傷を負っている者も多くいたが、再生魔法と魂魄魔法によって大抵治っている。
記憶をピンポイントで消すような細かい事を数千人規模で行うことは流石にユエ達は勿論、ハジメですらそう簡単には出来ないので、酷い記憶との折り合いなどは周りの家族や友人による長期的なケアが必要だろう。
また、帝都以外の町にもまだまだ奴隷となっている亜人達はおり、彼等に対する治癒までは、残念ながらハジメ達は請け負えない。
ハジメ達にも迷宮攻略に割かねばならないという使命もあり、いつエヒトが仕掛けてきてもいいように備えておかなければならない。
だから彼等もまた、樹海に帰還した後、周囲の助けを借りて心身を癒していくしかない。
それでも、生きて再び故郷の地を踏める、生き別れた大切な人達と再会できる……
それはきっと"奇跡"と呼ぶに相応しい出来事だ。
ハジメ「家に帰る、か……。」
ブリッジで、ディスプレイ越しにその光景を眺めていたハジメが小さくつぶや呟いた。
その表情は、とても一言では表現できないものだった。羨望か、共感か、あるいは寂しさか……
なんであれ、それは魔王として過ごした中でも、とても人間味のある表情だった。
そんなハジメの手が、そっと握られた。隣には、ジッと優しげな眼差しで見つめるユエがいる。
膝の上にはパパを励まそうと、ミュウがヒシッと抱き着いている。
そんなハジメの背を、香織達はどこか温かい眼差しで見つめていた。
その優しさを感じ取ったのか、ハジメは小さく微笑むと、亜人達を迎えるため逢魔号の操縦に集中した。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
これにて、第7章はおしまいです。次回からはいよいよ、運命の章―大迷宮攻略編が始まります!
ハジメさんはここで漸くガハルドの口から、リリィの婚約破棄の言質を取りました。
まぁ、互いに腹の探り合いをしていたとはいえ、タイムジャッカーと接触していたので、乗り物系のアーティファクトは暫くお預けですが。
そしてその周知方法も、「全部エヒトっていう詐欺師が悪いんだ!」という
今回は国外で急なのもあって、少々騙すような感じになってしまいましたが、ハジメさんにとっては「相手国だし今まで好き勝手やっていたんだし、同情の余地なし」といった感じです。
というか、もうハウリア達の手綱を引くのを、若干諦めかけている今日この頃です。
さて、次回からは予告とあらすじもリニューアルするつもりですので、お楽しみに!
それでは、そのリニューアル版予告のお試し版を、どうぞ!
次回予告
浩介「俺は浩介!遂に、帝国内でのゴタゴタが終わった俺達は、大迷宮に備えて準備を開始する!
その為に樹海に向かっているわけだが…ハジメがちょっときつそうだな。
まぁ、大量の亜人族輸送って、あいつにしかできなさそうだし。
次回「ストック貯まってから発表します!」……って、台本これだけかよ!?
しかも次回予告で言うことじゃねえ!?」