ありふれない錬成師は最高最善の魔王の力で世界最強を超越する 作:天元突破クローズエボルハザード
今回、ハジメさんがとうとう大迷宮へ。
そして、凶悪な魔獣ベヒモスと世紀の対決へ!
そして、遠藤だけが知るハジメの秘密とは!?
それでは、第一章第5話、どうぞ!
翌朝、早朝から早速迷宮の入り口に集まっていた俺達。
それにしても、全然秘密のダンジョン感が全くないな。
博物館みてぇな入場ゲートもどき、受付窓口の制服お姉さん、所狭しと並ぶ露店…
ここ、大迷宮なんだよな?なんで、こんなバラエティ感満載な入口なんだよ!?
こんなんじゃ、魔物に対する危機感が全くもって感じられないじゃねぇか!
実戦訓練兼ねているんだよな!?なら、もうちょい相応しい雰囲気って奴があるだろ!?
これじゃ、どっちかっていうと、体験型アトラクションに見えて仕方がないぞ!?
ここ、本当にクリアさせる気あんのか!?
…いかん、ついダンジョンについて熱くなってしまった。
まぁ、誰もこの大迷宮の本当の恐ろしさを知らないんだ。
当然っちゃあ、当然か。
まぁ、犯罪防止・死亡率低下の一環にもなっているっていう理由は納得できるし、そりゃあ、王様なら国の安寧や民の安全も大事だしなぁ…
とはいえ、気を引き締めていかねぇと…
素材の売買所?…後で寄ってみよう。
さて、やっと迷宮内に潜った俺達。
とうとう冒険が始まるんだ!
何だかスッゲェワクワクしてきた!
入口とは違って、迷宮はまさしくザ・ダンジョンって感じだ。
縦横5m以上ある通路は明かりも無いのに薄ぼんやり発光しており、松明や明かりの魔法具が無くてもある程度視認が可能だ。
緑光石という特殊な鉱物が多数埋まっているらしく、【オルクス大迷宮】はこの巨大な緑光石の鉱脈を掘ってできているようだな。
隊列を組みながら進むと、8m位の高さがあるドーム状の広間に出た。
お、デカい鼠が出てきたみたいだ。
メルド「よし、光輝達が前に出ろ。他は下がれ!交代で前に出てもらうからな、準備しておけ!あれはラットマンという魔物だ。すばしっこいが、大した敵じゃない。冷静に行け!」
ローテーションかぁ、まぁいいか。
にしても、暇だな。騎士さん、魔物パス早く。
とか思っているうちに、戦闘は終わった。
うん、明らかにオーバーキルだな。
後で、とってある魔石幾つか差し入れておくか。
さて、そんなこんなで、ようやく20層についた。
トラップは構造把握があるので、あまり怖くはない。
まぁ、フェアスコープもあるんだ。何とかなるだろ。
メルド「よし、お前達。ここから先は1種類の魔物だけでなく複数種類の魔物が混在したり連係を組んで襲ってくる。今までが楽勝だったからと言ってくれぐれも油断するなよ!今日はこの二十階層で訓練して終了だ!気合を入れろ!」
因みに俺はパーティーを組んでない。
せっかく一人で遠近両方とも対応出来るのだ、他パーティーの出番を奪ってしまってはいかんだろうと思い、ソロで行くことにしたのだ。
決して、黒の双剣士に憧れたわけではない。
そうしていると、香織と目が合った。
俺が強く頷くと、香織はまるで花でも咲いたかのような笑顔を向けてきた。
嬉しいっちゃ嬉しいが、視線が辛い。
雫は目が合うとすぐにそらす。
別に自分に素直になったっていいのに。
多分、香織も雫なら一緒に、って考えていそうだし。
それにしても、このねちっこい視線、マジでうぜぇ。
言いたいことがあんなら、正面から堂々言ってこいやって話だ。
さて、ようやく二十階層の一番奥、鍾乳洞っぽいところにきた。
よし、後は二十一階層に行けば、今日は終了だな。
それにしても、神代魔法がただの転移って…
あれだけさんざん余裕ぶっていたくせして、ホントは解放者の後継者が怖いんだな、アイツ。
メルド「擬態しているぞ!周りをよ~く注意しておけ!」
っと、岩ゴリラを発見したみたいだな。
うわ、ホントにカメレオンっぽい岩のゴリラなんだな。
美食家の漫画で見た厳つい顔の奴にそっくり。
え~と、違法マンモスだったっけ?
そん時ぐらいに…
メルド「ロックマウントだ!二本の腕に注意しろ!剛腕だぞ!」
おぉ、近くで見ると怖いな。
さて、そろそろ女子たちの方に向かっていくか。
十分距離を取って、と。
岩ゴリラ「グゥガガガァァァァアアアアーーーー!!」
咆哮にいち早く備えた俺はセーフだったが…
「ぐっ!?」
「うわっ!?」
「きゃあ!?」
やっぱそうなるよね…って、ヤバいヤバい!
俺は素早く女子たちを庇うように立ち、迎撃態勢をとった。
それと同時に、岩ゴリラがもう一匹の岩ゴリラを投げてきた。
しかも鼻息が荒いル○ンダイブときた。
どうするかって?もちろん!
ハジメ「向こういけぇー!」ズガァーン!
岩ゴリラ「グゥォォォオオオーーー!?」
勢いよく力を込めてぶん殴った。
正直ちょっと痛かったが、奴をぶっ飛ばすことには成功した。
幸運なことに、投げてきた奴の方に向かっていったので、まとめて粉砕出来た。
良かったぁ…って、何みんな茫然としているんだ。
戦場だぞここ。
ハジメ「…み、みんな…俺よりもあいつ等に目を…」
メルド「ハッ!?こらこら、戦闘中に何やってる!」
メルドさんの言葉でようやくみんな動き出した。
つかなんで、岩ゴリラまで固まっていたんだよ。
ハジメ「…い、痛い…」
香織「は、ハジメ君!?大丈夫!?」
ハジメ「異世界の岩ってマジで固ェ…
でも大丈夫だ。これぐらいなら全員ぶっ飛ばせる。」
恵理「兄さん、やせ我慢はダメ…」
ハジメ「…ごめんなさい、マジで痛いです。回復オナシャス。」
鈴「認めるの早っ!」
とりあえず、治療を…ってうぉい!?
光輝「貴様…よくも香織達を…許さない!」
ハジメ「光輝!ここで撃ったら、天井が崩れる!もう少し威力抑えろ!」
光輝「南雲は黙ってろ!こいつ等だけは絶対に…!」
あ~もう!仕方がねぇ!
岩ゴリラ「グゥォオー!?」グチャアッ!
光輝「!?」
コイツが技を放つ前に、全員ぶっ飛ばす!
そう決めた俺は、目にもとまらぬ速さで岩ゴリラ共を粉砕した。
あまりの速さに皆ポカンとしていたが、関係ない。
むしろ、動かれると邪魔だ。
そうして一分後には、岩ゴリラの死体の山が出来上がっていた。
ハジメ「フィ~、全く、あんな威力のデカい技放ったら、こっちまで生き埋めになるやろがい!少しは冷静にだな…」
光輝「いや、それ以前にお前非戦闘系職だったよな!?」
ハジメ「鍛えただけだ。至って以前の生活と変わっていない。」
光輝「それでもおかしいだろぉ!?」
ハジメ「いいんだよ、細かいこたぁ。」
質問攻めしてくる光輝を無視して、メルドさんに向き直る。
ハジメ「メルドさん、とりあえず、崩落の危険性はなくなりましたね。」
メルド「え?あ、あぁ、そうだな!光輝、気持ちはわかるがな、こんな狭いところで大技を放つのは危険だ。さっきの技を使う際には、なるべく広いところでやるんだぞ?」
光輝「…メルドさん、さっきの南雲の行動はどうなんですか?」
メルド「…さぁ、先を急ごう!」
光輝「メルドさん!?」
うん、これでよかったんだよ、きっと。(バラッ)
って、うん?
壁が崩れて…
香織「…あれ、何かな?キラキラしてる…」
…オイオイ、よりにもよって罠じゃねぇか。
てか、フェアスコープは?ここは真っ先に出すだろ、普通。
メルド「ほぉ~、あれはグランツ鉱石だな。大きさも中々だ。珍しい。」
ハジメ「メルドさん、見惚れるのはいいですけど、まずはトラップか確認しましょうよ。」
メルド「おぉ!そうだな、スマンスマン!」
ふぅ、危険は去った…
檜山「だったら俺らで回収しようぜ!」
うん、知ってた。バカだからね、仕方がない。
メルド「こら、勝手なことをするな!安全確認もまだなんだぞ!」
いや、実力行使で止めましょうよ。こいつ等に聞くという知能はないんですし。
騎士A「団長、トラップです!」
メルド「ッ!?」
やれやれ、結局はこうなるのか。
ま、単独行動が出来るという点では、チャンスだな。
メルド「くっ、撤退だ!早くこの部屋から出ろ!」
皆急いで外に向かうが…間に合わないだろうな。
そしてまた転移する羽目になった俺達。
転移後、無事着地した俺は、周りを見渡して思った。
これ、魔物に殺される以前に、転落死の可能性、高くね?と。
とりあえず、注意喚起はしておくか!
ハジメ「光輝、皆に橋の真ん中に寄るよう言ってくれ。
俺よりもお前が頼んだ方が、皆応じやすいだろう。」
光輝「あ、あぁ。皆、落ちないように真ん中に寄るぞ!」
よし、とりま転落死の可能性は低くなった。あとは…
ハジメ「メルドさん、何か来ます!」
メルド「あぁ、お前達、すぐに立ち上がって、あの階段の場所まで行け。急げ!」
そうは問屋が卸さないってやつだな。もう既に魔法陣が出てきやがった。
前方のベヒモス、後方のトラウムソルジャー、か。
なんて呑気に言ってる場合じゃない!
メルド「まさか……ベヒモス……なのか……」
ハジメ「メルドさん!」
メルド「!?」
俺が次の言葉をかけようとしたその時…
ベヒモス「グルァァァァァアアアアアッ!!」
ハジメ・メルド「「!」」
マズい!
メルド「アラン!生徒達を率いてトラウムソルジャーを突破しろ!
カイル、イヴァン、ベイルは全力で障壁を張れ!ヤツを食い止めるぞ!
光輝、お前達は早く階段へ向かえ!」
光輝「待って下さい!メルドさん!
俺達もやります!あの恐竜みたいなヤツが一番ヤバいでしょう!俺達も……」
ハジメ「ナマ言ってんじゃねぇ!!」
光輝「!?」
俺は光輝の胸ぐらを掴み、強い口調で諭した。
ハジメ「最初に言ったろ、どんなに力が強くても、知識や経験がなきゃダメだって。メルドさんはあの魔物がどんなにヤバいかを知っている。だからこそ、俺達を逃がそうとしているんだ。国の命運を背負った、俺達を。」
光輝「ッ!でも!」
カイル、イヴァン、ベイル「「「全ての敵意と悪意を拒絶する、神の子らに絶対の守りを、ここは聖域なりて、神敵を通さず、"聖絶"」」」(メリメリッ!)
後ろで騎士さん達が障壁を張るが、衝撃波により他の奴らがパニクッている。
ハジメ「今やるべきことを考えろ!お前は皆も世界も救う、そう言ったな。
だったら、ここにいるクラスの皆を助けに行け!
あれを見ろよ!あいつ等パニックで何もできないでいるんだぞ!
このままじゃ犠牲者が出る、それでもお前は良いのか!」
光輝「!」
光輝を離すと、一人の生徒に迫っていたトラウムソルジャーを、クウガのモーフィングパワーで焼き払った。
ハジメ「後で技能も話すし、文句だって聞いてやる。
だから、皆を導き、守り抜け!それが勇者であるお前の使命だろ!」
光輝「ッ!分かった!すまない、南雲!」
ハジメ「今は良い、皆を頼む!」
光輝「!?南雲!?」
光輝に皆を任せると、俺はベヒモスの方に向かった。
聖絶がそろそろ持たない!
しょうがねぇ!全力開放だ!
ハジメ「みなさん、伏せて!」
メルド「!?ハジメ!?」
俺は騎士たちを飛び越え、ベヒモスの眉間に素早く近づき、
ハジメ「オルゥアアア!!!」ドゴォ!!
思いっきりぶん殴った。
ベヒモス「グルァァァァァ!?」
…チッ、流石に本調子じゃねぇか、少し後退させるだけか、だがこれでいい。
ハジメ「メルドさん!光輝!助けに来るのは、皆が正気になってからでいい!
俺が時間を稼ぐ!それぐらいは大丈夫だ!」
メルド「待て!そいつ六十五階層の魔物、ベヒモスなんだぞ!」
ハジメ「そんなのどうでもいい!」
メルド「!」
ヤツが立ち上がった。そろそろ来るな。
ハジメ「アイツが光輝やあんた等より強いのは百も承知だ。でも、だからこそ、俺を信じろ。」
メルド「!」
俺は再びこぶしを構え、奴に向けて走り出した。
みんな、光輝の補助、頼んだぞ!
さて、啖呵切って威勢よく飛び出したはいいものの、だ。
コイツ相手にどれぐらい持つかな?
金剛、剛力、剛腕があるとはいえ、正直キツイし、このままじゃジリ貧だ。
こうなったら、奥の手だ。
一瞬だけでいい、一部だけ魔王の鎧を具現化させる。
それならいける!
ベヒモス「グルァァァァァアアアアア!!」
ヤツがまた突進してきた。
俺は素早く、奴の腹と地面の間に滑り込み、
ハジメ「ウォラァァアア!!」ドガァァァァァン!!!
右足を具現化させ、奴のどてっ腹にキックを叩きこんだ。
ベヒモス「グルォォォオオオ!?」
奴は勢いよくひっくり返った。
チャンスだと思った俺は、そのまま尻尾をひっつかんだ。
ハジメ「回れぇ!」ブンブンブンブンッ!
ベヒモス「グォォォオオオ!?」
必死にぶん回し、
ハジメ「ぶっ刺されぇ!」グサァッ!
ベヒモス「グギャァァァアアア!?」
壁に向かってぶん投げた。
角が勢いよく、壁にぶっ刺さるように。
ざまぁみやがれ。
さぁて、どうやら向こうも決着ついたみてぇだな。
ベヒモスが壁に刺さる少し前…
増加するトラウムソルジャーに対して、窮地に陥っていた生徒は少なくはなかった。
しかし、逆に冷静になって反撃している生徒たちも中にはいた。
恵理「ッ!こいつ等、数だけは多いね!」
トシ「白崎さん!騎士団の皆さんを!」
香織「うん!天の息吹、満ち満ちて、聖浄と癒しをもたらさん、"天恵"!」
的確に敵を分析し、サポートしてくれる騎士たちのサポートに回る恵理、香織、幸利。
雫「龍太郎!そろそろ光輝が来るわ!」
龍太郎「おう!十分持たせられるぜ!」
浩介「うわ!メルドさんも凄いけがじゃねぇか!白崎さん、こっちもお願い!」
光輝やメルドといったリーダー格が戻るまで、時間を稼ぐ雫、龍太郎、浩介。
そして、その甲斐もあり…
光輝「皆!助けに来たぞ!道は俺達が切り開く!"天翔閃"!」
メルド「お前達!今まで何をやってきた!訓練を思い出せ!さっさと連携を取らんか!馬鹿者共が!」
二人のリーダーが到着し、士気を立て直した。
治癒魔法が使える者、攻撃魔法が使える者、戦闘職である者と、次から次へと立ち上がり、その実力を発揮していく。
そしてついに、魔法陣による召喚速度を超え、それを合図に突撃した。
そしてハジメ以外の全員が、包囲網を突破した。
その後、リスポーンしたトラウムソルジャーにより、橋への道が塞がれるが、光輝が魔法を放ち蹴散らす。
クラスメイト達が訝しげな表情をするが、恵理、幸利、浩介、雫、龍太郎といった面々もそれを援護している。
香織「皆、待って!ハジメ君を助けなきゃ!ハジメ君がたった一人であの怪物を抑えているの!」
香織のその言葉に困惑するクラスメイト達。
しかし、橋の方を見ると、そこには壁にぶっ刺さったベヒモスの姿があった。
「嘘だろ!?あんなデカいやつを投げたのか!?」
「あの魔物、角が刺さって抜けない!?」
次々と驚愕と疑問の声を漏らす生徒達にメルド団長が指示を飛ばす。
メルド「そうだ!坊主がたった一人であの化け物を抑えているから撤退できたんだ!前衛組!ソルジャー共を寄せ付けるな!後衛組は遠距離魔法準備!もうすぐ坊主がこっちに戻ってくる。それを合図に、一斉攻撃であの化け物を攻撃するんだ!」
その声によって、気を引き締めなおした生徒達。
中には階段の方向を未練がましく見ている者もいる。
無理もない。ついさっき死にかけたのだ。一秒でも早く安全を確保したいと思うのは当然だろう。
しかし、メルド団長の「早くしろ!」という怒声に未練を断ち切るように戦場に戻った。
その中には檜山大介もいた。自分の仕出かしたこととはいえ、本気で恐怖を感じていた檜山は、直ぐにでもこの場から逃げ出したかった。
しかし、ふと脳裏にあの日の情景が浮かび上がる。
それは、迷宮に入る前日、ホルアドの町で宿泊していた時のこと。
緊張のせいか中々寝付けずにいた檜山は、トイレついでに外の風を浴びに行った。
涼やかな風に気持ちが落ち着いたのを感じ部屋に戻ろうとしたのだが、その途中、ネグリジェ姿の香織を見かけたのだ。
初めて見る香織の姿に思わず物陰に隠れて息を詰めていると、香織は檜山に気が付かずに通り過ぎて行った。
気になって後を追うと、香織は、とある部屋の前で立ち止まりノックをした。
その扉から出てきたのは……ハジメだった。
檜山は頭が真っ白になった。檜山は香織に好意を持っている。
しかし、自分とでは釣り合わないと思っていた。
それでも、光輝のような相手なら、所詮住む世界が違うと諦められた。
しかし、ハジメは違う。自分より劣った存在(檜山はそう思っている)が香織の傍にいるのはおかしい。
それなら自分でもいいじゃないか、と端から聞けば頭大丈夫?と言われそうな考えを檜山は本気で思っていた。
それに加えて、その部屋にハジメの親友の幸利が入っていった。
その後部屋から出てきたのは、香織と幸利に加えて、ハジメの妹の恵理、香織と同じく人気の高い雫と来た。(…俺は?)
それを見て檜山は、幸利のようなオタクまで楽しそうに会話していたのだ。
なぜ自分はダメなんだ、あんなオタクでもいいなら自分の方がいいのに、と端から聞いたら、一回病院行けとまで言われる始末の考えを、檜山は本気で思っていたのだ。
唯でさえ溜まっていた不満は、既に憎悪にまで膨れ上がっていた。
香織が見惚れていたグランツ鉱石を手に入れようとしたのも、その気持ちが焦りとなって表れたからだろう。
その時のことを思い出した檜山は、たった一人でベヒモスを圧倒するハジメを見て、今も祈るようにハジメを案じる香織を視界に捉え……仄暗い笑みを浮かべた。
……やれやれ、ようやくその気になってきたか。
ハジメ「うっし、俺も向かうか!」
そう言って皆の所へ走り出したその時、
ドシーン!
ハジメ「!?オイオイ、嘘だろ!?」
あのデカブツが壁から角を外すことに成功していた。
俺は全速力で逃げた!
それはもう風みたいに。
それと同時に、あらゆる属性の魔法攻撃が殺到した。
もちろん、それも全力でよけながら、走った。
……まぁ、そう上手くはいかないんだろうけどな。
唐突に軌道を変えた火球がこっちに来たが、難なくはじく。
それと同時に、下手人の姿をとらえる。
檜山「ッ!?」
ハッ、やっぱ小物は小物か。
そんな侮蔑を含んだ笑みを、わざと奴に向けた。
檜山「クソがァ!」
そう言いながら、無茶苦茶に撃ってくるバカ。
おかげで、ベヒモスにダメージが蓄積されていくぜ。
そうして余裕で向こうに着くと思ったその時、
ハジメ「!?」(ッ!オイオイ、この感覚は!)
まるで時を歪められたかのように、一瞬行動に揺らぎが生じた。
その一瞬が俺の命運を分けた。
檜山「死ね死ね死ねェー!!」
そういって魔法を狂ったように撃ちこむ檜山。
揺らぎによってバランスが崩れた俺は、その内の一つに当たり、後方へ吹っ飛ばされてしまう。
衝撃自体は大したことはないが、未来予知でその結果を知ってしまった。
そのタイミングを見計らっていたかのように、橋に亀裂が走った。
メキメキと橋が悲鳴を上げる。
そして遂に……橋が崩壊を始めた。
しょうがねぇ、ここは…
ハジメ「必ず戻る!」
香織「!」
ハジメ「俺を、信じろ!」ヒュウゥゥゥ……
そういって、俺はベヒモスと共に、奈落へ落ちていった。
ハジメ「あ、そういえば、ベヒモスって食えるかな?」ジュルリ…
ベヒモス「グルァア!?」ビクゥッ!
ハジメ「よし、焼いて食うか。では、いただきます!」ガブリンチョッ!
ベヒモス「グルァァァァァアアアアア!?」ジタバタ
うん、しばらくは大丈夫そうだな!
香織「…ハジメ君…」
香織はハジメが落ちた穴を見つめながら、悲しげに呟いた。
雫「…大丈夫よ、香織。ハジメくんだもの、きっとすぐに帰ってくるわ。」
香織「…うん!」
雫に元気づけられ、香織が奮起したその時、
「グアァァァァ!?」
突然辺りに響く絶叫。
更に他のクラスメイトの悲鳴も聞こえる。
そちらを見ると、幸利、恵理が檜山に詰め寄っていた。
檜山はどうやら斬りつけられたようで、腕から血が流れている。
恵理「このクソ野郎!よくも、よくも兄さんを…!」
檜山「な、何言って…」
トシ「しらばっくれてんじゃねぇよ!分かんねぇとでも思ったのか!?
テメェが死ねっていいながら、ハジメに向かって魔法を当てたのを、しっかり見ていたんだよ!」
慌てて、止めに入った騎士団に抑えられながらも、二人は声を上げて言った。
その言葉に、クラスメイト達が驚いた顔で檜山を見る。
檜山「で、でたらめだ!アイツが死んだからって勝手に…(死ね死ね死ねェー!!)!?」
突如聞こえてきた自分の声に振り替えると、携帯らしきものを持っていた遠藤がいた。
そしてその画面には、自分がハジメに対して殺意を持った攻撃の決定的瞬間が映っていた。
浩介「…これで十分だろ。犯人はお前だ、檜山。」
檜山「な…テメェ…!」
メルド「やめろ!今は言い争っている場合じゃない!!」
論争はメルド団長の一喝で一旦収まる。
メルド「とにかく、今は迷宮から抜けるのが最優先だ。遠藤、恵理、清水、先程言っていた件については脱出してから話をしっかり聞く。だから今は抑えてくれ。」
恵理「ッ!……分かり、ました。」
トシ「……分かりました。」
メルド団長の言葉で一旦冷静になった二人は、それが正論だと理解した。
一方の浩介も、音声を発した携帯のような銃を見て、あの日の出来事を思い出した。
ハジメ「浩介、ちょっといいか?」
浩介「?どうしたんだ、ハジメ。」
ある訓練後の夜、ハジメから相談事を受けた浩介。
ハジメ「…実はな、俺、もうすぐ大変なことに巻き込まれるかもしれないんだ。」
浩介「ハァッ!?どうしてそうなるんだよ!?」
ハジメ「詳しくは分からんが…このままだと皆にも危害が及ぶかもしれない。
だから…」
浩介「だから?」
ハジメ「これを秘密裏に、預かっていてくれ。」
そういってハジメが懐から取り出したのは、携帯のような銃だった。
浩介「1?こ、これは何だ!?」
ハジメ「ファイズフォンマークXだ。普通の携帯としての機能も一応使える。
生憎電話は使えんが。」
浩介「こ、これを俺に!?責任重大すぎるだろ!?」
ハジメ「分かっている。無理を重々承知で頼む。そいつは銃としても使用可能だ。
いざとなったら、そいつを使え。
それと、出来ればコイツのことは他言無用で頼む。」
浩介「…お前がマジに頼むってことは、相当ヤバいんだな。」
ハジメ「あぁ、でも俺は必ず生きて帰る。だから、俺を信じてくれ!」
浩介「…分かったよ。でも、死ぬんじゃねぇぞ。王様。」
ハジメ「おうよ!少なくともお前以外に殺されるビジョンは見えねぇよ。」
浩介「…それ、褒めているんだよな?」
ハジメ「あぁ、俺を唯一殺せる、最高最善の暗殺者、だろ?」
浩介「なんだそりゃ。」
そう言って他愛のない話をしていたが、浩介は胸騒ぎを感じていた。
浩介「まさか、こんな形でバラしちまうとはな…わりぃ、ハジメ。
直ぐに知られちまった…。」
ハジメから渡されたファイズフォンマークXを握りしめながら、今なお生きているはずの友に向けて、浩介は謝罪した。
その後、映像という決定的証拠に加え、不用意に皆を危険にさらしたことから、檜山はクラスメイトから大反発を受けた。
当然、わざとじゃない、魔が差したと光輝の前で土下座した。
ハジメに向かった火の玉は自分の放ったものではあるが、ただ制御を誤ってしまったのだという。
そして、ハジメから挑発的な視線を送られ、またバカにされたと思ってつい、というのが檜山の言い訳。
自分の中では、檜山達はつい最近ハジメから不当な暴力を受けたことになっている光輝は檜山を許そうと言い出した。
こうして反省しているんだ、だから許してやろうと。だが、誰も了承しなかった。
当然である。映像という現代では決定的証拠に加え、自分たちの仲間が殺されたかもしれないという現実を突き付けられたのだ。憤慨するに決まっている。
それを突き付けられた光輝も、ばつが悪くなったのか何も言い返せなかった。
勇者一行の一人が殺人などと、悪いイメージを持つことを恐れたイシュタルは、彼らを説得し無罪にしようとしたが、王宮の侍女やコック、庭師などが反発。
実は、彼らはハジメによって、助けられたことがあるのだ。
それも、ハジメが自分でこっそり貯めていた貯金を全部使いきってでも、助けようと奔走していたのだ。
本人は魔力増加、自己満足のつもりでやっただけだから、と言っていたものの、彼らは何も恩を返せていないことから、今回の件で反発に名乗りを上げたのだ。
更には、つい最近女性の方から求婚したという新婚夫婦の貴族を筆頭に一部の貴族、それにリリアーナ王女も抗議。
実をいうと、作り過ぎてしまった高級ダイヤを売りさばくために、王都在住の貧乏貴族に無償配布したり、装飾品に困っていた貴族に格安で譲ったりと、色々貢献してきたハジメさんであった。
因みに、リリアーナには、王族に好印象を与えたいと思っただけで、恋愛感情といったものはなかった。
だが、リリアーナの意見を聞いて製作していくうちに、我が家で鍛えられた「最高の品を送り届けたい」というクリエイター魂に火が付き、結果として少し派手になってしまった。
それがリリアーナにとってはうれしかった。たった一人の男性が、自分のために文句ひとつ言わず、素敵な贈り物をくれたことに、少しときめいてしまったのだ。
と、こうしてハジメが自己鍛錬、自己満足の理由の下に行動してきた結果がこれである。
正直、その功績を聞いた者たちのほとんどが初耳であり、香織達も驚いていた。
同時に、ハジメが本当に王様になって帰ってくるんじゃないか、という安心感まで生まれた。
そういうわけで、檜山の有罪が決まったが、本来は幽閉されるところを、なんと無罪となったのだ。
しかし、これには訳がある。
無罪を申し出た幸利曰く、「勝手に脱獄されても困るだろ。どうせなら、監視付きで行動させた方がいい。こっちも直ぐに実力行使に出られるし。」とのこと。
こうして、檜山は他のクラスメイトから白い目で見られながら、迷宮攻略に参加することとなったのだ。
正直、本人にはこちらの方が辛いだろう。
仲間だと思われていたクラスメイトから、殺人者を見るような目で見られるのだから。
尚、浩介が証拠として提出した、ファイズフォンマークXは魔道具として扱われ、国に献上してほしいとまで言われたが、浩介は「友人からの大切な贈り物だ、譲るわけにはいかない。」と言って拒否した。
更に、「もし盗もうものなら、全員で勇者一行に殺人鬼がいることをバラす」とまで言われ、やむなく断念したとのこと。
同時に、南雲ハジメは「無能の皮をかぶった化け物」「ベヒモスを圧倒した異常者」「王様になりたがった狂人」と、聞こえは悪いが十分に恐れられる人物として扱われることとなった。
後にハジメは、「どうしてこうなった…」と嘆いていた模様。
長文失礼いたしました。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
さて、とうとうハジメ君が奈落へ旅立ちました。
でも、大丈夫。彼、魔王だから。
次回から、魔王の本気で無双が始まります。
こうご期待を!
尚、ハジメさんの二週間の行動については、幕間で語らせていただきます。
そして、勇者一行の仲について。
遠藤くんが何故、ファイズフォンマークXを託されたのか。それは彼が深淵卿だから!
今後のヒロイン'sや仲間たちの行動についても、しっかり描いていきます!
それと、檜山の扱いは終始底辺です。
正直、乗っ取りクソ野郎と同じ位のクズですから。
宜しければ、高評価・コメント宜しくお願い致します。
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