ありふれない錬成師は最高最善の魔王の力で世界最強を超越する 作:天元突破クローズエボルハザード
今回はユエの過去に触れるお話です。
叔父の真実の愛に気づき、ユエが涙を流す時、
邪神の所業に、ハジメが怒りを爆発させる!
大波乱の第一章第9話、それでは、どうぞ!
早速、拾った鉱石を調べてみることにした俺だったが、ふと気になったので聞いてみることにした。
ハジメ「そういえばユエ、良かったら教えてくれないか?君が何者なのか、それにどうしてここに封印されていたのかを。言いたくないなら、構わないが…」
ユエ「ん、大丈夫。」
そう言って、ユエは話し始めた。
ユエ「私は、先祖返りの吸血鬼。」
ハジメ「!?」
マジか、こんな可愛い吸血鬼がいるのかよ。
そういえば、吸血鬼族は三百年前に滅んだはずだが…
まぁ、いいか。
ユエ「十二歳の頃に"先祖返り"で力に目覚めて……その時からずっとこの姿。」
ハジメ「この世界にもあるんだ、"先祖返り"。」
ユエ「十七歳の時には吸血鬼族の王位に就いてた。」
ハジメ「マジか…凄いな、ユエ。」
しかし、ユエの表情は暗かった。
ユエ「…でも、二十三歳のある日、突然叔父様が王位に就くことになって、私は化け物として処刑されることになった。」
ハジメ「!?処刑!?なんでだよ!?」
ユエ「家臣の皆が、お前はもう必要ないって……叔父様……これからは自分が王だって……。」
ハジメ「……もういい、ユエ。これ以上は、君が辛くなる。」
しかし、ユエは続けた。
ユエ「私、それでもよかった。でも、凄い力があるから危険だって……」
ハジメ「もういいって!」
ユエ「……殺せないから、封印するって。」
ハジメ「……そうか、辛かったな。」
そう言って頭をなでるが、少しひっかっかった。
ハジメ「ん?死なないってどういうことだ?真祖か何かか?」
ユエ「真祖?」
ハジメ「俺の世界では、吸血鬼は真祖と死徒の二種類いる。
日の光や聖水、十字架やニンニクに弱いのが死徒、それらが全く効かず、ほぼ不死身なのが真祖だ。」
ユエ「私、どっちでもない。」
ハジメ「……そうか。」
ユエ「でも、私は特別。」
ハジメ「?そりゃ、どういうことだ?」
ユエ「"再生"で勝手に治る。怪我してもすぐ治るし、首を落とされてもそのうち治る。」
ハジメ「……マジか。」
うん、コイツもある意味チートじゃねぇか。
ユエ「他にも、魔力を直接操れるし、魔法も全属性に適性があって、詠唱や魔法陣なしで使える。」
ハジメ「魔法使いとしてスゲェ有能じゃねぇか!?まぁ、俺も同じだけどさぁ!」
ユエ「!?は、ハジメも!?」
ハジメ「おう、だけど基本、拳や武器使っているから、魔法は任せるぜ。何事も適材適所ってのがあるし。」
ユエ「んっ、わかった。」
妙に嬉しそうだなぁ。
にしても、コイツを敵に回すとか、当時の王って奴ぁどうかしてんじゃねぇのか。
っと、いけねぇ。この鉱石を早速調べるか。
ハジメ「?コイツぁ、映像記録用のアーティファクトっぽいな?心当たりはないか?」
ユエに聞いてみるが、知らないと首を横に振る。
ハジメ「う~ん、とりあえず、魔力流してみるか?」
そういって、魔力を流してみると…
緑光が部屋中を照らし、宵闇色交じりの黄金の光で土塗された。
そして、映像が再生されたのか、人のようなものが映し出された。
すると、ユエが驚いたように目を見開き、茫然としていた。
ユエ「…おじ、さま?」
ハジメ「!?」
叔父様って…たしか、ユエを封印したっていう…!
映し出されたのは、初老位の金髪紅眼の美丈夫だった。
すると、映像の人物はゆっくりと話し始めた。
『…アレーティア。久しい、というのは少し違うかな。
君は、きっと私を恨んでいるだろうから。いや、恨むなんて言葉では足りないだろう。私のしたことは…あぁ、違う。こんなことを言いたかったわけじゃない。
色々考えてきたというのに、いざ遺言を残すとなると上手く話せない。』
…アレーティア、それがユエの過去の名前か。
それにしてもこのおっさん、ユエにしたことを謝りに来たのか?
だとしても、ユエがそれを知らないのは一体…
『そうだ。まずは礼を言おう。…アレーティア。きっと、今、君の傍には、君が心から信頼する誰かがいるはずだ。少なくとも、変成魔法を手に入れることができ、真のオルクスに挑める強者であって、私の用意したガーディアンから君を見捨てず救い出した者が。』
あのガーディアンはこのおっさんが作ったのか…
それにしても、変成魔法や真のオルクスって、何だ?
『…君。私の愛しい姪に寄りそう君よ。君は男性かな?それとも女性だろうか?
アレーティアにとって、どんな存在なのだろう?恋人だろうか?
親友だろうか?あるいは家族だったり、何かの仲間だったりするのだろうか?
直接会って礼を言えないことは申し訳ないが、どうか言わせて欲しい。
…ありがとう。その子を救ってくれて、寄り添ってくれて、ありがとう。
私の生涯で最大の感謝を捧げる。』
!?最初から、誰かがユエを助けることを見抜いたうえで、こいつを隠していたのか!?
それにしても、なぜ感謝?邪魔だと思っていたはずなのに?
そんな俺の疑問の答えを、映像の人物は語り始めた。
『アレーティア。君の胸中は疑問であふれているのだろう。
それとも、もう真実を知っているのだろうか。
私が何故、あの日、君を傷つけ、あの暗闇の底へ沈めたのか。
君がどういう存在で、真の敵が誰なのか。』
そこから語られたのは、衝撃的な真実だった。
なんと、ユエは神子と呼ばれる存在として生まれ、あの"エヒト"に狙われていたのだと言う。
それに気が付いたユエの叔父が、欲に眼の眩んだ自分のクーデターにより、アレーティアを殺したと見せかけて奈落に封印し、あの部屋自体を神をも欺く隠蔽空間としたとのことだった。
そして、ユエの封印も、僅かにも気配を掴ませないための苦渋の選択であったのだ。
証拠になるものなんて何もなかったが、俺は忌々しい奴の名を聞き、体中に虫唾が走った。
同時に、この映像の男性の眼を見て確信した。
この人の言っていることは真実だと。
この人は、自分が無力だったせいで、ユエに悲しい思いをさせてしまったことを悔やんでいた。
本当はずっと傍にいて、守ってあげたかった。だけど、出来なかった。
彼女を魔の手から遠ざけることで精一杯だった。そのせいで、彼女を苦しめてしまった。
だからせめて、このアーティファクトに真実を残すことで、彼女とその仲間に願いを託したのだ。
この世界を支配する、悪辣な邪神を討ち果たしてほしい。
そして、たった一人の大切な姪を救ってほしい、と。
そんな眼をしていたのだ。
『君に真実を話すべきか否か、あの日の直前まで迷っていた。だが、奴らを確実に欺くためにも話すべきではないと判断した。私を憎めば、それが生きる活力にもなるのではとも思った。』
封印の部屋にも長居するべきではなかったのだろう。
だから、王城でユエを弑逆したと見せかけた後、話す時間もなかったに違いない。
その選択が、どれほど苦渋に満ちたものだったのか、映像の向こうで握り締められる拳の強さが、それを表していた。
俺は同時に、この人の強さも感じた。力ではなく、心の。
確かに、この人は奴の野望を食い止めることはできなかった。
だが、それが出来る者が、大切な姪をきっと助けてくれる。
そう確信していたからこそ、悪を演じきったのだ。
自身が憎まれることも承知の上で、奴からユエを遠ざけようとしていたのだ。
『それでも、君を傷つけたことに変わりはない。今更、許してくれなどとは言わない。
ただ、どうかこれだけは信じてほしい。知っておいてほしい。』
彼の表情が苦しげなものから、泣き笑いのような表情になった。
それは、ひどく優しげで、慈愛に満ちていて、同時に、どうしようもないほど悲しみに満ちた表情だった。
それはおそらく、自身がもうこの後生きられないことを悟っており、生きているうちに本心を打ち明けることが出来なかったことへの悲しみであろう。
俺もユエも、ただただ彼の話を聞き続けた。
『愛している。アレーティア。君を心から愛している。ただの一度とて、煩わしく思ったことなどない。
ーー娘のように思っていたんだ。』
ユエ「…おじ、さま。ディン叔父様っ。私はっ、私も…」
父のように思っていた。その想いは、ホロホロと頬を伝う涙と共に流れ落ちて言葉にならなかった。
だが、俺の手を強く握り締めながら、一生懸命に伝えようとするその姿が、何より雄弁に伝えている。
その姿を見て、俺の心の中には、何かどす黒いものが沸き上がっていた。
言葉では言い表せない位、黒く、紅く、そして熱く燃え滾る、何かが。
『守ってやれなくて済まなかった。未来の誰かに託すことしか出来なくて済まなかった。
情けない父親役で済まなかった。』
ユエ「…そんなことっ」
目の前にあるのは過去の映像で、ユエの叔父の遺言に過ぎない。でも、そんなの関係ない。
叫ばずにはいられないだろう。
彼の目尻に光るモノが溢れる。だが、決して、それを流そうとはしなかった。
ぐっと耐えながら、愛娘へ一心に言葉を紡ぐ。
そして俺は、心の中にあったモノの正体にやっと気づいた。
それは怒り。この二人の親子の繋がりを、私利私欲がために引き裂いた、あの神言詐欺のクズ野郎に対する、憎しみとも似て似つかない程、煮えたぎった黒い感情。
彼が言葉を紡ぐたびに、それはだんだん強くなっていく。
だが…
『傍にいて、いつか君が自分の幸せを掴む姿を見たかった。
君の隣に立つ男を一発殴ってやるのが密かな夢だった。そして、その後、酒でも飲み交わして頼むんだ。『どうか娘をお願いします。』と。アレーティアが選んだ相手だ。
きっと、真剣な顔をして確約してくれるに違いない。』
夢見るように映像の向こう側では彼は遠くに眼差しを向ける。
もしかすると、その方向に、過去のユエがいるのかもしれない。
俺も、喉元まで登っていた黒い感情を収め、彼の言葉に向き合う。
そして思った。自分も彼女の叔父に会ってみたかった、彼の密かな夢にも付き合ってやりたかった。
それと同時に、こんなに素晴らしい親父さんに、挨拶の一つや二つもできないことが、とても悔しかった。
『そろそろ、時間だ。もっと色々、話したいことも、伝えたいこともあるのだが……私の生成魔法では、これくらいのアーティファクトしか作れない。』
ユエ「!やっ、嫌ですっ。叔父さ、お父様!」
記録できる限界が迫っているようで苦笑いする彼に、ユエが泣きながら手を伸ばす。
叔父の、否、父親の深い愛情と、その悲しい程に強靭な覚悟が激しく心を揺さぶる。
言葉にならない想いが溢れ出す。
それを見ていた俺は、ただ彼女を優しく抱きしめることしか出来なかった。
そんな自身も腹立たしかった。だが、今この場に黒い感情は似合わない。
直ぐにそれを収め、ユエの叔父、否、この場合は父親の言葉に耳を澄ます。
『もう、私は君の傍にいられないが、たとえこの命が尽きようとも祈り続けよう。アレーティア。
最愛の娘よ。君の頭上に、無限の幸福が降り注がんことを。
陽の光よりも温かく、月の光よりも優しい、そんな道を歩めますように。』
ユエ「…お父様っ。」
彼の視線が彷徨う。それはきっと、ユエに寄り添う物を想像しているからだろう。
俺はその視線に向き合い、彼の願いを聞き届けようと決意した。
『私の最愛に寄り添う君。お願いだ。どんな形でもいい。
その子を、世界で一番幸せな女の子にしてやってくれ。どうか、お願いだ。』
ハジメ「…あぁ、もちろんだとも。あんたの愛と覚悟に敬意を表して、必ず幸せにする。
そして、最高最善の魔王の名に懸けて、誓おう。彼女を、奴の呪縛から解き放つことを。」
俺の言葉は届いたわけではないだろう。だが、確かに、彼は満足そうに微笑んだ。
きっと遠い未来で自分の言葉を聞いた者がどう答えるか確信していたのだろう。
いろんな意味でとんでもなく、強く、そして、愛情深い人だ。
映像が薄れていく。彼の姿が虚空に溶けていく。
それはまるで、彼の魂が召されていくかのようだった。
そして…最後の言葉が響き渡った。
『…さようなら、アレーティア。君を取り巻く世界の全てが、幸せでありますように。』
封印部屋に泣き声が木霊する。
悲しくはある。けれど、決してそれだけではない、温かさの宿った感涙にむせぶ音だ。
俺はそんな彼女を優しく抱きしめ、ただただ彼女の感情を受け止めていた。
大切な人を失ったことへの悲しみ、慕っていた人から告げられた愛情への喜び、
当時何も知らず、何もできなかった自分や、自分の大切な人を奪った者に対する怒り…
いろんな感情が流れ込んできた。
そうしてどれくらい経っただろうか。
やがて、涙で濡れた顔をそっと上げたユエ。その頬を優しく拭い、俺は問うた。
ハジメ「ユエ、お前はこれからどうしたい?どんな決定でも、俺は受け入れる。」
ユエ「…たい。」
ハジメ「!」
ユエ「叔父様のッ…仇をッ!取りたいッ!!」
ユエは涙ぐみながらも、固い決意を口にした。なら俺も、それに応える以外ないな。
ハジメ「…そうか。なら、さっさとここを抜けて、あのクソ野郎の面、思いっきりぶん殴ってやれ。
俺がアイツ引きずりおろして、お前の前に持ってきてやるから。」
ユエ「…ハジメ、協力して、くれるの?」
ハジメ「当たり前だ、お前のおやっさんに誓ったんだ。こちとら魔王の看板背負ってんだ、一度掲げた誓いは、何が何でも投げ出さねぇ!それに…」
ユエ「?」
ハジメ「あのナルシス粘着ストーカー野郎は、俺を不快にさせた!俺は奴が気に入らねぇ!」
ユエ「!」
ハジメ「俺の気に入らねぇもんは全部、敵だ!元の世界に帰る前にぶっ殺さねぇと気が済まねぇ!」
ユエ「ハジメ…。」
ハジメ「行くぞ、ユエ。一日でも早くぶっ飛ばして、あの野郎の首を墓前に供えてやらねぇとな!」
ユエ「…ん!」
ハジメ「そんで!」
ユエ「?」
俺は、もう一つの果たすべき誓いを大声で叫んだ。
ハジメ「お前を俺の故郷に連れて行って、俺の家族にする!もう二度と、悲しい想いをさせないために!世界で一番、幸せな女の子として、お前が笑えるように!」
ユエ「!…うん!…ハジメ。」
ハジメ「うん?」
ユエ「…ありがとう。」
ハジメ「気にすんな、俺だって偶然見つけただけだ。ま、真実を知っちまった以上、俺たちは共犯者だがな。」
ユエ「ん!ハジメと、お揃い!」
ハジメ「…まぁ、お前が嬉しいなら何よりだ。」
俺は早速ユエを大事そうに抱きしめながら、封印の間を後にした。
封印の間を出ると、空気を察していたのか、イナバが外で待っていた。
ハジメ「悪ぃな、イナバ。待たせちまって。」
イナバ「…きゅ。」
イナバは悲しそうな顔でユエを見つめ、擦り寄ろうとした。
ユエが手を伸ばすと、イナバは自分からその手に擦り寄った。
ユエ「…!ふわふわ…!」
嬉しそうにイナバをなでるユエ。
あまりの触感に微笑んでいる彼女は可愛い。
やっぱり、別嬪さんには笑顔が一番だ。
ハジメ「…ありがとな、イナバ。」
イナバ「きゅ!」
イナバはとても賢い。空気も読めるのはすごい発見だ。
コイツは絶対に強くなる。うん、間違いない。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
ハジメさん、自称神(笑)のクソ野郎にガチギレ。
遂に奴の殲滅を決意。
ユエも叔父様の真実を知ったので、アルヴが出て来ようとも、一瞬動揺すれど、直ぐに見抜くでしょう。
氷雪洞窟の試練も、鋼メンタルで乗り越えそう。
そしてラストのイナバさん、クールな男は空気を読むと言わんばかりの行動でした。
さて、今回は十三話。
後二話で、ハジメさんの変身を入れたいと思っております!
香織さん達の修行の成果は、その後に発表しようかと。
宜しければ、高評価・コメント宜しくお願い致します。
追記:リースティアさん、晶彦さん、毎度の誤字報告、ありがとうございます!
もしこの小説以外で、この中で読んでみたいと思う展開の作品は?
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