ありふれない錬成師は最高最善の魔王の力で世界最強を超越する 作:天元突破クローズエボルハザード
今回は、香織達サイドのお話です。
三人称で進めていこうと思います。
さぁ、修行の成果は如何に!?
そして、ランデル君の恋はいつ玉砕するのか!?
驚愕の第一章第13話、それではどうぞ!
ハジメ達が迷宮のボスを攻略してから時間が進み…
光輝達勇者一行は、再び【オルクス大迷宮】にやって来ていた。
但し、訪れているのは光輝達勇者パーティーと小悪党組、それに永山重吾という大柄な柔道部の男子生徒が率いており、浩介が所属している男女5人のパーティーだけだった。
理由は簡単だ。
話題には出さなくとも、ハジメの死が多くの生徒達の心に深く重い影を落としてしまったのである。
"戦いの果ての死"というものを強く実感させられてしまい、真面に戦闘などできなくなったのだ。一種のトラウマという奴である。
ハジメが危惧した通り、嫌でも思い知らされることになったのだ。
戦争の悲惨さや死と隣り合わせの世界を実感させられてしまった。
当然、聖教教会関係者はいい顔をしなかった。
実戦を繰り返し、時がたてばまた戦えるだろうと、毎日のようにやんわり復帰を促してくる。
時には、帰れなくなると脅したり、甘言による説得をしたりと、手段はさまざまであった。
しかし、それに猛然と抗議した者がいた。愛子先生だ。
愛子は当時、遠征には参加していなかった。
作農師という特殊かつ激レアな天職のため、実戦訓練よりも教会側としては農地開拓の方に力を入れてほしかったのである。
愛子がいれば、食糧問題は解決してしまう可能性が限りなく高いからだ。
そんな愛子はハジメの訃報を知るとショックのあまり寝込んでしまった。
自分が安全圏でのんびりしている間に、生徒が死んでしまったこと、その犯人が同じ生徒の一人だったという事実に、全員を日本に連れて帰ることが出来なくなったということに、責任感の強い愛子はショックを受けたのだ。
そんな愛子の元に幸利が訪れて、彼からの伝言を伝えた。
「俺を、信じろ。それと、出来たら醤油を作ってほしい。」と…
そして、こう言った。
「アイツは生き残れる自信があったから、こんな伝言まで出来る余裕があるんです。きっと大丈夫ですよ。アイツ、王様になる男なんですし。先生もアイツを、一人の生徒を信じてやって下さい。」と。
その言葉で目が覚めた彼女は、生徒達のために立ち上がったのだ。
愛子の天職は、この世界の食料関係を一変させる可能性がある激レアである。
その愛子先生が、不退転の意思で生徒達への戦闘訓練の強制に抗議しているのだ。
関係の悪化を避けたい教会側は、愛子の抗議を受け入れた。
結果、自ら戦闘訓練を望んだ勇者パーティーと小悪党組、重吾のパーティーのみが訓練を継続することになった。そんな彼らは、再び訓練を兼ねて"オルクス大迷宮"に挑むことになったのだ。
今回もメルド団長と数人の騎士団員が付き添っている。
今日で迷宮攻略6日目。
現在の階層は60層だ。確認されている最高到達階数まであと5層である。
しかし、光輝達は現在立ち往生していた。
正確には先へ行けないのではなく、何時かの悪夢を思い出して思わず立ち止まってしまったのだ。
そう、彼らの目の前にはいつかの物とは異なるが、同じような断崖絶壁が広がっていたのである。次の階層へ行くには崖にかかった吊り橋を進まなければならない。それ自体は問題ないが、やはり思い出してしまうのだろう。
そんな中、進める者を筆頭に勇者一行は進んでいく。
その中には、勇者パーティーの香織、雫、恵理、そして永山パーティーの浩介もいた。
香織「この先にきっとハジメ君が…」
雫「えぇ、いるはずよ。」
恵理「トシくん、大丈夫かなぁ。」
浩介「まぁ、ハジメなら何だかんだで生きていそうだしなぁ…」
とまぁ、ハジメの生存が分かっているが故の会話をしながら、先頭をグングン進んでいる。
光輝「お、おい!あまり前に進み過ぎるな!」
龍太郎「アイツら、なんか機嫌よくなってねぇか?」
鈴「エリエリ、お兄さんが死んだはずなのに…」
永山「浩介!?いつの間に!?」
他の勇者パーティー団員は唖然としているが。
一方、犯罪者檜山を筆頭とした小悪党組はというと…
近藤「お、おい、大介…」
檜山「あぁ?なんだよ?」
中野「オイオイ、急にキレるなよ。」
檜山「…うるせぇ。」
斎藤「俺らはただ、ペースを気にしていただけで…」
檜山「…分かってる。」
案の定、ギクシャクしていた。
無理もない。自分の親友がクラスメイトを殺してしまったのだから。
殺されたはずの本人は未だに旅を続けているが。
さて、ここまで一行は問題も無く、遂に歴代最高到達階層である65層にたどり着いた。
メルド「気を引き締めろ!ここのマップは不完全だ。何が起こるか分からんからな!」
付き添いのメルドの声が響く。光輝達は表情を引き締め未知の領域に足を踏み入れた。
暫く進んでいると、大広間に出た。何となく嫌な予感がする一同。
その予感は的中した。
広間に侵入すると同時に、部屋の中央に魔法陣が浮かび上がったのだ。赤黒い脈動する直径10メートルほどの魔法陣。
それは、とても見覚えのある魔法陣だった。
光輝「ま、まさか、……アイツなのか!?」
光輝が額に冷や汗を浮かべながら叫ぶ。他のメンバーの表情にも緊張の色がはっきりと浮かんでいた。
龍太郎「マジかよ、アイツは死んだんじゃなかったのかよ!」
竜太郎も驚愕を露わにして叫ぶ。それに答えたのは、険しい表情をしながらも冷酷な声音のメルド団長だ。
メルド「迷宮の魔物の発生原因は解明されていない。一度倒した魔物と何度も遭遇することも普通にある、気を引き締めろ!退路の確保を忘れるな!」
いざという時、確実に逃げられるようにまず退路の確保を優先する指示を出すメルド。
それに部下が即座に従う。だが、光輝がそれに不満そうに言葉を返した。
光輝「メルドさん。俺たちはもうあの時の俺達じゃありません。何倍も強くなったんだ!
もう負けはしない!必ず勝って見せます!」
龍太郎「へっ、その通りだぜ。何時までも負けっぱなしは性に合わねぇ。ここらでリベンジマッチだ!」
竜太郎も不敵な笑みを浮かべて呼応する。
メルドはやれやれと肩をすくめ、確かに今の光輝達の実力なら大丈夫だろうと、同じく不敵な笑みを浮かべた。
そして、遂に魔法陣が爆発したように輝き、かつての悪夢が再び光輝達の前に現れた。
「グゥガァアアア!!!」
咆哮を上げ、地を踏み鳴らす異形。ベヒモスが光輝達を壮絶な殺意を宿らせた眼光で睨む。
全員に緊張が走る中、4人の男女が前方に飛び出した。
光輝「香織!?」
龍太郎「雫!?」
鈴「恵理!?」
重吾「浩介!?」
そう、ミライから手解きを受けた我が魔王の仲間たちである。
雫「私がカウンターを叩きこむわ、香織は回復とエンチャントをお願い!」
香織「分かったよ、でも私も戦うから!」
恵理「私も魔法で威力を抑えるから、存分にやっちゃって!」
浩介「詰めは我が担当しよう。全力で行かれよ、姫君達よ!」
…若干、一人だけ口調が変だが、決して中二病ではない。
特訓の末、こうなってしまったのだ。
決して、彼自身の心の中にそう言った一面があったわけではない。
四人は役割分担を済ませると配置につき、迎撃態勢を整えた。
まず、香織が付与魔法を発動させた。
香織「エンチャント<筋力強化><耐性強化><体力増加><自動回復><魔力増加>!」
全員にすぐさま効果が発揮され、ステータスが一時的に飛躍した。
メルド「!?無詠唱、しかも同時に5つだと!?」
メルド団長は香織の技術に驚いていた。
まず、彼女は治癒魔法が得意な治癒師であって、付与魔法が使えるわけではなかった。
それに、無詠唱で魔法が使え、同時に5つも強化できるなんて、いくら彼女がチートでも信じられなかった。
それにここまでのパワーアップが出来ることにも、驚愕の連続であった。
しかし、他の者達が見ていないところで特訓を重ねていた彼女たちにとって、この程度は出来て当たり前であった。
他の者達が唖然としている間に、ベヒモスが雄たけびを上げながらこちらに向かってきた。
「グゥガァァアア!」
しかし、そのベヒモスに立ちはだかる影が一つ。
いつの間にか手に入れていた刀を持ちながら、抜刀の構えをとった雫である。
光輝「!下がれ、雫!」
光輝が慌てて制止しようとするが、ベヒモスは直ぐそこまで迫っていた。
光輝が咄嗟に駆け寄り、彼女の盾になろうとしたその時、
雫「虚空陣奥義"雪風"ッ!」
光輝がふと気がつくと、いつの間にか雫はベヒモスの後ろに立っており、納刀の構えになっていた。
刀が鞘に納まった瞬間、ベヒモスの4つの足が包丁で切った野菜のように切れた。
ベヒモス「グゥォォォオ!?」
しかし、勢いまでは流石に止まらなかったようだ。
その時、魔力をためていた恵理が魔法を放った。
恵理「マスタースパーク!」
様々な属性を掛け合わせた、それも無詠唱の閃光が、ベヒモスの額に命中した。
「グゥルァァアア!?」
その威力に押されたのか、段々減速していった。
そして、そのスピードがだんだん収まって行った瞬間…
何所からともなく現れた、巨大な風球がベヒモスを押しつぶし、角をへし折った。
「グゥガァァアア!?」
苦しみだすベヒモスの頭上に、何かがいるようだった。
そこに現れたのは、黒装束の浩介であった。
流れるような連携、まるで計算されたような怒涛の攻撃だった。
それに唖然としている他のメンバー、それを見た香織は彼らを 咤した。
香織「皆!今のうちに攻撃を!」
光輝「!あ、あぁ!永山たちは左から、檜山達は背後を、メルド団長達は右側から!後衛は魔法準備、上級を頼む!」
光輝が矢継早に指示を出す。メルド直々の指揮官訓練の賜物だ。
メルド「ほぅ、迷いなくいい指示をする。聞いたな?総員、光輝の指揮で行くぞ!
香織達もいいな?」
メルドが叫び騎士団員を引き連れベヒモスの右サイドに回り込むべく走り出した。
それを機に一斉に動き出し、ベヒモスを包囲する。
弱ったベヒモスに周りから攻撃を加え、逃げられないように剣と魔法で防衛線を張る。
更に、香織の付与魔法もあってか、全員の攻撃が増加していた。
立ち上がることもままならないベヒモスは、ただ攻撃を受け続けるだけであった。
「グゥルァガァアアアア!!!!」
そして遂に、ベヒモスの断末魔が広間に響き渡った。
やがて、その叫びは少しずつ小さくなり、消えていった。
そして、後にはベヒモスの死骸が残った。
「か、勝ったのか?」
「勝ったんだろ……」
「勝っちまったよ……」
「マジか?」
「マジで?」
全員、まるで夢でも見ているかのようだった。
同じく、茫然としていた光輝が、我を取り戻したのかスッと背筋を伸ばし聖剣を頭上へ真っ直ぐに掲げた。
光輝「そうだ!俺達の勝ちだ!」
キラリと輝く聖剣を掲げながら勝鬨を上げる光輝。
その声にようやく勝利を実感したのか、一斉に歓声が沸き上がった。
男子連中は肩を叩きあい、女子達はお互いに抱き合って喜びを表にしている。メルド達も感慨深そうだ。
そんな中、香織達4人も1か所に集まり、特訓の成果を実感していた。
香織「えっと~その…」
恵理「何というか、ねぇ…」
雫「遠藤君、大丈夫かしら…?」
浩介「グスッ…何だよあれ。完全に痛い奴の発言じゃねぇかよぉ…」
訂正。一人だけ口調が変わっていた男、浩介を慰めていた。
何というか、改めて聞くと確かに変だった。
そんな彼を、女子達は痛ましいものを見るような目で、男子達は羨ましそうな目で見ていた。
メルド「あ~何というかだ。その、素晴らしかったぞ!
恵理はあんな凄い魔法を放つし、雫もあっという間に敵の後ろにまわっていたし、香織もいつの間に付与魔法を覚えたのかは分からんが、中々の腕じゃないか!
お前達、いつの間にそんなに強くなったんだ!?」
香織「あ、ありがとうございます!それで、遠藤君なんですが…」
メルド「お、おう!凄かったな、浩介!
魔物に気づかれずにあんな大技を放てるなんてな!」
浩介「…すいません、メルド団長。
今の俺、賛辞を受けても立ち上がれる状態じゃないので…」
メルド「そ、そうか…まぁ、強く生きろ。」
皆の団長でも、彼の心の傷のケアは流石に無理だった模様。
光輝「二人共、無事か?香織、最高の付与魔法だったよ。
雫もいつの間にか凄い技を放っていたし、恵理も凄い魔法だったな。
皆がいれば、怖いものなしだよ。」
爽やかな笑みを浮かべながら香織と雫、恵理を労う光輝。
雫「ええ、大丈夫よ。光輝は……まぁ、大丈夫よね。」
香織「うん、平気だよ、光輝くん。皆の役に立ててよかったよ。」
恵理「まぁ、これ位しないと、兄さんには「まだまだだな」って言われそうだし。」
同じく微笑みを持って返す3人。
光輝「これで少しは、南雲も檜山を許してくれるだろう。
アイツがいなくても十分戦える位、俺達は強くなれたんだから。
きっとそう思っているはずだ。」
「「「……」」」
勝手に殺さないでほしいし、代弁しないでほしいなぁ、と心では思いつつも、敢えて言わない3人であった。
永山「浩介、この"深淵卿"ってのは何だ?」
浩介「お願いですそれだけは何が何でも聞かないで下さいお願いです」(早口で繰り返している)
野村「ほ、ホントにどうしたんだ、浩介?」
こっちはこっちで爪痕がデカかったようだ。
兎にも角にも、少年少女達は過去のトラウマを乗り越えたのだった。
更に時間は飛んで…
勇者一行は、一時迷宮攻略を中断してハイリヒ王国王都に戻っていた。
道順の分かっている今までの階層と異なり、完全な探索攻略であることから、その攻略速度は一気に落ちたこと、また魔物の強さも一筋縄では行かなくなってきたためメンバーの疲労が激しく一度中断して休養を取るべきという結論に至ったのだった。
尤も、休養だけなら宿場町ホルアドでも良かった。
王宮まで戻る必要があったのは、迎えが来たからである。
なんでも、今まで音沙汰の無かったヘルシャー帝国から勇者一行に会いに使者が来るのだという。
光輝達の脳裏に「何故、このタイミングで?」という疑問が浮かんだのは当然だろう。
勇者召喚の際に同盟国である帝国の人間が居合わせなかったのは、エヒト神による"神託"がなされてから光輝達が召喚されるまで殆ど間がなかったために同盟国である帝国に知らせが行く前に勇者召喚が行われてしまい、召喚直後の顔合わせが出来なかったのが理由である。
尤も、仮に勇者召喚の知らせがあっても帝国は動かなかったと考えられる。
何故なら、帝国は300年前にとある名を馳せた傭兵が建国した国であり、冒険者や傭兵の聖地ともいうべき完全実力主義の国だからだ。
突然現れ、人間族を率いる勇者と言われても納得は出来ないだろう。
聖教教会は帝国にもあり、帝国民も例外なく信徒であるが、王国民に比べれば信仰度は低い。
大多数の民が傭兵か傭兵業からの成り上がり物で占められている事から信仰よりも実益を取りたがる者が多いのだ。
尤も、あくまでどちらかと言えばという話であり、熱心な信者であることに変わりはないのだが。
そんな訳で、召喚されたばかりの頃の光輝達と顔合わせをしても軽んじられる可能性があった。
もちろん、教会を前に、神の使徒に対してあからさまな態度は取らないだろうが。
王国が顔合わせを引き伸ばすのを幸いに、帝国側、特に皇帝陛下は興味を持っていなかったので、今まで関わることがなかったのである。
しかし、今回の【オルクス大迷宮】攻略で、歴史上最高記録である65層が突破されたことに加え、無詠唱かつたった4人でベヒモスを圧倒した者達がいるという情報により、帝国側も光輝達に興味を持つに至った。
帝国側から是非会ってみたいという知らせが来たのだ。
王国側も聖教教会も、いい時期だと了承したのである。
そんな話を帰りの馬車の中でツラツラと教えられながら、光輝達は王宮に到着した。
因みに、本で帝国について知ったハジメさんは、帝国には絶対に行かないと決めていた。
当然である。
なにせ、いきなりステータスが100,000なんて馬鹿げた数値を持っていることが知られたら、皇帝は何が何でもハジメを配下に引き入れようとしていただろう。
その時は、帝国が魔王の国に変わるだけだとは思うが、当時のハジメさんはそんなこと微塵も考えていなかった。
馬車が王宮に入り、全員が降車すると王宮の方から一人の少年が駆けて来るのが見えた。
十歳位の金髪碧眼の美少年である。
光輝と似た雰囲気を持つが、ずっとやんちゃそうだ。
その正体は、ハイリヒ王国の失恋王子ことランデル・S・B・ハイリヒである。
ランデル殿下は、主人に駆け寄る愛犬のような雰囲気で駆け寄ってくると大声で叫んだ。
ランデル「香織!よく帰った!待ちわびたぞ!」
もちろんこの場には、香織だけでなく他にも帰還を果たした生徒達が勢揃いしている。
その中で、香織以外見えないという様子のランデル殿下の態度を見れば、どういう感情を持っているかは容易に想像つくだろう。
実は、召喚された翌日から、ランデル殿下は香織に猛アプローチを掛けていた。と言っても、彼は十歳。
香織から見れば小さい子に懐かれている程度の認識であり、その思いが実る気配は微塵もない。
生来の面倒見の良さから、弟のようには可愛く思ってはいるようだが。
香織「ランデル殿下、お久しぶりです。」
パタパタ振られる尻尾を幻視しながら微笑む香織。
そんな香織の笑みに一瞬で顔を真っ赤にするランデル殿下は、それでも精一杯男らしい表情を作って香織にアプローチをかける。
ランデル「ああ、本当に久しぶりだな。
お前が迷宮に行ってる間は生きた心地がしなかったぞ。
怪我はしてないか? 余がもっと強ければお前にこんなことさせないのに……」
ランデル殿下は悔しそうに唇を噛む。
香織としては、自分の身位は守れるのでそんなことは必要ないが、少年の微笑ましい心意気に思わず頬が緩む。
香織「お気づかい下さりありがとうございます。ですが、私なら大丈夫ですよ?
自分で望んでやっていることですから。」
ランデル「いや、香織に戦いは似合わない。
そ、その、ほら、もっとこう安全な仕事もあるだろう?」
香織「安全な仕事、ですか?」
ランデル殿下の言葉に首を傾げる香織。ランデル殿下の顔は更に赤みを増す。
となりで面白そうに成り行きを見ている雫は察しがついて、少年の健気なアプローチに思わず苦笑いする。
恵理はというと、玉砕する彼の未来を予想して、可哀想なものを見る目で見ている。
ランデル「う、うむ。例えば、侍女とかどうだ?
その、今なら余の専属にしてやってもいいぞ。」
香織「侍女ですか?いえ、すみません。私は治癒師ですから……」
ランデル「な、なら医療院に入ればいい。
迷宮なんて危険な場所や前線なんて行く必要ないだろう?」
医療院とは、国営の病院のことである。王宮の直ぐ傍にある。
要するに、ランデル殿下は香織と離れるのが嫌なのだ。
しかし、そんな少年の気持ちは鈍感な香織には届かない。
香織「いえ、前線でなければ直ぐに癒せませんから。
心配して下さりありがとうございます。」
ランデル「うぅ…」
ランデル殿下は、どうあっても香織の気持ちを動かすことができないと悟り小さく唸る。
そこへ空気を読まない厄介な善意の塊、勇者光輝がにこやかに参戦する。
光輝「ランデル殿下、香織は俺の大切な幼馴染です。俺がいる限り、絶対に守り抜きますよ。」
光輝としては、年下の少年を安心させるつもりで善意全開に言ったのだが、この場においては不適切な発言だった。
恋するランデル殿下にはこう意訳される。
〝俺の女に手ぇ出してんじゃねぇよ。俺がいる限り香織は誰にも渡さねぇ! 絶対にな!〟
親しげに寄り添う勇者と治癒師。実に様になる絵である。
ランデル殿下は悔しげに表情を歪めると、不倶戴天の敵を見るようにキッと光輝を睨んだ。
ランデル殿下の中では二人は恋人のように見えているのである。
尤も、魔王の傍らに佇む黒い天使の方が、彼女に似合いそうだが。
ランデル「香織を危険な場所に行かせることに何とも思っていないお前が何を言う! 絶対に負けぬぞ!香織は余といる方がいいに決まっているのだからな!」
光輝「え~と……」
ランデル殿下の敵意むき出しの言葉に、香織はどうしたものかと苦笑いし、光輝はキョトンとしている。
雫はそんな光輝を見て溜息だ。
浩介は感じた。
雫がいなかったら、このパーティーは内ゲバで崩壊していただろう、と。
後、香織さんは魔王の傍に行きたがっているので、二人ともそろそろ諦めろ。
そう言いたかった。
ガルルと吠えるランデル殿下に何か機嫌を損ねることをしてしまったのかと、光輝が更に煽りそうなセリフを吐く前に、涼やかだが、少し厳しさを含んだ声が響いた。
リリアーナ「ランデル。いい加減にしなさい。香織が困っているでしょう?
光輝さんにもご迷惑ですよ。」
ランデル「あ、姉上!?……し、しかし。」
ランデル殿下の姉、王女リリアーナが現れ、ランデル殿下を諫める。
リリアーナ「しかしではありません。
皆さんお疲れなのに、こんな場所に引き止めて……
相手のことを考えていないのは誰ですか?」
ランデル「うっ……で、ですが……。」
リリアーナ「ランデル?」
ランデル「よ、用事を思い出しました!失礼します!」
ランデル殿下はどうしても自分の非を認めたくなかったのか、いきなり踵を返し駆けていってしまった。
その背を見送りながら、王女リリアーナは溜息を吐く。
リリアーナ「香織、光輝さん、弟が失礼しました。代わってお詫び致しますわ。」
リリアーナはそう言って頭を下げた。美しいストレートの金髪がさらりと流れる。
香織「ううん、気にしてないよ、リリィ。
ランデル殿下は気を使ってくれただけだよ。」
光輝「そうだな。なぜ、怒っていたのかわからないけど……
何か失礼なことをしたんなら俺の方こそ謝らないと。」
香織と光輝の言葉に苦笑いするリリアーナ。
姉として弟の恋心を察しているため、意中の香織に全く意識されていないランデル殿下に多少同情してしまう。
後、光輝は行かない方がいい、絶対ややこしくなるから。
他の皆が激しくそう思った。
まして、ランデル殿下の不倶戴天の敵は別にいることを知っているので尚更だった。
ちなみに、ランデル殿下がその不倶戴天の敵に会ったとき、一騒動起こすのだが……それはまた別の話。
リリアーナ姫は、現在十四歳の才媛だ。
その容姿も非常に優れていて、国民にも大変人気のある金髪碧眼の美少女である。
性格は真面目で温和、しかし、硬すぎるということもない。
TPOをわきまえつつも使用人達とも気さくに接する人当たりの良さを持っている。
光輝達召喚された者にも、王女としての立場だけでなく一個人としても心を砕いてくれている。
彼等を関係ない自分達の世界の問題に巻き込んでしまったと罪悪感もあるようだ。
そんな訳で、率先して生徒達と関わるリリアーナと彼等が親しくなるのに時間はかからなかった。
特に同年代の香織や雫達との関係は非常に良好で、今では愛称と呼び捨て、タメ口で言葉を交わす仲である。
後、我らが魔王ことハジメさんにホの字のお方でもある。
罪づくりな魔王様はというと、現在放浪の旅に出られているとか何とか…(香織談)
後、雫が彼に相応しいであろう中二ネームを考えている…らしい。
リリアーナ「いえ、光輝さん。ランデルのことは気にする必要ありませんわ。
あの子が少々暴走気味なだけですから。
それよりも……改めて、お帰りなさいませ、皆様。
無事のご帰還、心から嬉しく思いますわ。」
リリアーナはそう言うと、ふわりと微笑んだ。香織や雫といった美少女が身近にいるクラスメイト達だが、その笑顔を見てこぞって頬を染めた。
リリアーナの美しさには二人にない洗練された王族としての気品や優雅さというものがあり、多少の美少女耐性で太刀打ちできるものではなかった。
現に、永山組や小悪党組の男子は顔を真っ赤にしてボーと心を奪われているし、女子メンバーですら頬をうっすら染めている。
異世界で出会った本物のお姫様オーラに現代の一般生徒が普通に接しろという方が無茶なのである。
昔からの親友のように接することができる香織達の方がおかしいのだ。
光輝「ありがとう、リリィ。
君の笑顔で疲れも吹っ飛んだよ。俺も、また君に会えて嬉しいよ。」
さらりとキザなセリフを爽やかな笑顔で言ってしまう光輝。
繰り返し言うが、光輝に下心は一切ない。
生きて戻り再び友人に会えて嬉しい、本当にそれだけなのだ。
単に自分の容姿や言動の及ぼす効果に病的なレベルで鈍感なだけで。
浩介は理解した、ハジメが光輝の舵取りに苦労していたことを。
リリアーナ「えっと、そうですか?それはよかったです、ね!」
王女である以上、国の貴族や各都市、帝国の使者等からお世辞混じりの褒め言葉をもらうのは慣れている。
なので、彼の笑顔の仮面の下に隠れた下心を見抜く目も自然と鍛えられている。
それ故、光輝が一切下心なく素で言っているのがわかってしまう。
そういう経験は家族以外ではほとんどないので、つい頬が赤くなってしまうリリアーナ。
また、たまにオロオロとしてしまうというギャップもまた、彼女の人気の一つだったりする。
まぁ、彼女が本当に照れている理由は、脳内で光輝はハジメさんに変換されているからなのだが…
光輝は相変わらず、ニコニコと笑っており自分の言動が及ぼした影響に気がついていない。
それに、深々と溜息を吐くのはやはり雫だった。
苦労性が板についてきている。本人は断固として認めないだろうが。
浩介は思った。ハジメ、早く帰って来てくれ。
じゃないと八重樫さんが過労死するから。と。
リリアーナ「えっと、とにかくお疲れ様でした。
お食事の準備も、清めの準備もできておりますから、ゆっくりお寛ぎくださいませ。
帝国からの使者様が来られるには未だ数日は掛かりますから、お気になさらず。」
どうにか体面を立て直したリリアーナは、光輝達を促した。
光輝達が迷宮での疲れを癒しつつ、居残り組にベヒモスの討伐を伝え歓声が上がったり、これにより戦線復帰するメンバーが増えたり、愛子先生が一部で"豊穣の女神"と呼ばれ始めていることが話題になり彼女を身悶えさせたりと色々あったが光輝達はゆっくり迷宮攻略で疲弊した体を癒した。
一方、我らが切り札、遠藤君はというと…
アビスゲート「フッ、今日も行くぞ、吾輩よ!」
浩介「イヤァァァアアアッ!?」
…今日も今日とて、死闘を繰り広げていた。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
さて、遂に香織達の修行の成果が公開されました。
因みに、使われた技は知る人ぞ知る名作からとっています。
後、雫は真っ白仮面よりも、髪色変えた同じ属性のキャラが似合いそうですね。
ランデル君がフラれるまで、後5章…
リリアーナは既にハジメさんに惚れているので、光輝の気障なセリフにもちゃんと対応しています。
後、彼女にも香織経由でハジメさんの生存が知られています。
(ちゃんと誰にも言わないよう約束した。)
なので、ハジメさんは女性関連で色々苦労します。
宜しければ、高評価・コメント宜しくお願い致します。
追記:リースティアさん、晶彦さん、毎度の誤字報告、ありがとうございます!
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