ありふれない錬成師は最高最善の魔王の力で世界最強を超越する   作:天元突破クローズエボルハザード

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お待たせいたしました。
今回も地上組サイドのお話。
皇帝との会談、そして新キャラがまさかの登場!
ミライちゃんの過去の秘密が語られる!?

波乱の展開の第一章第14話、それではどうぞ!


18.時巡る光

それから三日経ち、遂に帝国の使者が訪れた。

現在、光輝達、迷宮攻略に赴いたメンバーと王国の重鎮達、そしてイシュタル率いる司祭数人が謁見の間に勢ぞろいし、レッドカーペットの中央に帝国の使者が五人ほど立ったままエリヒド陛下と向かい合っていた。

 

エリヒド王「使者殿、よく参られた。

勇者方の至上の武勇、存分に確かめられるがよかろう。」

???「陛下、この度は急な訪問の願い、聞き入れて下さり誠に感謝いたします。

して、どなたが勇者様なのでしょう?」

エリヒド王「うむ、まずは紹介させて頂こうか。光輝殿、前へ出てくれるか?」

光輝「はい。」

陛下と使者の定型的な挨拶のあと、早速、光輝達のお披露目となった。陛下に促され前に出る光輝。

召喚された頃と違い、まだ二ヶ月程度しか経っていないのに随分と精悍な顔つきになっている。

尤も、香織さんや雫さん、リリアーナにとっては、ハジメさんの方がいい顔をしている認識だが。

 

ここにはいない、王宮の侍女や貴族の令嬢、居残り組の光輝ファンが見れば間違いなく熱い吐息を漏らしうっとり見蕩れているに違いない。

光輝にアプローチをかけている令嬢方だけで既に二桁はいるのだが……

彼女達のアプローチですら「親切で気さくな人達だなぁ。」としか感じていない辺り、光輝の鈍感は極まっている。

まさに鈍感系主人公を地で行っている。

 

因みに我らが魔王も、例の件によってアプローチは一時期光輝よりも多かった。

しかし、彼の訃報を受けた一部の者は、死人のハジメから生者の光輝に鞍替えした。

それによって、派閥抗争が起きたこともあったらしいが…

それはさておき、光輝を筆頭に、次々と迷宮攻略のメンバーが紹介された。

 

???「ほぅ、貴方が勇者様ですか。随分とお若いですな。

失礼ですが、本当に六十五層を突破したので?

確か、あそこにはベヒモスという化物が出ると記憶しておりますが……」

使者は、光輝を観察するように見やると、イシュタルの手前露骨な態度は取らないものの、若干、疑わしそうな眼差しを向けた。

使者の護衛の一人は、値踏みするように上から下までジロジロと眺めている。

その視線に居心地悪そうに身じろぎしながら、光輝が答える。

 

光輝「えっと、ではお話しましょうか?

どのように倒したかとか、あっ、六十六層のマップを見せるとかどうでしょう?」

光輝は信じてもらおうと色々提案するが使者はあっさり首を振りニヤッと不敵な笑みを浮かべた。

???「いえ、お話は結構。それよりも手っ取り早い方法があります。

私の護衛一人と模擬戦でもしてもらえませんか?

それで、勇者殿の実力も一目瞭然でしょう。」

光輝「えっと、俺は構いませんが……」

 

光輝は若干戸惑ったようにエリヒド陛下を振り返る。

エリヒド陛下は光輝の視線を受けてイシュタルに確認を取る。イシュタルは頷いた。

神威をもって帝国に光輝を人間族のリーダーとして認めさせることは簡単だが、完全実力主義の帝国を早々に本心から認めさせるには、実際戦ってもらうのが手っ取り早いと判断したのだ。

エリヒド王「構わんよ。光輝殿、その実力、存分に示されよ。」

???「決まりですな、では場所の用意をお願いします。」

こうして急遽、勇者対帝国使者の護衛という模擬戦の開催が決定したのだった。

因みに、我らが魔王ハジメさんならこの時点で怪しみ、実際に65層に連れていって倒して見せる、という強引だが確実な方法で黙らせるつもりである。

まぁ、実力を隠して戦うのであれば、錬成によるトラップで翻弄するか、拳で分からせるかの二択であるが。

十分にチートとかそういうものから逸脱している。

 

光輝の対戦相手は、なんとも平凡そうな男だった。

高すぎず低すぎない身長、特徴という特徴がなく、人ごみに紛れたらすぐ見失ってしまいそうな平凡な顔。

一見すると全く強そうに見えない。

刃引きした大型の剣をだらんと無造作にぶら下げており、構えらしい構えもとっていなかった。

これをハジメが見たら、警戒心高めで相手をしなければいけないと思うだろう。

見た目が平凡であるほど、実力が読めないのだから。

それに加えて、一見無造作に見える構えも、本人にとっては、直ぐに刃を振るうことのできる構えであることを予想し、その軌道を読むべきだと考えるべきなのだ。

尤も、これは戦闘経験豊富な軍人や、歩くゲームオーバーなハジメだからこそ、見抜けるものなのだ。

 

そうとは知らない光輝は、舐められているのかと些か怒りを抱く。

最初の一撃で度肝を抜いてやれば真面目にやるだろうと、最初の一撃は割かし本気で打ち込むことにした。

光輝「いきます!」光輝が風となる。

"縮地"により高速で踏み込むと豪風を伴って唐竹に剣を振り下ろした。

並みの戦士なら視認することも難しかったかもしれない。

もちろん、光輝としては寸止めするつもりだった。だが、その心配は無用。

むしろ舐めていたのは光輝の方だと証明されてしまう結果となった。

 

光輝「ガフッ!?」バキィ!!

吹き飛んだのは光輝の方だった。

護衛の方は剣を掲げるように振り抜いたまま光輝を睥睨している。

光輝が寸止めのため一瞬、力を抜いた刹那にだらんと無造作に下げられていた剣が跳ね上がり光輝を吹き飛ばしたのだ。

光輝は地滑りしながら何とか体勢を整え、驚愕の面持ちで護衛を見る。

寸止めに集中していたとは言え、護衛の攻撃がほとんど認識できなかったのだ。

護衛は掲げた剣をまた力を抜いた自然な体勢で構えている。

そう、先ほどの攻撃も動きがあまりに自然すぎて危機感が働かず反応できなかったのである。

 

???「はぁ~、おいおい、勇者ってのはこんなもんか?まるでなっちゃいねぇ。やる気あんのか?」

平凡な顔に似合わない乱暴な口調で呆れた視線を送る護衛。その表情には失望が浮かんでいた。

確かに、光輝は護衛を見た目で判断して無造作に正面から突っ込んでいき、あっさり返り討ちにあったというのが現在の構図だ。

光輝は相手を舐めていたのは自分の方であったと自覚し、怒りを抱いた。今度は自分に向けて。

 

光輝「すみませんでした。もう一度、お願いします。」

今度こそ、本気の目になり、自分の無礼を謝罪する光輝。

護衛は、そんな光輝を見て、「戦場じゃあ"次"なんてないんだがな。」と不機嫌そうに目元を歪めるが相手はするようだ。先程と同様に自然体で立つ。

 

光輝は気合を入れ直すと再び踏み込んだ。

唐竹、袈裟斬り、切り上げ、突き、と〝縮地〟を使いこなしながら超高速の剣撃を振るう。

その速度は既に、光輝の体をブレさせて残像を生み出しているほどだ。

しかし、そんな嵐のような剣撃を護衛は最小限の動きでかわし捌き、隙あらば反撃に転じている。

時々、光輝の動きを見失っているにもかかわらず、死角からの攻撃にしっかり反応している。

 

光輝には護衛の動きに覚えがあった。それはメルド団長だ。

彼と光輝のスペック差は既にかなりの開きが出ている。

にも関わらず、未だ光輝はメルド団長との模擬戦で勝ち越せていないのだ。

それは偏に圧倒的な戦闘経験の差が原因である。

おそらく護衛も、メルド団長と同じく数多の戦場に身を置いたのではないだろうか。

その戦闘経験が光輝とのスペック差を埋めている。

つまり、この護衛はメルド団長並かそれ以上の実力者というわけだ。

 

???「ふん、確かに並の人間じゃ相手にならん程の身体能力だ。

しかし、少々素直すぎる。

元々、戦いとは無縁か?」

光輝「えっ? えっと、はい、そうです。俺は元々ただの学生ですから。」

???「……それが今や"神の使徒"か。」

チラッとイシュタル達聖教教会関係者を見ると護衛は不機嫌そうに鼻を鳴らした。

 

???「おい、勇者。構えろ。今度はこちらから行くぞ。気を抜くなよ?

うっかり殺してしまうかもしれんからな。」

護衛はそう宣言するやいなや一気に踏み込んだ。光輝程の高速移動ではない。

むしろ遅く感じるほどだ。だというのに、

光輝「ッ!?」

気がつけば目の前に護衛が迫っており剣が下方より跳ね上がってきていた。光輝は慌てて飛び退る。

しかし、まるで磁石が引き合うかのようにピッタリと間合いを一定に保ちながら鞭のような剣撃が光輝を襲った。

 

不規則で軌道を読みづらい剣の動きに、"先読"で辛うじて対応しながら一度距離を取ろうとするが、まるで引き離せない。

"縮地"で一気に距離を取ろうとしても、それを見越したように先手を打たれて発動に至らない。

次第に光輝の顔に焦りが生まれてくる。

そして遂に、光輝がダメージ覚悟で剣を振ろうとした瞬間、その隙を逃さず護衛が魔法のトリガーを引く。

???「穿て――"風撃"」

呟くような声で唱えられた詠唱は小さな風の礫を発生させ、光輝の片足を打ち据えた。

 

光輝「うわっ!?」

踏み込もうとした足を払われてバランスを崩す光輝。その瞬間、壮絶な殺気が光輝を射貫く。

冷徹な眼光で光輝を睨む護衛の剣が途轍もない圧力を持って振り下ろされた。

刹那、光輝は悟る。彼は自分を殺すつもりだと。実際、護衛はそうなっても仕方ないと考えていた。

自分の攻撃に対応できないくらいなら、本当の意味で殺し合いを知らない少年に人間族のリーダーを任せる気など毛頭なかった。

例えそれで聖教教会からどのような咎めが来ようとも、戦場で無能な味方を放置する方がずっと耐え難い。

それならいっそと、そう考えたのだ。

 

しかし、そうはならなかった。

???「ガァ!?」ズドンッ!!

先ほどの再現か。今度は護衛が吹き飛んだからだ。

護衛が、地面を数度バウンドし両手も使いながら勢いを殺して光輝を見る。

光輝は全身から純白のオーラを吹き出しながら、護衛に向かって剣を振り抜いた姿で立っていた。

護衛の剣が振り下ろされる瞬間、光輝は生存本能に突き動かされるように"限界突破"を使ったのだ。

これは、一時的に全ステータスを三倍に引き上げてくれるという、ピンチの時に覚醒する主人公らしい技能である。

だが、光輝の顔には一切余裕はなかった。恐怖を必死で押し殺すように険しい表情で剣を構えている。

そんな光輝の様子を見て、護衛はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。

 

???「ハッ、少しはマシな顔するようになったじゃねぇか。

さっきまでのビビリ顔より、よほどいいぞ!」

光輝「ビビリ顔?今の方が恐怖を感じてます。

……さっき俺を殺す気ではありませんでしたか?これは模擬戦ですよ?」

???「だからなんだ?まさか適当に戦って、はい終わりっとでもなると思ったか?

この程度で死ぬならそれまでだったってことだろ。

お前は、俺達人間の上に立って率いるんだぞ?その自覚があんのかよ?」

光輝「!それ、は……」

光輝はハジメが言っていたことを思い出す。

それは、個人としての光輝に言った訳ではなく、人の上にたつ立場の光輝に向けて言ったものだったのだ。

たった今それを理解した光輝は、護衛の言葉に答えを返した。

 

???「傷つけることも、傷つくことも恐れているガキに何ができる?

剣に殺気一つ込められない奴がご大層なこと言ってんじゃね…「わかっています。」あ?」

光輝「確かに、俺はどっちも怖い。

でも、誰かの助けになれるなら、張り子の虎でも構わない!

それが、俺の信じる正義です!」

???「…ハッ、威勢だけは一丁前のようだな。

おら、しっかり構えな? 最初に言ったろ?気抜いてっと……死ぬってな!」

護衛が再び尋常でない殺気を放ちながら光輝に迫ろう脚に力を溜める。

光輝は苦しそうに表情を歪めた。しかし、護衛が実際に踏み込むことはなかった。

何故なら、護衛と光輝の間に光の障壁がそそり立ったからだ。

 

イシュタル「それくらいにしましょうか。

これ以上は、模擬戦ではなく殺し合いになってしまいますのでな。

……ガハルド殿もお戯れが過ぎますぞ?」

???「……チッ、バレていたか。相変わらず食えない爺さんだ。」

イシュタルが発動した光り輝く障壁で水を差された〝ガハルド殿〟と呼ばれた護衛が、周囲に聞こえないくらいの声量で悪態をつく。

そして、興が削がれたように肩を竦め剣を納めると、右の耳にしていたイヤリングを取った。

すると、まるで霧がかかったように護衛の周囲の空気が白くボヤけ始め、それが晴れる頃には、全くの別人が現れた。四十代位の野性味溢れる男だ。

短く切り上げた銀髪に狼を連想させる鋭い碧眼、スマートでありながらその体は極限まで引き絞られたかのように筋肉がミッシリと詰まっているのが服越しでもわかる。

その姿を見た瞬間、周囲が一斉に喧騒に包まれた。

 

「ガ、ガハルド殿!?」

「皇帝陛下!?」

そう、この男、何を隠そうヘルシャー帝国現皇帝ガハルド・D・ヘルシャーその人である。

まさかの事態にエリヒド陛下が眉間を揉みほぐしながら尋ねた。

エリヒド王「どういうおつもりですかな、ガハルド殿。」

ガハルド皇帝「これは、これはエリヒド殿。ろくな挨拶もせず済まなかった。

ただな、どうせなら自分で確認した方が早いだろうと一芝居打たせてもらったのよ。

今後の戦争に関わる重要なことだ。無礼は許して頂きたい。」

謝罪すると言いながら、全く反省の色がないガハルド皇帝。

それに溜息を吐きながら「もう良い」と頭を振るエリヒド陛下。

 

光輝達は完全に置いてきぼりだ。

なんでも、この皇帝陛下、フットワークが物凄く軽いらしく、このようなサプライズは日常茶飯事なのだとか。

どっかの王様志望の男を思い浮かべた者も、何人かいた。

それを見抜いていたのか、ガハルド皇帝は言った。

ガハルド皇帝「ところで、ベヒモスを圧倒したという4人は何方に?

出来れば、そのお力も見せていただきたいものだが…」

「「「「!」」」」

 

香織(どどど、どうしよう!?)

雫(ご指名のようね…)

恵里(やるしかない。)

浩介(マジか…)

指名された4人は、皇帝に実力を見せるのがとても嫌そうだった。

当然である。あのハジメが絶対に行きたくないと言っていたのだ。

それ程までに、帝国は優秀な人材を欲している。

今ここで実力を見せてしまえば、面倒ごとに巻き込まれること間違いなしである。

そうなっては、ハジメ捜索どころではない。それだけは嫌だったのだ。

そう言った訳で、香織達は実力を見せることを渋った。因みに、浩介のみ技能を行使した時の代償が大きいからである。

戦いたがらない4人に対し、戦いたい気持ちが逸ったガハルド皇帝は、言ってはならないことを言ってしまった。

 

ガハルド皇帝「そういえば、風の噂で聞いたのだが、勇者一行の一人が死亡したとか。」

「「「「!」」」」

「何でも、ベヒモスをたった一人、それも生産職である錬成師が圧倒した、という話を小耳にはさんだのでね、是非とも会ってみたかったのですがねぇ…」

「「「「……」」」」

もう一押しとでも思ったのか、ガハルド皇帝は続けた。

ガハルド皇帝「その人物はたしか、王様になるとか言ってましたか。技能は素晴らしいようですが、本当に王になる気が合ったのだろう…か!?」ジャキッ

瞬間、四人が同時に寸止めで攻撃を加えた。

 

香織は縛光刃を編み込んだ光の刃を、雫は研ぎ澄まされた刀を、恵理は魔力で編んだ刃を、浩介は幾重にも分身して周りを囲い込み、鋭い苦無をそれぞれ突き付けた。

あまりの速さと殺気に全員動けなかった。襲撃を受けたガハルド皇帝でさえもだ。

香織「皇帝陛下、あまり不用意なことをおっしゃらないで下さい。」

雫「死人に口なしとは言いますが、それでも限度があると思います。」

恵理「それに、私たちの実力を見たいがために利用されるとあっては、流石に怒りを抑えきれません。」

浩介「ご理解いただけたなら、どうか先程の言葉をお取り消しを。」

四人は鋭い殺気を放ったまま、冷酷にガハルド皇帝に言った。

 

ガハルド皇帝「分かった分かった!今のは俺が悪かった!ちょっと試してみただけなんだっての!」

ガハルド皇帝がそう言うと、四人は得物を下ろし殺気と分身を解いた。

雫「ご理解いただけたようなら何よりです。」

四人を代表して雫がそう告げた。

ガハルド皇帝「ったく、こんなとんでもない連中に慕われているって、一体どんな奴だったんだ…?

そもそも、本当に錬成師だったのか?実は、バリッバリの前衛職だったんじゃ…」

???「それは違いますわ、ガハルド皇帝陛下。」

そう言って現れたのは、王女リリアーナだった。

 

エリヒド王「!?リリアーナ!どうしてここに!」

リリアーナ「国王陛下、何も告げずにこちらへ参ったことをお許しください。

何でも、皇帝側の護衛の方が光輝様と模擬戦をするとのことなので、心配になって見に来てしまいました。」

尤もらしいセリフを言ってごまかすリリアーナ。

それを信じたらしいエリヒド王に一礼してから、ガハルド皇帝の方へ向き直った。

ガハルド皇帝「リリアーナ王女、違うとはどういうことだ?」

リリアーナ「国王陛下が、ご説明いたしますことを許可して頂けるのであれば。」

ガハルド皇帝「とのことだ。エリヒド王、どうであろうか?」

エリヒド王「構わない。説明しなさい、リリアーナ。」

リリアーナ「ご許可して頂いたこと感謝いたします、国王陛下。それでは、説明いたします。」

リリアーナは、ハジメが王宮の使用人たちの手伝いを細かい所までこなしたこと、一人で王都外の魔物を壊滅させたこと、一部の貴族令嬢や貧乏貴族、更には自分にまでも、純正ダイヤで造った装飾品を送ってくれたことに加え、純度100%の鉄の錬成に成功したことまで説明した。

 

ガハルド皇帝は最初、ベヒモスをたった一人で圧倒したことなど半信半疑であった。

それに加えて、その男の天職はなんと「錬成師」。本来、戦闘には不向きな職業である。

しかし、話を聞いていくうちに、彼がベヒモスをステータスだけで圧倒したという可能性が浮かんだ。

それを確かめるべく、ガハルド皇帝は聞いてみた。

ガハルド皇帝「話は分かった。時に、エリヒド王。彼のステータスプレートはないのかね?

もしよろしければ、拝見したいのだが…」

エリヒド王「申し訳ない。

生憎死体がまだ見つかっていないこともあって、ステータスプレートは今手元にはないのだ。

見つけ次第、そちらに連絡いたしましょう。」

ガハルド皇帝「そうか、それは助かる。」

ガハルド皇帝は内心で、件の彼が戦争の抑止力になり得ることを念頭に、どうやって彼の素性を確かめるか考えを巡らせることにした。

 

ガハルド皇帝「まぁ、例の4人の実力も見せていただいたので、本日はここまでといたしましょう。

もし、件の彼が存命していたのであれば、ご連絡して頂けると幸いだ。」

エリヒド王「そうですね、そちらも情報提供をしていただけるなら構いません。

一部の職人や令嬢達が彼の作品を見て"この作品の作成者はどこにいる!?"と詰め寄って来ておりまして…」

ガハルド皇帝「それは大変だ。是非とも見つけねばなるまいな。」

そう言っているガハルド皇帝の顔は、まだ見ぬお宝に好奇心を揺さぶられる子供の様だった。

こうして、なし崩しで模擬戦も終わり、その後に予定されていた晩餐で帝国からも勇者を認めるとの言質をとることができ、一応、今回の訪問の目的は達成されたようだ。

 

しかし、その晩、部屋で部下に本音を聞かれた皇帝陛下は面倒くさそうに答えた。

ガハルド皇帝「ありゃ、ダメだな。ただの子供だ。

理想とか正義とかそういう類のものを何の疑いもなく信じている口だ。

なまじ実力とカリスマがあるからタチが悪い。自分の理想で周りを殺すタイプだな。

"神の使徒"である以上蔑ろにはできねぇ。取り敢えず合わせて上手くやるしかねぇだろう。」

部下「それで、あわよくば試合で殺すつもりだったのですか?」

ガハルド皇帝「あぁ?違ぇよ。少しは腑抜けた精神を叩き治せるかと思っただけだ。

あのままやっても教皇が邪魔して絶対殺れなかっただろうよ。」

 

どうやら、皇帝陛下の中で光輝達勇者一行は興味の対象とはならなかったようである。

無理もないことだろう。彼等は数ヶ月前までただの学生。それも平和な日本の。

歴戦の戦士が認めるような戦場の心構えなど出来ているはずがないのである。

しかし、香織達のことについては、違うようだった。

 

ガハルド皇帝「だが、あの四人だけは他の奴らとはまるで違う。

あの四人の強さは間違いなく、報告書にあったものだ。」

ガハルド皇帝がそういうと、部下たちも口々に彼女たちについて意見を述べた。

 

「治癒師香織は付与魔法の同時発動、それも無詠唱で一気に五つだ。まず間違いなくヤバい。」

「剣士雫はベヒモスを一刀両断できる程の筋力があるだけでなく、素早さや剣技も折り紙付きと来た。

もし戦ったのが勇者じゃなくて彼女だったら、危なかっただろう。相手は手加減するかもしれないが。」

「降霊師恵理も無詠唱で上級より更に上の魔法をぶっ放したと聞く。

何より、件の少年の妹と来た。手を出せば間違いなく、奴の怒りに触れるだろうな。」

と、ここまでは冷静に語っていたが…

 

「そして唯一の男性、遠藤という暗殺者だが…彼は一体何者なんだ!?」

「何で素顔も不明なのだ!?これでは対策もままならない!」

「それに加えて、あの技能は何だ!?大量の彼が陛下を囲っていたぞ!?」

「何故黒い眼鏡をしながら、奇妙なポーズをとっていたのだ!?何かの暗示か!?」

そう、うっかり深淵卿が顔を出してしまっていたのだ。

その言動や奇行は、何も知らない皇帝の護衛にとっては理解し難く、より恐ろしいものだったのだ。

おかげで、我らが遠藤君は部屋で黒歴史に悶え苦しんでいるが。

 

ガハルド皇帝「お前ら落ち着け。確かに俺も、攻撃されるまで奴の気配に全く気配が気がつかなかった。

しかもあの動きだけじゃない。奴等まるで、本当に人を殺った奴のような眼をしていた。

最小限の動きであそこまで速く動けるなんざ、誰かに手解きを受けたに違いない。」

部下「もしや、その者こそが、件の少年なのでは!?」

ガハルド皇帝「それが本当だったら、末恐ろしいものだな。行きつく先は伝説か、化け物しかないが。」

冷静に判断していながらも、内心では焦っていたガハルド皇帝。

後に、ハジメさんの民に手を出したせいで、嫌でもその力を思い知ることになるのだが…

 

ガハルド皇帝「まぁ、魔人共との戦争が本格化したら変わるかもな。見るとしてもそれからだろうよ。

今は、小僧どもに巻き込まれないよう上手く立ち回ることが重要だ。教皇には気をつけろ。」

部下「御意。」

そんな評価を下されているとは露にも思わず、光輝達は、翌日に帰国するという皇帝陛下一行を見送ることになった。

用事はもう済んだ以上留まる理由もないということだ。本当にフットワークの軽い皇帝である。

 


 

そしてその早朝…

他の皆が寝静まる中、香織達は日課である特訓に勤しんでいた。

香織は二刀流、雫は抜刀術、恵理は体術と魔法を駆使した戦法で、それぞれ立ち合い稽古を行っていた。

夢の中でも訓練はしていたが、それだけでは心許ないと思い、始めることにしていたのだ。

因みに、浩介は未だに夢の中である。アビスゲートに追いかけられ続けているのだろう。哀れなり、遠藤。

そして、キリの良い所で一息入れることにした三人。そこへ…

 

???「ほお、これは中々の腕だな。」

雫「!皇帝陛下…!」

彼女たちに声をかけたのは、ガハルド皇帝だった。

雫「何か御用ですか?」

ガハルド皇帝「なに、偶々近くを通りかかったときに剣撃が聞こえていたのでな。見学させてもらった。昨日は聞きそびれたが、お前等、名は?」

恵理「南雲恵理です。」

雫「八重樫雫です。」

香織「白崎香織です。」

ガハルド皇帝「そうか…、気に入った。三人とも、俺のあ…「「「お断りします。」」」…思っていたより早い返事だな。」

速攻で断られるも、面白そうに笑うガハルド皇帝。

 

ガハルド皇帝「どうやら好いた男でもいるようだな。まさかとは思うが、件の錬成師か?」

香織「そうだとしても、貴方に答える義理はありません。」

雫「そういう関係だとしても、貴方には関係ありません。」

恵理「私も、彼氏がいるので。ごめんなさい。」

ガハルド皇帝「…つれねぇなぁ。」

一国の皇帝に対する無礼な物言いでも、あまり腹を立てないガハルド皇帝。

と、その時だった。

 

???(あら、中々面白い子たちね。)

雫「ッ!?だ、誰!?」

何所からともなく聞こえてきた声に、驚く一同。

すると、ガハルド皇帝の服の中から、魔力反応があった。

ガハルド皇帝が慌ててその反応があるものを取り出してみると、アメジストの様なネックレスがあった。

ガハルド皇帝「!?なんだ、この宝石は!?いつの間にこんな…」

その瞬間、ネックレスが光りだし、光の玉のようなものが飛び出した。

「「「「!?」」」」

 

その光の玉は、猛スピードで雫に迫った。

雫「!?」

雫は刀を構えるも、それをすり抜けて、体の中に潜り込んだ。

香織「雫ちゃん!?」

その瞬間、雫の眼の色が変わり、彼女とは違う女性の声が発せられた。

 

???「『あら、中々動きやすいわね。これならあの子を探し出せるかも。』」

香織「!?だ、誰な「(香織!)」!?(ミライちゃん!?)」

ミライ「(少しだけ変わってくれる?彼女、もしかしたら知り合いかもしれないの。)」

香織「(わ、分かったよ。)」

念話でやり取りをし、身体の主導権を交代した香織とミライ。

すると、雫?は彼女を見て、その名を呼んだ。

 

???「『!ミライ…!やっぱり貴女も、ここに…』」

ミライ「『その反応、その喋り方、間違いないわね。久しぶり、って言った方がいいのかしら、ヒカリ?』」

ヒカリと呼ばれた少女は、雫の体で会話を続けた。

ガハルド皇帝はさっぱり訳が分からなかったようで、恵理に聞いてみるが「…タダノ降霊術デスヨー?」とだけ返されて、不思議な感じで話に耳を傾けていた。

 

ヒカリ「『えぇ、懐かしいわね。貴女とはよくあの御方の隣で戦ってきたもの。忘れるはずもないわ。

あの御方が居なくなってからというものの、過ごしている日々の色彩が失われたような感覚だったわ。

貴女なら何か知っているんじゃないかって思ってきたんだけど…どうなのかしら?』」

ミライ「『そうね、王様本人はいないけど…彼に似た人はいたわ。』」

ヒカリ「『!そう…。それなら、その人はどこに?』」

ミライ「『今はここにはいないわ。でも、彼が力を使った以上、生きていることは分かるわ。』」

ヒカリ「『それが分かっただけでも十分ね。本当は今すぐお会いしたいのだけど…仕方がないわね。』」

ヒカリは残念そうに呟くと頭を下に向けると、もう一度顔を上げた。

その目はいつもの雫だった。どうやら、身体の主導権を雫に返したようだ。が…

 

ヒカリ「(!?な、何ここ!?王様に似た男の人、しかも半裸の写真ばっかり!?)」

雫「キャアァァァ!?ちょっ、ちょっと!?勝手に覗かないでくれる!?」

ヒカリ「(凄いわ…!ここはまさしく、パラダイスよ!決めたわ、私ここに住む!)」

雫「そ、それは分かったからこれ以上はやめてぇ!」

香織「雫ちゃん、ハジメ君のどこの部位がいいの?私は鎖骨がおすすめだよ!」

雫「香織!?」

どうやら、愛しのハジメの肉体美が脳裏に残っているらしく、その写真でいっぱいの部屋に偶然ヒカリが入り込んでしまったようだ。

ミライは自然に香織に主導権を返し、面白そうだと反応を見ていた。

 

ミライ「(ヒカリ、この子たちと後二人、彼の仲間がいるのだけど…特訓に協力してくれないかしら?)」

ヒカリ「(乗ったわ。彼の役に立てば、あの肉体美が生で見られるのでしょう?やらない理由なんてどこにもないわ!)」

ミライ「(え、えぇ。そうね。でも、彼は私達のことは覚えていない様だから…)」

ヒカリ「(問題ないわ。また刻み込めばいいもの。)」

ミライ「(…それと、そこのおじさんだけど…)」

ヒカリ「(部外者は去れェー!)」

ミライ「(…そ、そういうわけだから、よろしく頼むわね~!)」

どうやらヒカリは筋肉フェチのようだ。

そういうわけで、二人とも引っ込んでいった。

 

恵理「え~と、そういうわけなので、どうぞ。」

ガハルド皇帝「え、あ…お、おう。邪魔したな。」

何とも言えない空気の中、恵理に促されたガハルド皇帝は、微妙な空気からその場を後にした。

 

浩介「…何があったんだ?」

死闘(本人にとってはある意味)を制した浩介が着いた時には、顔を真っ赤にした雫と、それを必死になだめる香織と恵理の姿があった。

事情を知らない彼には、現状がよく呑み込めなかった。

こうして、ヒカリという新たな指南役を加えて、彼らの特訓はより過酷なものへと変わっていった。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

新オリヒロイン、ヒカリちゃんが登場しました!
念の為言っておきますが、モ〇ドや邪神は関係ありません。
そしてまさかの筋肉フェチ、どっかのモグモグ騎士ちゃんみたいですね。

因みに、デザインとしては金髪碧眼のツインテールな美女です。
年代としては、ミライとほぼ同い年です。

さて、次回からようやくハジメサイドに移ります。
解放者の真実、そして新たなる旅立ちへ!
次回もお楽しみに!

宜しければ、高評価・コメント宜しくお願い致します。

追記:不死身の機動歩兵隊さん、晶彦さん、誤字報告ありがとうございました!

もしこの小説以外で、この中で読んでみたいと思う展開の作品は?

  • オリジナル狩崎、ISで大暴れ。
  • ONEPIECEでオリ海賊無双
  • FGO世界でクリプター、兎に角頑張る。
  • 終わりのセラフでバイスと優の最強コンビ。
  • アズールレーン、転生指揮官スローライフ。
  • 鬼滅の刃、ヤバい剣士に転生、無残は死ぬ。
  • コードギアス、ルルの兄、原作崩壊を起こす
  • このすば、クロスセイバー冒険譚
  • ゲイムギョウカイで仮面ライダーに
  • 呪術廻戦、ヤヴァイ呪術師になっちゃった。
  • ジョジョ、もしもジョナサンが強かったら。
  • エヴァ、とにかくヤバいものになる。
  • Blazblue、ラグナが傷なしだったら
  • 銀さん、蒼の世界で死神代行。
  • オーマジオウ陛下の幻想郷巡り旅
  • ドラゴンボール、もしブロmad
  • ハイスクールD×D、クローズ&エボル
  • FGO、妖精國の結末は俺が決める!
  • Fate、アーサーが剣の道に向かったら
  • アカメが斬る!、病弱魔王の立て直し
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