ありふれない錬成師は最高最善の魔王の力で世界最強を超越する   作:天元突破クローズエボルハザード

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お待たせいたしました。
今回はブルックの町での出来事を一気に詰め込んでいるので、ちょい長めです。
後、ライセンの直前まで行きます。

遂に初めての町に到着した一行!
そこで待ち受ける意外な制度や文化とは一体!?

ほんわかな日常の第二章第8話、それではどうぞ!


27.ブルックの魔王~ゴール・ゴル・マジェンド~

そこは、周囲を堀と柵で囲まれた小規模な町だった。

街道に面した場所に木製の門があり、その傍には小屋もある。

おそらく門番の詰所だな。小規模といっても、門番を配置する程度の規模はあるようだ。

それなりに、充実した買い物が出来そうなので、楽しみである。

さて、ストライカーをしまってと。

 

門番「止まってくれ。ステータスプレートを。あと、町に来た目的は?」

規定通りの質問なのか、門番の詰所らしき小屋から出てきた門番が、どことなくやる気なさげに聞いてきた。

ハジメ「食料の補給がメインだ。旅の途中でね。」

俺は、門番の質問に答えながらステータスプレートを取り出した。

勿論、偽装は忘れていない。

 

門番「ほぉ~、その年で傭兵か。しかもレベルも中々高いじゃないか……。それで、そっちの二人は?」

ハジメ「俺の連れだよ。魅力的なのは分かるけど、あんまりじろじろ見ないでもらいたいなぁ?」

俺の言葉に少しビクッとなり、門番は苦笑いで了承したらしい。

門番「ハハ、いやぁ、悪い悪い。通ってもいいぞ。」

ハジメ「ああ、どうも。……ところで、素材の換金場所って何処にあるか知らない?」

門番「あん?それなら、中央の道を真っ直ぐ行けば冒険者ギルドがある。

店に直接持ち込むなら、ギルドで場所を聞け。簡単な町の地図をくれるから」

ハジメ「おぉ、これは態々親切だね。ありがとう。」

そう言いながら、彼の懐にこっそりと、チップ代わりの余り物ダイヤを忍ばせる俺であった。

 

門番から情報を得た俺達は、門をくぐり町へと入っていく。

門のところで確認したがこの町の名前は【ブルック】というらしい。町中は、それなりに活気があった。

かつて見たオルクス近郊の町【ホルアド】ほどじゃないけど、露店も結構あって、呼び込みの声や、白熱した値切り交渉の喧騒が聞こえてくる。

いやぁ~、なんか帰ってきた感が半端ない。

こう、ヤバいラスボス倒して何年かぶりに戻ってきたら、思っていた以上に時間がたっていた、的な。

ユエも久しぶりの町なのか、楽しげに目元を和らげており、

シアは初めての町に興味津々といったご様子で、目をキョロキョロと忙しなく動かしている。

やっぱり、冒険ってどこかの町から始めた方がいいと思うんだ、俺。

 

因みに、シアの首輪には、念話石と特定石を組み込んでいるので、通話が可能だ。

後、ちゃんと外せる仕様になっているので、束縛系男子にはならないのだ。

まぁ、もし許可なく触れてくる野郎が居たら、その場で私刑執行するけど。どれにしようかな?

そんな風に仲良くメインストリートを歩いていき、一本の大剣が描かれた看板を発見する。

かつてホルアドの町でも見た冒険者ギルドの看板だ。規模は、ホルアドに比べて二回りほど小さい。

看板を確認した俺は、重厚そうな扉を開き中に踏み込んだ。

 

ギルドって言ったらやっぱりこんな感じかぁ、と清潔さが保たれた場所を見て、感心する俺であった。

入口正面にカウンターがあり、左手は飲食店になっているようだ。

何人かの冒険者らしい者達が食事を取ったり雑談したりしている。

誰ひとり酒を注文していないことからすると、元々、酒は置いていないのかもしれない。

酔っ払いたいなら酒場に行けということだろう。

まぁ、流石に昼間っから飲んだくれている奴は、評判に響くだろうからなぁ……。

 

俺達がギルドに入ると、冒険者達が当然のように注目してくる。

最初こそ、見慣れない三人組ということでささやかな注意を引いたに過ぎなかったが、彼等の視線がユエとシアに向くと、途端に瞳の奥の好奇心が増した。

中には「ほぅ。」と感心の声を上げる者や、門番同様、ボーと見惚れている者、恋人なのか女冒険者に殴られている者もいる。平手打ちでないところが冒険者らしい。

テンプレ宜しく、ちょっかいを掛けてくる者がいるかとも思ったが、意外に理性的で観察するに留めているようだ。

足止めされなくて幸いだと思った俺は、二人を連れてカウンターへ向かう。

 

カウンターには恰幅のいい女性がいた。ニコニコと人の良さそうな笑みを浮かべていた。

恐らく、彼女は責任者あたりの人間だろう。正直実を言うと、ちょっとだけ夢は見ていた。

トシと話した異世界テンプレというものが魂に刻まれているのか、両親の教育という名の布教によるものなのか、はたまた自分がそういう男だったのか、それはわからない。

まぁ、それは重要じゃないし、どちらかというと、やってみたかった感の方が強いからなぁ。

そこまでダメージはない。カウンターを見た瞬間に時を止め、顔の筋肉は整えておいた。

だから二人共、気づいてはいないようだ。なので早速、カウンターの女性に話しかけた。

 

ハジメ「あの~、ちょっといいですか?」

???「あら、いらっしゃい。冒険者ギルド、ブルック支部にようこそ。

両手にとびっきりの綺麗な花を持って登場なんて、一体どこのお坊ちゃんだい?」

ハジメ「ハハハ、俺はただの通りすがりだよ、レディ。

彼女たちは旅のお供さ。まぁ、綺麗だと褒められるのは、仲間である自分も嬉しいよ。」

???「あらやだ~、レディだなんて。口が上手いわね、アンタ?その年で中々やるね。」

ハジメ「フッ、そちらこそ。

俺の予測だけどさ、ここの冒険者たちが大人しいのって、多分貴方の腕が関係しているんじゃないかなぁ、って。」

???「いやいや、あたしは一介の受付人、キャサリンって者さ。」

……交渉術と心理学は正しかった。彼女の言葉尻が随分軽くなっているのが分かる。

 

ハジメ「ご紹介ありがとう。俺はハジメ。こちらの二人がユエとシア。宜しく。」

キャサリン「これは礼儀正しいね。そういう純粋な子は嫌いじゃないよ。」

そりゃあ挨拶は基本のきの字だしな。それにここでワンクッション挟むのがポイントなのさ!

キャサリン「あらやだ、つい話が弾んじまったね。ご用件は何かしら?」

ハジメ「あぁ、素材の買取をお願いしたい。途中に町が無かったものでね、大量にあるんだ。」

キャサリン「素材の買取だね。じゃあ、まずステータスプレートを出してくれるかい?」

ハジメ「?買取にステータスプレートの提示が必要なの?」

俺の素朴な疑問に「おや?」という表情をするキャサリンさん。

 

キャサリン「あんた冒険者じゃなかったのかい?

確かに、買取にステータスプレートは不要だけどね、冒険者と確認できれば一割増で売れるんだよ。」

ハジメ「へぇ~、そうだったんだ。最近、冒険を始めたばっかりで知らなくてさ。」

キャサリンさんの言う通り、冒険者になれば様々な特典も付いてくる。

生活に必要な魔石や回復薬を始めとした薬関係の素材は冒険者が取ってくるものがほとんどだ。

町の外はいつ魔物に襲われるかわからない以上、素人が自分で採取しに行くことはほとんどない。

危険に見合った特典がついてくるのは当然だった。

 

キャサリン「他にも、ギルドと提携している宿や店は一~二割程度は割り引いてくれるし、移動馬車を利用するときも高ランクなら無料で使えたりするね。

どうする? 登録しておくかい? 登録には千ルタ必要だよ。」

ルタって言うのは、この世界トータスの北大陸共通の通貨だ。

ザガルタ鉱石という特殊な鉱石に他の鉱物を混ぜることで異なった色の鉱石ができ、それに特殊な方法で刻印したものが使われている。

青=1、赤=5、黄=10、紫=50、緑=100、白=500、黒=1000、銀=5000、金=10000(ルタ)といったところだ。

 

ハジメ「じゃあ折角だし登録しておこうかな。悪いけど、困ったことに持ち合わせが全く無くてさ。

買取金額から引いて貰えない?勿論、最初の買取額はそのままでいいよ。」

キャサリン「ほ~ん、そうかい。ならさっきのお世辞の礼も兼ねて上乗せさせてもらうよ。」

俺は有り難く厚意を受け取っておくことにして、ステータスプレートを差し出す。

 

キャサリンさんは、ユエとシアの分も登録するかと聞いてきたけど、それは流石に断った。

まず二人は、そもそもプレートを持っていないので発行からしてもらう必要がある。

でもそうなったら、ステータスの数値も技能欄も隠蔽されていない状態で他の人の目に付くことになる。

俺としても、二人のステータスを見てみたい気もあったけど、技能欄にはばっちりと固有魔法とかあるだろうし、それを知られること考えると、まだ俺達の存在が公になっていない段階では知られない方が面倒が少なくて済むだろうし、今回は諦めることにした。

 

戻ってきたステータスプレートには、新たな情報が表記されていた。

天職欄の横に職業欄が出来ており、そこに〝冒険者〟と表記され、更にその横に青色の点が付いている。

青色の点は、冒険者ランクだ。上昇するにつれ赤、黄、紫、緑、白、黒、銀、金と変化する。

……おわかりいただけただろうか。そう、冒険者ランクは通貨の価値を示す色と同じなのだ。

つまり、青色の冒険者とは「お前は一ルタ程度の価値しかねぇんだよ、ぺっ!」と言われているのと一緒ということだ。

きっと、この制度を作った初代ギルドマスターの性格は捻じ曲がっているに違いない。

テンプレでも極稀にある、主人公を虐めようとするチンピラっぽい感じだろうな、と俺は思った。

 

ちなみに、戦闘系天職を持たない者で上がれる限界は黒だ。

辛うじてではあるが四桁に入れるので、天職なしで黒に上がった者は拍手喝采を受けるらしい。

天職ありで金に上がった者より称賛を受けるというのであるから、いかに冒険者達が色を気にしているかがわかるだろう。

まぁ、俺は魔王とか言うチート過ぎる戦闘系天職でもあるから、金にはなれるだろうな。

後、色でランク付けるなら、白銀とか虹、子供や初心者用に桃色とか入れてみたい。

 

キャサリン「男なら頑張って黒を目指しなよ?お嬢さん達にカッコ悪いところ見せない様にね。」

ハジメ「勿論!肝に銘じているさ。それで、買取はここでいい?」

キャサリン「構わないよ。あたしは査定資格も持ってるから見せてちょうだい。」

どうやら彼女は受付だけでなく買取品の査定もできるらしい。優秀な人材だ。

俺は、あらかじめ"宝物庫"から大きめの袋に入れ替えておいた素材を取り出す。

品目は、ハウリア達が献上してきた、大量の魔物の毛皮や爪、牙、そして魔石といったものの一部だ。

流石に全部は無理だろうなと思い、バッグよりちょっと多めに入れておいた。

残りは、何らかの事情で帝国に乗り込んだ序にでも、建て替えるとしよう。行きたくないけど。

カウンターの受け取り用の入れ物に入れられていく素材を見て、再びキャサリンさんが驚愕の表情をする。

 

キャサリン「こ、これは!」

恐る恐る手に取り、隅から隅まで丹念に確かめる。

息を詰めるような緊張感の中、ようやく顔を上げたキャサリンさんは、溜息を吐き俺に視線を転じた。

キャサリン「とんでもないものを持ってきたね。これは…………樹海の魔物だね?」

ハジメ「うん、ここに来る前に採って来たんだ。」

 

流石に、奈落の魔物の素材なんて出したら一発で大騒ぎだ。

樹海の魔物の素材でも十分に珍しいだろうと思ったので、今回はやめておいた。

オルクスの素材は、また今度ホルアドに行ったときに出すことにした。

キャサリンさんの反応を見る限り、やはり樹海の物でも珍しいようだ。

後、こういうテンプレもあったような、と頭の片隅に思い浮かべた俺であった。

まぁ、鍛冶場の爺さんとか、偶々パーティを組んだメンバーとかのパターンもあったような気がするので、そこまで気にはならないが。

 

キャサリン「樹海の素材は良質な物が多いからね、売ってもらえるのは助かるよ。」

ハジメ「やっぱり珍しいんだ。」

キャサリン「そりゃあねぇ。

樹海の中じゃあ人間族は感覚を狂わされるし、一度迷えば二度と出てこれないハイリスクな場所だからね。

好き好んで入る人はいないのさ。

亜人の奴隷持ちが金稼ぎに入ることもあるけど、そんな亜人族の神経を逆撫でするようなことしていたら、それこそ命がいくつあっても足りないよ。

それに、売るならもっと中央で売るさ。幾分か高く売れるし、名も上がりやすいからね。」

そう言ってキャサリンさんはチラリとシアを見る。

恐らく、シアの協力を得て樹海を探索したのだと推測したのだろう。

樹海の素材を出してもシアのおかげで不審にまでは思われなかったみたい。

代わりに、「若いのに無茶をして。」という心配そうな顔を向けられちゃった。

 

……実は【フェアベルゲン】に乗り込んだ挙句、ハウリアの魔改造、族長二人をノックアウトし、全種族に自身の存在の大きさを教え込んだ上に、志願者全員に修行をつけたら、その実力を崇められて、樹海盟主とでも呼ばれるんじゃないかって位、色々やらかしていたってこと教えたらどうなるんだろ?

なんて、とんでもないことが頭をよぎる俺であった。

 

それからキャサリンさんは、全ての素材を査定し金額を提示した。買取額は537000ルタ。意外と多いな。

キャサリン「これでいいかい?中央ならもう少し高くなるだろうけどね。」

ハジメ「いや、この額で問題ないよ。」

俺は56枚のルタ通貨を受け取る。

この貨幣、鉱石の特性なのか異様に軽い上、薄いので五十枚を超えていてもあんまり重くない。

まぁ、いざとなったらコネクトや宝物庫があるし、大丈夫だな。

 

ハジメ「ところで、門番の人にこの町の簡易な地図を貰えるって聞いたんだけど……。」

キャサリン「ああ、ちょっと待っといで……ほら、これだよ。

おすすめの宿や店も書いてあるから参考にしなさいな。」

手渡された地図は、中々に精巧で有用な情報が簡潔に記載された素晴らしい出来だった。

広報部に一人、欲しくなるくらいの出来だったのが惜しい。

しかもこれが無料というある意味とんでもない逸材である。

 

ハジメ「おぉ…本当にいいの?こんな立派な地図を無料で。十分お金とれる位の出来だけど……?」

キャサリン「構わないよ、あたしが趣味で書いてるだけだからね。

書士の天職を持ってるから、それ位落書きみたいなもんだよ。」

ハジメ「そっか、これで落書きかぁ……。まぁいいや、ありがたく貰っておくよ。」

キャサリン「いいって事さ。それより、金はあるんだから少しはいい所に泊りなよ。

治安が悪い訳じゃあないけど、その二人ならそんなの関係無く暴走する男連中が出そうだからね。」

ハジメ「ハハッ、誰が来ても返り討ちにするつもりだけど、心もしっかり休ませたいし、そうするよ。」

 

キャサリンさんは最後までいい人で気配り上手だった。

俺は苦笑いしながら返事をし、入口に向かって踵を返した。ユエとシアも頭を下げて追従する。

食事処の冒険者の何人かがコソコソと話し合いながら、最後までユエとシアの二人を目で追っていた。

 

 

キャサリン「ふむ、いろんな意味で面白そうな連中だね……」

そんなキャサリンの楽しげな呟きがあったことを、俺達は知らなかった。

 


 

そんなわけで、最早地図というよりガイドブックにも等しいものを見て、俺達が決めたのは"マサカの宿"という宿屋だった。

紹介文によれば、料理が美味く防犯もしっかりしており、何より風呂に入れるというのだ。

最後のは正直助かる。二人とも女の子なんだし、お風呂には入りたいよなぁ。

まぁ、その分少し割高だけど、金はあるから問題ない。後、マサカというワードには反応してはいけない。

 

宿の中は一階が食堂になっている様で、複数の人間が食事をとっていた。

俺達が入ると、お約束の様にユエとシアに視線が集まる。

それらを無視してカウンターらしき場所に行くと、十五歳くらい女の子が元気よく挨拶しながら現れた。

???「いらっしゃいませー、ようこそ"マサカの宿"へ!

本日はお泊りですか?それともお食事だけですか?」

ハジメ「宿泊だよ。このガイドブックを見て来たんだけど、記載されている通りでいい?」

俺が見せたキャサリンさん特製地図を見て、女の子は合点がいった様に頷く。

???「ああ、キャサリンさんの紹介ですね。はい、書いてある通りですよ。何泊のご予定ですか?」

ハジメ「一泊でいいよ。食事付きで、あとお風呂もお願い。」

???「はい。お風呂は十五分で百ルタです。今のところ、この時間帯が空いてますが?」

女の子が時間帯表を見せてくれたので、男女で分けて一時間ごとでとるか。なるべくゆっくり入りたいし。

 

ハジメ「男女で一時間ずつ確保したいから、二時間でお願い。」

???「えっ、二時間も!?」

……勘違いしているみたい。てか、俺最初に"男女で分けたい"って言ったよね!?

???「え、え~と、それでお部屋はどうされますか??二人部屋と三人部屋が空いてますが……?」

ちょっと好奇心が含まれた目で俺達を見る女の子。そういうのが気になるお年頃なのは分かる。

でも流石に、周囲の食堂にいる客達まで聞き耳を立てるのは勘弁してもらいたいなぁ……。

ユエもシアも美人とは思っていたけど、想像以上に二人の容姿は目立つみたいだし。

どうやら、出会い方が出会い方だったのと、美男美女を見慣れている俺の感覚が麻痺していたようだな。

 

ハジメ「男女で分けたいし、二人部屋二つで。"男女で分けたい"から、二人部屋二つ。いいね?」

念のために、二回言っておく。これで少しは間違いに気づくはず……そう思っていると。

ユエ「……ダメ。三人部屋一つで。」

ハジメ「ちょっ、ユエ!?」

何故そこでそっちを選ぶ!?敢えて勘違いさせるようなことを言うんじゃない!

ホラ、周囲の男連中も絶望と嫉妬の混ざったような視線向けてくるし!

女の子に至っては完全に頬を赤らめて、盛大に勘違いしているし!

 

ハジメ「あのねぇ……、少しは恥じらいを持ちなよ。しかも、シアまで巻き込んで……。」

シア「私は構いませんよ?それに、こちらの方が安く済みますし。」

ユエ「……ん。それに、スキンシップの時間確保。致し方無し。それに、約束のこともある。」

ハジメ「……はぁ、分かったよ。」

まぁ、傍にいた方が何かあった時にすぐ対処できるし、その方がいいか。

 

ハジメ「……ごめん。変更して、三人部屋一つにするけど……いいかな?」

???「!は、はい!三人部屋ですね!分かりました!」

……これ絶対に勘違いしているな。誤解はもう解けなさそうだ。

なのでさっさと手続きを終わらせて、部屋に上がり込むことにした。

部屋に入った俺達は、早速ベッドインした。タイマーはセット済みだ。

 

数時間後……

目が覚めると夕食の頃合いだった。

まだ寝ているユエとシアを起こし、二人を伴って階下の食堂に向かった。

何故かチェックインの時にいた客が全員まだいたことには、流石に頬が引き攣りそうになった。

まぁ、注文した料理は確かに美味かった。美味しかったけれども!

せっかく久しぶりに食べた真面な料理は、もう少し落ち着いて食べたかったなぁ……。

 

風呂は風呂で、男女で時間を分けたのに結局ユエもシアも乱入してきたり、背中を流し流されたり、一緒に入ったり、その様子をこっそり風呂場の陰から宿の女の子が覗いていたり、女の子が覗きがバレて女将さんに尻叩きされていたり……

夜寝る時も、結局一緒のベッドで寝ることになった。もう少し、羽伸ばしたかったなぁ……。

 


 

翌日、旅に必要な物の買い出しに出た俺達。

取り敢えず、昼食後にはここを出て、【ライセン大峡谷】へ向かわねば。

まず、買わねばいけないものは、食料品関係とシアの衣服、それと薬関係だ。

今のシアの装いは、樹海に居た時のままのものなので、目には毒だ。

露出度の高い水着の様な兎人族の民族衣装に、俺が掛けた外套を羽織っている状態だ。

引き締まった腹部や、長くしなやかな生足が惜しげも無く晒されている。

このままでは、野郎共が寄ってたかってくるに違いない。

もっと旅に向いた、丈夫で露出の少ない衣服を揃えようかと思った訳なのだ。

因みに、武器・防具類は俺がいるので必要なし。

 

町の中は、既に喧騒に包まれていた。

露店の店主が元気に呼び込みをし、主婦や冒険者らしき人々と激しく交渉をしている。

飲食関係の露店も始まっている様で、朝から濃すぎない?と言いたくなる様な肉の焼ける香ばしい匂いや、タレの焦げる濃厚な香りが漂っている。

美味しそうな匂いに思わず、涎が出てしまう俺であった。

 

道具類の店や食料品は時間帯的に混雑している様なので、俺達はまずシアの衣服から揃える事にした。

キャサリンさんの地図には、きちんと普段着用の店、高級な礼服等の専門店、冒険者や旅人用の店と分けてオススメの店が記載されている。

やはりキャサリンさんは出来る人だ。痒いところに手が届いている。国に何人かは欲しい人材だ。

俺達は早速、とある冒険者向きの店に足を運んだ。ある程度の普段着も纏めて買えるという点が決め手だ。

その店は、流石はキャサリンさんがオススメするだけあって、品揃え豊富、品質良質、機能的で実用的、されど見た目も忘れずという期待を裏切らない良店だった。

ただ、そこには……

 

???「あら~ん、いらっしゃい❤️カッコいいお兄さんに可愛い子達ねぇん❤️

来てくれて、おねぇさん嬉しいぃわぁ~❤️た~ぷりサービスしちゃうわよぉ~ん❤️」

……謎の生物がいた。

詳しい詳細はあえて省くが、2m越えで筋肉モリモリのごつい顔のおっさんが、女装をしていた。

某海賊漫画でも見たことあるような光景だけど、流石にこれは一瞬固まった。

 

ユエとシアは硬直していて、シアに至っては既に意識が飛びかけていて、粗相までしている。

ユエも奈落の魔物以上に思える化物の出現に覚悟を決めたような目をしてるし…。

仕方がない、ここは俺が行こう。王たるもの、民の趣味嗜好も受け入れる心の広さが必要だ……。

ハジメ「えぇ~と、初めまして。俺はハジメ。冒険者をやっている者だよ。

こっちの二人は俺の連れの、ユエとシア。」

???「あぁら~ん、これは態々ご丁寧に❤️礼儀正しい子は好印象よぉ~ん❤️

あたしはここの店長をやっている、クリスタベルよぉ~ん❤️よ・ろ・し・く・ねぇ~ん❤️」バチコーン☆

ウインクまでしてきた……。正直ぶっ倒れたい気持ちもあったが、何とか耐えきった。

 

???「それでぇ?今日は、どんな商品をお求めかしらぁ~ん?」

ハジメ「……実を言うと、シアの衣服を探していてね。

キャサリンさんの紹介でここをお勧めされたから来たんだ。」

まぁ、根は良さそうだし、もしかしたらセンスも抜群かもしれないし。

実質、今彼女?が着ている服も、ユエやシアが着たら間違いなく似合う組み合わせだし。

 

シアはもう帰りたいのか、俺の服の裾を掴みふるふると首を振っているが、クリスタベルさんは「任せてぇ~ん❤️」と言うやいなやシアを担いで店の奥へと入っていってしまった。

その時のシアの目は、まるで食肉用に売られていく豚さんの様だった。

結論から言うと、やはりクリスタベルさんの見立ては見事の一言だった。

店の奥へ連れて行ったのも、シアが粗相をした事に気がつき、着替える場所を提供する為という何とも有り難い気遣いだった。

まぁ、シアの服装は露出具合はあまり変わっていないけど……可愛いから良いか!

 

俺達は、クリスタベルさんにお礼を言い店を出た。

その頃には、店長の笑顔も愛嬌があると思える様になっていたのは、彼女(?)の人徳故だろう。

シア「いや~、最初はどうなる事かと思いましたけど、意外にいい人でしたね。店長さん。」

ユエ「ん……人は見た目によらない。」

ハジメ「……まぁ、あの手の人は初対面だとちょっと怖いけど、仲良くなってみればそうでもないからねぇ。」

シア「ですね~。」

ユエ「ん。」

 

そんな風に雑談しながら、次は道具屋に回る事にした俺達。しかし、唯でさえ二人は目立つ様だ。

すんなりとは行かず、気がつけば数十人の男達に囲まれていた。

冒険者風の男が大半だが、中にはどこかの店のエプロンをしている男もいる。

その内の一人が前に進み出た。

冒険者A「ユエちゃんとシアちゃんで名前あってるよな?」

ユエ「?……合ってる。」

何の用だと訝しそうに目を細めるユエ。

シアは、亜人族であるにもかかわらず"ちゃん"付けで呼ばれた事に驚いた表情をしている。

ハァ……これ絶対に面倒ごとだよなぁ……。

 

ユエの返答を聞くとその男は、後ろを振り返り他の男連中に頷くと覚悟を決めた目でユエを見つめた。

他の男連中も前に進み出て、ユエかシアの前に出る。そして……

「「「「「「ユエちゃん、俺と付き合ってください!!」」」」」」

「「「「「「シアちゃん! 俺の奴隷になれ!!」」」」」」

うん、知ってた。つまりはまぁ、そういう事だ。

ユエとシアで口説き文句が異なるのはシアが亜人だからだろう。

奴隷の譲渡は主人の許可が必要だが、昨日の宿でのやり取りで俺達の仲が非常に近しい事が周知されており、まずシアから落とせば俺も説得しやすいだろう……とでも思ったのかもしれない。

 

因みに、宿での事は色々インパクトが強かったせいか、奴隷が主人に逆らうという通常の奴隷契約では有り得ない事態についてはスルーされている様だ。

でなければ、早々にシアが実は奴隷ではないとバレている筈である。

契約によっては拘束力を弱くする事も出来るが、そんな事をする者はいないからだ。

まぁ、俺とユエにとっても、シアは仲間の一人だからなぁ。

奴隷とか言う身分は実質お飾りみたいなもんだし。

で、告白を受けたユエとシアはというと……

 

ユエ「……シア、道具屋はこっち。」

シア「あ、はい。一軒で全部揃うといいですね。」

ハジメ「いや、せめて一言断っておこうよ。いくら面倒とはいえさぁ……。」

何事も無かった様に歩みを再開した。

「ちょっ、ちょっと待ってくれ! 返事は!? 返事を聞かせてく「断る。(お断りします。)」……ぐぅ…、即答……だと……?」

まぁ、そりゃそうなるわな。出会い頭にそんなこと言ってくる奴なんざ唯の変態にしか見えないし。

大体、二人の事情も知らないくせに、図々しいにも程があるのだが?

 

正に眼中にないという態度に男は呻き、何人かは膝を折って四つん這い状態に崩れ落ちた。

しかし、諦めが悪い奴はどこにでもいるようだ。まして、ユエとシアの美貌は他から隔絶したレベルだ。

多少暴走するのも仕方ないといえば仕方ないかもしれない。

モブ1「なら、なら力づくでも俺のものにしてやるぅ!」

暴走男の雄叫びに、他の連中の目もギンッと光を宿す。

二人を逃さない様に取り囲み、ジリジリと迫っていく。

―――まぁ、させないけどね?

 

ハジメ「……一つ、いいかな?」

モブ1「何だ!お前には関係の「ア˝ァ˝?」ヒッ!?」

俺はモブ男共の態度にいい加減に切れ、膨大な魔力と共に威圧を放った。

正直、自分でも許容した範囲だ。それを越えたこいつらが悪い。

ハジメ「黙ってさっきから聞いていれば……

二人の意思を無視した挙句、好き勝手しようとしやがって……

モブ1「あ……あぁ……。」

ハジメ「そんなに痛い目を見たいのなら……

 

―――全員纏めて、腹に収めてやろうか?

 

その瞬間、俺達を取り囲んでいた野郎どもは、無様に気を失った。

その結果、また二つ名が増えてしまうことを、今の俺は知る由もなかった。

そして、その二つ名が冒険者ギルドを通じて王都まで響き、冒険者共が震え上がることも知らなかった。

そんなことを知る由もない俺は、ユエとシアを抱き上げ、野郎共を踏みつけながら、その場を後にした。

正直、こんな下卑た奴等に二人が触れることも嫌だった。

そんな俺の気持ちを察していたのか、二人は強く抱きついて来た。

……二人ともいい香りだった。後で、怖がらせちゃったお詫びに、化粧品でも買っていくか。

 

後、何故か女の子たちが「お兄様……。」とか呟いて、熱い視線を向けていた気がした。

もうこれ以上妹は増やしたくないんだが……。どこぞの劣等生じゃあるまいし。

それと二人とも、俺はシスコンじゃあない。だから機嫌を直してくれ。

ハジメ「そのさ、こういうのを俺がしていたらいいな、っていうスタイルとかあるかもしれないし……。

もしかしたら、俺よりもカッコいいかもよ……?」

ユエ・シア「「ハジメ(さん)より、カッコいい人なんていない(いません)!」」

ハジメ「即答かい。まぁ、凄い嬉しいけどね。ありがとう。」

と頭を優しくなでていたら、二人とも機嫌が直っていったようだ。

その後、俺の威圧が聞いたのか、余計な邪魔もなくなったので、さっさと残りの物も買い揃えることにした俺達であった。

 


 

昼食後、チェックアウトを済ませた俺達は、ストライカーで【ライセン大峡谷】を突っ走っていた。

道中の魔物共は轢き殺したり、武装で爆散させたりしているので、依然問題なし。

ただ、流石にこのままというのは暇なので、いくらか進んだところをキャンプ場とすることにした。

必要な野営道具と調理器具は俺が作った。正直、デンライナーで過ごしてもいいけどロマンがない。

因みに、入口自体は構造把握で発見済みだ。なので後はそこへ行って入るだけだ。

まぁ、今日はもう疲れたし、明日に備えて栄気を養う目的でいるけど。

 

今日の夕食はクルルー鳥という、空飛ぶ鶏のトマト煮だ。

肉の質や味はまんま鶏だし、この世界でもポピュラーな鳥肉みたい。

一口サイズに切られ、先に小麦粉をまぶしてソテーしたものを各種野菜と一緒にトマトスープで煮込んだ料理のようだ。

肉にはバターの風味と肉汁をたっぷり閉じ込められたまま、スっと鼻を通るようなトマトの酸味が染み込んでおり、口に入れた瞬間、それらの風味が口いっぱいに広がる。

肉はホロホロと口の中で崩れていき、トマトスープがしっかり染み込んだジャガイモ(擬き)はホクホクで、人参(擬き)や玉葱(擬き)は自然な甘味を舌に伝える。

旨みが溶け出したスープにつけて柔くしたパンも実に美味しい。

 

ハジメ「う~ん、やっぱりシアはいいお嫁さんになれるねぇ~。」

ユエ「……ん。文句のつけようなし。」

シア「えへへ、ありがとうございます。」

大満足の夕食を終えて、その余韻に浸りながら、いつも通り食後の雑談をする俺達。

テントの中にいれば、強化された気断石で魔物が寄ってこないので比較的ゆっくりできる。

偶然通りがかる魔物は、俺が呼び出したライダーや疑似ライダーで処理する。

しかも、テントの中にはふかふかの布団があるので、野営にもかかわらず快適な睡眠が取れるのだ。

 

そして翌日……

しっかり睡眠をとった俺達は、大迷宮の入り口らしき場所の前に立っていた。

巨大な一枚岩が谷の壁面に凭れ掛かる様に倒れていて、壁面と一枚岩との間に隙間が空いている場所だ。

そしてその隙間に入ると、壁面側が奥へと窪んでおり、意外な程広い空間が存在した。

ハジメ「さしずめ、【ライセン大迷宮】って言ったところか…。」

その内部構造を見ながら、俺は呟いた。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

本作のハジメさんは、原作ほどオタク文化に傾倒してはいません。
せいぜい、体験できたらいいな位にしか思っていません。

何とかベルの一族に気絶しなかったハジメさん。
実は内心、襲われたらひとたまりもないと思っています。

そしてまさかの、ハジメさんverソウルシスターズ発生の恐れあり。
ハジメさん自身妹は一人で十分と考えているので、はてさてどうなるのか……。

さて次回は、ハジメさん一行サイドと香織達サイドの二本立てです!
是非、お楽しみに!

宜しければ、高評価・コメント宜しくお願い致します。

追記:晶彦さん、誤字報告ありがとうございました!

じかーいじかい

???「おいでませ!ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮へ♪」
遂に突入、ライセン大迷宮!

浩介「ハハッ、俺もうダメかもしれねぇ……。」
香織達の修行は更に過酷に!?

ハジメ「それじゃ、いっきまーす!」
ハジメさん、早速迷宮踏破!?

ドン28話「めいきゅうだいぼうけん」というおはなし。

エヒトの処刑法は?

  • 勿論、終焉の時! 逢魔時王必殺撃!
  • GER(無駄無駄ラッシュで死に続き)
  • 汚物は消毒だァ!
  • 闇遊戯「闇の扉が開かれた」
  • 毛根絶滅
  • G地獄
  • 身体を引きちぎっては治すの繰り返し
  • やらないか♂
  • 金的ブレイク
  • バックトラックでひき殺す
  • ブロリーMAD名物による血祭り
  • これまでの被害者たちによる私刑執行
  • モノクマによるお仕置き執行
  • ダーウィン賞を片っ端から執行
  • ヤバいものを色々体内にぶち込む
  • 汚泥、糞尿まみれ
  • 世界の拷問一気にやる
  • 鬼灯様による理不尽のフルコース
  • 存在ごとエネルギー変換
  • 激辛地獄
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