ありふれない錬成師は最高最善の魔王の力で世界最強を超越する 作:天元突破クローズエボルハザード
今回は二本立てで行きます。
香織達サイド
過酷な修行を続ける香織達。その内容とは一体!?
そして、浩介君の存在や如何に!?
ハジメさんサイド
遂に大迷宮に挑戦!しかし、その内部は罠だらけで……!?
その時、ハジメさんが取った奇策とは!?
急展開の第二章第9話、それではどうぞ!
<香織達サイド>
ハジメ達が【ハルツィナ樹海】にて温和で優しい兎達を悪鬼羅刹の如き殺し屋軍団に魔改造している頃、天之河光輝率いる勇者一行は【オルクス大迷宮】近郊にある宿場町【ホルアド】にて一時の休息を取っていた。
実戦訓練を兼ねて攻略に勤しんでいた【オルクス大迷宮】も遂に七十階層に突入し、魔物の量・質共に著しく向上した為に、一度準備と休息を十分に取ってから挑もうという事になったのだ。
メルド達王国騎士団達が光輝達の戦闘に付いて来られなくなった為、それより先には光輝達だけで進まなければならないという事もあり一度落ち着いて心の準備をするという意味もあった。
何より大きいのは、七十階層で三十階層への転移魔法陣が発見された事だ。
いいタイミングだったとメルドが強く勧めたのである。
そんな訳で二、三日程度ではあるが光輝達は宿場町にて、今度は頼れるメルド団長抜きで新たなステージへ挑戦する為思い思いに心身を休めていた。
そんな中、【ホルアド】の町外れにて剣戟の音が響き渡っていた。
しかし、それにしては町の人々にはその音が聞こえていないのか、やけに静かだった。
それもそうだろう。何せ、その場所には謎の結界が張られており、その音も遮断されているのだ。
そして、その結界内では激闘が繰り広げられていた。
香織「でやぁっ!ハァッ!」ヒュンッ!ヒュンッ!
ミライ「まだまだ遅いわ!もっと、風を切るように!」ヒョイッ!ヒョイッ!
雫「疾ッ!」ズアッ!
ミライ「ホラ、今度は剣筋がズレているわよ!より正確に!」スラッ!
ミライが香織と雫の相手をしており、たった一本の木刀で二人の剣を捌きながら、圧倒している。
その近くでも、戦闘が行われていた。
恵理「メラゾーマ!」ドガァッ!
ヒカリ「甘いわ!第四波動!」ギュルゥッ!
浩介「流砂瀑流!」ザァァァッ!
ヒカリ「ものをよく見なさい!
ヒカリが恵理と浩介の相手をしており、二人の技をあっさりと受け流している。
それも近くにいる香織達や町に飛ばないように、である。
そう、香織達は準備がてらミライとヒカリによる特訓を受けていたのだ。
四人とも、既に無詠唱で技を即座に放てるとはいえ、まだ油断を許さない状況らしい。
何せ、ハジメはこれらの技を簡単に無力化できるのだ。それに加え、時間操作というチート能力がある。
ハジメの傍に立つ以上、彼と肩を並べる程の実力でなければならないのだ。
勿論理由はそれだけではない。それは先日、ヒカリとの初会合の翌日であった。
ヒカリ「そういえば、ミライ。少しいいかしら。」
ミライ「? どうしたの?」
精神世界の中で二人きりの状態であったミライは、急にヒカリから話しかけられた。
ヒカリ「あの御方がいなくなる前、何か不穏な気配を感じたのだけど……貴方は?」
ミライ「! ……もしかして、あの時の!?」
ヒカリ「心当たりがあるの?」
ミライ「えぇ……といっても、彼から聞いただけなんだけどね。」
ミライは先代のオーマジオウとの会話を思い出していた。
それは、彼が力の譲渡を行う前のことだった。
ミライ「ハイパー、タイムジャッカー……!?」
先代『あぁ、どうやら奴等、単体で私に敵わないと知るや、力の集約を行ったようだ。
その結果、時間操作能力を向上させ、異世界との交信ができるようになったらしい。
まぁ、それでも私には遠く及ばないが。いずれ脅威にはなり得る存在であろう。』
そう、当時のオーマジオウは、絶対にして最強、無敵にして無敗、唯一無二の頂に立つ魔王であった。
その強さは言葉ですらも表し難い。ただ、一言で表すのであれば、全能の王、である。
そんな彼に挑む者がいるとすれば、勇気をもって挑む挑戦者か、野望がために挑む愚か者くらいだろう。
ミライ「では、我々が討伐を……「その必要はない」!?ど、どういうことですか!?」
先代『どうやら、私の力を譲渡する者の世界に行くようなのでな。
どうせなら試練の一つとして、任せてみることにした。』
ミライ「!お待ちを!いくらなんでも危険すぎます!それも力を継承したばかりの者に!」
ミライは慌てて止めようとした。彼は次代の王にその討伐を課すというのだ。
それはつまり、もしその者が敗北すれば、譲渡されし力を奪われる危険性もあるのだ。
先代『慌てることなど無かろう。敗れれば所詮はその程度、王の力というものは、人を選ぶものなのだ。
それに、タイムジャッカーごときが手にできる程、私の力は安くはない。』
ミライ「!し、しかし……」
先代『何より、その者が負けると決まった訳でもなければ、力を継承したばかりの時期に来るわけでもない。
ましてや、その者が次代の王を察知できるとは到底思えんがな。』
まるで、その不届き物の実力を実際に見たかのようだ。
それはつまり、彼の王はその存在の詳細を把握している、ということだ。
ミライ「……分かりました。では、そのように致します。」
先代『すまんな。
私としても、後世に問題はあまり残したくはないが、あまり平和すぎるのも考え物故な。
継承者については後日、追って秘密裏に連絡する。』
ミライ「ハッ!」
ミライ「……なんてことがあったの。」
ヒカリ「そう……それなら一刻も早く、件の彼に接触しないとね。」
ミライ「えぇ。その為にも、香織達には悪いけど……。」
ヒカリ「明日からの訓練は厳しめで行くことになるわね。心が折れなければいいけど……。」
ミライ「縁起でもないこと言わないの!」
何て言いながら、今後のスケジュールについて画策する二人であった。
そんなこともあってか、香織達は厳しい特訓を乗り越え、確実に強くはなっていた。
勿論、タダで強くなれるわけではない。
香織「ちょっ、ミライちゃん!?そこは、ア˝ッ!?」
恵理「あぁ~!待って、そこを押すのは、ギッ!?」
雫「待って!その手にあるのは何!?なんで私だけそんな、ン˝グゥッ!?」
変な声が上がっているが、決してやましいことではない。
訓練後のおまじない、という名のマッサージである。
一見いかがわしいように聞こえるが、マッサージ自体には効果はある。
血流の促進、保湿・美肌ケア、姿勢矯正、疲労回復、精神安定、安眠効果、代謝促進、髪質上昇、etc……と、様々な効果が着くのだ。
因みに、二人もこのマッサージを先代オーマジオウに毎回行ってもらっており、そのおかげで押すべきツボや必要な効果のある場所を覚えることが出来たのだ。
尤も、このマッサージには致命的な弱点がある。それは、微力ながらの発情効果である。
常人でも耐えられる程度の量であり、痛覚を和らげるための物ではあるが、それでも出てくる声は何所か艶やかだ。
しかし、彼女たちよりもダメージを負っている者が一人。
浩介「ハハッ、俺もうダメかもしれねぇ……。」
そう、我らが切り札、遠藤浩介君である。
彼はつい先ほどまで、もう一人の自分との鬼ごっこを繰り広げていたが、ミライたちの悪乗りによって、大量の敵との逃走中を繰り広げることになってしまい。途中で自身も感染しかけていたことに絶望し、その場に倒れこんでいるのだ。
しかも、女性陣がマッサージ中でも追いかけられ続けており、終いには発情効果が完全になくなるまで続けさせられたのだ。
それはもう、どこぞの魔王に挑もうと思うくらいの気概で走りぬいた。
そして今、真っ白に燃え尽きていたのだ。
訓練後、他の三人が普通に戻っているにも拘らず、浩介だけが気絶していることに気づいていなかった。
尚その後、ようやくその存在に気づいたヒカリが彼の体を使用し、分身によって運んだ後、ベッドにの上に無造作に放り投げられた。
その夜、浩介の枕は湿っぽかった。
時折「シクシク」と聞こえてくるすすり泣きに、怪異の仕業か何かと勘違いされた時には、ベッドまで濡れていた。
後にハジメさんが、色々苦労を掛けたお詫びとして、彼の願いを出来るだけかなえようとするのはまた別のお話。
尚、ハジメさん曰く「雫の胃痛も心配だけど……浩介の扱いも同じくらい心配なんだが……。」と言っていた。
上司からも心配される男、遠藤浩介君の運命の相手は何処か。それこそ正しく、神のみぞ知る。
(神といっても、ここの自称神(笑)ではない。ちゃんとした恋愛の神様である。)
<香織達サイド終わり>
一方その頃……
<ハジメサイド>
ハジメ「よぉ~し、そろそろかな?二人とも、準備はいい?」
ユエ「ん!バッチコイ!」
シア「はい!いつでもやっちゃってください!」
そう返事するユエとシアは、可変式自立型大盾"アイディオンズィーガー"の陰から顔を覗かせていた。
一方の俺は、オーマジオウに変身し、パーフェクトゼクターに魔力を注ぎ込んでいた。
さて、どうしてこんなことになっているかというと、だ。
それは、迷宮内部の光景が始まりであった。
其処には壁を直接削って作ったのであろう見事な装飾の長方形型の看板があり、それに反して妙に女の子らしい丸っこい字でこう掘られていた。
"おいでませ!ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮へ♪ "
……"!"や"♪"のマークが妙に凝っている所が何とも腹立たつなぁ。
ハジメ「……ここで合っているよね?ドッキリ大迷宮とかじゃないよね?」
シア「あわわ、ハジメさんがあまりの不可思議さにテンパっていますぅ!」
ユエ「ハ、ハジメ、落ち着いて!確かに意味不明な看板だけどもぉ!」
とまぁ、軽く混乱はしたものの、文章の人物のファーストネームからして、やはりここが正解なのだろう。
こんな見た目とはいえ、ここは大迷宮、いつどこから罠が飛んでくるかはわからない。油断は禁物だ。
と、意気込んでは見るものの、流石大迷宮。オルクス同様厄介な場所であった。
まず最初に看板があった窪みの奥を調べると、そこには忍者屋敷の仕掛け扉の様な入り口があった。
しかも回転式という、ある意味ロマンがあった。まぁ、先にはトラップがあるけどね!
ハジメ「危ねぇッ!」シュパパパパパッ!
全く光を反射しない、無数の漆黒の矢が早速のお出迎えだ。
俺は二人に当たらないように、即座に矢を払い落とした。
すると明かりがつき、中央の石板に文字が浮かび上がった。
"ビビった?ねぇ、ビビっちゃった? チビってたりして、ニヤニヤ。"
"それとも怪我した?もしかして誰か死んじゃった?……ぶふっ。"
ハジメ「……。」
大丈夫、全然気にしていないから。だから二人とも、そんなにくっつぎ過ぎないの。
悲報:構造把握が使えなくなりました。そして、次は複雑怪奇な空間に出ました。
階段や通路、奥へと続く入口が何の規則性もなくごちゃごちゃにつながり合っていて、まるでレゴブロックを無造作に組み合わせて出来た様な場所だった。
一階から伸びる階段が三階の通路に繋がっているかと思えば、その三階の通路は緩やかなスロープとなって一階の通路に繋がっていたり、二階から伸びる階段の先が、何もない唯の壁だったり、本当に滅茶苦茶だった。
でもこれって、いかにもThe・迷路って感じだなぁ。ここだけは評価しよう。こういう構造は嫌いじゃない。
むしろなんか、燃えて来た!
ハジメ「取り敢えず、進んでみようか!」
ユエ「ん。考えても仕方ない。」
シア「ですね。」
早速、入口に一番近い場所にある右脇の通路に適当に傷をつけて目印とし、進んでみる事にした。
通路は幅二メートル程で、レンガ造りの建築物の様に無数のブロックが組み合わさって出来ていた。
やっぱり壁そのものが薄ら発光しているので視界には困らない。
緑光石とは違う鉱物の様で薄青い光を放っている。試しに"鉱物鑑定"を使ってみると、"リン鉱石"と出た。
どうやら空気と触れる事で発光する性質を持っているみたい。
最初の部屋は、恐らく何かの処置をする事で最初は発光しない様にしてあったのだろう。
どこかの天空の城を思い出す……この世界なら龍の巣もあるかもしれないなぁ……。
そんな事を思い浮かべながら長い通路を進んでいると突然、音がした。
ハジメ「……あ。」ガコンッ!
どうやら、俺の足が床のブロックの一つを踏み抜いてしまったようだ。
そのブロックだけ俺の体重により沈んでいる。嫌な予感がしたその瞬間、
シャァアアア!!嫌な音を響かせながら、左右の壁のブロックとブロックの隙間から高速回転・振動する円形でノコギリ状の巨大な刃が飛び出してきた。
右の壁からは首の高さで、左の壁からは腰の高さで前方から勢い良く迫ってくる。
ハジメ「そう来るよねぇー!」
俺は慌てながらも時を止め、二人をディメンションキャブで罠より前に移動させ、俺自身もリキッドで難を逃れる。
ふぃ~、危なかった……と思った次の瞬間、謎の悪寒を感じた俺は、咄嗟に二人を抱えてその場から離れた。
直後、頭上からギロチンの如く無数の刃が射出され、まるでバターの如く床にスっと食い込んだ。
やっぱり、先程の刃と同じく高速振動している。
思わず冷や汗を流す俺。ユエとシアは硬直しているようだ。
ハジメ「完全な物理トラップかぁ……。マジに殺しにかかって来てんなぁ……。」
さっきまで油断は禁物とか言っていた自分が恥ずかしい。穴があったら、入りたい!(デデドン!)
シア「はぅ~、し、死ぬかと思いましたぁ~。
ていうか、ハジメさん!あれくらい受け止めて下さいよぉ!何のための鎧なんですかぁ!」
ハジメ「いやぁ、出来るだけ温存しておきたいなぁ、って思っていて……。ごめん。」
シア「温存って……、死ぬところだったんですがっ!?」
ハジメ「大丈夫、時を戻せば対処は直ぐに出来る。」
シア「そういう問題じゃありませんが!?」
掴みかからんばかりの勢いで問い詰めようとするシアに、笑って対処する俺。そんな俺を見て、ユエが溜息をついていた。
まぁ確かに、シアが言った通り、オーマジオウならさっきの刃も砕くなり受け止めるなりで止められただろう。
服装自体にも、極薄くではあるが「逢魔鉱石」をコーティングしてある。あの程度なら傷一つないだろう。
しかし、先程のトラップは唯の人間を殺すには明らかにオーバーキルというべき威力が込められていた。
並みの防具では、歯牙にもかけずに両断されていただろう。
俺の様に、武装に使用された合成鉱石を用いた武器防具でも持っていなければ回避以外に生存の道はない。
ハジメ「でもまぁ、あの程度なら問題ないか。」
と、独りごちる俺。どれだけ威力があっても、並大抵の物理トラップならどうってことない。
ユエも"自動再生"があるから、トラップにかかっても死にはしない。
となると……必然的にヤバイのはシアだけだ。ユエもそれに気づいたようだ。
その事に気がついているのかいないのか分からないが、シアのストレスが天元突破するであろう事だけは確かだった。
シア「あれ?ハジメさん、ユエさん、何でそんな哀れんだ目で私を……?」
ハジメ「強く生きて、シア……。」
ユエ「……ん。ファイト。」
シア「え、ええ?なんですか、いきなり。何か凄く嫌な予感がするんですけど……?」
俺達は、トラップに注意しながら更に奥へと進む。それにしても、なぜ魔物が出てこないのだろうか?
今のところ、トラップとしてすらも来ないことに違和感を感じていた。
そんなことを考えていると、俺達は通路の先にある空間に出た。その部屋には三つの奥へと続く道がある。
取り敢えず目印だけつけておき、俺達は階下へと続く階段がある一番左の通路を選んだ。
シア「うぅ~、何だか嫌な予感がしますぅ。こう、私のウサミミにビンビンと来るんですよぉ。」
階段の中程まで進んだ頃、突然、シアがそんな事を言い出した。
言葉通り、シアのウサミミがピンッと立ち、忙しなく右に左にと動いている。
ハジメ「ちょっ、変なフラグ立てないでよ!?
そういうこと言うと、大抵、直後に何か『ガコンッ!』……ごめん。」
シア「わ、私のせいじゃないですぅッ!?」
ユエ「!?……バカシアッ!」
シアが話している最中に、またもやトラップを踏み抜いてしまった俺。
嫌な音が響いたかと思うと、いきなり階段から段差が消えた。
かなり傾斜のキツイ下り階段だったのだが、その階段の段差が引っ込みスロープになったのだ。
しかもご丁寧に地面に空いた小さな無数の穴からタールの様なよく滑る液体が一気に溢れ出してきた。
ハジメ「その系統は勘弁してぇ~!」
俺は即座に舞空術を発動、それと同時に二人をしっかりと抱き抱え、滑り落ちない様に引き上げる。
ハジメ「ギ、ギリギリ間に合ったぁ……。」
シア「た、助かったですぅ……。」
というかシア、君も舞空術使えるんだし、それで浮けばよかったんじゃあ……。
と、心では思っていても、敢えて言わないでおく俺であった。
その後、俺達は元々進んでいた方向へ下っていき、そのまま長いスロープを抜けて広い空間に出た。
そして、何気なく下を見て盛大に後悔した。
カサカサカサ、ワシャワシャワシャ、キィキィ、カサカサカサ
そんな音を立てながら夥しい数の蠍が蠢いていたのだ。体長はどれも10cmくらいだろう。
嘗ての蠍擬き程じゃないが、生理的嫌悪感はこちらの方が圧倒的に上だ。
即座に浮遊しなければ蠍の海に飛び込んでいたかと思うと、全身に鳥肌が立つ思いである。
ユエ・シア「「……。」」
ハジメ「流石に、これは……。」
思わず黙り込む二人と、同じく黙りたいが気持ちを抑え、蠍の海に炎弾を投げる俺。
蠍達の断末魔を聞きつつ、何気なく天井に視線を転じると、何やら発光する文字がある事に気がついた。
"彼等に致死性の毒はありません。"
"でも麻痺はします。"
"存分に可愛いこの子達との添い寝を堪能して下さい、プギャー!!"
態々リン鉱石の比重を高くしてあるのか、薄暗い空間でやたらと目立つその文字。
それは正しく、穴に落ちた者に対する死体蹴りのような文章だった。
ユエ・シア「「……。」」
ハジメ(アカン……二人の精神衛生上これは良くない。)
また違う意味で黙り込むユエとシアと、「無視しよう」と二人に言い聞かせる俺。
何とか気を取り直すと周囲を観察する。
ユエ「……ハジメ、あそこ。」
ハジメ「うん?」
すると、ユエが何かに気がついた様に下方のとある場所を指差した。
そこにはぽっかりと横穴が空いている。
ハジメ「横穴かぁ……どうする?元の場所に戻る?それとも、あそこに行ってみる?」
シア「わ、私は、ハジメさんの決定に従います。」
ユエ「……同じく。」
ハジメ「シア、"選択未来"は使える?」
シア「うっ、それはまだちょっと。練習してはいるのですが……。」
"選択未来"はシアの固有魔術だ。
仮定の先の未来を垣間見れるけど、一日一回しか使用できない上、魔力も多大に消費するのであまり使えないらしい。
シアの強みは身体強化であるので、少し心配だ。まぁ、魔力がなくとも、そう簡単に死なないけどね。
一応日々鍛錬によって、消費魔力が少しずつ減ってきているらしいが……
使いこなすにはまだまだ道のりは遠そうだ。
ハジメ「まぁ俺が使ってもいいけど、それじゃ面白くないからねぇ……よし、横穴に行くか。」
ユエ「ん。」
シア「はい。」
俺は二人を抱えて移動し、横穴へと辿り着いた。
リン鉱石の照らす通路はずっと奥まで続いている。
特に枝分かれの通路がある訳でも無く、見える範囲ではひたすら真っ直ぐだ。
今までのミレディの罠の配置からして、捻りの無さは逆に怪しい。
警戒しつつ、道なりに先へと進む俺達。
流石に、代り映えのしない規則正しい石造りの通路にいることは、微妙に距離感を狂わせるようだ。
数100m進んだ辺りで、同じ場所をずっと歩き続けている様な錯覚に陥っていた。
何となく気分が悪くなりそうな俺達だったが、まるでそんな心情を見越した様に変化が現れた。
前方に大部屋が見えたのだ。何かありそうだと思いつつも、俺達は躊躇わず部屋へと飛び込んだ。ガコンッ!
……直後、お馴染みになった音が響く。またしてもトラップにエンカウントしてしまった。
……俺にだけ、トラップが反応するのは気のせいだろうか?
ハジメ「上からくるぞ、気を付けろぉ!」
ユエ「シアっ!」
シア「は、はいですぅ!」
全員が頭上に注意を向けた瞬間、俺の言葉通り天井が降って来た。
何とも古典的なトラップであるが、魔力行使が著しく難しいこの領域で範囲型のトラップは反則だ。
もし通路から部屋を見ていた者がいたのなら、きっとズシャッ! という音と共に部屋が消えて通路が突然壁に覆われた様に見えただろう。
通路の入口を完全に塞ぐ形で天井が落ちて来たんだ。
後に残ったのは、傍から見れば一瞬で行き止まりとなった通路だけ。
一見すれば、部屋全体を押し潰した天井により中にいた俺達も圧殺されたとしか思えない状況だ。
しかし、落ちてきた天井の隙間から液体状の何かがニュルゥと這い出てきた。
それらはやがて人の形を形成し、元の姿に戻っていった。
ハジメ「……ほんとごめん」
ユエ「……ん、ギリギリセーフ」
シア「いやいや、普通に死ぬところでしたからね!? というか、今のは何ですか!?」
ハジメ「エナジーアイテム"液状化"。さっき使った"リキッド"みたくなれるアイテムだよ」
シア「それでももう少し早く教えてくれませんか!? ハジメさんも予知使えるんですし!」
ハジメ「……未来ってさぁ、絶対じゃないんだよ」
シア「まさかのセリフ返し!?」
逃げ場は無く、奥の通路までは距離がありすぎて普通に走れば間に合いそうにない。
かといって時止めばかりでは芸がない。ならばどうするかって?
簡単さ、敢えて潰されればいい。ただし、液体状になっている身体でなぁ!
俺は咄嗟に二人に"液状化"のエナジーアイテムを与え、"リキッド"で自身も液状になり、窮地を脱したのだ。
安堵した表情で冷や汗を拭うユエとシアを立ち上がらせつつ、作り置きしてあったサンドイッチを取り出して簡易的なエネルギー補給をする俺達。
そうして気合を入れ直し前を向いたその時、再び例のウザイ文を発見した。
"ぷぷー、焦ってやんの~、ダサ~い。"
どうやらこのウザイ文は、全てのトラップの場所に設置されているらしい。
ミレディ・ライセン……嫌がらせに努力を惜しまないヤツである。
シア「あ、焦ってませんよ! 断じて焦ってなどいません! ダサくないですぅ!」
俺の視線を辿り、ウザイ文を見つけたシアが「ガルルゥ!」という唸り声が聞こえそうな様子で文字に向かって反論する。
シアのミレディに対する敵愾心は天元突破しているらしい。ウザイ文が見つかる度に一々反応している。
もしミレディが生きていたら「いいカモが来た!」とほくそ笑んでいる事だろう。
ハジメ「言わせておけばいいんだよ、こういう奴は関わるだけ無駄だから。早く先を急ごう」
ユエ「……思うツボ」
シア「うぅ、はいですぅ」
その後も進む通路、辿り着く部屋の尽くで罠が待ち受けていた。
突如全方位から飛来する毒矢(ブラックホールで消し飛ばした。)、
硫酸らしき物を溶かす液体がたっぷり入った落とし穴、(舞空術で飛び越えた。)
アリジゴクの様に床が砂状化しその中央にワーム型の魔物が待ち受ける部屋(ボムで始末した。)、
そしてウザイ文。シアのストレスはマッハだった。
その後も暫く歩き、この迷宮に入って一番大きな通路に出た。幅は6,7mといったところだろう。
結構急なスロープ状の通路で緩やかに右に曲がっている。恐らく螺旋状に下っていく通路なのだろう。
俺達は警戒する。こんな如何にもな通路で何のトラップも作動しないなど有り得ない。
そして、その考えは正しかった。もう嫌というほど聞いてきた「ガコンッ!」という何かが作動する音が響く。
既に、スイッチを押そうが押すまいが関係なく発動している気がする。
スイッチの意味よ、と思った俺だったが、きっとそんな思いもミレディ・ライセンは織り込み済みなのだと捉える。
今度はどんなトラップだ?と周囲を警戒する俺達の耳にそれは聞こえてきた。
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ
明らかに何か重たいものが転がってくる音である。
ハジメ・ユエ・シア「「「……」」」
三人が無言で顔を見合わせ、同時に頭上を見上げた。
スロープの上方はカーブになっているため見えない。
異音は次第に大きくなり、そして……カーブの奥から通路と同じ大きさの巨大な大岩が転がって来た。
岩で出来た大玉である。全くもって定番のトラップだ。
きっと、必死に逃げた先には、またあのウザイ文があるに違いない。
ハジメ「ハン!ただの岩ならどうってことないなぁ!」
俺はその場で腰を軽く落として左手を真っ直ぐに前方に伸ばした。
掌は大玉を照準する様に掲げられている。
俺は轟音を響かせながら迫ってくる大玉を真っ直ぐに見つめ、右手を強く引き絞った。
ハジメ「"豪腕"、"マッスル化"、"衝撃変換"、"剛力"、普通のパンチ!」
強化された腕が放つ圧力が、俺の言葉と共に一層激しさを増す。そして……
ゴガァアアン!!!
凄まじい破壊音を響かせながら大玉が木端微塵に弾け飛ぶ。
俺は拳を突き出した状態で残心し、やがてフッと気を抜くと体勢を立て直した。
腕の強化を解除し、二人の方へ振り返った。
シア「ハジメさ~ん!流石ですぅ!カッコイイですぅ!すっごくスッキリしましたぁ!」
ユエ「……ん、すっきり。」
ハジメ「ハッハッハッ!!この程度、どうってことないさ。これで少しは進みやすくな──」
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ
ハジメ「……。」
聞き覚えのある音を聞き、俺はギギギと油を差し忘れた機械のようにぎこちなく振り返った。
笑顔で固まるシアと無表情ながら頬が引き攣っているユエも、締め切りを迫られる小説家の様に背後を振り向いた。
そんな俺達の目に映ったのは……
───黒光りする金属製の大玉だった。
ハジメ「……うそん。」
思わずそんな声が出てしまった。
シア「あ、あのハジメさん。
気のせいでなければ……アレ、何か変な液体撒き散らしながら転がってくる様な……?」
ユエ「……溶けてる。」
そう。事もあろうに金属製の大玉は、表面に空いた無数の小さな穴から液体を撒き散らしながら迫ってきており、その液体が付着した場所がシュワーという実にヤバイ音を響かせながら溶けている様なのである。
これは流石にヤバいと俺も思った。
ハジメ「と思っていたのか?」
俺は大玉に向けて灰色のオーロラを出現させる。
そのまま大玉の方へ進ませると、オーロラは液体ごと大玉を飲み込んで消えた。
ハジメ「フッ、ミレディよ。
このまま俺達の無様な様子を楽しめるだなどと、その気になっていたお前の姿はお笑いだったぜ?」
そう聞こえているであろう迷宮の主に向けて、俺は堂々と言い放った。
その後、唖然としている二人も気がついた様なので、さっさと進む事にした。
途中に溶解液のプールがあったが、難なく飛んで乗り越え、次の部屋に乗り込んだ。
その部屋は長方形型の奥行きがある大きな部屋だった。
壁の両サイドには無数の窪みがあり、騎士甲冑を纏い大剣と盾を装備した身長二メートル程の像が並び立っている。
部屋の一番奥には大きな階段があり、その先には祭壇の様な場所と奥の壁に荘厳な扉があった。
祭壇の上には菱形の黄色い水晶の様な物が設置されている。
ハジメ「如何にもな扉だなぁ。ミレディの住処にしては、なんか妙だね。ボスとも遭遇していないし。
周りの騎士甲冑が飾りじゃなきゃいいけど。」
ユエ「……大丈夫、お約束は守られる。」
シア「それって襲われるって事ですよね!?全然大丈夫じゃないですよ!?」
そんな事を話しながら俺達が部屋の中央まで進んだ時、確かにお約束は守られた。
毎度お馴染みのあの音である。
ガコンッ!
ピタリと立ち止まる俺達。内心「やっぱりなぁ~。」と皆思った。
周囲を見ると、騎士達の兜の隙間から見えている眼の部分がギンッ! と光り輝いた。
そしてガシャガシャと金属の擦れ合う音を立てながら、窪みから騎士達が抜け出てきた。
その数、総勢50体。
騎士達はスっと腰を落とすと、盾を前面に掲げつつ大剣を突きの型で構えた。
窪みの位置的に現れた時点で既に包囲が完成している。
ハジメ「やれやれ、ちゃちゃっと倒しますか。ユエ、シア、行くよ!」
ユエ「んっ」
シア「は、はい!」
俺は右手にフルボトルバスター、左手に刃王剣十聖刃を装備し、即座に構えた。
ここまで数々のトラップを処理してきた俺だが、やっぱりこういう場面にこそ、俺の本領は発揮される。
久しぶりの戦いに、思わずワクワクしてしまう俺。
ユエは俺の言葉に気合に満ちた返事を返した。
この迷宮内では、自分が一番火力不足である事を理解しているようだ。
まぁ、足手纏いとは思ってはいないけどね。それでも頑張ろうとするのは、女の意地だろうか。
この程度の悪環境如きで後れを取る訳にはいかない、って気張っているんだろうなぁ。
まして今は、共に歩む友もいるのだから余計無様は見せられないのだと思う。
一方のシアは、少々腰が引け気味だ。
この環境で影響無く力を発揮出来るとは言え、実質的な戦闘経験はかなり不足している。
真面な魔物戦は樹海や谷底の魔物だけで、ユエとの模擬戦を合わせても半年にも満たない戦闘経験しかない。
元々ハウリア族という温厚な部族出身だった事からも、戦闘に対して及び腰になるのも無理はない。
寧ろ、気丈にドリュッケンを構えて立ち向かおうと踏ん張っている時点でかなり根性があると言えるだろう。
ま、彼女も自分を奮い立たせているようだし、ここは……。
ハジメ「シア!」
シア「は、はいぃ!な、何でしょうハジメさん。」
緊張に声が裏返っているシアに、俺は声をかけた。
ハジメ「お前は強い、俺達が保証してやる。こんなガラクタ如きに負けるわけねぇよ。
だから下手な事は考えず好きに暴れろ、危ない時は任せとけ!」
ユエ「……ん、弟子の面倒は見る。」
シア「!はい!お二人が認めてくれたんです!こんな奴等、ウッサウサにしてやんよ、ですぅ!」
……ウッサウサとは? という疑問を頭に残した俺は、両手の武器を構えた。
ユエも大量の魔力をため、シアは全身に身体強化を施し、力強く地面を踏みしめた。
そして三人とも、真っ直ぐ前に顔を向けて騎士達を睨みつける。
シア「かかってこいやぁ!ですぅ!」
ユエ「……だぁ~。」
ハジメ「無に帰してやろう、鉄屑共。」
五十体のゴーレム騎士を前に、最初っからクライマックスな俺達。
そんな俺達の様子を知ってか知らずか……ゴーレム騎士達は一斉に侵入者達を切り裂かんと襲いかかった。
ゴーレム騎士達の動きは、その巨体に似合わず俊敏だった。
ガシャンガシャンと騒音を立てながら急速に迫るその姿は、装備している武器や眼光と相まって凄まじい迫力である。
まるで四方八方から壁が迫って来たと錯覚すらしそうだ。
そんなゴーレム騎士達に向けて肉薄した俺は、両手の武器を一気に横薙ぎにする。
握り締めた至高の一振りが、神すら置き去りにする速度と威力を以てゴーレム騎士達に放たれた。
ズパァン!!
風を切るような音とともに、2体のゴーレム騎士が真っ二つになって倒れた。
自身の駆けた勢いでパズルの様に崩れて散らばる騎士達、それを踏み越えて後続の騎士達が俺達へと迫る。俺は即座にそれを蹴飛ばし、かかって来いと後続に手招きする。
そんな俺に対し、「上等だゴルァ!」とでも言わんばかりに向かってくる数体の騎士。
だがそこは、青みがかった白髪を靡かせ超重量の大槌を大上段に構えたまま飛び上がっていたシア・ハウリアのキルゾーンだ。
限界まで強化したその身体能力を以て遠慮容赦の一切を排した問答無用の一撃を繰り出す。
シア「でぇやぁああ!!」ドォガアアア!!
気合一発。
打ち下ろされた戦槌ドリュッケンSH-2068は、凄まじい衝撃音を響かせながら一体のゴーレム騎士をペシャンコに押し潰した。
一応騎士も頭上に盾を構えていたのだが、その防御ごと圧壊されたのである。
地面にまで亀裂を生じさせ、めり込んでいるドリュッケン。
渾身の一撃を放ち死に体となっていると判断したのか、盾を構えて衝撃に耐えていた傍らの騎士が大きく大剣を振りかぶりシアを両断せんと踏み込む。
シアはそれをしっかり横目で確認していた。
柄を捻り、ドリュッケンの頭の角度を調整すると柄に付いているトリガーを引く。
ドカンッ!!
そんな破裂音を響かせながら地面にめり込んでいたドリュッケンが跳ね上がった。
シアの脇を排莢されたショットシェルが舞う。
跳ね上がったドリュッケンの勢いを殺さず、シアはその場で一回転すると遠心力をたっぷり乗せた一撃を、今正に大剣を振り下ろそうとしている騎士の脇腹部分に叩きつけた。
シア「りゃぁあ!!」
そのまま気迫を込めて一気に振り抜く。
直撃を受けた騎士は、体をくの字に折り曲げてまるで高速で突っ込んできたトラックに轢かれたかの様にぶっ飛んでいき、後ろから迫って来ていた騎士達を盛大に巻き込んで地面に叩きつけられた。
騎士の胴体は、原型を止めない程拉げており身動きが取れなくなっている。そこへ、
ヒュンッヒュンッ!
そんな風切り音がシアのウサミミに入る。
チラリと上空を見ると、先程のゴーレム騎士が振り上げていた大剣がシアに吹き飛ばされた際に手放された様で、上空から回転しながら落下してくるところだった。
シアは落ちてきた大剣を跳躍しながら掴み取ると、そのまま全力で迫り来るゴーレム騎士に投げつけた。
大剣は尋常でない速度で飛翔し、ゴーレム騎士が構えた盾に衝突して大きく弾く。
シアはその隙を逃さず踏み込み、下段からカチ上げるようにドリュッケンを振るった。
腹部に衝撃を受けた騎士の巨体が宙に浮く。
騎士が苦し紛れに大剣を振るうが、シアはカチ上げたドリュッケンの勢いを利用してくるりと回転し大剣をかわしながら、再度今度は浅い角度で未だ宙に浮く騎士にドリュッケンを叩きつけた。
先のゴーレム騎士と同様、砲弾と化してぶっ飛んだゴーレム騎士は後続の騎士達を巻き込みひしゃげた巨体を地面に横たわらせた。
シアの口元に笑みが浮かぶ。戦いに快楽を覚えたからではない。
自分がきちんと戦えている事に喜びを覚えているのだ。
自分はちゃんと俺達の旅に付いて行けるのだと実感しているのだ。
その瞬間、ほんの少しだけ気が抜ける。
戦場でその緩みは致命的だった。気がつけば視界いっぱいに騎士の盾が迫っていた。
なんとゴーレム騎士の一体が自分の盾をシアに向かって投げつけたのである。
流石ゴーレムというべきか、途轍もない勢いで飛ばされたそれは身体強化中のシアにとって致命傷になる様なものではないが、脳震盪位は確実に起こす威力だ。
そうなれば、一気に畳み込まれるだろう事は容易に想像できる。
まさか盾を投げつけるなどといった本職の騎士でもしなさそうな泥臭い戦い方をゴーレム騎士がするとは思いもしなかったシア。
最早「しまった!」と思う余裕も無い。せめて襲い来るであろう衝撃に耐えるべく覚悟を決める。
だが盾がシアに衝突する寸前で銃撃が飛来し盾に衝突、破壊しその破片を撒き散らす。
破片はシアの頭部のすぐ脇を通過し、背後のゴーレム騎士に突き刺さる。
ユエ「……油断大敵。後でお仕置き。」
シア「ふぇ!? 今のユエさんが?す、すみません、ありがとうございます!ってお仕置き!?」
ユエ「ん……気を抜いちゃダメ」
シア「うっ、はい!頑張りますぅ!」
ユエに「メッ!」という感じで叱られてしまい、自分が少し浮かれて油断してしまった事を自覚するシア。反省しながら気を引き締めなおす。
改めて迫って来たゴーレム騎士を倒そうとして、後方から飛んできたゲリラ豪雨の様な銃撃が、密かにシアの背後を取ろうとしていたゴーレム騎士をドパンッと焼断したのを確認した。
ユエが自分の背中を守ってくれていると理解し心の内が温かくなるシア。師匠の前で無様は見せられないと、より一層気合を入れた。
その後も、暴れるシアの死角に回ろうとする騎士がいれば同じ様に弾丸が飛び、最早撃ち抜くというより焼き払っていく。
ユエは両手に、盾とガトリング銃が組み合わさった様な武器を持っていた。
両肩には小型砲台の様な物を纏っている。
これらは俺が貸し与えた武器、斬月の"ウォーターメロンガトリング"とゾルダの"ギガキャノン"だ。
ユエが引き金を引けば銃弾が、撃つと頭で思う度に砲弾が飛び出し敵を粉砕していく。
シアの爆発的な近接攻撃力と、その死角を補うように放たれるユエの砲銃火。
騎士達は二人のコンビネーションを破る事が出来ず、いい様に翻弄されながら次々と駆逐されていった。
そんな素晴らしい連携を披露するユエとシアを横目に俺は呟く。
ハジメ「フッ、コイツぁ、俺も本気みせてやらねぇとなぁ!」
そんな風に気合を入れ、ゴーレム騎士達を片付けていく俺。
騎士の振り下ろした大剣を蹴り飛ばし、十聖刃を振るう。
盾ごと両断される騎士には目もくれず、そのまま振り向かずに背後の騎士をフルボトルバスターで打ち抜く。
横凪に振るわれた大剣を強化した足で蹴り砕き、砕け散る大剣には目もくれず騎士達を倒していく。
そうやって、次々とゴーレム騎士達を屠っていったが……
ハジメ「……おかしい。一向に減らないな……。」
ゴーレム騎士達の襲撃を真っ向から反撃しながら、俺は訝しそうに眉を寄せた。
というのも、先程から相当な数のゴーレム騎士を破壊しているはずなのだが、迫り来る彼等の密度が全く変わらないのだ。
その疑問は、ユエとシアも感じたらしい。
そして、よくよく戦場を観察してみれば、最初に倒したゴーレム騎士の姿が何処にもない事に気がついた。
ユエ「……再生した?」
ハジメ「みたいだな。こりゃあ厄介だな。」
シア「そんな!?キリがないですよぉ!」
そう、ゴーレム騎士達は破壊された後も眼光と同じ光を一瞬全身に宿すと瞬く間に再生して再び戦列に加わっていたのである。
シアが、迫り来るゴーレム騎士達を薙ぎ払いながら狼狽えた声を出した。
どれだけ倒しても意味がないと来れば、そんな声も出したくなるだろう。
だが、それに反して俺とユエは冷静なまま、特に焦った様子もなく思考を巡らしながらゴーレム騎士達を蹴散らしている。
まぁ、この辺りは経験の差というやつだろう。
この程度、正直どうってことはない。むしろ、オルクスの頃より遥かに強くなった今は余裕すらある。
ユエ「……ハジメ、ゴーレムなら核があるはず。」
ハジメ「いや、多分核じゃないと思う。どうやらこの床や鎧の素材が原因みたい。」
ユエの言う通り、ゴーレムは体内に核を持っているのが通常であり、その核が動力源となる。
核は魔物の魔石を加工して作られている。オスカーのお掃除ゴーレムの設計書にもそう記されてあった。
しかし、それは不可能だった。何故なら、再生の原因は床や騎士たちに使われていた鉱石であったからだ。
その鉱石は感応石と言って、魔力を定着させる性質を持つ鉱石らしい。
同質の魔力が定着した二つ以上の感応石は、一方の鉱石に触れていることで、もう一方の鉱石及び定着魔力を遠隔操作することができる物なのだ。
この感応石で作られたゴーレム騎士達は、何者かによって遠隔操作をされているということだろう。俺達が再生だと思っていたのも、鉱石を直接操って形を整えたり、足りない部分を継ぎ足したりしているだけのようだ。
再生というより再構築といった感じだろう。
よく見れば、床にも感応石が所々に使われており、まるで削り出したように欠けている部分が見られる。ゴーレムの欠けた部分の補充に使われたに違いない。
操っている者を直接叩かないと本当にキリがないようだ。
ハジメ「ユエ、シア。こいつらを操っている奴がいる。強行突破に作戦変更だ!」
ユエ「んっ」
シア「と、突破ですか?了解ですっ!」
俺の合図と共に、ユエとシアが一気に踵を返し祭壇へ向かって突進する。
俺は即座にサイキョージカンギレードを構え、進行方向の騎士達を蹴散らし隊列に隙間をあけつつ、後方から迫ってきているゴーレム騎士達に向かってギガントをぶち込んだ。
背後で大爆発が起こり、衝撃波と爆風でゴーレム騎士達が次々と転倒していく。
シアも、俺の空けた前方の隙間に飛び込みドリュッケンを体ごと大回転させて周囲のゴーレム騎士達を薙ぎ払った。
技後硬直するシアに盾や大剣を投げつけようとするゴーレム騎士達にユエの銃撃が飛来し粉砕していく。
俺は殿を務めながら後方から迫るゴーレム騎士達に火縄大橙DJ銃を連射した。
その隙に一気に包囲網を突破したシアが祭壇の前に陣取る。
続いてユエが、祭壇を飛び越えて扉の前に到着した。
シア「ユエさん!扉は!?」
ユエ「ん……やっぱり封印されてる。」
シア「あぅ、やっぱりですか!」
見るからに怪しい祭壇と扉だ、封印は想定内。だからこそ、最初は面倒な殲滅戦を選択したのだ。
扉の封印を落ち着いて解くために。シアは、案の定の結果に文句を垂れつつも、階段を上ってきた騎士を弾き飛ばす。
ハジメ「封印の解除はユエに任せる。俺もちょっと本気で行くよ!」ジクウドライバー!オーマジオウ!
そう言って俺は、ジクウドライバーとオーマジオウライドウォッチを取り出し、腰に装着した。
それと同時に、殿を務めていた俺はシアの隣に並び立った。
俺の言う通り、錬成で強引に扉を突破することは、もしかすると可能かもしれないが、この領域では途轍もない魔力を消費して、多大な時間がかかることだろう。
それなら、せっかく如何にもな祭壇と黄色の水晶なんて物が置かれているのだから、正規の手順で封印を破る方がきっと早い。
俺はそう判断して、戦闘では燃費の悪いユエに封印の解除役を任せる。
ユエ「ん……任せて。」
ユエは、二つ返事で了承し祭壇に置かれている黄色の水晶を手に取ったようだ。
さっきチラッと見たが、その水晶は、正双四角錐をしており、よくみれば幾つもの小さな立体ブロックが組み合わさって出来ているみたいだ。
それを見た俺は、ドライバーにウォッチをセットし、変身の構えをとった。
シア「?ハジメさん?」
不思議がるシアを横目に、俺は"ジクウサーキュラー"を回転させ、あの言霊を発した。
ハジメ「変身!」
その言葉と同時に、オーマジオウと同じようで少し違った変身シークエンスに移った。
「キングタイム!」ゴォーン!
ベルトが音声を発すると同時に、鎧が形成され、もう一つの王の姿が映し出された。
「仮面ライダージオウ!オーマ!」
シュウゥゥゥ……
本来の俺の力には劣るものの、その力は2068のオーマジオウを凌ぐともいわれている形態。
それがこの、仮面ライダージオウ・オーマフォームだ。
この前、念のためにとジクウドライバーを生成しておいて正解だった。
ハジメ「悪いけど、本気で行かせてもらうよ!」
シア「あれ!?ハジメさん、口調が変わっていませんよ!?」
ハジメ「……あの形態でも一応、普通の口調で話せるよ?」
ユエ「……二重人格?」
ハジメ「やめてくれ、二人共。そんな心配そうな目でこっちを見ないでくれ。」
そう言って俺は、ゴーレム共に向かっていった。
早速俺を迎え撃とうとする騎士ゴーレムたち。だが今回は、相手が悪かったな。
俺は即座に時間停止を発動し、ゲームエリアを展開した。
全騎士ゴーレム達が入ったのを確認した俺は、サイキョージカンギレードで纏めて細切れにした。
その斬られた部分の感応石を分離し、コネクトで奪取する。泥棒だって? そこに素材を置くのが悪い!
あ、後序に遠透石とか言う鉱石も貰っておくね。ってこれ、監視カメラみたいな感じの奴じゃん。
そして時は動き出す。それと同時に、ゴーレム達が糸の切れた人形のように倒れ伏す。
シア「え!?ハジメさん、今、何したんですか!?」
ハジメ「ふっふっふっ、残念だったなぁ、秘密のトリックだよ。」
安心してくれ、ミレディ。アンタのゴーレムは有効活用させてもらうから。
さてと、早速ユエの方へ駆け寄ると、正双四角錐を組み換えていた。背後の扉には三つの窪みがあった。
どうやら、窪みに三つの立方体をはめれば開くようだ。
と、扉の仕組みに感心していると、急にユエから怒気が溢れ出していた。
ハジメ「ユエ、どうしたの?」
ユエ「……ん。」
ユエは怒った様子で扉の窪みを指さした。
そこには、よく観察しなければ見つからないくらい薄く文字が彫ってあることに気がついた。それは……
"とっけるかなぁ~、とっけるかなぁ~?"
"早くしないと死んじゃうよぉ~。"
"まぁ、解けなくても仕方ないよぉ!私と違って君は凡人なんだから!"
"大丈夫! 頭が悪くても生きて……いけないねぇ!ざんねぇ~ん!プギャアー!"
何時ものウザイ文だった。
ハジメ「ユエ、手を貸そうか?」
ユエ「……必要ない。」
ハジメ「……分かった。よし、シア。この部屋の床を全部はぎ取ってあげなさい。」
シア「合点承知ですぅ!」
"念話"でこっそりヒントを与えつつ、ユエにパズルを任せた俺とシアは、感応石のある床を全部はぎ取っていった。
流石に全ての床を穴だらけにするのはいけないと思うので、生成魔法で創った鉱石で穴は埋めておいた。
数分後……
鉱石をとりつくした俺とシアがユエの下に向かうと……
ユエ「……開いた。」
ハジメ「早かったね、よし、進むぞ!」
シア「はいっ!」
部屋の中は、遠目に確認した通り何もない四角い部屋だった。
てっきり、ミレディ・ライセンの部屋とまではいかなくとも、何かしらの手掛かりがあるのでは? と考えていたので少し拍子抜けする。
ハジメ「これは、あれか?これみよがしに封印しておいて、実は何もありませんでしたっていうオチか?」
ユエ「……ありえる。」
シア「うぅ、ミレディめぇ。何処までもバカにしてぇ!」
三人が一番あり得る可能性を浮かべていると、突如もううんざりする程聞いているあの音が響き渡った。
ガコンッ!
ハジメ・ユエ・シア「「「!!」」」
仕掛けが作動する音と共に部屋全体がガタンッと揺れ動いた。そして、俺達の体に横向きのGがかかる。
ハジメ「!この部屋自体が移動してるのか!?」
ユエ「……そうみたッ!?」
シア「うきゃ!?」
俺が推測を口にすると同時に、今度は真上からGがかかる。
急激な変化に、ユエが舌を噛んだのか涙目で口を抑えてぷるぷるしている。
シアは転倒してカエルの様なポーズで這いつくばっている。
咄嗟にフォーゼのマグネットステイツの力を応用し、俺達にかかるGを軽減しようとする。
部屋は、その後も何度か方向を変えて移動しているようで、約四十秒程してから慣性の法則を完全に無視するようにピタリと止まった。
ハジメ「ふぅ~、ようやく止まった……二人共、大丈夫?」
ユエ「……ん、平気。」
シア「な、何とか……。」
重力操作を解除して立ち上がって周囲を見るが特に変化はない。
先ほどの移動を考えると、入ってきた時の扉を開ければ別の場所ということだろう。
そして、やっぱり何もないようなので扉へと向かった。
ハジメ「さて、何が出るかな?」
ユエ「……操ってたヤツ?」
シア「ミレディぶっ殺しますぅ!」
ハジメ「落ち着けェ!?ミレディは死んでいるはずだし、別の誰かかもしれないでしょ!?」
シア「……じゃあ一体誰が、あのゴーレム騎士を動かしていたんですか?」
ユエ「……何が出ても大丈夫。私達は、最強。」
そんな掛け合いをしながら、扉の下へ向かった。
扉の先は、ミレディの住処か、ゴーレム操者か、あるいは別の罠か……
俺達は「何でも来い!」と不敵な笑みを浮かべて扉を開いた。
そこには……
ハジメ「……あれ?何か見覚えない?この部屋。」
ユエ「……物凄くある。特にあの石板。」
扉を開けた先は、別の部屋に繋がっていた。その部屋は中央に石板が立っており左側に通路がある。
見覚えがあるはずだ。なぜなら、その部屋は、
シア「最初の部屋……みたいですね?」
シアが、思っていても口に出したくなかった事を言ってしまう。
だが、確かに、シアの言う通り最初に入ったウザイ文が彫り込まれた石板のある部屋だった。
よく似た部屋ではない。それは、扉を開いて数秒後に元の部屋の床に浮き出た文字が証明していた。
"ねぇ、今、どんな気持ち?"
"苦労して進んだのに、行き着いた先がスタート地点と知った時って、どんな気持ち?"
"ねぇ、ねぇ、どんな気持ち?どんな気持ちなの?ねぇ、ねぇ?"
俺・ユエ・シア「「「……。」」」
俺達の顔から表情がストンと抜け落ちる。能面という言葉がピッタリと当てはまる表情だ。
三人とも、微動だにせず無言で文字を見つめている。すると、更に文字が浮き出始めた。
"あっ、言い忘れてたけど、この迷宮は一定時間ごとに変化します。"
"いつでも、新鮮な気持ちで迷宮を楽しんでもらおうというミレディちゃんの心遣いです。"
"嬉しい?嬉しいよね?お礼なんていいよぉ!好きでやってるだけだからぁ! "
"ちなみに、常に変化するのでマッピングは無駄です。"
"ひょっとして作ちゃった?苦労しちゃった?残念!プギャァー!"
ユエ「フフフフ……。」
シア「フヒ、フヒヒヒ……。」
ハジメ「……。」
ユエとシアの壊れた笑い声が辺りに響く。俺は俯いて黙ったままだった。
その後、迷宮全体に届けと言わんばかりの絶叫が響き渡ったのは言うまでもない。
二人の絶叫が止んで少しして、俺はこの部屋に戻ってから初めて言葉を発した。
ハジメ「ねぇ、二人とも。俺にいい考えが有るんだけど……いいかな?」
二人は後に語る。
"その時ハジメが浮かべていた笑顔は凶悪な物だったのに、何故か私達の胸は甘くキュンキュンとしていた"と……。
そして冒頭に戻る。
俺のいい考え、それはつまり、超威力によるごり押しだ。
究極の脳筋作戦ではあるが、構造に関係なく攻略が可能ではある。
オーマジオウのパワーを集約した、パーフェクトゼクターの超必殺「マキシマムハイパーサイクロン」なら、いかに迷宮の壁が堅かろうとも、どんなに入り組んでいる迷路だろうと、関係なく突き破れるだろう。
因みに、二人に瓦礫が飛んでこないよう、アイディオンで防いでもらっている。
ハジメ「おぉ!こっちも準備が完了したみたいだ。それじゃ、カウントダウンいっくよ~!」
ユエ「ん!3数える!」
シア「分かりました!それじゃあ、1!」
ハジメ「1だね!それじゃ、いっきまーす!」
俺は二人のゴーサインを受け、マッピングから予測されるゴール地点を見据えながら、パーフェクトゼクターを構え、引き金に指をかけた。
するとその時、奥の道から予備の個体であろう甲冑騎士ゴーレムがやってきた。
ハジメ「誠に残念だが、もう止められぬぅ!だが、私は謝らない!よって吹っ飛べ!」
俺はその登場を待たずに、引き金を引いた。
??? 「ちょっ、待っ、「Maximum Hyper Cyclone!」」ズガガガガガガァァン!!!
その瞬間、轟音と共に一筋の閃光が通り抜けた。
その閃光は後にとある場所に撃ちこまれたとのことだが、それはまた別のお話。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
さて、香織達は模擬戦をしていました。
そして今回、ハイパータイムジャッカーという存在が初めて明かされました。
お察しの通り、今作におけるオリ敵です。
登場はまだまだ先ですが、次章ではそれを示唆する敵が登場いたします。
是非お楽しみに!
今回のハジメさん、大迷宮を破壊する。
流石にもう一度やれと言われたら、キレました。
その結果、原子レベルの破壊砲で風穴を開けることに。
ミレディさんの運命や如何に!?
宜しければ、高評価・コメント宜しくお願い致します。
追記:あかさたなはまやさん、晶彦さん、N.jpさん、誤字報告ありがとうございました!
Task29
トシ「先生はやっぱり人気者だな。」
愛子、いざウルの町へ!
???「もう嫌だよ、こんな寂しいの…。」
少女が流す涙の意味とは!?
ハジメ「まだ終わっていない。ここから始まるんだ。」
ハジメ、クソ神にガチギレ!?
次回「天翔ける閃光」
ハジメ「久々だなぁ……こんな感情はァ。」
エヒトの処刑法は?
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勿論、終焉の時! 逢魔時王必殺撃!
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GER(無駄無駄ラッシュで死に続き)
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汚物は消毒だァ!
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闇遊戯「闇の扉が開かれた」
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毛根絶滅
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G地獄
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身体を引きちぎっては治すの繰り返し
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やらないか♂
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金的ブレイク
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バックトラックでひき殺す
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ブロリーMAD名物による血祭り
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これまでの被害者たちによる私刑執行
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モノクマによるお仕置き執行
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ダーウィン賞を片っ端から執行
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ヤバいものを色々体内にぶち込む
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汚泥、糞尿まみれ
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世界の拷問一気にやる
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鬼灯様による理不尽のフルコース
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存在ごとエネルギー変換
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激辛地獄