ありふれない錬成師は最高最善の魔王の力で世界最強を超越する   作:天元突破クローズエボルハザード

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お待たせいたしました。
今回は初めてのフューレンでの出来事です。
家畜野郎と黒の傭兵との激突、そして、ギルド支部長からの依頼とは!?

今回も急展開の第三章第三話、それではどうぞ!


33.トラブル続出!?中立商業都市フューレン

【中立商業都市フューレン】

高さ20m、長さ200kmの外壁で囲まれた大陸一の商業都市だ。

あらゆる業種がこの都市で日々鎬を削り合っており、夢を叶え成功を収める者もいれば、あっさり無一文となって悄然と出て行く者も多くいるらしい。

観光で訪れる者や取引に訪れる者等出入りの激しさでも大陸一と言えるだろう。

その巨大さからフューレンは四つのエリアに分かれている。

 

この都市における様々な手続関係の施設が集まっている中央区、娯楽施設が集まった観光区、武器防具は勿論家具類等を生産・直販している職人区、あらゆる業種の店が並ぶ商業区がそれだ。

東西南北にそれぞれ中央区に続くメインストリートがあり、中心部に近い程信用のある店が多いというのが常識らしい。

メインストリートからも中央区からも遠い場所は、かなり阿漕でブラックな商売、言い換えれば闇市的な店が多いとのことだ。

その分、時々とんでもない掘り出し物が出たりするので、冒険者や傭兵の様な荒事に慣れている者達がよく出入りしている様だ。

ちょっぴり興味はあるが、奴を消してからだな。

 

そんな話を、中央区の一角にある冒険者ギルド

──フューレン支部内にあるカフェで軽食を食べながら聞く俺達。

話しているのは"案内人"と呼ばれる職業の女性だ。

都市が巨大である為需要が多く、案内人というのはそれなりに社会的地位のある職業らしい。

多くの案内屋が日々顧客獲得の為サービスの向上に努めているので信用度も高い。とのことだ。

 

俺達はモットー率いる商隊と別れると、証印を受けた依頼書を持って冒険者ギルドにやって来た。

そして宿を取ろうにも何処にどんな店があるのかさっぱりなので、冒険者ギルドでガイドブックを貰おうとしたところ案内人の存在を教えられたのだ。

そして現在、案内人の女性

──リシーと名乗った女性に料金を支払い、軽食を共にしながら都市の基本事項を聞いていたのである。

 

リシー「そういう訳なので、一先ず宿をお取りになりたいのでしたら観光区へ行く事をオススメしますわ。中央区にも宿はありますが、やはり中央区で働く方々の仮眠場所という傾向が強いので、サービスは観光区のそれとは比べ物になりませんから。」

ハジメ「成程ね、なら素直に観光区の宿にしておこう。どこか贔屓の宿はありませんか?」

リシー「お客様のご要望次第ですわ。様々な種類の宿が数多くございますから。」

ハジメ「そっか、じゃあそうだねぇ……食事が美味く、後は風呂があればいいかな。

立地は考慮しなくていい、後は……責任の所在が明確な場所がいいな。」

リシーは、にこやかに俺の要望を聞く。

最初の二つはよく出される要望なのだろう、「うんうん。」と頷き早速脳内でオススメの宿をリストアップした様だ。

しかし、続く俺の言葉で「ん?」と首を傾げた。

 

リシー「あの~、責任の所在ですか?」

ハジメ「あぁ。

例えば、何らかの争い事に巻き込まれたとして、こちらが完全に被害者だった時に"宿内での損害について誰が責任を持つのか"、という事だね。」

リシー「え~と、そうそう巻き込まれる事は無いと思いますが……。」

困惑するリシーに俺は苦笑いする。

ハジメ「まぁ普通はそうなんだけど、連れの子達が目立つからね。

観光区なんで羽目を外す輩も多そうだからね、商人根性の逞しい者が強行に出ないとも限らないし。

まぁあくまで"出来れば"だよ。難しければ考慮しなくていいし。」

 

俺の言葉に、リシーは俺の近くに座りうまうまと軽食を食べるユエ達に視線をやる。

そして納得した様に頷いた。確かに、この美少女三人は目立つ。

現に今も、周囲の視線をかなり集めている。特に、シアの方は兎人族だ。

他人の奴隷に手を出すのは犯罪だが、しつこい交渉を持ちかける商人や羽目を外して暴走する輩がいないとは言えない。

 

リシー「しかし、それなら警備が厳重な宿でいいのでは?

そういう事に気を使う方も多いですし、いい宿をご紹介できますが……。」

ハジメ「う~ん、それでもいいけど、欲望に目が眩んだ奴等は、時々とんでもない事をするからねぇ。

警備も絶対でない以上は最初から物理的説得を考慮した方が早いんだよ。」

リシー「ぶ、物理的説得ですか……成程、それで責任の所在なわけですか。」

完全に俺の意図を理解したリシーは、あくまで"出来れば"でいいと言う俺に、案内人根性が疼いた様だ、やる気に満ちた表情で「お任せ下さい。」と了承する。

そしてユエ達の方に視線を転じ、三人にも要望が無いかを聞いた。

出来るだけ客のニーズに応えようとする点、リシーも彼女の所属する案内屋もきっと当たりなのだろう。

 

ユエ「……お風呂があればいい、但し混浴、貸切が必須。」

シア「えっと、大きなベッドがいいです。」

ミレディ「それと防音や覗き対策もあったらいいな。前の宿で色々あったし……。」

少し考えて、それぞれの要望を伝えるユエ達。

なんて事無い要望だが、ユエが付け足した条件とシアとミレディの要望を組み合わせると、自然ととある意図が透けて見える。

リシーも察した様で、「承知しましたわ、お任せ下さい。」とすまし顔で了承するが、頬が僅かに赤くなっている。

そしてチラッチラッと俺とユエ達を交互に見ると更に頬を染めた。

別にそんな考えはないんだが……。どこの場所でもむっつりはいるんか。

 

因みに、すぐ近くのテーブルで屯していた男連中が「視線で人が殺せたら!」と云わんばかりに俺を睨んでいたが、チラッと視線を向けると、皆借りてきた猫の様に大人しくなった。

それから他の区について話を聞いていると、俺達は不意に強い視線を感じた。

特に、ユエ達に対しては今までで一番不躾で、ねっとりとした粘着質な視線が向けられている。

視線など既に気にしないユエ達だが、あまりに気持ち悪い視線に僅かに眉を顰める。

俺がチラリとその視線の先を辿ると……豚がいた。

 

体重が軽く100kgは超えていそうな肥えた体に、脂ぎった顔、豚鼻と頭部にちょこんと乗っているベットリした金髪。

身なりだけは良い様で、遠目にも分かるいい服を着ている。

その豚がユエ達を欲望に濁った瞳で凝視していた。

俺が「うぜぇ……。」と思うと同時に、その豚は重そうな体をゆっさゆっさと揺すりながら真っ直ぐ俺達の方へ近寄ってくる。

丁度いい。周りの奴等にも叩き込んでやるか、俺の常識って奴を。

 

リシーも不穏な気配に気が付いたのか、それとも豚が目立つのか、傲慢な態度でやって来る豚に営業スマイルも忘れて「げっ!」と何ともはしたない声を上げた。

豚は俺達のテーブルのすぐ傍までやって来ると、ニヤついた目でユエ達をジロジロと見やり、シアの首輪を見て不快そうに目を細めた。

そして今まで一度も目を向けなかった俺にさも今気がついた様な素振りを見せると、これまた随分と傲慢な態度で一方的な要求をした。

 

豚「お、おい、ガキ。ひゃ、100万ルタやる。

この兎を、わ、渡「ア゛ァ゛!?」!?ヒィッ⁉」

ドモリ気味のキィキィ声でそう告げてきた豚を威圧する。

それと同時に、その場に凄絶な殺意が降り注いだ。

周囲のテーブルにいた者達ですら顔を青褪めさせて椅子からひっくり返り、誰一人例外無く気絶している。

直接その圧を受けた豚は、情けない悲鳴を上げると尻餅をつき、後退る事も出来ずにその場で股間を濡らし始めた。

序にどうやら心臓も止まったらしく、数秒痙攣した後に脈拍と呼吸の音が途絶えていた。

 

ハジメ「場所を変えるか。ここは臭くてたまらん。」

汚い液体が漏れ出しているので、俺は皆に声をかけて席を立つ。

本当は即ぶっ殺したかったのだが、流石に声を掛けただけで殺されたとあっては、俺の方が加害者だ。

殺人犯を放置する程都市の警備は甘くないだろう。なので圧も甘めにした。

まぁその度に目撃者ごと消すなり記憶だけ消すなりしてもいいのだが、基本的に手間が掛かる。

今後正当防衛という言い訳が通りそうにない限り、都市内においては殺しを工夫しなければと俺は考えていた。

 

席を立つ俺達に、リシーが「えっ?えっ?」と混乱気味に目を瞬かせた。

リシーが俺の殺気の効果範囲にいても平気そうなのは、単純にリシーだけ"威圧"の対象外にしたからだ。

リシーからすれば、豚が勝手な事を言い出したと思ったら、いきなり尻餅をついて泡を吹き股間を漏らし始め、序にビクビクと痙攣しだしたのだから混乱するのは当然だろう。

因みに、周囲にまで威圧をぶつけたのは態とだ。

目撃者を無くす為もあるが、周囲の者達もそれなりに鬱陶しい視線を向けていたので、序に理解させておいたのだ。

"手を出すなよ?"と。周囲の男連中が気絶したところから判断するに、実力的に無用だった様だが。

 

だが直後、今まで建物の外にいた大男が俺達の進路を塞ぐ様な位置取りに移動し仁王立ちした。

あの豚とは違う意味で100kgはありそうな巨体だ。

全身筋肉の塊で腰に長剣を差しており、歴戦の戦士といった風貌だ。

その巨体が目に入ったのか、いつの間にか息を吹き返した豚が再びキィキィ声で喚きだした。

 

豚「そ、そうだ、レガニド!そのクソガキを殺せ!わ、私を殺そうとしたのだ!嬲り殺せぇ!」

???「坊ちゃん、流石に殺すのはヤバイですぜ。半殺し位にしときましょうや。」

豚「やれぇ!い、いいからやれぇ!お、女は、傷つけるな!私のだぁ!」

???「了解ですぜ。報酬は弾んで下さいよ。」

豚「い、いくらでもやる!さっさとやれぇ!」

どうやらレガニドと呼ばれた巨漢は、豚の雇われ護衛らしい。

俺から目を逸らさずに豚と話し、報酬の約束をするとニンマリと笑った。

珍しい事にユエ達は眼中にないらしい。見向きもせずに貰える報酬にニヤついている様だ。

所謂守銭奴にカテゴリーされる部類の人間らしい。

 

ならず者「おう坊主、わりぃな。俺の金の為にちょっと半殺しになってくれや。なに、殺しはしねぇよ。まぁ嬢ちゃん達の方は……諦めてくれ。」

ならず者はそう言うと、拳を構えた。長剣の方は、流石に場所が場所だけに使わない様だ。

それに加えて、闘気も噴き上がる。どっちもどっちで鬱陶しいなぁ……。

そう思って消し飛ばそうと腕を上げた瞬間、意外な場所から制止の声がかかった。

 

ユエ「……ハジメ、待って。」

ハジメ「?どうしたのユエ?」

ユエはシアとミレディを連れて行くと、俺の疑問に答える前に俺とならず者の間に割って入った。

訝しそうな俺とならず者に、ユエは背を向けたまま答える。

ユエ「……私達が相手をする。」

シア「えっ?ユエさん、私達もですか?」

ミレディ「まぁ、そうなるよね。」 

シアの質問に対し、ユエの代わりに答えるミレディ。

ユエの言葉に、俺が返答するよりも、ならず者が爆笑する方が早かった。

ならず者「ガッハハハハ、嬢ちゃん達が相手をするだって?中々笑わせてくれるじゃねぇの。

何だ?夜の相手でもして許してもらおうって「……黙れ、ゴミクズ。」ッ!?」

 

下品な言葉を口走ろうとしたならず者に、辛辣な言葉と共に、神速の風刃が襲い掛かりその頬を切り裂いた。

プシュと小さな音を立てて、血がだらだらと滴り落ちる。かなり深く切れた様だ。

ならず者は、ユエの言葉通り黙り込む。ユエの魔法が速すぎて、全く反応できなかったのだ。

心中では「いつ詠唱した?陣はどこだ?。」と冷や汗を掻きながら必死に分析している。

まぁ、その程度の実力なら見抜くことすら難しいだろうが。

 

ユエは何事も無かった様に、俺と未だユエの意図が分かっていないシアに向けて話を続ける。

ユエ「……私達が守られるだけのお姫様じゃない事を周知させる。」

シア「ああ、成程。私達自身が手痛いしっぺ返し出来る事を示すんですね。」

ミレディ「そ♪折角だから、アレを利用しない手はないってね!」

ミレディがそう言って、先程とは異なり厳しい目を向けているならず者を指差した。

ハジメ「まぁ、言いたい事は分かった。ただ、あまりやり過ぎないように、ね?

アレもそこまで強くないから、かる~く捻るだけにしておきなよ。」

ユエ「ん。任せるが宜し。」

俺はユエの言葉に納得して、手加減するよう言っておくと、もう一度圧を放ち、気絶している奴等を目覚めさせた。

途端、彼等はテレビの電源を入れるかの様に意識を取り戻し、目覚めた途端目の前に広がっている光景に俄かに騒ぎ始める。

 

「お、おい、あれ、レガニドじゃないか?」

「レガニドって……"黒"のレガニドか?」

「"暴風"のレガニド!? 何であんな奴の護衛なんて……。」

「金払いじゃないか?"金好き"のレガニドだろ?」

周囲のヒソヒソ声で大体目の前の男の素性を察した俺。

天職持ちなのかどうかは分からないが、冒険者ランクが"黒"ということは上から三番目のランクという事であり、この世界基準では相当な実力者という事だ。

まぁ、さっきの攻撃を見切れないレベルなら程度の低さが知れたものだが。

 

ユエは俺が下がったのを確認すると、隣のシアに先に行けと目で合図を送る。

それを読み取ったシアは、背中に取り付けていたドリュッケンに手を伸ばすと、まるで重さを感じさせずに一回転させてその手に収めた。

ならず者「おいおい、兎人族の嬢ちゃんに何が出来るってんだ?雇い主の意向もあるんでね。

大人しくしていて欲しいんだが?」

ユエとミレディから目を離さずにならず者は、そうシアに告げる。

しかし、シアはならず者の言葉を無視する様に逆に忠告をした。

 

シア「腰の長剣、抜かなくていいんですか?手加減はしますけど、素手だと危ないですよ?」

ならず者「ハッ、兎ちゃんが大きく出たな。坊ちゃん!わりぃけど、傷の一つや二つは勘弁ですぜ!」

ならず者はシアを大して気にせずユエとミレディに気を配りながら、未だ近くでへたり込んでいる豚に一言断りを入れる。

流石にユエ相手に無傷で無力化は難しいと判断した様だ。どうやら、察しの悪い男だったようだ。

常識的に考えて、愛玩奴隷という認識が強い兎人族が戦鎚を持っている事の違和感に、相当の実力が垣間見える俺とユエの二人が初手を任せたという意味に、いち早く気付くべきだというのに……。

ま、いっか。俺には関係ないし。

既に言葉は無いと、シアはドリュッケンを腰溜めに構え……一気に踏み込んだ。

そして、次の瞬間にはならず者の眼前に出現する。

 

ならず者「ッ!?」

シア「やぁ!!」

可愛らしい声音に反して豪風と共に振るわれた超重量の大槌が、表情を驚愕に染めるならず者の胸部に迫る。

直撃の寸前、ならず者は、辛うじて両腕を十字にクロスさせて防御を試みるが、それも無駄だろう。

踏ん張る事など微塵も叶わず、咄嗟に後ろに飛んで衝撃を逃がそうとするも、スイングが速すぎて殆ど意味はなさない。

その結果、グシャッ!という生々しい音を響かせながら、ならず者は勢いよく吹き飛びギルドの壁に背中から激突した。

 

轟音を響かせながら、肺の中の空気を余さず吐き出したならず者は、揺れる視界の中に、拍子抜けした様なシアの姿を見ていた。

どうやら、もう少し抵抗があると思っていたらしい。

冒険者ランク"黒"にまで上り詰めた自分が、まさか兎人族の少女に手加減までされて尚拍子抜けされたという事実に、ならず者はもはや笑うしかないだろう。

痛みのせいで顰めた様にしか見えない笑みを浮かべ、立ち上がろうと手をつき激痛と共にそのまま倒れこんだ。

激痛の原因に視線を向ければ、拉げた様に潰れた自分の腕が見えたようだ。

 

幸い、潰されたのは片腕だけだった様で、痛みを堪えながらもう片方の腕で何とか立ち上がろうとする。

視界がグラグラ揺れているようだが、何とか床を踏みしめる事が出来たようだ。

殆ど意味は無かったと言えど、咄嗟に後ろに飛ばなければ、立ち上がる事は出来なかったかもしれない。

しかし、立ち上がった事は果たしていい事だったのか……。

半ば意地で立ち上がったならず者だったが、ユエが氷の如き冷めた目で右手を突き出している姿を見て、絶望したかのような表情を浮かべた。

直後、ならず者は生涯で初めて"空中で踊る"という貴重で最悪の体験をする事になった。

 

ユエ「舞い散る花よ 風に抱かれて砕け散れ "風花"。」ギュルゥッ!

ユエのオリジナル魔法第二弾、"風花"。風の砲弾を飛ばす魔法と重力魔法の複合魔法だ。

複数の風の砲弾を自在に操りつつ、その砲弾に込められた重力場が常に目標の周囲を旋回する事で全方位に"落とし続け"空中に磔にする。

そして打ち上げられたが最後、そのまま空中でサンドバックになるというえげつない魔法だ。

因みに例の如く、詠唱は適当である。

 

まるで空中での一方的なリードによるダンスだ。

だがどうやらならず者の受難はまだ終わっていなかったようだ。

何故かって?ミレディが重力魔法を構えているからだよ。

空中ダンスを終えたならず者が落ちてくると、そこへミレディが魔法を発動させた。

 

ミレディ「ハイッ!黒渦~♪」ズォッ!

ミレディの魔法により、一緒に撃ちあがってきたその辺の物を、上と下の二方向から同時にぶつけられ、ならず者はそのままグシャッと嫌な音を立てて床に落ち、ピクリとも動かなくなった。

実は最初の数撃で既に意識を失っていたのだが、知ってか知らずか二人共その後も容赦なく連撃をかましていた。

やり過ぎないように、って言っておいたんだけどなぁ……。まぁ死んでいないし大丈夫か。

 

あり得べからざる光景の三連発。そして容赦の無さにギルド内が静寂に包まれる。

誰も彼もが身動き一つせず、俺達を凝視していた。

よく見れば、ギルド職員らしき者達が争いを止めようとしたのか、カフェに来る途中で俺達の方へ手を伸ばしたまま硬直している。

様々な冒険者達を見てきた彼等にとっても衝撃の光景だった様だ。

 

誰もが硬直している中、俺は豚の処刑執行を開始した。

豚「ひぃ!く、来るなぁ!わ、私を誰だと思って「うるせぇ。」ガッ!?」

ハジメ「俺の連れに手を出そうとしたんだ。精々死にざまで詫びでも入れるがいい。」

キィキィ喚く豚の言葉をぶった切り、火球の中に閉じ込めてやった。

 

豚「ギャァァァアアアアアア!!?」ジュゥゥゥウウウ!!!

絶叫しながらその汚い体を炎に晒していく豚。正直、触れるだけでも不快感が増す。

ハジメ「これだから嫌いなんだよ。権力を笠に着るクズ野郎は。」

そう愚痴りながら、奴の焼ける様を見ていた。

そして20秒ほど経ったか、俺が火球を解除すると、豚は黒焦げになっていた。

まぁ、死なない程度に手加減はしてやった。後のことは知らんが。

 

俺は興味をなくした様子で豚から目を離すと、気を落ち着かせる様に息を吐いてからユエ達の方へ歩み寄る。

三人は微笑みで俺を迎えた。そして俺は、すぐ傍で呆然としている案内人リシーに笑いかけた。

ハジメ「さて、リシーさん。場所を移して続きをお願いできるかな?」

リシー「はひっ!い、いえ、その……私、何と言いますか……。」

俺の笑顔に恐怖を覚えたのか、しどろもどろになるリシー。

その表情は明らかに関わりたくないと物語っていた。それくらい俺達は異常だったようだ。

俺も何となく察しているが、また新たな案内人をこの騒ぎの後に探すのは面倒なので、リシーを逃がすつもりは無かった。

俺の意図を悟って、ユエとシアがリシーの両脇を固め、ミレディが背後から忍び寄る。

「ひぃぃん!」と情けない悲鳴を上げるリシー。

と、そこへ彼女にとっての救世主、ギルド職員が今更ながらにやって来た。

 

ギルド職員A「あの、申し訳ありませんが、あちらで事情聴取にご協力願います。」

そう俺に告げた男性職員の他、三人の職員が俺達を囲む様に近寄った。

尤も、全員腰が引けていたが。もう数人は、豚とならず者の容態を見に行っている。

ハジメ「そう言われてもねぇ、あれが俺の連れを奪おうとして、それを断ったら逆上して襲ってきたから返り討ちにしただけだよ?

それ以上説明しようがないし、そこのリシーさんや、周囲の冒険者達も証人になるよ。

特に、近くのテーブルにいた奴等は随分と聞き耳を立てていた様だからねぇ?」

 

俺がそう言いながら周囲の男連中を睥睨すると、目があった彼等はこぞって首がもげるのでは?と言いたくなる程激しく何度も頷いた。

ギルド職員A「それは分かっていますが、ギルド内で起こされた問題は、当事者双方の言い分を聞いて公正に判断する事になっていますので……

規則ですから冒険者なら従って頂かないと……。」

ハジメ「当事者双方……ねぇ。」

俺はチラッと豚とならず者の二人を見る。ならず者は当分目を覚ましそうになかった。

ギルド職員が治癒師を手配している様だが、あの豚は恐らく間に合わないだろう。

 

ハジメ「あれが目を覚ますまで、ずっと待機していろと?被害者の俺達が?

……面倒だね、いっそのこと町ごと更地にした方が早いかな?」

俺が責める様な視線をギルド職員に向ける。

典型的なクレーマーの様な物言いにギルド職員の男性が、「そんな目で睨むなよぉ、仕事なんだから仕方ないだろぉ。」という自棄糞気味な表情になった。

そして、ボソリと呟かれた俺の最後のセリフが耳に入り、職員だけでなくこの場にいる全員が「ひっ!?」と悲鳴を漏らした。

そんな訳で俺が腰元に手を翳そうとした瞬間、突如として凛とした声が掛けられた。

 

???「何をしているのです?これは一体何事ですか?」

そちらを見てみれば、メガネを掛けた理知的な雰囲気を漂わせる細身の男性が厳しい目で俺達を見ていた。

ギルド職員A「ドット秘書長!いいところに!これはですね……。」

職員達がこれ幸いとドット秘書長と呼ばれた男性のもとへ群がる。

ドットという男性は職員達から話を聞き終わると、俺達に鋭い視線を向けた。

どうやら、まだまだ解放はされない様だと俺達は内心溜息を吐いた。

 

そんな俺達に、ドット秘書長と呼ばれた男性は片手の中指でクイッとメガネを押し上げると落ち着いた声音で俺に話しかけた。

ドット「話は大体聞かせてもらいました。証人も大勢いる事ですし嘘はないのでしょうね。

やり過ぎな気もしますが……まぁ、まだ死んでいませんし許容範囲としましょう。

取り敢えず、彼らが目を覚まし一応の話を聞くまでは、フューレンに滞在はしてもらうとして、身元証明と連絡先を伺っておきたいのですが……

それまで拒否されたりはしないでしょうね?」

言外にこれ以上譲歩はしませんよ?と伝えるドット秘書長に俺は肩を竦めて答えた。

 

ハジメ「それは構わないよ。

それに、そこの家畜がまだ生きていた様なら、寧ろ連絡して欲しいくらいだよ。

態々あの世まで言って礼儀を説く程、俺も聖人じゃあないし。」

俺はそんな事をいい、ドットさんに冷や汗を掻かせながらステータスプレートを差し出す。

ハジメ「連絡先は、まだ滞在先が決まっていないから……そこのリシーさんにでも聞いて。

彼女の薦める宿に泊まるだろうし。」

俺に視線を向けられたリシーはビクッとした後、「やっぱり私が案内するんですね。」と諦めの表情で肩を落とした。

ドット「ふむ、いいでしょう……"青"ですか。向こうで伸びている彼は"黒"なんですがね……

そちらの方達のステータスプレートはどうしました?」

 

俺の偽装されたステータスプレートに表示されている冒険者ランクが最低の"青"である事に僅かな驚きの表情を見せるドットさん。

しかし三人の女性の方がならず者を倒したと聞いていたので、彼女達の方が強いのかとユエ達のステータスプレートの提出を求める。

「あ~……こっちの彼女達はステータスプレートは紛失していてね、再発行はまだしていないよ。

高いだろうからね。」

さらりと嘘をつく俺。

三人の異常とも言える強さを見せた後では意味が無いかもしれないが、それでも第三者にはっきりと詳細を把握されるのは出来れば避けたい。

 

ドット「しかし、身元は明確にしてもらわないと。

記録を取っておき、君達が頻繁にギルド内で問題を起こす様なら、加害者・被害者のどちらかに関係なくブラックリストに載せる事になりますからね。

よければギルドで立て替えますが?」

ドットさんの口ぶりから、どうしても身元証明は必要らしい。

 

しかしステータスプレートを作成されれば、隠蔽前の技能欄に確実にユエとシアの固有魔法が表示されるだろう。

それどころか今や、神代魔法も表示される筈だ。大騒ぎになる事は間違いない。

ミレディに至っては"反逆者"の一人として伝えられているので、教会への対応が本当に面倒くさくなる。

まぁ、騒ぎになっても、俺達を害そうとするのなら全部ぶっ飛ばせばいいと思う。

ただ、それじゃ滞在の度に記憶操作の手間が付いて回る。

何だか色々面倒になってきたので破壊しつくすか。

そんな物騒なことを思っていた俺に、ユエが話しかけた。

 

ユエ「……ハジメ、手紙。」

ハジメ「?……あぁ、あの手紙か。」

ユエの言葉で、俺はブルックの町を出る時にブルック支部のキャサリンさんから手紙を貰った事を思い出す。

ギルド関連で揉めた時にお偉いさんに見せれば役立つかもしれないと言って渡された得体の知れない手紙だ。

駄目で元々、場合によってはこの場の全員を消す事も想定に入れ、俺は懐から手紙を取り出しドットさんに手渡した。

 

ハジメ「身分証明の代わりになるかわからないけど、知り合いのギルド職員に、困ったらギルドの上層部に渡せと言われてたものがあるんだけど……これでいいかな?」

ドット「?知り合いのギルド職員ですか?……拝見します。」

俺達の服装の質から、それ程金に困っている様に思えなかったので、ステータスプレートの再発行を拒む様な態度に疑問を覚えるドットさんだったが、代わりにと渡された手紙を開いて内容を流し読みする内にギョッとした表情を浮かべた。

そして、俺達の顔と手紙の間で視線を何度も彷徨わせながら手紙の内容を繰り返し読み込む。

目を皿の様にして手紙を読む姿から、どうも手紙の真贋を見極めている様だ。

やがてドットさんは手紙を折り畳むと丁寧に便箋に入れ直し、俺達に視線を戻した。

 

ドット「この手紙が本当なら確かな身分証明になりますが……

この手紙が差出人本人のものか私一人では少々判断が付きかねます。

支部長に確認を取りますから少し別室で待っていてもらえますか?そうお時間は取らせません。

十分、十五分くらいで済みます。」

ハジメ「?まぁ、それ位ならいいよ。早めにしてほしいけど……あんまり急ぎ過ぎないようにね?」

ドット「職員に案内させます。では後程。」

ドットさんは傍の職員を呼ぶと別室への案内を言付けて、手紙を持ったまま颯爽とギルドの奥へと消えていった。

指名された職員が俺達を促す。

俺達がそれに従い移動しようと歩き出したところで、困惑した様な、しかしどこか期待した様な声がかかった。

 

リシー「あの~、私はどうすれば?」

リシーさんだった。ギルドでお話があるならお役目御免ですよね?とその瞳が語っている。

明らかに厄介の種である俺達とは早めにお別れしたいという思いが滲み出ている。なので俺は言った。

ハジメ「もちろん!ちゃぁ~んと、案内してくれるんだよね?」

リシー「……はぃ。」

ガックリと肩を落としてカフェの奥にある座席に向かうリシー。

その背中には嫌な仕事でも受けねばならない社会人の哀感が漂っていた。

まぁ、酷ではあるけども、正直拠点は一番大事なところだからなぁ……。

 


 

俺達が応接室に案内されてからきっかり十分後。遂に扉がノックされた。

俺の返事から一拍置いて扉が開かれる。

そこから現れたのは、金髪をオールバックにした鋭い目付きの三十代後半くらいの男性と、ドットさんだった。

???「初めまして、冒険者ギルドフューレン支部支部長イルワ・チャングだ。

ハジメ君、ユエ君、シア君、ミレディ君……でいいかな?」

簡潔な自己紹介の後、俺達の名を確認がてらに呼び握手を求める支部長イルワさん。

俺も握手を返しながら返事をする。

 

ハジメ「構わないよ。名前は手紙に?」

イルワ「その通りだ。先生からの手紙に書いてあったよ。

随分と目をかけられている……というより注目されている様だね。

将来有望、但しトラブル体質なので出来れば目をかけてやって欲しいという旨の内容だったよ。」

ハジメ「トラブル体質……ね。確かにブルックではトラブル続きだったけどね。

ま、それは置いといて、肝心の身分証明の方はどうなの?それで問題ない?」

イルワ「ああ、先生が問題のある人物ではないと書いているからね。あの人の人を見る目は確かだ。

わざわざ手紙を持たせる程だし、この手紙を以て君達の身分証明とさせてもらうよ。」

 

どうやらキャサリンさんの手紙は本当にギルドの上層部相手に役立に立った様だ。随分と信用がある。

キャサリンさんを"先生"と呼んでいる事からかなり濃い付き合いがある様に思える。

俺の隣に座っているシアは、キャサリンさんに特に懐いていた事からその辺りの話が気になる様で、おずおずとイルワさんに訪ねた。

シア「あの~、キャサリンさんって何者なのでしょう?」

 

イルワ「ん?本人から聞いてないのかい?

彼女は王都のギルド本部でギルドマスターの秘書長をしていたんだよ。

その後、ギルド運営に関する教育係になってね。

今各町に派遣されている支部長の五、六割は先生の教え子なんだ。

私もその一人で、彼女には頭が上がらなくてね。

その美しさと人柄の良さから、当時は僕らのマドンナ的存在、あるいは憧れのお姉さんの様な存在だった。その後結婚して、ブルックの町のギルド支部に転勤したんだよ。

子供を育てるにも田舎の方がいいって言ってね。彼女の結婚発表は青天の霹靂でね。

荒れたよ。ギルドどころか、王都が。」

 

シア「はぁ~そんなにすごい人だったんですね~。」

ユエ「……キャサリンすごい。」

ミレディ「只者じゃないとは思っていたけど……思いっきり中枢の人間だったなんてね。

ミレディさんもびっくりだよ!」

ハジメ「まぁ、あの能力はそう簡単に身に着くものじゃないとは思っていたけどね……。

まさか、そんなに人気者だったとはね。」

聞かされたキャサリンの正体に感心する俺達。想像していたよりずっと大物だったらしい。

 

ハジメ「まぁそれはそれとして、問題が無いならもう行っていい?」

元々、身分証明の為だけに来たので、用が終わった以上長居は無用だと俺がイルワさんに確認する。

しかしイルワさんは瞳の奥を光らせると、「少し待ってくれるかい?」と俺達を留まらせる。

イルワさんは、隣に立っていたドットさんを促して一枚の依頼書を俺達の前に差し出した。

イルワ「実は、君達の腕を見込んで、一つ依頼を受けて欲しいと思っている。

取り敢えず話を聞いて貰えないかな?聞いてくれるなら、今回の件は不問とするのだが……。」

 

それは言外に、話を聞かなければ今回の件について色々面倒な手続きをするぞ?という事だ。

周囲の人間による証言で、俺達が豚共にした事に関し罪に問われる事は無いだろうが、些か過剰防衛の傾向はあるので正規の手続き通り、当事者双方の言い分を聞いてギルドが公正な判断をするという手順を踏むなら相応の時間が取られるだろう。

結果は俺達に非が無いという事になるだろうが、逆に言えば結果の判りきった手続きを馬鹿みたいに時間をかけて行わなければならないという事だ。

そして、この手続きから逃げるとめでたくブラックリストに乗るという事だろう。

今後町でギルドを利用するのに面倒な事この上無い事になるのだ。

まぁ、それは流石に避けたいし、俺も冒険者としての立場を活かしたいこともあるからねぇ……。

 

ハジメ「……まぁ、内容によるかな。後、さっきの豚とならず者についてなんだけどさぁ……。」

イルワ「?」

ハジメ「二人共揃いも揃って、裏で相当胸糞悪いことしていたっぽいよ?

悪事の証拠とかが残っている場所を記した紙があるんだけど……気を付けた方がいいよ?」

イルワ「ッ!?」

……何故か脅されているような状況に陥った感じの目になったイルワさん。

別にコイツは脅しの道具じゃあない。ただ単に、そう言った輩に気を付けてほしいと言っただけなのに。

因みに情報については本当は調べたくもなかったが、親豚が報復に出ないとも限らないので、対策を考えるついでで検索していただけだ。

それに待っている間、暇だったし。

 

イルワ「すまない!聞く聞かないに関係なく、今回の件は不問にする。

だが、話だけでも聞いてくれないだろうか?」

ハジメ「それは別に構わないよ。まず、話を聞かないことには、何も始まらないし。

後、さっきのは脅しのつもりで言った訳じゃないからね?ただ単に気を付けてくださいって話だから。」

イルワ「そ、そうか。忠告ありがとう。」

……最近、俺の評価がどうなっているかがすごく気になってきたよ。

もしかしたら、もう取り返しのつかない位、有名になってしまっているのでは?と思ってしまうこの頃だった。

まぁ、それはさておき、イルワさんの話を要約すると、つまりこういう事だ。

 

最近、北の山脈地帯で魔物の群れを見たという目撃例が何件か寄せられ、ギルドに調査依頼がなされた。

北の山脈地帯は一つ山を超えると殆ど未開の地域となっており、大迷宮の魔物程ではないがそれなりに強力な魔物が出没するので高ランクの冒険者がこれを引き受けた。

ただ、この冒険者パーティに本来のメンバー以外の人物がいささか強引に同行を申し込み、紆余曲折あって最終的に臨時パーティを組む事になった。

この飛び入りが、クデタ伯爵家の三男ウィル・クデタという人物らしい。

クデタ伯爵は、家出同然に冒険者になると飛び出していった息子の動向を密かに追っていたそうなのだが、今回の調査依頼に出た後息子に付けていた連絡員も消息が不明となり、これはただ事ではないと慌てて捜索願を出したそうだ。

 

イルワ「伯爵は家の力で独自の捜索隊も出している様だけど、手数は多い方がいいとギルドにも捜索願を出した。

つい昨日の事だ。

……最初に調査依頼を引き受けたパーティはかなりの手練でね、彼等に対処できない何かがあったとすれば並みの冒険者じゃあ二次災害だ。相応以上の実力者に引き受けてもらわないといけない。

だが、生憎とこの依頼を任せられる冒険者は出払っていてね。

そこへ君達がタイミングよく来たものだから、こうして依頼しているという訳だ。」

ハジメ「?どうしてそこで俺達が?ランクだってまだ駆け出しの"青"だし……。」

すると、イルワさんが「それはどうかな?。」と言いたげな笑みを浮かべた。

 

イルワ「さっき"黒"のレガニドを瞬殺したばかりだろう?それに……

【樹海事変】と【峡谷事変】の張本人である"無双覇王"を相応以上と言わずして何と言うのかな?」

ハジメ「グホァッ!?」

な、なぜその二つ名を……。まさかここまで知れ渡っていたというのかぁ……。

思わず机に突っ伏す俺を慰めようとするユエ達。

そんな様子を見て苦笑いしながら、イルワさんは話を続けた。

イルワ「生存は絶望的だが、可能性はゼロではない。

伯爵は個人的にも友人でね、出来る限り早く捜索したいと考えている。

どうかな、今は君達しかいないんだ。引き受けてはもらえないだろうか?」

 

懇願する様なイルワさんの態度には、単にギルドが引き受けた依頼という以上の感情が込められている様だ。

伯爵と友人という事は、もしかするとその行方不明となったウィルとやらについても面識があるのかもしれない。

個人的にも、安否を憂いているのだろう。

イルワ「報酬は弾ませてもらうよ?依頼書の金額は勿論だが、私からも色をつけよう。

ギルドランクの昇格もする。君達の実力なら一気に"黒"にしてもいい。」

ハジメ「う~ん、生計はまだ大丈夫だし、ランクもどうでもいいかなぁ。」

イルワ「なら今後、ギルド関連で揉め事が起きた時は私が直接君達の後ろ盾になるというのはどうかな?フューレンのギルド支部長の後ろ盾だ、ギルド内でも相当の影響力はあると自負しているよ?

君達は揉め事とは仲が良さそうだからね。悪くない報酬ではないかな?」

ハジメ「……大盤振る舞いだね。友人の息子相手にしては入れ込み過ぎじゃない?」

俺の言葉に、イルワさんが初めて表情を崩す。後悔を多分に含んだ表情だ。

 

イルワ「彼に……ウィルにあの依頼を薦めたのは私なんだ。

調査依頼を引き受けたパーティーにも私が話を通した。

異変の調査といっても、確かな実力のあるパーティーが一緒なら問題ないと思った。

実害もまだ出ていなかったしね。ウィルは、貴族は肌に合わないと昔から冒険者に憧れていてね……

だが、その資質は無かった。

だから強力な冒険者の傍で、そこそこ危険な場所へ行って、悟って欲しかった。冒険者は無理だと。

昔から私には懐いてくれていて……だからこそ、今回の依頼で諦めさせたかったのに……。」

……成程ねぇ。そんなイルワさんの独白を聞きながら、どこかの甘ちゃん勇者を思い浮かべる俺。

どうやら俺が思っていた以上に、イルワさんとウィルの繋がりは濃いらしい。

すまし顔で話していたが、彼の内心は正に藁にも縋る思いなのだろう。

生存の可能性は、時間が経てば経つ程ゼロに近づいていく。

無茶な報酬を提案したのも、彼が相当焦っている証拠なのだろう。

 

俺としても、町に寄り付く度にユエ達の身分証明について言い訳するのは面倒だし、この先名のある権力者に対する伝手があるのは、町の施設利用という点で便利だ。

何せ聖教教会や王国に迎合する気がゼロである以上、何時異端の誹りを受けるか判らない。

その場合、町では極めて過ごしにくくなるだろう。個人的な繋がりでその辺をクリア出来るなら楽だ。

まぁ、神託による異端認定なら、証拠不十分で突き返せるけどね。

なので大都市のギルド支部長が後ろ盾になってくれるというなら、この際自分達の事情を教えて口止めしつつ、不都合が生じた時に利用させてもらおうと俺は考えた。

クデタ伯爵とは随分懇意にしていた様だから、仮に生きて連れて帰ればそうそう不義理な事もできないだろう。

 

ハジメ「……二つ条件がある。」

イルワ「条件?」

ハジメ「あぁ、そんなに難しい事じゃないから。

ユエ達にステータスプレートを作って欲しい。そして、そこに表記された内容について他言無用を確約する事が一つ。

ギルド関連に関わらず、アンタの持つコネクションの全てを使って俺達の要望に応え便宜を図る事。

この二つだね。」

イルワ「それはあまりに……。」

ハジメ「安心して、そんなに無茶な要求はしないから。

ただ俺達は少々特異な存在だから、確実に教会から目をつけられると思うから、その時の伝手があった方が便利だと思っただけだよ。

面倒事が起きた時に味方になってくれればいいから。」

イルワ「ふむ、キャサリン先生が気に入っているくらいだから悪い人間ではないと思うが、個人的にも君達の秘密が気になって来たな。

……そう言えば、そちらのシア君は怪力、ユエ君とミレディ君は見た事も無い魔法を使ったと報告があったな……

その辺りが君達の秘密か……そして、それがいずれ教会に目を付けられる代物だと……

大して隠していない事からすれば、最初から事を構えるのは覚悟の上という事か……

そうなれば確かにどの町でも動きにくい……故に便宜をと……。」

 

流石大都市のギルド支部長、頭の回転は早い。

イルワさんは暫く考え込んだあと、意を決した様に俺に視線を合わせた。

イルワ「犯罪に加担する様な倫理に悖る行為・要望には絶対に応えられない。

君達が要望を伝える度に詳細を聞かせてもらい、私自身が判断する。

だが、できる限り君達の味方になる事は約束しよう……これ以上は譲歩出来ない。どうかな?」

ハジメ「むしろ十分すぎるところだよ。報酬は依頼が達成されてからでいいよ。」

俺としては、ユエ達のステータスプレートを手に入れるのが一番の目的だ。

この世界では何かと提示を求められるステータスプレートは持っていない方が不自然であり、この先、町による度に言い訳するのは面倒な事この上ない。

 

問題は、最初にステータスプレートを作成した者に騒がれない様にするにはどうすればいいかという事だったのだが、イルワさんの存在がその問題を解決した。

ただ、条件として口約束をしてもやはり密告の疑いはある。

いずれ俺達の特異性はバレるだろうが、積極的に手を回されるのは好ましくない。

なので俺は、ステータスプレートの作成を依頼完了後にした。

どんな形であれ、心を苛む出来事に答えをもたらした俺をイルワさんも悪いようにはしないだろうという打算だ。

 

イルワさんも俺の意図は察しているのだろう。

苦笑いしながら、それでも捜索依頼の引き受け手が見つかった事に安堵している様だ。

イルワ「本当に、君達の秘密が気になってきたが……それは、依頼達成後の楽しみにしておこう。

ハジメ君、ユエ君、シア君、ミレディ君……宜しく頼む。」

イルワさんは最後に真剣な眼差しで俺達を見つめた後、ゆっくり頭を下げた。

大都市のギルド支部長が一冒険者に頭を下げる、そうそう出来る事ではない。

キャサリンさんの教え子というだけあって、人の良さが滲み出ている。

 

そんなイルワの様子を見て、俺達は立ち上がると気負いなく答えた。

ハジメ「あぁ、出来る限り力を尽くすよ。」

ユエ達「ん。任せるがいい。」

シア「分かりました!」

ミレディ「まっかせて!」

その後、支度金や北の山脈地帯の麓にある湖畔の町への紹介状、件の冒険者達が引き受けた調査依頼の資料を受け取り、俺達は部屋を出て行った。

 


 

バタンと扉が締まる。その扉を暫く見つめていたイルワは、「フゥ~。」と大きく息を吐いた。

部屋にいる間、一言も話さなかったドットが気づかわしげにイルワに声をかける。

ドット「支部長……よかったのですか?あの様な報酬を……。」

イルワ「……ウィルの命がかかっている。彼等以外に頼める者はいなかった、仕方ないよ。

それに彼等に力を貸すか否かは私の判断で良いと彼等も承諾しただろう。問題ないさ。

それより彼らの秘密……。」

ドット「ステータスプレートに表示される"不都合"ですか……。」

イルワ「ふむ。ドット君、知っているかい?

ハイリヒ王国の勇者一行は皆、とんでもないステータスらしいよ?」

 

ドットは、イルワの突然の話に細めの目を見開いた。

ドット「!支部長は、彼が召喚された者……"神の使徒"の一人であると?

しかし、彼はまるで教会と敵対する様な口ぶりでしたし、勇者一行は聖教教会が管理しているでしょう?」

イルワ「ああ、その通りだよ。

でもね……およそ四ヶ月前、その内の一人がオルクスで亡くなったらしいんだよ。

奈落の底に魔物と一緒に落ちたってね。」

ドット「……まさか、その者が生きていたと?

四ヶ月前と言えば、勇者一行もまだまだ未熟だった筈でしょう?

オルクスの底がどうなっているのかは知りませんが、とても生き残る事など……。」

 

ドットは信じられないと首を振りながら、イルワの推測を否定する。

しかしイルワは、どこか面白そうな表情で再びハジメ達が出て行った扉を見つめた。

イルワ「そうだね。でももしそうなら……何故彼は仲間と合流せず、旅なんてしているのだろうね?

彼は一体、闇の底で何を見て、何を得たのだろうね?」

ドット「何を……ですか……。」

イルワ「ああ。何であれ、きっとそれは教会と敵対する事も辞さないという決意をさせるに足るものだ。

それは取りも直さず、世界と敵対する覚悟があるという事だよ。」

ドット「世界と……。」

イルワ「私としては、そんな特異な人間とは是非とも繋がりを持っておきたいね。

例え彼が教会や王国から追われる身となっても、ね。

もしかすると、先生もその辺りを察して態々手紙なんて持たせたのかもしれないよ。」

ドット「支部長……どうか引き際は見誤らないで下さいよ?。」

イルワ「勿論だとも。」

スケールの大きな話に目眩を起こしそうになりながら、それでもイルワの秘書長として忠告は忘れないドット。

しかしイルワは、何かを深く考え込みドットの忠告にも、半ば上の空で返すのだった。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

という訳で、クズ貴族への罰は「こんがり丸焼きの刑」でした。
そして冒険者相手でも容赦なしのドS三人娘でした。
後、クズ貴族の実家はその家の者全員の罪が改めて調べ上げられ、有罪となりました。

さて次回はいよいよウルに着きます!
愛ちゃん達との待望の再会は、はたしてどうなる!?

宜しければ、高評価・コメント宜しくお願い致します。

リースティアさん、毎度の誤字報告ありがとうございました!

次回予告
オーマジオウ「
イルワの依頼を受けたハジメ一行は、北の山脈地帯に近い湖畔の町ウルへ向かうことに。
そこで彼らは、意外な面々との再会を果たす。
次回、ありふれない錬成師は最高最善の魔王の力で世界最強を超越する
「まさかの再会、湖畔の町ウル」
君は、小宇宙を感じたことがあるか!?」

もし今作品のハジメさんが、少しの間だけ別世界に飛ばされてしまったとしたら、どの世界に行くと思いますか?

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