ありふれない錬成師は最高最善の魔王の力で世界最強を超越する   作:天元突破クローズエボルハザード

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お待たせいたしました。
今回は少し長めです。
湖畔の町ウルについたハジメ達。
そこで出会ったのはなんと、愛ちゃん先生とクラスメイト達だった!
そして、トシの行方を知ることに!

驚愕の第三章第4話、それではどうぞ!


34.まさかの再会、湖畔の町ウル

〈ハジメさんサイド〉

 

広大な平原のど真ん中に、北へ向けて真っ直ぐに伸びる街道がある。

街道と言っても、何度も踏みしめられる事で自然と雑草が禿げて道となっただけのものだ。

この世界の馬車にはサスペンションなどという物は無いので、きっとこの道を通る馬車の乗員は目的地に着いた途端、自らの尻を慰める事になるのだろう。

そんな整備されていない道を、有り得ない速度で爆走する影が複数あった。

それは何かって?勿論俺達ですが何か?

 

シア「ヒャッハー!ですぅ!」

ユエ「んー!気持ちいいー!」

ミレディ「ワオ!二人とも凄いアクロバットだね!私達も負けていられないよ、オーちゃん!」

オスカー「フッ、いいだろう。今まで精神世界で練習してきた僕のバイクテクニックをとくと見るがいい!」

ハジメ『……楽しそうだねぇ~。』

 

ユエはマシントルネイダー・スライダーモードを乗りこなし、シアはダンデライナーでウィリーやジャックナイフ、バックライドなどの技を披露している。

そして俺はというと、先日の護衛で「あ~ん。」された時のお詫びとして、オスカーに一旦体を貸している。

当のオスカー本人は未知の技術に興味津々で、オーマストライカーを分解しようとしたのは流石に止めた。

まぁ、せっかくなので、乗り方を俺が教えながら、ミレディを後ろに乗せ、目的地まで疑似バイクデートの体験をしてもらっているところだ。

因みに今乗っているのは、バイスのプテラゲノムだ。

 

天気は快晴で暖かな日差しが降り注ぎ、絶好のツーリング日和と言える。

それにしても、シアは一体どこでそんな高等テクニックを身につけたんだか……。

ハジメ『まぁ、このペースなら後半日というところだし。さっさと行っちゃおうか。』

俺の言葉通り、俺達はウィル一行が引き受けた調査依頼の範囲である北の山脈地帯に一番近い町まで後半日程の場所まで来ていた。

このまま休憩を挟まず一気に進み、恐らく日が沈む頃に到着するだろうから、町で一泊して明朝から捜索を始めるつもりだ。

急ぐ理由は勿論、時間が経てば経つ程ウィル一行の生存率が下がっていくからだ。

すると、何時になく他人の為なのに積極的な俺に、ユエが上目遣いで疑問顔をする。

 

ユエ「……積極的?」

ハジメ『ああ、生きているに越した事は無いからね。その方が感じる恩は大きい。

これから先、国やら教会やらとの面倒事は山程待ってそうだからね、盾は多い方がいい。』

ミレディ「そうそう!それにこういうところで出来るだけ恩を売っておくのは大事だよ!

後々その恩が有効に働くことだってあるんだからさ!」

オスカー「そうだね。僕達も、意図していない恩のおかげで助かったこともあるからね。」

シア「ほぇ~、お二人の旅も命がけだったんですね。」

 

流石解放者筆頭であるオスカーとミレディは、こういうことの大切さを知っている。

実際、イルワさんという盾がどの程度機能するかはわからないし、どちらかといえば役に立たない可能性の方が大きいけど保険は多い方がいい。

それに、ほんの少しの労力で獲得出来るならその労力は惜しむべきではないだろう。

 

ハジメ『それに聞いたんだけどね、これから行く町は湖畔の町で水源が豊からしいんだ。

そのおかげか町の近郊は大陸一の稲作地帯なんだって。』

ユエ「……稲作?」

ミレディ「お米だね!」

ハジメ『そう、俺の故郷の主食であり、ソウルフードの一つでもある米だ。

こっちに来てからというものの、一度も口にしていないからね。早く食べたいなぁ……。』ジュルリ

懐かしき故郷の味に思いをはせ、思わず涎が出てしまう俺。

 

オスカー「ハハハ、どうやら余程思い入れがあるみたいだね。」

ハジメ『勿論だとも!折角だ、米を使った俺の故郷の料理を語ろうじゃあないか!』

ミレディ「おぉ!ハジメンの故郷の味かぁ……ちょっと楽しみ!」

ユエ「…ん、私も食べたい。」

シア「私もですぅ!ハジメさん、その町の名前は!?」

 

ハジメ『湖畔の町ウルだよ。』

 

〈ハジメさんサイド一旦終了〉

 


 

〈愛ちゃんサイド〉

 

愛子「はぁ、今日も手掛かりはなしですか。……清水君、一体何処に行ってしまったんですか……?」

悄然と肩を落とし、【ウルの町】の表通りをトボトボと歩くのは召喚組の一人にして唯一の教師、畑山愛子だ。

普段の快活な様子が鳴りを潜め、今は不安と心配に苛まれて陰鬱な雰囲気を漂わせている。

心なしか、表通りを彩る街灯の灯りすらいつもより薄暗い気がする。

 

優花「愛ちゃん先生、あまり気を落とさないで下さい。まだ何も分かっていないんですよ?

部屋だって荒らされてなかった訳ですし、自分で何処かに行った可能性の方が高い位です。

だから、あまり思い詰めないで下さいね。」

デビッド「そうだぞ愛子。こういう時に悪い方にばかり考えては駄目だ。

気が付くべき事や、為すべき事を見落としてしまいかねないからな。それに、幸利は優れた術師だ。

仮に何か不測の事態に遭遇したのだとしても、そう簡単にやられはしない。

彼の先生である愛子が、自分の生徒を信じてやらなくてどうするんだ?」

元気の無い愛子に、そう声をかけたのは優花とデビッドだ。

周りには他にも、毎度お馴染みの騎士達と淳史達がいる。彼等も口々に愛子を気遣う様な言葉をかけた。

 

愛ちゃん護衛隊の一人、清水幸利ことトシが失踪してから既に二週間と少し。

愛子達は八方手を尽くしてトシを探したが、その行方は杳として知れなかった。

町中に目撃情報は無く、近隣の町や村にも使いを出して目撃情報を求めたが、全て空振りだった。

当初は事件に巻き込まれたのではと騒然となったのだが、トシの部屋が荒らされていなかった事、トシ自身が"闇術師"という闇系魔術に特別才能を持つ天職を所持しており、他の系統魔術についても高い適性を持っていた事から、そうそうその辺のゴロツキにやられるとは思えず、今では自発的な失踪と考える者が多かった。

 

だが、トシは愛ちゃん護衛隊を引っ張ってきた人物であり、黙ってどこかに行ってしまう程身勝手な行動をとる人物ではなかった。

それに彼はいつも北の山脈地帯を眺めており、もしやそこに行ったのではないかと思う者もいるのだ。

しかし、その時は毎回帰ってきており、長期間留守にすることはなかったのだ。

何より彼自身が、「俺よりも先生が心配だ。何時か心労でぶっ倒れそうだ……。」と呟いていたこともあって、自分よりも愛子を気にかけてほしい、と言っていた程、愛子の疲労が心配でならなかったのだ。

 

そんな訳で、既に愛子以外の生徒はトシの安否より、それを憂いて日に日に元気が無くなっていく愛子の方が心配だった。

護衛隊の騎士達に至っては言わずもがなである。

因みに王国と教会には報告済みであり、捜索隊を編成して応援に来る様だ。

トシも魔術の才能に関しては召喚された者らしく極めて優秀なので、ハジメの時の様に上層部は楽観視していない。

捜索隊が到着するまであと二、三日といったところだ。

 

次々とかけられる気遣いの言葉に、愛子は内心で自分を殴りつけた。

事件に巻き込まれようが、自発的な失踪であろうが心配である事に変わりはない。

しかしそれを表に出して、今傍にいる生徒達を不安にさせるどころか気遣わせてどうするのだと。

「それでも自分はこの子達の教師なのか!」と、愛子は一度深呼吸するとペシッと両手で頬を叩き気持ちを立て直した。

 

愛子「皆さん、心配かけてごめんなさい。そうですよね。悩んでばかりいても解決しません。

清水君は優秀な魔法使いです。きっと大丈夫。今は、無事を信じて出来る事をしましょう。

取り敢えずは、本日の晩御飯です!お腹いっぱい食べて、明日に備えましょう!」

無理しているのは丸分かりだが、気合の入った掛け声に生徒達も「は~い。」と素直に返事をする。

デビッド達はその様子を微笑ましげに眺めた。

 

カランカランッと音を立てて、愛子達は自分達が宿泊している宿の扉を開いた。

【ウルの町】で一番の高級宿だ。名を"水妖精の宿"という。

嘗て、【ウルディア湖】から現れた妖精を一組の夫婦が泊めた事が由来だそうだ。

なお【ウルディア湖】は、【ウルの町】の近郊にある大陸一の大きさを誇る湖だ。

大きさは日本の琵琶湖の四倍程である。

 

"水妖精の宿"は一階部分がレストランになっており、ウルの町の名物である米料理が数多く揃えられている。

内装は落ち着きがあって、目立ちはしないが細部まで拘りが見て取れる装飾の施された重厚なテーブルやバーカウンターがある。

また、天井には派手過ぎないシャンデリアがあり、落ち着いた空気に花を添えていた。

"老舗"──そんな言葉が自然と湧き上がる、歴史を感じさせる宿だった。

 

当初、愛子達は高級過ぎては落ち着かないと他の宿を希望したのだが、"神の使徒"、或いは"豊穣の女神"とまで呼ばれ始めている愛子や生徒達を普通の宿に泊めるのは外聞的に有り得ないので、騎士達の説得の末【ウルの町】における滞在場所として目出度く確定した。

元々王宮の一室で過ごしていた事もあり、愛子も生徒達も次第に慣れ、今ではすっかりリラックス出来る場所になっていた。

農地改善やトシの捜索に東奔西走し疲れた体で帰って来る愛子達にとって、この宿で摂る米料理は毎日の楽しみになっていた。

 

全員が一番奥の専用となりつつあるVIP席に座り、その日の夕食に舌鼓を打つ。

優花「ああ、相変わらず美味しいぃ~。異世界に来てカレーが食べれるとは思わなかったよ。」

淳史「まぁ、見た目はシチューなんだけどな……。いや、ホワイトカレーってあったけ?」

優花が心の底から出た様な声音で宿の料理を絶賛すれば、同じ異世界版カレーを注文した淳史が記憶を探りつつ同意した。

それに対し昇が、ホクホクのご飯の上に載った黄金でサックサクの衣を纏った各種揚げ物と、香ばしいタレで彩られた自らの料理を行儀悪く箸で指しながら感想を述べる。

 

昇「いや、それよりも天丼だろ? このタレとか絶品だぞ? 日本負けてんじゃない?」

妙子「それは玉井君がちゃんとした天丼食べた事無いからでしょ? ホカ弁の天丼と比べちゃ駄目だよ。」

明人「俺は炒飯擬き一択で。これやめられないよ。」

奈々「餃子っぽいのとセットメニューってのが何とも憎いよね。このお店開いた人、絶対日本人でしょ。」

 

その感想に苦笑いを浮かべながら妙子が反論し、明人が炒飯擬きで頬をパンパンに膨らませ、その隣で餃子擬きを頬張っていた奈々が何とも疑わしい視線を店の奥に向ける。

極めて地球の料理に近い米料理に、毎晩優花達のテンションは上がりっぱなしだ。

見た目や微妙な味の違いはあるのだが、料理の発想自体はとても似通っている。

素材が豊富というのも、【ウルの町】の料理の質を押し上げている理由の一つだろう。

米は言うに及ばず、【ウルディア湖】で取れる魚、【北の山脈地帯】の山菜や香辛料等もある。

 

そんな美味しい料理で一時の幸せを噛み締めている愛子達の下へ、六十代くらいの口髭が見事な男性がにこやかに近寄ってきた。

???「皆様、本日のお食事は如何ですか? 何かございましたら、どうぞ遠慮なくお申し付け下さい。」

愛子「あ、オーナーさん。」

愛子達に話しかけたのは、この"水妖精の宿"のオーナーであるフォス・セルオである。

スッと伸びた背筋に、穏やかに細められた瞳、白髪交じりの髪をオールバックにしている。

宿の落ち着いた雰囲気がよく似合う男性だ。

 

愛子「いえ、今日もとてもおいしいですよ。毎日癒されてます。」

愛子が代表してニッコリ笑いながら答えると、フォスも嬉しそうに「それはようございました。」と微笑んだ。

しかし次の瞬間には、その表情を申し訳なさそうに曇らせた。

いつも穏やかに微笑んでいるフォスには似つかわしくない表情だ。

何事かと食事の手を止めて、皆がフォスに注目した。

フォス「実は、大変申し訳ないのですが……香辛料を使った料理は今日限りとなります。」

優花「えっ!? それって、もうこのカレー擬き(ニルシッシル)を食べれないって事ですか?」

カレーが大好物の園部優花がショックを受けた様に問い返した。

 

フォス「はい、申し訳ございません。何分材料が切れまして……

いつもならこの様な事が無い様に在庫を確保しているのですが。

……ここ一ヶ月程北山脈が不穏という事で、採取に行く者が激減しております。

つい先日も、調査に来た高ランク冒険者の一行が行方不明となりまして、ますます採取に行く者がいなくなりました。

当店にも次にいつ入荷するかわかりかねる状況なのです。」

愛子「あの……不穏っていうのは具体的には?」

フォス「何でも魔物の群れを見たとか……北山脈は山を越えなければ比較的安全な場所です。

山を一つ越える毎に強力な魔物がいる様ですが、態々山を越えてまでこちらには来ません。

ですが、何人かの者が居る筈の無い山向こうの魔物の群れを見たのだとか。」

愛子「それは心配ですね……。」

 

愛子が眉を顰める。他の皆も若干沈んだ様子で互いに顔を見合わせた。

フォスは「食事中にする話ではありませんでしたね。」と申し訳なさそうな表情をすると、場の雰囲気を盛り返す様に明るい口調で話を続けた。

フォス「しかしその異変も、もしかするともう直ぐ収まるかもしれませんよ。」

愛子「どういう事ですか?」

フォス「実は、今日の丁度日の入り位に新規のお客様が宿泊にいらしたのですが、何でも先の冒険者方の捜索の為北山脈へ行かれるらしいのです。

フューレンのギルド支部長様の指名依頼らしく、相当な実力者の様ですね。

もしかしたら異変の原因も突き止めてくれるやもしれません。」

 

愛子達はピンと来ない様だが、食事を共にしていたデビッド達護衛の騎士は一様に「ほぅ。」と感心半分興味半分の声を上げた。

フューレンの支部長と言えばギルド全体でも最上級クラスの幹部職員である。

その支部長に指名依頼されるというのは、相当どころではない実力者の筈だ。

同じ戦闘に通じる者としては好奇心をそそられるのである。

騎士達の頭には、有名な"金"クラスの冒険者がリストアップされていた。

 

愛子達がデビッド達騎士のざわめきに不思議そうな顔をしていると、二階へ通じる階段の方から声が聞こえ始めた。

男の声と少女三人の声だ。随分と仲が良いようで、和気藹々と会話を楽しんでいる。

それに反応したのはフォスだ。

フォス「おや、噂をすれば。彼等ですよ、騎士様。

彼等は明朝にはここを出るそうなので、もしお話になるのでしたら、今のうちがよろしいかと。」

デビッド「そうか、わかった。しかし随分と若い声だ、"金"にこんな若い者がいたか?」

デビッド達騎士は、脳内でリストアップした有名な"金"クラスに今聞こえている様な若い声の持ち主がいないので、若干困惑した様に顔を見合わせた。

 

そうこうしている内に、四人の男女は話ながら近づいてくる。

愛子達のいる席は三方を壁に囲まれた一番奥の席であり、店全体を見渡せる場所でもある。

一応カーテンを引く事で個室にする事も出来る席だ。

唯でさえ目立つ愛子達一行は、愛子が"豊穣の女神"と呼ばれる様になって更に目立つ様になった為、食事の時はカーテンを閉める事が多い。

今日も、例に漏れずカーテンは閉めてある。

そのカーテン越しに、若い男女の騒がしめの会話の内容が聞こえてきた。

 

ミレディ「えぇっ!?ハジメンの故郷って魚を生で食べるの!?」

ハジメ「まぁ、一応殺菌処理はしてあるみたい。それでも食中毒とか注意の必要な物もあるけどね。」

シア「そういえば、こちらの町では売っているんですかね?その、"醤油"っていう調味料は。」

ハジメ「あぁ、出来ることなら味噌も欲しい。久々に南雲家特製味噌汁をふるまいたいものだ。」

ユエ「…ん、ハジメの故郷の食べ物、楽しみ。」

その会話の内容に、そして少女達の声が呼ぶ名前に。

愛子の、そして優花達の心臓が一瞬にして飛び跳ねる。

彼女達は今何といった?少年を何と呼んだ?少年の声は、"彼"の声に似てはいないか?

愛子の脳内を一瞬で疑問が埋め尽くし、金縛りにあった様に硬直しながら、カーテンを視線だけで貫こうとでも言う様に凝視する。

 

特に直接命を救われ、あの出来事に最も深く心を折られた優花の受けた衝撃は尋常ではなかった。

カランッとスプーンを落とした音にも気付かない様子で、唯々呆然としている。

優花を含め淳史達生徒の脳裏には、およそ四ヶ月前に奈落の底へと消えていった"彼"の姿が浮かび上がっていた。

自分達に"異世界での死"というものを強く認識させた少年。消したい記憶の根幹となっている少年。

良くも悪くも目立っていた少年……。

 

尋常でない様子の愛子と生徒達に、フォスや騎士達が訝しげな視線と共に声をかけるが、誰一人として反応しない。

騎士達が一体何事だと顔を見合わせていると、愛子がポツリとその名を零した。

愛子「……南雲君?」

無意識に出した自分の声で、有り得ない事態に硬直していた体が自由を取り戻す。

愛子は、椅子を蹴倒しながら立ち上がり、転びそうになりながらカーテンを引き千切る勢いで開け放った。

シャァァァ!!

 

存外に大きく響いたカーテンの引かれる音に、ギョッとして思わず立ち止まる三人の少女と、呑気に椅子を引いて座り込む少年。

愛子は、相手を確認する余裕も無く叫んだ。大切な教え子の名前を。

愛子「南雲君!」

ハジメ「あれ?愛ちゃん先生?それにみんなまで……どうしてここに?」

愛子の目の前にいたのは、意外そうな顔をしている、記憶と寸分違わぬ白髪の少年だった。

 

しかし雰囲気は大きく異なっている。

愛子の知る南雲ハジメは、どこか自分を抑え込んでいたような場面がみられていたものの、穏やかで明るい性格の少年だった。

実は、苦笑いが一番似合う子と認識していたのは愛子の秘密である。

だが、目の前の少年は以前とは違い、どこか血塗られたような感覚が体中を走っている感じがした。

話し方も変わった訳でもないのに、まるで遠くに行ってしまったような存在に感じてしまうのだ。

 

だが、目の前の少年は自分を何と呼んだのか。そう、"先生"だ。愛子は確信した。

雰囲気も話し方も大きく変わってしまっているが、目の前の少年は、確かに自分の教え子である"南雲ハジメ"であると!

愛子「南雲君……やっぱり南雲君なんですね?生きて……本当に生きて…。」

ハジメ「先生。俺があの程度で死ぬわけないでしょう。俺は先生の教え子で、王様になるんだから。」

死んだと思っていた教え子と奇跡の様な再会。感動して、涙腺が緩んだのか、涙目になる愛子。

今まで何処にいたのか、一体何があったのか、本当に無事でよかった、と言いたい事は山程あるのに言葉にならない。

それでも必死に言葉を紡ごうとする愛子を見て、困ったような笑みを浮かべながら、彼女の頭に手を置いて、優しく語り掛けるハジメ。

 

ハジメ「まぁ、なんだ。いろいろ言いたいことはあるだろうけれども……これだけ言っておくよ。

―――ただいま。」

愛子「!な゛く゛も゛く゛ぅ゛ん゛!

ハジメの無事を改めて認識したのか、今まで溜め込んでいたものが一気に涙となって溢れ出す。

愛子は涙声になりながら彼を抱きしめた。尤も、傍から見れば抱き着いているようにしか見えないが。

が、愛子の泣き声がレストラン中に響き渡っていることに気づいたハジメは、慌てて彼女を宥めた。

 

ハジメ「あ~……先生。ここは一応店内だからさぁ……。一旦、落ち着こうか?」

愛子「!……はい。///」

自分がどういう体勢なのか自覚した愛子は、頬を赤らめながらもいそいそとハジメから離れた。

生徒達はハジメの姿を見て、信じられないと驚愕の表情を浮かべている。

それは、生きていた事自体が半分、雰囲気の変貌が半分といったところだろう。

だがどうすればいいのか分からず、ただ呆然と愛子とハジメを見つめるに止まっていた。

 

ハジメ「さて、話したいことはいっぱいあるけれども、ここまですっ飛ばしてきたからね。

取り敢えず、腹ごしらえから済ましてもいいかな?」

愛子「それは構いませんが……こちらの女性達はどちら様ですか?」

そう言って、自分を温かい目で見守っていたユエ達に視線を向ける。

愛子の言い分はその場の全員の気持ちを代弁していたので、漸く俺が四ヶ月前に亡くなったと聞いた愛子の教え子であると察した騎士達や、愛子の背後に控える生徒達も皆一様に「うんうん。」と頷きハジメの回答を待った。

 

ハジメ「あぁ、紹介するよ。俺が旅先で出会った「「「女(ですぅ!)(だよ!)。」」」仲間……え?」

愛子「お、女?」

愛子が若干どもりながら「えっ?えっ?」とハジメと二人の美少女を交互に見る。

上手く情報を処理出来ていないらしい。後ろの生徒達も困惑したように顔を見合わせている。

いや、男子生徒は「まさか!」と言った表情でユエとシアを忙しなく交互に見ている。

徐々に、その美貌に見蕩れ顔を赤く染めながら。

 

ハジメ「ちょっと!?そこは仲間でしょ!?なんでそこで女なのぉ!?」

自分の言いたかったこととは違う言葉が三人の口から出てきたことに動揺するハジメ。

ユエ「……ん。でもプロポーズされた。」

シア「私も、「俺の人だ。」なんて言われましたし、実質俺の女宣言ですよ!」

ハジメ「二人の言い分は分かるが、なぜミレディまで!?」

ミレディ「えぇ~?だって、中身がオーちゃんでも、身体はハジメンだから実質正解みたいなものじゃん?」

ハジメ「そんなことがあって「南雲君?」……先生、誤解なんだ。」

愛子の様子がおかしくなったことに気づいたハジメは、慌てて誤解を解こうとするが、時既に遅しだった。

今の愛子の頭の中では、ハジメが三人の美少女を両手に侍らして高笑いしている光景が再生されている様だった。

表情がそれを物語っている。

 

顔を真っ赤にしてハジメの言葉を遮る愛子。

その顔は、非行に走る生徒を何としても正道に戻してみせるという決意に満ちていた。

そして、"先生の怒り"という特大の雷が【ウルの町】一番の高級宿に落ちる。

愛子「さ、三股なんて!直ぐに帰ってこなかったのは、遊び歩いていたからなんですか!?

もしそうなら……許しません!ええ、先生は絶対許しませんよ!お説教です!そこに直りなさい、南雲君!」

きゃんきゃんと吠える愛子を尻目に、どうしてこうなった……と思わず天井を仰ぐハジメであった。

 

〈愛ちゃんサイド終了〉

 


 

〈ハジメさんサイドリターン〉

 

散々愛ちゃん先生が吠えた後、他の客の目もあるからとVIP席の方へ案内された俺達。

そこで俺は、食事をしながらこの世界の真実について語った。

愛子「……で、では、私達はその"神を自称するエヒト"の遊戯の為だけに、人間族側の駒として召喚されたというのですか?」

ハジメ「あぁ、でも大丈夫だ。今俺達は、元の世界へ帰る術を身に着けるための旅に出ている。

まぁ、そのついでにクズ野郎はぶっ飛ばしておく。だからそれまで生き残ってほしい。」

愛子「!?帰る術があるんですか!?」

 

先程の絶望とは一転、元の世界へ帰還できることを聞き、希望を見出したかのように迫ってきた。

ハジメ「今はまだそれは出来ないよ。どれくらい時間がかかるか分からないからね。」

愛子「そ、そうですか……。」

またもや落ち込んでしまう愛ちゃん先生。はて、どうしたものだか、と思っていると……。

 

デビッド「貴様!先程から黙って聞いておれば、戯言を抜かしおって!この背信者が!」

さっきから何故か一緒にいた騎士たちが怒り出した。しかも剣まで抜いている。

ミレディ曰く、神殿騎士と言って、聖教教会や国の中枢に近い人間らしい。

なんでそんな奴等と愛ちゃん先生が一緒にいるんだか……作農師だからか。

 

ハジメ「信じる信じないはアンタ等の勝手だ。だが、その剣を納めないというのなら……。」

そう言って立ち上がり、威圧と魔力を放出した。

ハジメ「―――ここで貴様等を腹に収めてやろうか?」ズアッ!

デビッド「!?」

自分達とは桁違いの魔力と圧を受け、思わず後ずさる騎士達。だが、俺はそれを緩めるつもりはない。

折角だ。憂さ晴らしの一環に、外に打ち上げてやろう。そう思い、拳を構えようとすると……。

 

愛子「……ッ!待って……!」

ハジメ「!」

愛ちゃん先生の苦しそうな声を聞き、改めて周りを見る俺。

すると、放っている圧の影響か、他の皆も苦しそうにしていた。こりゃあいけない。

どうやら魔力が多すぎたみたいだ。慌てて俺は威圧と魔力を収める。

それを見て力が抜けたのか、騎士達がその場にへたり込んだ。

 

ハジメ「いやぁ、ごめんごめん。

食事中に物騒なことしようとする礼儀知らずがいたものだから、つい……。」

愛子「……先程のハジメ君の方が物騒な気がしますが……。」

そう言って再び座ると、食事を再開する俺。う~ん、久しぶりのカレーはうまいな。

 

ハジメ「んで?先生、何でこいつらが一緒なの?説明するときに色々面倒なんだけど。

邪魔だからぶっ飛ばしてもいいよね?シアのことも悪く言いそうな阿保共だし。」

愛子「ちょっと!?そんなことをしてはいけませんよ!?」

思わずイラついたので、怒気を発しながら騎士共を睨みつける俺。

 

デビッド「貴様!我々に向かって何と「デビッドさん、少し静かにしていてもらえますか?」うっ……承知した……。」

……ホント、俺がいない間何があったんだよ。そんな風に騎士を抑える先生を見て唖然とする俺。

ハジメ「先生、あんたいつの間に騎士達を手懐けたんだよ……。」

愛子「!?ち、違いますからぁ!デビッドさん達も、いつもこういった感じなので、つい!」

……マジで何があったんだ……。気になったので、近くにいた生徒の一人に聞いてみようとすると……。

 

ハジメ「あれ?園部さんじゃん。君もここに?」

優花「!」

迷宮に行く前に、料理を作ってもらった園部さんだった。

そういえば、オルクスでも似たような子を助けたなぁ。もしかして、園部さんだったのかな?

ハジメ「まぁ、なんだ。元気そうで何よりだよ。それで、愛ちゃん先生の状況について、教えてくれない?」

優花「え、えぇ。」

何所か戸惑った様子でありながらも、先生が今置かれている状況について教えてもらった。

 

ハジメ「……先生、異世界で逆ハーレムって、相当ポテンシャル高かったんだね。流石"豊穣の女神"。

なんか、これを題材にしたギャルゲーが一つ作れそうだね。」

愛子「!?そ、それはいけませんよ!著作権の侵害ですよ!」

ハジメ「でぇじょうぶだ、売るのはそこの騎士達だけにするから。」

愛子「そんなのダメです!ダメったらダメェ!」

慌てまくる愛ちゃん先生をおちょくりながらも、俺は騎士共をどうやって納得させるかを考えることにした。

正直、実力行使が一番早いが、ここ店内だしなぁ……。それに依頼を受けている身だし。

なんてことを考えていると、愛ちゃん先生が「お返しだァ!」とでも言わんばかりの目になった。

 

愛子「そ、そういう南雲君だって、王宮でなんて呼ばれているか知っていますか!?」

ハジメ「うん?」

そう言えば、王宮ではどんな扱いになっている事やら。他の皆の安否も心配だしなぁ……。

愛子「"無能の皮をかぶった化け物"、"ベヒモスを圧倒した異常者"、"王様になりたがった狂人"、なんて呼ばれているんですよ!?」

ハジメ「…………………………はい?」

今、なんて言った?てか最後のは完全に嫌味だよね!?なんでそんなにヤバそうな名前つけられてんの!?

 

デビッド「……聞いたことがある。

かつて、王宮の使用人の大半に恩恵を施し、王女様にも気に入られた錬成師がいると……。」

ハジメ「……ソソソソウナンデスカー。」

思いっきり身に覚えのある事ばかりであったため、何も言えなかった。

でもどうやら、ギルドでのあだ名はまだバレていないみたいだ。良かったぁ……。

 

ハジメ「まぁいいや。っと、そういえばあんた等に聞きたいことが出来たな。」

そう言って俺は、騎士たちの方に向き直る。

デビッド「!?な、なんだ?」

ハジメ「なぁに、そんなに難しいことじゃあない。

もし教会上層部が、愛ちゃん先生を殺せと命じたら、あんた等はどっちをとるのかなぁ?ってだけだよ。」

デビッド「何ッ!?」

愛子「!?」

 

自分でも直球過ぎる質問だが、愛ちゃん先生の影響力は、教会にとっては脅威になるだろう。

魔人族に殺させるか、異端審問で濡れ衣を着せるかの二択になる。

果たしてそんな中でも、こいつ等は信仰をとることが出来るのだろうか?と考え、聞いてみることにした。

案の定、騎士達は黙り込んでしまった。それもそうか。ならここは、背中を押してやるとしよう。

 

ハジメ「まぁ、選べないのは分かる。

だがな、種族が違うからと言って差別したり、教えに背いたからと言って迫害するような奴を、俺は神とは呼ばない。

教えは倣うものであって、尊守するものではない。

誰かのために教えに背くことが罪というのなら、俺が破戒してやるさ。」

デビッド「なっ!?き、貴様、神が恐ろしくないのか!?」

焦るように言うデビッドという騎士。だが、その程度では俺は曲げられない。

 

ハジメ「お山の上でふんぞり返るだけの能無しなんざ、怖くもなんともないな。

ま、奴への信仰程度で揺らぐものなら、アンタ等の愛ちゃん先生への気持ちは、そんなもんってことさ。」

デビッド「そ、そんな訳があるか!」

よぉし、ここまで追い詰めれば、後は誘導するだけか。

ハジメ「じゃあ、どっちを信仰するのかはもうわかるでしょ?」

愛子「な、南雲君?」

オロオロしだす愛ちゃん先生を尻目に、それはもういい笑顔で俺は言った。

 

ハジメ「だって、もう一人いるじゃん。

謙遜していて、民のためにひたむきで、尊敬される女神さまが。

そう、"豊穣の女神"である、愛ちゃん先生が!」

「「「「ッ!」」」」

愛子「南雲くーん!?」

これが俺の作戦、愛ちゃん先生を現人神として、新宗教を起こしてしまおうという魂胆なのだ。

これなら騎士達との衝突も軽減されるし、愛ちゃん先生の発言力もアップするし、俺は面倒ごとを回避できる。

皆Win-Winの作戦、というわけだァ!

 

ハジメ「今こそ目を覚ますべきだ!あんた達が信じるべきものとは何だ!?」

俺の言葉に、ハッとなったような騎士達。そして、目を覚ましたかのように、口々に言葉を漏らした。

チェイス「そうだ……そうに決まっている!」

クリス「俺達が信じるべきもの……最初から答えはあったということか。」

ジェイド「……なんだ、簡単なことじゃないか!なぜ今まで気づかなかったのか!」

デビッド「……まさか、お前にそれを気づかされるとはな……フッ、俺もまだまだということか。」

愛子「ちょっと!?皆さん、正気に戻ってください!南雲君も変なこと言わないで!」

異常事態に気づいた愛ちゃん先生が慌てて止めに入ろうとするが、もう既に遅い。

畳みかけるように、俺は騎士達に大声で問いかけた。

 

ハジメ「さぁ、答えろ!あんたたちの信じるべきものの名は!?」

「「「「愛子!愛子!愛子!」」」」

ハジメ「剣を捧げるべき相手は誰だ!?」

「「「「愛子!愛子!愛子!」」」」

ハジメ「教会のシンボルに尤も相応しいのは!?」

「「「「愛子!愛子!愛子!」」」」

俺の問いに答える騎士達。なんか既視感がありまくりだが、俺は悪くねぇ。全部、クズ野郎のせいだ。

 

ハジメ「もう、迷う必要がないなら、どうするべきか分かるよね?」

優しく諭すように問いかけると、騎士達は憑き物が取れたかのような表情になり、愛ちゃん先生の前に進み出る。

愛子「で、デビッドさん、チェイスさん、クリスさん、ジェイドさん!皆さん、正気に戻ってください!」

デビッド「大丈夫だ、愛子。心配することなど何もないさ。俺達は今正に、正気に戻ったんだ。

むしろ今までの自分達こそが、正気ではなかったんだ。」

そう言うと、デビッド含む騎士達は、皆抜き身の剣を床に立て、右手でそれを持ったまま、静かに跪き頭を垂れた。

デビッド「だからこれからも、我々を導いてほしい。我らが"慈愛の女神"、愛子よ。」

 

まぁ、なんだろう。今更だけど、ちょっとやり過ぎたかな?

そう思って、愛ちゃん先生を見てみると、白目をむいて気絶していた。

ハジメ「……やっべ。」

「「「「「「愛ちゃん先生!?」」」」」」

「「「「愛子!?」」」」

流石にこのまま放置はダメなので、エナジーアイテム「目覚まし」を使い、起こすことにした。

 

目を覚ました愛ちゃん先生は、早速俺に説教をかました。まぁ、その姿を騎士達は拝んでいたが。

その後、最近の状況について話すと、愛ちゃん先生は何かを言いたそうな感じだったので、聞いてみることにした。

ハジメ「そういえば、他の皆は元気?俺が落ちた後、誰も死んでいないよね?」

愛子「えぇ、誰も死んではいません。

香織さん達も順調に迷宮攻略をしていますので、近いうちに合えると思います。ただ……。」

?どうしたのだろうか?

 

愛子「南雲君にお願いがあります。一緒に清水くんを探してもらえないでしょうか?」

ハジメ「!?アイツに何かあったのか!?」

ユエ「ハ、ハジメ?」

シア「ハジメさん?」

ミレディ「ハジメン?」

仲間の一人であるトシの名を聞き、思わず動揺してしまう俺。

ユエ達には、「一番信頼できる仲間の一人」と説明しておいた。

 

詳しく話を聞くと、前々から予定調整や身辺整理の手伝いをしてもらっていたようだ。

アイツめ、中々の立ち位置にいるじゃあないか。となれば、ニアミスしてしまったようだな。

因みに、他の生徒達を率いていたのもトシだという。ホントいい立ち回りしているぜ。

が、二週間前にパッタリと姿を消してしまったようだ。近隣の町や村でも目撃されていなかったらしい。

となれば、考えられるべき場所は一つ、北の山脈地帯だろうな。

何か異変を感じて一人で調査しに行った可能性は高かったが、流石に連絡もなしに行くような男じゃない。

きっと、何かを見つけた途中でトラブルに巻き込まれたのだろう。何者かによって不都合な、何かを。

 

ハジメ「……なるほどな。確かに俺達は北の山脈地帯に行くが……相当危険だぞ?」

愛子「それでも、私は先生ですから!生徒を無事親御さんの元に帰すのが、先生の役目です!」

その目は信念の籠った強い瞳だった。参ったなぁ、これは流石に断りにくい。

優花「だったら、私達も行きます!愛ちゃん一人を行かせるわけにはいきません!」

デビッド「俺達も同じだ!いざとなったら、俺達が愛子の盾になる!」

愛子「えぇ!?さ、流石にそんな人数では南雲君たちにも負担がかかってしまいますし……。」

どうやら、他の奴等もセットになってついてくるらしい。……はぁ、仕方がないかぁ。

 

ハジメ「……明日の夜明けに全員集合。遅れたら即おいていくからね?」

愛子「!ありがとうございます!」

全く、自分でも甘くなったものだなぁ。まぁ、この際だし、色々恩を売っておくのも悪くはないか。

ハジメ「まぁ、そういう訳なんだけど……ごめんね?勝手に決めちゃって。」

ユエ「……ん、以前問題なし。」

シア「そうですよ!それにハジメさんのお仲間さんにもあってみたいですし!」

ミレディ「それに、愛ちゃんのケアもしっかりしてあげないとね!」

ハジメ「……はい。」

とまぁ、彼らを同行させることになった俺であった。まぁ、それはさておき。

 

ハジメ「ところで先生、トシがいたってことは、俺の伝言はもう受け取っているの?」

愛子「……………あ。」

ハジメ「えぇ……………?」

どうやら、みそ汁や海鮮丼はまた今度になりそうだ。

 


 

その夜、俺は愛ちゃん先生の部屋を訪れた。

部屋の前にいた騎士さんには「先生に用がある。」というと、快く取り次いでくれた。

愛子「それで南雲君、話というのは?」

ハジメ「あぁ、夕食のときに言った帰還手段の当てについて、だよ。後、あの時はごめんなさい。」

そう言って頭を下げると、愛ちゃん先生は慌てて声を上げた。

 

愛子「あ、頭を上げてください!あの時の行動は南雲君なりの考えがあったことなんでしょうから!」

ハジメ「……そう言ってもらえると、助かるよ。」

正直、色々と申し訳なかったからなぁ……。

ハジメ「それで、帰還手段の当てっていうのは、この世界にある七大迷宮のクリア報酬"神代魔法"を全部集めることで使うことのできる"概念魔法"というものなんだよ。」

愛子「な、七大迷宮ですか?」

 

ハジメ「あぁ、かつてあのクズに立ち向かった、解放者という先人達が残した試験場と言えるものだ。

それをクリアすれば、"神代魔法"を託すに値すると認められ、その魔法を手に入れることが出来る。

因みに、俺は今二つ持っている。」

愛子「それなら、後5つ集めれば帰れるんですよね?」

ハジメ「どうだかね。あのクズ野郎の妨害が無いとも限らない。

それに今の光輝達じゃあ、オルクスの攻略でも難しいと思う。まぁ、こっちは俺が何とかするよ。

先生は先生で出来ることをお願いするよ。」

それに、香織達のこともあるからな。アイツ等、まだ奈落についてなきゃいいんだけど……。

 

愛子「分かりました。危険なところを生徒に任せるのは気が引けますが、お願いします。

先生もできる限り動きますので。」

ハジメ「そう、ならよかった。そういえば、皆の様子は?」

愛子「えぇ、白崎さん達はすごいですよ。たった四人でベヒモスを圧倒していましたし。」

ハジメ「そうか…………ん?4人?」

てっきりとどめを刺したのは光輝だと思っていたんだが……どういうことだ?

 

愛子「はい、白崎さん、八重樫さん、恵理さん………あ!後、遠藤君です!」

ハジメ「今サラッと、浩介のこと忘れていなかった?てか、何であいつ等そんなに強くなってんのさ……。」

愛子「詳しいことは分かりませんが……

見たこともない魔法や技能でベヒモスを圧倒していたみたいです。」

ハジメ「……そっか。まぁ、元気にやっているなら何よりだよ。」

そう言うと、愛ちゃん先生はまた暗い表情になった。今度はどうしたというんだ?

 

愛子「……それで、南雲君は、やっぱり許せませんか?」

ハジメ「うん?騎士さんたちならとっくの昔に……。」

そう言うと愛ちゃん先生は首を横に振り、意外な人物の名前を上げた。

愛子「檜山君のことです。事故とはいえ、南雲君が危険に晒されたわけですから……。」

ハジメ「……あぁ、何だアイツか。」

正直、今一番どうでもいい奴の名前だった。

 

愛子「!?気にしていないんですか!?」

ハジメ「別に奴が謝ろうが知ったこっちゃあないね。そんなことに構っている暇はないし。」

愛子「そんなことって……恵理さん達はとても怒っていましたよ?」

ハジメ「そうか……そいつは悪いことをしたね。」

正直、そこまでは考えていなかったからなぁ……。後で謝っておかないとな。

 

ハジメ「それじゃ、夜分遅くにごめんね?明日は早いから、そろそろ行くよ。」

愛子「はい、おやすみなさい……。」

?随分落ち込んでいたように見えたけど……何か拙いこと言っちゃったのかな?

なんて呑気なことを思っていた俺は気づいていなかった。

明日の捜索が、とある因縁を生むことになろうとは……。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

全員でまさかのレース。しかも全員エアライドという。
オスカーが何故ハジメに乗り移れるかは、仮面ライダーゴーストを参照して頂けると幸いです。

愛ちゃん、まさかの神格化。
愛ちゃん先生には悪いですが、騎士達との衝突は後々面倒なので、ごり押しで解決させていただきました。
尚、醤油や味噌の発酵は忘れ去られていた模様。

ハジメさんにとって、檜山は正直どうでもいい存在です。
歯向かってきたり、大切な人たちに危害を加えるなら、全力で血祭りにあげてやる、程度にしか思っていません。
まぁ、今作ではただのモブキャラで終わるわけではありませんが。

さて、次回はいよいよ三人目のヒロイン初登場!
果たして、ティオさんの貞操や如何に!?

宜しければ、高評価・コメント宜しくお願い致します。

次回予告

オッス!オラ、ハジメ!
朝早くから大人数で、北の山脈地帯を散策することになったオラ達。
そこで見たものとは壮絶な戦いの後だった。
おぉ?なんか強そうなドラゴンが来たぞ!オラ、ワクワクしてきたぞ!

次回 ありふれない錬成師は最高最善の魔王の力で世界最強を超越する
「黒龍現る!北の山脈大捜査線」
ぜってぇ見てくれよな!

もし今作品のハジメさんが、少しの間だけ別世界に飛ばされてしまったとしたら、どの世界に行くと思いますか?

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