ありふれない錬成師は最高最善の魔王の力で世界最強を超越する 作:天元突破クローズエボルハザード
今回は北の山脈地帯の捜索に向かいます。
ラストにはあのキャラも登場!?
急展開の第三章第5話、それではどうぞ!
翌日の夜明け。
月が輝きを薄れさせ、東の空が白み始めた頃。
俺達はすっかり旅支度を終えて"水妖精の宿"の直ぐ外にいた。
手には移動しながら食べられる様にと握り飯が入った包みを持っている。
極めて早い時間でありながら、嫌な顔一つせず朝食にとフォスさんが用意してくれたものだ。
流石は高級宿、粋な計らいだと感心しながら俺達は遠慮無く感謝と共に受け取った。
ウィル達が北の山脈地帯に調査に入り、消息を絶ってから既に五日。生存は絶望的だ。
正直、彼等が生きている可能性は高くないと考えているが、万一という事もある。
生きて帰せば、イルワさんに良い印象を残せるし、この町の香辛料もいくらか譲ってもらえるかもしれない。
そういう訳で、出来るだけ急いで捜索するつもりだ。幸いな事に天気は快晴。搜索にはもってこいの日だ。
朝靄が立ち込める中、俺達は【ウルの町】の北門に集まった。
ハジメ「よし、全員揃ったね?それじゃ、行きますか。」
そう言って門を出ようとする俺。
その手ぶらな様を見て困惑する愛ちゃん先生やクラスメイト、騎士達一同。
優花「えぇ~と、南雲?もしかしてアンタ、走っていくつもり?仮に本当にそうだとしたら……
昨日の威圧感といい、どこまで人間辞めてるのって感じなんだけど?」
なんてことを言うのでしょうこの子は。俺がそんなに脳筋に見えるのかい。
まぁ、いいだろう。せっかくなのでお披露目としますか。
ハジメ「ここだと狭すぎて出しにくいんだよ。馬よりも早くて楽だから、とりあえず繋いできてよ。」
そう言って俺は、皆の連れて来ていた馬を馬舎に繋がせた。
そうして門に出ると、俺はコネクトである乗り物を呼び寄せた。
すると突然、向こうの空に謎の空間が広がった。
優花「!?ちょっ、何アレ!?」
ハジメ「心配しなくてもいいよ。あれが今から乗る物だから。」
俺がそう言うと、その空間から大きな列車が出てきた。
その名も、"デンライナーゴウカ"。俺が奈落で旅客車を寝台列車風に改造した、大型列車だ。
デビッド「な、何だこれは!?」
初めて見る列車に驚く騎士達。オスカーも目をキラキラさせている。折角だ、後で運転させてあげよう。
淳史「お、おい南雲!これって列車だよな!?なんでこんなの持ってんだよ!?」
デンライナーを見て驚く玉井君。どうやら異世界でもお目にかかるなんて思ってもいなかったのだろう。
ハジメ「ホラ、早く探しに行くよ。もたついていると、あっという間に暗くなって、捜索できなくなるよ?」
そう言って彼らを急かし、デンライナーに乗せる俺。ユエ達も初めての列車に興味津々のようだ。
さてと、今回俺は昼食を作らなければならない。というわけで。
ハジメ「誰か、男でこの人に体貸してくれない?デンライナー運転してもいいからさ。」
オスカー『やぁ、初めまして。僕はオスカー・オルクス。解放者の一人だよ。』
「「「「「「「キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!!???」」」」」」」
ハジメ「静かに。」
予想通りの反応ではあったが、もう少しボリュームは抑えてほしい。
その後、じゃんけんで決めることになった結果、玉井君にやってもらうことになった。
前方に山脈地帯を見据えて真っ直ぐに伸びた道を、デンライナーが爆走する。
サスペンションは勿論だが、自前で線路を生成してその上を走っているだけなので、皆も特に不自由さは感じていない様だった。
前方の運転車両にはオスカーが憑依した玉井君が乗り、愛ちゃん先生は護衛の騎士達に囲まれている。
ユエとミレディは女子達とトークに花を咲かせている。
因みに、シアは俺のいる厨房に避難している。
まぁ、流石にあんなに視線を集めてたら、居心地よくないからねぇ……。
とまぁ、そんなこんなで昼食用のお弁当作りをしていた俺とシア。途中で園部さんが助っ人に来てくれた。
そのおかげで予定よりも早く済んだので、玉井君と交代する。
オスカーが随分と楽しみまくっていたようだ。
やれやれ、ミレディが我が子の困った行動を見る母親のような顔をしているぞ。
これから正体不明の異変が起きている危険地帯に行くとは思えない、何とも和やかな雰囲気が流れていた。
【北の山脈地帯】
標高1000mから8000m級の山々が連なるそこは、どういう訳か生えている木々や植物、環境がバラバラという不思議な場所だ。
日本の秋の山の様な色彩が見られたかと思ったら、次のエリアでは真夏の木の様に青々とした葉を広げていたり、逆に枯れ木ばかりという場所もある。
また、普段見えている山脈を越えてもその向こう側には更に山脈が広がっており、北へ北へと幾重にも重なっているとのことだ。
現在確認されているのは四つ目の山脈までで、その向こうは完全に未知の領域らしい。
何処まで続いているのかと、とある冒険者が五つ目の山脈越えを狙った事があるそうだが、山を一つ越える度に生息する魔物が強力になっていくので、結局成功はしなかった様だ。
因みに、第一の山脈で最も標高が高いのはかの聖教教会の本部が存在する【神山】、あのクズ野郎を祭っている面倒な場所である。
魂魄魔法を手に入れるためとはいえ、正直ゴキブリ退治に行くような感覚だ。
今回俺達が訪れた場所は、神山から東に1600km程離れた場所だ。
紅や黄といった色鮮やかな葉をつけた木々が目を楽しませ、知識ある者が目を凝らせば、そこかしこに香辛料の素材や山菜を発見する事が出来る。
ウルの町が潤う筈で、実に実りの多い山である。
折角なので、少し持っていこうとしたのは秘密だ。
俺達はその麓にデンライナーを止めると、暫く見事な色彩を見せる自然の芸術に見蕩れた。
女性陣の誰かが「ほぅ。」と溜息を吐く。
俺自身ゆっくり鑑賞したい気持ちを押さえてデンライナーを見送ると、代わりにとある物をコネクトで取り出した。
それは、全長50cm程のケースがいくつかと音叉、一台の自動販売機であった。
ハジメ「それじゃ、捜索の準備でもしますか。」
そう言って俺はケースを片っ端から開けていった。中身はてんでバラバラな物ばかりだった。
まぁ、これだけあれば、二人ぐらいは簡単に見つけられるだろう。
そう思いながら、俺は音叉を軽く弾いて音を鳴らした。
するとキィィーーンという甲高い音が響き、それが伝播する様に数種類のディスクが震え始める。
途端、ディスクは赤青緑と様々な色に変わっていき、そのまま独りでにケースから飛び出した。
そのディスク群は生物の形に変形していき、其々が鳴き声を上げながら四方八方に散っていった。
愛子「あの、あれは……。」
鳥や狼、猿、蟹、蛇、蛙と多種多様な生物に変形し遠ざかっていくディスク達を見ながら、愛ちゃん先生が聞いてきた。
ハジメ「あぁ、まだ他にもあるから。」
そう言って俺は、ゼクターとメモリガジェットを飛ばし、自動販売機のボタンを押しまくった。
すると、如何にも当たりを引き当てたような音声と共に、大量の缶が転がり落ちてきた。
「「「「「「「!?」」」」」」」
ハジメ「あ、それ全部開けといて。今こっちも調整中だから。」
そう言いながら、プラモンスター達やシフトカーを使い、人海戦術をさらに広げる俺であった。
ハジメ「さて、後はこれをかけてっと。」
捜索用のアイテムを全部放出した俺は、コネクトで取り出したVRゴーグル擬きを装着した。
実はこれ、さっき飛ばした奴の映像を処理するために開発したものである。
昇「!?おい南雲!それ、VRゴーグルじゃねぇか!?」
明人「マジか!?まさか、この世界にゲームを持ち込めただなんて……!」
……ふざけて作ったんじゃあない。それにこの形なら情報がちゃんと処理されて頭に入ってくるからだ。
後、ちゃんと現実の映像もしっかり見えるので、つけながらでも歩行は可能だ。
俺達は、冒険者達も通ったであろう山道を進む。
魔物の目撃情報があったのは、山道の中腹より少し上、六合目から七号目の辺りだ。
ならばウィル達冒険者パーティも、その辺りを調査した筈である。
そう考えて、俺達は先程放った偵察部隊をその辺りに先行させながら、ハイペースで山道を進んだ。
凡そ一時間と少し位で六合目に到着した俺達は、一度そこで立ち止まった。
理由は、そろそろ辺りに痕跡が無いか調べる必要があったのと……
愛子「ハァハァ、きゅ、休憩ですか……ケホッ、ハァハァ。」
「ゼェー、ゼェー、大丈夫ですか……愛ちゃん先生、ゼェーゼェー。」
「ウェップ、もう休んでいいのか?ハァハァ、いいよな?休むぞ?」
「……ヒュウーヒュウー。」
「ゲホゲホ、南雲達は化け物か……。」
デビッド「ゼェ……ゼェ……。大丈夫か、我が女神。」
ハジメ「……やれやれだぜ。」
予想以上に愛ちゃん先生達の体力が無く、休む必要があったからである。
勿論、本来愛ちゃん先生達のステータスはこの世界の一般人の数倍を誇るので、六合目までの登山如きでここまで疲弊する事は無いはずだ。
神殿騎士の人達も、この世界では上位のレベルに入るから、そこまでヘボくはないはずだ。
ただまぁ、俺達の移動速度が速すぎて殆ど全力疾走しながらの登山となり、気がつけば体力を消耗しきってフラフラになっていたのである。
四つん這いになり必死に息を整える愛ちゃん先生。
相川君と二村君は仰向けに倒れながら今にも死にそうな呼吸音を響かせていて、宮崎さんは少しばかり女子として見せてはいけない顔になっている。
意外にも倒れ込んでいないのは園部さんと菅原さんだ。
二人共近くの木に寄りかかり、相当きつそうな表情ではあるが倒れ込む様な気配は無い。
二人共にどちらかと言えば前衛職の天職である事が関係しているのだろう。
それぞれ"投術師"と"操鞭師"だからかな?
前者は投げナイフやダーツ等投擲技術の才を、後者は鞭は勿論としてロープ状の物を操る技術の才を発揮する。
見た目ちょっと不良っぽい園部さんが投擲用ナイフを手慰みにジャグリングしたり、おっとり系ギャルの菅原さんが鞭を巧みに振り回したりする姿は……
生徒達の間でもとびっきりシュールという意見と、何だか凄く似合っているという意見が半々だったらしい。
後者に至っては隠れサドなんじゃないかと俺は思った。
尚、玉井君と相川君も一応前衛職なのだが体力で負けているという点は、指摘してはいけない。
そんな事をすれば、今度こそ彼等の心はポッキリと逝っちゃうから。
騎士さん達は普段から鍛えているだけあって、まだまだ余裕はありそうな感じだが。
まぁ、どちらにしろ詳しく周囲を探る必要があるので、休憩がてら近くの川に行く事にした。
ここに来るまでに、伝達用アイテムからの情報で位置は把握している。
未だ荒い呼吸を繰り返す彼等に場所を伝え、俺達は先に川へと向かった。
ウィル達も休憩がてらに寄った可能性は高いだろうし。
ユエ達を連れて山道から逸れて山の中を進むことに。
シャクシャクと落ち葉が立てる音をBGMに木々の間を歩いていると、やがて川の
耳に心地良い音だ。シアの耳が嬉しそうにピッコピッコと跳ねている。
そうして俺達が辿り着いた川は、小川と呼ぶには少し大きい規模のものだった。
索敵能力が高いシアが周囲を探り、俺も念の為偵察部隊を幾つか呼び戻し周囲を探るが魔物の気配はしない。
取り敢えず息を抜いて俺達は川岸の岩に腰掛けつつ、今後の捜索方針を話し合った。
途中、ユエが「少しだけ。」と靴を脱いで川に足を浸けて楽しむという我儘をしたが、皆はまだかかりそうだし良いか。
シアとミレディも便乗してきた。
俺はというと、川沿いに上流へと移動した可能性も考えて、偵察部隊を上流沿いに飛ばしつつ、ユエ達がパシャパシャと素足で川の水を弄ぶ姿を眺めることにした。
シアは素足を水につけているだけだが、川の流れに攫われる感触に擽ったそうにしている。
するとそこへ、漸く息を整えた愛ちゃん先生達がやって来た。
置いていかれた事に思うところがあるのかジト目をしている。まぁ、正直すまんとは思っている。
が、男子三人が素足のユエ達を見て歓声を上げると「ここは天国か。」と目を輝かせ、女性陣の冷たい眼差しは矛先を彼等に変えた。
騎士さん達は愛ちゃん先生にくぎ付けみたいだが。強いなぁ……。
身震いする男衆。その視線に気がつき、ユエ達も川から上がった。
愛ちゃん先生達が川岸で腰を下ろし水分補給に勤しむ。
先程から男衆のユエ達を見る目が鬱陶しいので軽く睨み返すと、ブルリと震えて視線を逸らした。
そんな様子を見て、愛ちゃん先生達が俺に生暖かい眼差しを向ける。
特に、園部さん達は車中でシアから色々聞いたせいか実にウザったらしい表情だ。
愛子「ふふ。南雲君は、ホントにユエさん達を大事にしているんですね。」
愛子が微笑ましそうに、優花達に聞こえない様に小声で言う。
ハジメ「まぁ、俺にとって仲間は第二の家族みたいなものだからね。相手が神でも負ける気しないから。」
愛子「フフッ、何だか南雲君一人いるだけで頼もしく感じますね。」
ハジメ「そりゃあ俺、最高最善の魔王だからね。民の安全を守るのが務めだし。」
そんな会話をしていると、ユエがそれを行動で示してきた。
当然だと言う様に俺の右太ももの上にポスッと腰を落とす。
そして、柔らかなお尻をふにふにと動かしてベストポジションを探る。
ユエ「……ん。」
そして満足のいくポジションを見つけ、そのまま俺に寄りかかり全体重を預けた。
それが信頼の証だとでも言うように。
それを見てシアとミレディも示してきた。ミレディはユエと同じように左太ももに腰を落とした。
シアは俺の背後からヒシッと抱きつく。柔らかい……お餅が……。
突如発生した桃色空間に愛ちゃん先生と園部さんは頬を赤らめ、宮崎さんと菅原さんはキャーキャーと歓声を上げ、男子三人はギリギリと歯を噛み締めていた。
騎士さん達は未だに愛ちゃん先生に夢中。ここまでくると尊敬するわ。
ハジメ「!これは!?」
ユエ「ん……何か見つけた?」
急遽、気になる情報が入ったので、早速その場所を特定することにした。
急に驚いた俺に、ユエが確認する。その様子に、愛ちゃん先生達も何事かと目を瞬かせた。
ハジメ「川の上流……これ盾かな?それに鞄もまだ新しいし……当たりかもね。皆、行くよ。」
ユエ「ん……。」
シア「はいです!」
ミレディ「うん!」
俺達が阿吽の呼吸で立ち上がり、出発の準備を始めた。
愛ちゃん先生達は……仕方がないか。そう思うと、複数の飛行用アニマルやバイクを取り出した。
『ドラゴニックナイト!』『ランプドアランジーナ!』『Attack ride, Booster Tridoron!』
愛ちゃん先生たち女性陣は魔法の絨毯に、男子三人はブレイブドラゴンの背中に、騎士さん達は少し狭いが、ブースタートライドロンに乗ってもらうことにした。
尚、制御方法は一緒に渡したライドブックと、ビルドフォン擬きで行う。
俺達はというと、ユエ達はアドベントで呼びだしたドラグレッダーに乗って進み、俺は走ることにした。
俺達が到着した場所には、偵察部隊で確認した通り小ぶりな金属製のラウンドシールドと鞄が散乱していた。
但しラウンドシールドは拉げて曲がっており、鞄の紐は半ばで引き千切られた状態でだ。
俺達は注意深く周囲を見渡す。すると、近くの木の皮が禿げているのを発見した。
高さは大体2m位の位置だ。何かが擦れた拍子に皮が剥がれた、そんな風に見える。
高さからして人間の仕業ではないだろう。
俺はシアにウサミミ探査を指示しながら、感知系能力をフルにして、傷のある木の向こう側へと踏み込んでいった。
先へ進むと、次々と争いの形跡が発見できた。
半ばで立ち折れた木や枝。踏みしめられた草木、更には折れた剣や、血が飛び散った痕もあった。
それらを発見する度に、特に愛ちゃん先生達の表情が強張っていく。
特に、死の恐怖に一度は心を折られた園部さん達は【オルクス大迷宮】で死にかけた時の事を思い出したのか、一見して分かる程顔色を悪くしている。
震えそうになる身体を必死に抑えようとしているのが分かった。
そんな彼等を騎士さん達に任せ、争いの形跡を追っていくと、シアが前方に何か光るものを発見した。
シア「ハジメさん、これペンダントでしょうか?」
ハジメ「ん?あぁ……遺留品かも。確かめようか。」
シアからペンダントを受け取り汚れを落とすと、どうやら唯のペンダントではなくロケットの様だと気がつく。
留め金を外して中を見ると、女性の写真が入っていた。恐らく、誰かの恋人か奥さんと言ったとこかな。
大した手がかりではないが、古びた様子はないので最近の物……冒険者一行の誰かの物かもしれない。
なので一応回収しておく。
その後も、遺品と呼ぶべき物が散見され、身元特定に繋がりそうな物だけは回収していく。
どれ位探索したのか、既に日は大分傾きそろそろ野営の準備に入らねばならない時間に差し掛かっていた。
未だ野生の動物以外で生命反応はない。
ウィル達を襲った魔物との遭遇も警戒していたのだが、それ以外の魔物すら感知されなかった。
位置的には八合目と九合目の間と言った所。
山は越えていないとは言え、普通なら弱い魔物の一匹や二匹出てもおかしくない筈なんだけどなぁ?
そんな環境の中、俺達は安堵どころか逆に不気味さを感じていた。
暫くすると、再び偵察部隊が異常のあった場所を探し当てた。
東に300m程いった所に大規模な破壊の後があったようだ。俺は全員を促してその場所に急行した。
そこは大きな川だった。上流に小さい滝が見え、水量が多く流れもそれなりに激しい。
本来は真っ直ぐ麓に向かって流れていたのであろうが、現在その川は途中で大きく抉れており、小さな支流が出来ていた。
まるで、横合いからレーザーか何かに抉り飛ばされた様だ。
その様な印象を持ったのは抉れた部分が直線的であったとのと、周囲の木々や地面が焦げていたからである。
更に、何か大きな衝撃を受けた様に何本もの木が半ばからへし折られ、何10mも遠くに横倒しになっていた。
川辺のぬかるんだ場所には、30cm以上ある大きな足跡も残されている。
ハジメ「ここで本格的な戦闘があった様だね……この足跡、大型で二足歩行する魔物……
確か、山二つ向こうにはブルタールって魔物がいたね。でもこの抉れた地面は……。」
因みにブルタールとは、RPGで言うところのオークやオーガの事だ。
大した知能は持っていないが、群れで行動する事と固有魔術"金剛"の劣化版"剛壁"の固有魔術を持っている為、中々の強敵と認識されている。
普段は二つ目の山脈の向こう側におり、それより町側には来ない筈の魔物だ。
それに、川に支流を作る様な攻撃手段は持っていない筈なのだ。
俺はしゃがみ込みブルタールのものと思しき足跡を見て少し考えた後、上流と下流のどちらに向かうか逡巡した。
ここまで上流に向かってウィル達は追い立てられる様に逃げてきた様だが、これだけの戦闘をした後に更に上流へと逃げたとは考えにくい。
体力的にも、精神的にも町から遠ざかるという思考が出来るか疑問である。
なので、念の為偵察部隊を上流に向かわせながら下流へ向かう事にした。
ブルタールの足跡が川縁にあるという事は、川の中にウィル達が逃げ込んだ可能性が高い。
ならきっと、体力的に厳しい状況にあった彼等は流された可能性が高いと考えたのだ。
俺の推測に皆も賛同し、今度は下流へ向かって川辺を下っていった。
すると今度は、先程のものとは比べ物にならない位立派な滝に出くわした。
俺達は、軽快に滝横の崖をひょいひょいと降りていき滝壺付近に着地する。
滝の傍特有の清涼な風が一日中行っていた探索に疲れた心身を優しく癒してくれる。
すると、そこで俺の"気配感知"に反応が出た。
ハジメ「!これ、川の中か?」
ユエ「……ハジメ?」
ハジメ「さっき、滝壺の奥に反応があった。多分、生存者だよ。」
シア「本当ですか!」
シアの驚きを含んだ確認の言葉に、俺は捜索隊をしまいつつ頷いた。
人数を問うユエに「一人だよ。」と答える。
愛ちゃん先生達も一様に驚いている様だ。それも当然だろう。
生存の可能性はゼロではないとは言え、実際には期待などしていなかった。
ウィル達が消息を絶ってから5日は経っているのである。もし生きているのが彼等の内の一人なら奇跡だ。
ハジメ「それじゃミレディ、お願い。」
ミレディ「りょーかい!まっかせて―!」ザァァァッ!
滝壺を見ながら、ミレディに重力魔法をお願いした。
快く返事をしたミレディが右手をふるうと、滝と滝壺の水が紅海におけるモーセの伝説の様に真っ二つに割れ、水滴一つ飛び散らず綺麗に割れ始めた。
ミレディ十八番の重力魔法の腕前だ。まぁ、本当はもっと凄いんだが。
詠唱をせず陣も無しに、見たこともない魔法を応用して行使した事に愛ちゃん先生達は、もう何度目かわからない驚愕に口をポカンと開けていた。
なんか、嘗てのヘブライ人達みたいな顔だなぁ……。
そんな彼等を促し、滝壺から奥へ続く洞窟らしき場所へ踏み込んだ。
洞窟は入って直ぐに上方へ曲がっており、そこを抜けるとそれなりの広さがある空洞が出来ていた。
天井からは水と光が降り注いでおり、落ちた水は下方の水溜りに流れ込んでいる。
溢れない事から、きっと奥へと続いているのだろう。
その空間の一番奥に、横たわっている男を発見した。
傍に寄って確認すると、二十歳位の青年とわかった。
端正で育ちが良さそうな顔立ちだが、今は蒼褪めて死人の様な顔色をしている。
だが大きな怪我は無く、鞄の中には未だ少量の食料も残っているので、単純に眠っているだけの様だ。
顔色が悪いのは、彼がここに一人でいる事と関係があるみたい。
気遣わし気に愛ちゃん先生が容態を見ているが、早く依頼達成をしたいので、青年の正体を確認する為上体を起こし、頬を軽くペチペチ叩く。
???「んっ、んんぅ……。」
呻きながら目を覚まし、右へ左へと視線を彷徨わせる青年。
愛ちゃん先生達がホッと安堵の溜め息を漏らす。
俺はそんな彼等をスルーして、未だ夢現の青年に近づくと端的に名前を確認する。
ハジメ「君がウィル・クデタ?クデタ伯爵家三男の。」
???「いっっ、えっ、君達は一体、どうしてここに……。」
状況を把握出来ていない様で目を白黒させる青年に、もう一度質問した。
ハジメ「き・み・が・ウィル・クデタ?」
???「えっと、うわっ、はい!そうです!私がウィル・クデタです!はい!」
一瞬青年が答えに詰ったので、つい眼をギラリとさせてしまったのか、それに慌てた青年が自らの名を名乗った。
どうやら本当に本人の様だ。奇跡的に生きていたらしい。
ハジメ「そう。俺はハジメ、南雲ハジメだよ。
フューレンのギルド支部長イルワさんからの依頼で捜索に来たんだ。どうやら間に合ったようだね。」
ウィル「イルワさんが!?そうですか、あの人が……また借りができてしまった様だ。
……あの、貴方も有難う御座います。イルワさんから依頼を受けるなんて余程の凄腕なのですね。」
尊敬を含んだ眼差しと共に礼を言うウィル。もしかすると、案外大物なのかもしれない。
何でこういう人ばかりじゃないんだろうなぁ……。そんなことを残念に思う俺であった。
それから各人の自己紹介と、何があったのかをウィルから聞いた。
要約するとこうだ。
ウィル達は5日前俺達と同じ山道に入り、5合目の少し上辺りで突然10体のブルタールと遭遇したらしい。
流石にその数のブルタールと遭遇戦は勘弁だとウィル達は撤退に移ったらしいのだが、襲い来るブルタールを捌いている内にどんどん数が増えていき、気がつけば6合目の例の川にまで追い立てられていた。
そこでブルタールの群れに囲まれ、包囲網を脱出する為に盾役と軽戦士の二人が犠牲になったのだという。それから追い立てられながら大きな川に出たところで、前方に絶望が現れた。
漆黒の竜だったらしい。
その黒竜はウィル達が川沿いに出てくるや否や特大のブレスを吐き、その攻撃でウィルは吹き飛ばされ川に転落。
流されながら見た限りでは、そのブレスで一人が跡形もなく消え去り、残り二人も後門のブルタール、前門の竜に挟撃されていたという。
ウィルは、流されるまま滝壺に落ち、偶然見つけた洞窟に進み空洞に身を隠していたらしい。
ウィルは、話している内に、感情が高ぶった様で啜り泣きを始めた。
無理を言って同行したのに、冒険者のノウハウを嫌な顔一つせず教えてくれた面倒見のいい先輩冒険者達、そんな彼等の安否を確認する事もせず、恐怖に震えてただ助けが来るのを待つ事しか出来なかった情けない自分、救助が来た事で仲間が死んだのに安堵している最低な自分、様々な思いが駆け巡り涙となって溢れ出していた。
ウィル「わ、わだじはさいでいだ。
うぅ、みんなじんでしまったのに、何のやぐにもただない、ひっく、わたじだけ生き残っで……
それを、ぐす……よろごんでる……わたじはっ!」
洞窟の中にウィルの慟哭が木霊する。誰も何も言えなかった。
顔をぐしゃぐしゃにして、自分を責めるウィルに、どう声をかければいいのか見当がつかなかった。
クラスメイト達や騎士さん達は悲痛そうな表情でウィルを見つめ、愛ちゃん先生はウィルの背中を優しく摩る。
ユエは何時もの無表情、シアとミレディは困った様な表情だ。
尤も、俺はその発言に不満マシマシなんだが。
俺はツカツカとウィルに歩み寄ると、その胸倉を掴み上げ、彼に対し怒鳴った。
ハジメ「ふざけたこと抜かしてんじゃねぇぞ!」
ウィル「!」
ハジメ「生き残ったならその喜びをかみしめて、自分の盾になってくれた奴の分まで生きる。
それが残された奴のやるべきことだ。そんなこともしないで死のうとするなんて、弱い奴のやることだ!」
ウィル「ッ……!」
少し収まってきたのか、手を放してウィルを下ろした。
ハジメ「お前には帰るべき場所がある、帰りを待つ家族がいる、そして何より生き延びる理由があるだろ。
男なら強く生きて見せろ。お前を守った冒険者達はまだ死んじゃいない。
お前が生き続ける限り、覚えていて語り継いでいる限り、そいつらは死なねぇよ。
それが今、お前のやるべきことだ。」
ウィル「……生き、続ける。」
涙を流しながらも、俺の言葉を呆然と繰り返すウィル。
俺は「ちょっと外見てくる。」と言って、滝の外に一人で出た。
後から見た自分の行動だが……ホント何やってんの俺!?
なんか、昔の恵理に似たような部分が垣間見えたからつい、説教臭くなってしまった……。
それに言ったことがほとんど海賊漫画のオマージュだし!俺、もうダメかもしれねぇ……。
なんてことを思いながら頭を抱えていると、ユエ達がこっちに来ていた。
ユエ「……大丈夫、ハジメは間違ってない。」
ハジメ「そうじゃあない。俺にも帰りを待つ両親がいるのに、人のこと言えないなぁ……ってね。」
シア「えぇ~と……それって同族嫌悪って奴ですか?」
ハジメ「ちょっと違うかな?俺の方がタチ悪いし。」
ミレディ「もう!ハジメンは自分を卑下しすぎ!もっと胸張ってもいいんだよ?」
ハジメ「……それが出来たら苦労しない。」
何というか、色々と調子が狂う出来事だった。さて、後はウィルをフューレンへ送って、と!?
ふと、上にある気配を感じ取った俺達は即座に戦闘態勢に入った。
「グゥルルルル……。」
低い唸り声を上げ、漆黒の鱗で全身を覆い、翼を羽搏かせながら空中より金の眼で睥睨する……
それはまさしく"竜"だった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
大人数での長距離移動と言えば、やっぱりデンライナーが一番だと思い、登場させました。
人海戦術でも、歴代ライダーの使用していたサポートモンスター達を使用しました。
因みに、VRゴーグルの耳のあたりには、情報を瞬時に解析し、即座にまとめる機能が搭載されています。
そして次回はティオ戦と山脈の異変について。
真に戦うべきものとは一体!?
宜しければ、高評価・コメント宜しくお願い致します。
追記:リースティアさん、誤字報告ありがとうございました!
次回予告
オーマジオウ「私こそが、最高最善の魔王オーマジオウである。
どうやらハジメ達が出会った竜は、かつて滅ぼされた竜人族だったらしい。
その上、山脈の向こうからは魔物の大群が迫っているようだ。
全く、物騒な物よな。」
ハジメ「そんなことより!
「ハジメ、ドラゴンを拾い、現状を知る。」ってことでどう?」
フロッグポッド「ケッケーロー♪」
もし今作品のハジメさんが、少しの間だけ別世界に飛ばされてしまったとしたら、どの世界に行くと思いますか?
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FGO
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ONEPIECE
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アカメが斬る!
-
進撃の巨人
-
アズールレーン
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鬼滅の刃
-
コードギアス
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このすば
-
IS
-
呪術廻戦
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ジョジョの奇妙な冒険
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エヴァンゲリオン
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Blazblue
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銀魂
-
オーバーロード
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ドラゴンボール
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ハイスクールD×D
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ヒーローアカデミア
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他の原作ライダーの世界
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並行世界(原作ありふれ)