ありふれない錬成師は最高最善の魔王の力で世界最強を超越する   作:天元突破クローズエボルハザード

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お待たせいたしました。
今回は香織達サイドとハジメさんサイドのお話です。

香織達は順調に迷宮を攻略中。
しかし、何も問題が起こらない訳でもなく……!?
一方のハジメさんは、ウルの町を守るために、決戦の準備を開始する!
果たして、ハジメさんの秘策とは!?

怒涛の第三章第7話、それではどうぞ!


37.爆誕、湖畔の魔王!ウルの町防衛線!

〈香織達サイド〉

 

香織「ハジメ君、見つからないね……。」

雫「無理もないわ。大迷宮って呼ばれているくらいだし、別のルートに入っちゃったのかもね。」

恵理「もしかしたらもう外にいるかも。兄さん、案外サバイバル力高いし。」

浩介「……俺を野性の勘で見つけようとしたときには、正直ビビったなぁ。」

緑光石の明かりがほんのりと道を照らす薄暗い坑道の様な場所──

【オルクス大迷宮】の一角に、そんな会話が響いていた。

 

そんな会話をしている4人

──勇者パーティの雫、香織、鈴、そして斥候役の浩介は、歩幅を皆に合わせながらも呑気に考えていた。

何せ心配している相手は、神すらなぎ倒す最強王者なのだ。そう簡単に死ぬことなんて考えられない。

光輝「何だか香織達、日に日に強くなってきてないか?」

龍太郎「あぁ、もう今すぐ先に進みたい感が出てきているしな。」

鈴「鈴は、そんなカオリン達に捜索されている南雲君が心配だよ……。」

重吾「何だか、浩介がいる理由に納得してきたような感じがする……。」

そんな会話が他の面子から聞こえてくることも頭にはなかった。

 

この70台も後半の階層──

第78階層を探索する光輝達の傍に【ハイリヒ王国】の騎士団長、皆の頼れる兄貴分メルド・ロギンスの姿は無い。

メルド率いる王国騎士の最精鋭達は、70階層で待機中だ。

存在しないと思われていた大迷宮内のショートカットである転移陣が70階層と30階層で発見され、メルド達は70階層側の転移陣の警護に当たっているのである。

彼等は確かに王国の最精鋭ではあるし、光輝達と大迷宮の未踏破区域を進む中でその実力を更に伸ばしていったのだが、流石に70階層の後半ともなれば付いていけなくなった為、退路の確保に就いているのである。

 

遂に騎士達の庇護を離れ自分達だけで大迷宮に挑む事になった光輝達に、メルドはそれはもう「お前は母親か。」というツッコミが入る程大迷宮でのノウハウを繰り返し言い聞かせた。

最終的には「ハンカチは持ったか?拾い食いはするなよ?変なモン食べたらすぐにペッしろよ?」と、大迷宮とは無関係な注意をし始め、更には「そんな装備で大丈夫か?」などと言い出す始末。

聖剣を始め、最高位のアーティファクトを指して"そんな装備"呼ばわりするメルドの心配は止まる事を知らなかった。

「王国から譲り受けた至宝でしょうが!?」と光輝達がツッコミを入れたのは言うまでもない。

 

そんな訳で、香織達を含む光輝達は騎士団なしで迷宮攻略を進めていた。

尤も、香織達なら既に奈落にも踏み込めるレベルには達していた。がそれが出来ない理由が二つある。

一つは、ついてくる勇者達のレベルの低さ。正直言って彼らは弱すぎる。

修業の鬼であるミライとヒカリの猛特訓を受けたおかげで、香織達4人は十分なレベルに達している。

しかし、それを受けていない者達、その中でも一番の光輝でさえ、彼らの実力にはまだまだ及ばない。

そんな状態で行っても被害が増えるだけである。

なのでここは、彼らが成長するのを待つべきだということに決まった。

そしてもう一つの理由は……。

 

浩介「フッ、我らが王は未だ無敗、たかが魔物風情に後れを取ることなど……ごめん、また出て来たわ。」

雫「……香織、貴方の魔法で何とかならない?」

香織「多分……無理だと思う。状態異常に含まれない類みたいだし。」

恵理(兄さん、早く帰ってきて。じゃないと浩介が死んじゃうから。)

これである。

 

そう、浩介の中にいる(?)深淵卿(アビスゲート)が技能の発動あるなしに関わらず出てくるのである。

そしていつもの如く、ハウリアが興奮しそうな口調で話し出すのだ。

しかも戦闘時にも勝手に出てきては、たった一人で無双してしまうものだから、色々マズいのだ。

そのせいで浩介は常時情緒不安定、それに比例して存在感が増し、浩介は毎晩こっそり泣いた。

まぁ、おかげで浩介の周りに女性陣がいるのは、「情緒が不安定すぎるから。」という理由で収まったのだ。

正直、対処法が不明なので解決策も見当たらない。なので、ハジメに何とかしてもらう形で落ち着いた。

 

と、そんな浩介に憐れむような視線が増える中、先頭を行く光輝が不意に立ち止まった。

光輝「皆、警戒してくれ。この先に何かいる。"気配感知"に掛かった、反応は一つだ。」

浩介「先行して確認してこようか?」

龍太郎「魔物が一体だけだろう?遠藤が確認するまでもねぇ、速攻で袋叩きにしてやりゃいいじゃねぇか。」

 

通常、魔物に見つかるより先にその存在を感知した場合は、浩介が先行して隠密技能を駆使しながら敵戦力の程度を測る。

なので浩介は一歩前に出ながら提案したのだが、それを龍太郎が拳を打ち鳴らしながら否定した。

確かに、これまでも魔物の数が少ない場合は浩介が確認するまでもなく戦闘に入った事は何度もある。

なので光輝は、龍太郎の意見を採用してそのまま全員で進む事にした。

やがて、薄暗い通路の先に見えてきたのは……

 

光輝「え……人?」

光輝の愕然とした呟きに、他のメンバーも目を丸くして前方を見やる。

その視線の先には、確かに人らしきものがいた。

尤も、壁に体の半分以上を埋め込まれているという捕捉が付くが。

髪が長く項垂れている為、表情どころか生死の確認も出来ないが、華奢な体つきから女性の様に見えた。

光輝「た、大変だ!早く「待って。」雫!?」

もしや上層で魔物に攫われたか、或いはトラップに掛かった冒険者が捕らわれているのではと考えた光輝だったが、それを雫は制止した。

 

雫「いくらなんでも不自然すぎるのよ。こんな所で上層に餌を求める魔物はいなかったはずよ。

それに、トラップに引っかかったとしても、ここまでは簡単に来れるわけはないわ。

近道の転移陣にはメルドさん達がいるし、直接来たとしても、あのベヒモスを倒した後で夜通しここを進まなければならないわ。

そんなことをする人間、いると思う?」

ハジメ「へっくしょい!」

……奈落を制覇した魔王のくしゃみが響き渡ったそうな。

 

浩介「取り敢えず、罠があるか確認しておく。行くのはその後でもいいだろ。」

そう言って浩介は分身を出し、先行させる。すると……。

分身A「!?」

その瞬間、分身の足がズブリと地面に沈んだ。直ぐに分身は解除され、その床の様子がよく見えた。

いつの間にかそこは硬い地面ではなくぬかるんだ泥沼の様になっていた。

直後、その泥が一気にせり上がると、一瞬で人型に変形する。

泥で出来た人型の人形──クレイゴーレムだ。しかも、光輝達の周りにも大量に出現する。

 

そのクレイゴーレム達は、これまた一瞬で両腕を鋭い鎌に変形させると、光輝達に襲い掛かろうとした。

反撃しようとした光輝達だが、その時クレイゴーレムが変形した。

光輝「ッ!し、雫!?」

そう、ゴーレム達は顔を変形させ、相手をかく乱しようとしてきたのだ。

流石にこれはマズいと皆思っていた。――香織達以外は。

 

光輝「か、香織?雫?」

鈴「え、エリエリ?」

重吾「こ、浩介?」

そう、四人とも無表情で黙々とゴーレムを撃破して行っているのだ。

まるで親の敵にでもあったかのような表情で。

 

香織「ねぇ、どうしてハジメ君はいないの?ねぇ?」ドスッ!

雫「ちょっと?ハジメ君はそんなに不細工じゃないわよ?もう少し真面目にやったら?」ズバッ!

恵理「ふざけているの?トシ君の顔も全く似せていないし。舐めてんの?」ドカンッ!

浩介「その顔を、アイツ(深淵卿)の顔をやめろぉ!」バギィッ!

……若干一人情緒不安定ではあるが、次々にゴーレムは粉砕されていった。

しかし、次々とクレイゴーレムは湧いてくるばかりであった。

 

恵理「魔石パターンか。面倒だね。」

浩介「野郎、こうなったらぶっ飛ばしてやる!行くぞ、深淵卿(アビスゲート)lv2!」シュインッ!

香織「遠藤君……。」

雫「……光輝、私が本体を叩くわ。相手の注意を引いてくれる?」

光輝「!あぁ、分かった!」

浩介が負の黒歴史を生産するという代償を払ったおかげで、クレイゴーレムの包囲網からは何とか抜け出せそうだ。

そう考えた雫は、本体である人形を叩くため、光輝との連携で仕留めることにした。

 

浩介「見よ!我が秘儀、深淵魔境をご覧あれ!(アビスゲート・ガーデン・ショウタイム!)」ババッ!

瞬間、浩介の分身があっという間に増えていった。

某忍漫画の多重陰分身みたいな感じで、分身が次々と分身を発動させていった。

が、浩介の普段の衣装と相まって、黒いものが大量増殖しているかのような図が出来上がってしまい……。

 

雫「!?ご、ゴキブリ!?」

香織「雫ちゃん!?」

光輝「落ち着け、雫!あれは遠藤だ!」

雫「どっちも一緒よ!」

恵理「落ち着いて雫ちゃん!錯乱しているのは分かるけど違うからね!?」

雫「黒くて、いっぱい、嫌!」

鈴「シズシズが幼児退行した!?」

そう、アレに見えてしまうのだ。内心で浩介君は泣いてもいいと思う。

実を言うと他の女性陣や男子の何人かも引いていた。

 

分身した浩介達は他の分身達を足場にしながらも、部下クレイゴーレム達を撃破しては分身し、親玉への道を開いてはいたのだ。

それなのにこの言われ様なのだ。

実を言うとこれを使った後、浩介は一種の戦闘不能状態になってしまうのだ。

実力に関わらず、あんまりいい風に見られていないことに、密かに泣く浩介君であった。

そんな彼の心の中の涙が見えたのか、雫も錯乱状態から立ち直ったようだ。

 

光輝「行くぞ、雫!」

雫「えぇ!香織、サポートお願い!」

香織「分かった!エンチャント〈筋力強化〉〈敏捷強化〉〈剣戟強化〉!」

香織の付与魔法によって、より素早く動けるようになった二人は、早速反撃を開始した。

まず、光輝がボスゴーレムの方へ突撃し、泥の鎌を破壊しては受け流していった。

香織の強化も相まって、つばぜり合いは拮抗しているかのように見えていた。

 

しかし、光輝がその場を離れた瞬間、ボスの形が崩れた。その理由は足元の魔石にあった。

その魔石は真っ二つに割れていた。雫が後ろに回り込み、光輝が離れたと同時に魔石を切ったのだ。

ボスがやられた影響なのか、周囲のクレイゴーレム達も形を崩していく。

光輝「やったな雫!」

雫「えぇ。中々にッ!?」

咄嗟に殺気を感じた雫は、即座に光輝の方へ向かい、彼の襟首を引っ掴むと、その場を離脱した。

光輝「ぐえっ!?」

そんな声を上げる光輝だったが、その直後、先程まで彼らがいた場所に、毒々しい液体が滴る鋭い爪のついた足が突き刺さった。

 

光輝「!?」

慌てて上を警戒する一同。するとそこには、天井から糸を垂らし宙に浮かぶ大蜘蛛の姿があった。

恵理「"バインドチェーン"。」グサグサグサッ!

尤も、直ぐに恵理の放った魔法で動けなくなり、そのまま圧縮されていったが。

本来、捕縛系統の魔法には殺傷能力は無いのだが、恵理は力を籠めれば拷問にも使えるのではと考え、ヒカリに相談した結果、このような残酷な処刑法が生まれてしまったのだ。

 

恵理「?どうしたの?早く進もうよ。」

その処刑法を成した本人は、ドン引きされていることに気がついていないようだが。

浩介「……どうせ、俺なんて……。」

何所かの地獄ブラザーズが来そうなセリフを吐きながら、己の活躍について誰も言ってくれないことを嘆く浩介君であった。

その後の道中、やたらと吶喊しようとする脳筋、隙あらばセクハラ発言を量産するちっこい結界師、檜山パーティの自信過剰や楽観視、浩介のメンタル回復等々、色々あったものの一行は先を急ぐことにしたのだった。

 


 

俺はすっかり人が少なくなり、それでもいつも以上の活気がある様な気がする町を背後に即席の城壁の上にて、山脈の向こうからやってくる大軍を睨みつけていた。

正直、今の俺はとても気が立っている。

竜人族の過去、冒険者達の死、町の存亡、そして我が友トシの行方……今も気が気でならない。

傍にいるユエ達も俺を心配しているのか、傍に寄り添ってきた。

 

そこへ愛ちゃん先生と園部さん達、ティオ、ウィル、護衛騎士さん達がやって来た。

それに気がついた俺は、警戒を解いて向き直った。

愛子「南雲君、準備はどうですか?何か必要なものはありますか?」

ハジメ「問題無いよ、皆のおかげで予定よりも早く準備は済んだし。

先生は心配せずにドンと構えていればいいよ。」

愛子「そうですか……。」

?何で残念そうにしているんだ?まぁ、取り敢えず伝えておくべきことは伝えておくか。

 

ハジメ「愛ちゃん先生、今回の件にはトシも巻き込まれている可能性が高い。」

愛子「……え?ど、どういうことですか!?」

ハジメ「ティオ……俺が保護した女性の話では、北の山脈地帯で日本人と思われる特徴を持った黒ローブの人物が、魔法で群れの主に当たる魔物に洗脳を施し、大群を作っていたのを見たそうなんだ。

運悪く見つかり追っ手を掛けられたものの、彼女自身が手練れなのもあって逃げ切ることは出来たみたい。でも魔力切れを起こしちゃって、倒れていたところを俺が偶然見つけたんだって。」

愛子「そ、それじゃあ……!」

愛ちゃん先生は最悪の事態を予想しているらしい。だが、少し違うのだ。

 

ハジメ「ただ、こんな風にも言っていた。

まるで何かに抗うように、何回か命令の途中で苦しんでいたって。

多分だけど、今回の事件はトシを表の張本人に仕立て上げようとしている黒幕がいるみたい。

俺の予想では、魔人族辺りが怪しいと睨んでいるよ。」

愛子「!じゃあ清水君は操られているということですか!?」

ハジメ「確証はないよ。それを確かめるために、直接会って話を付けてくる。

だから信じてくれ、俺とアイツを。」

そう言って愛ちゃん先生の方へ真剣に向き合った。

 

愛子「……当然です!生徒のことを先生は信じていますから!だから南雲君、清水君をお願いします!」

ハジメ「あぁ、ぶん殴ってでも連れて帰ってくるさ!アイツは俺の親友だからね!」

そう言うと、俺は山脈の方へ向き直った。どうやら、大群がもうそこまで来ているらしい。

戦闘準備のために俺はスッと立ち上がり、状況確認を開始した。

 

それは、大地を埋め尽くす魔物の群れだった。

ブルタールの様な人型の魔物の他に、体長3、4mはありそうな黒い狼型の魔物、足が六本生えている蜥蜴型の魔物、背中に剣山を生やしたパイソン型の魔物、四本の鎌をもった蟷螂型の魔物、体の至る所から無数の触手を生やした巨大な蜘蛛型の魔物、二本角を生やした真っ白な大蛇──

大地を鳴動し、土埃が雪崩の如く巻き上がり、蠢く群れの光景は宛ら黒き津波の様。

猛烈な勢いで進軍する悪鬼羅刹の群れは、その土埃の奥から赤黒い殺意に塗れた眼光を覗かせる。

その数は、山で確認した時よりも更に増えている様だ。

目算で5万、或いは6万に届こうかという大群である。

更に、大群の上空には飛行型の魔物もいる。敢えて例えるならプテラノドンだろうか。

飛竜型の魔物に比べれば、その体躯は小さく見劣りするものの、体から立ち昇る赤黒い瘴気と尋常でない雰囲気が、嘗て見た【ライセン大迷宮】の飛竜ハイベリアよりは強力だろうと伺わせる。

そして。そんな何十体というプテラノドン擬きの中に一際大きな個体がいる。

その個体の上には薄らと人影の様なものも見えた。恐らく、黒ローブの男――トシだろうな。

 

ユエ「……ハジメ。」

シア「ハジメさん。」

ミレディ「……ハジメン。」

ティオ「……ハジメよ。」

どうやら皆も迎撃態勢はバッチリみたいだ。俺は見たものを愛ちゃん先生達に伝える。

ハジメ「来たよ。予定よりかなり早いけど、到達まで30分位だ。数は6万弱。複数の魔物の混成だよ。」

魔物の数を聞き、更に増加していることに顔を青ざめさせる愛ちゃん先生達。

 

ハジメ「安心してよ。ここにいるのは最高最善の魔王なんだよ?

たかが魔物の軍勢程度片手で吹っ飛ばして来るよ。」

そう言って皆を落ち着かせようとした。

すると、愛ちゃん先生が少し眩しいものを見る様に目を細めていた。

 

愛子「分かりました……君をここに立たせた先生が言う事ではないかもしれませんが……

どうか無事で……。」

ハジメ「おう、ついでにトシも連れて帰ってくるからさ。説教の準備も忘れずにね?」

愛子「!はい!」

愛ちゃん先生はそう言うと、ウィルと騎士さん達を連れて、町中に知らせを運ぶべく駆け戻っていった。

 

園部さん達も、愛ちゃん先生に続いて踵を返し駆け戻ろうとする。

が、数歩進んだところで園部さんが立ち止まった。

何かに迷う様に難しい表情をして俯き気味に突っ立っている。

園部さんが一緒に来ていない事に気が付いた宮崎さんが、玉井君達にも声を掛けて立ち止まった。

そして訝しそうな表情をしながら、彼女の名前を呼ぶ。

しかし当の本人は彼等達の呼び掛けに応じず、何かを振り切る様にグッと表情に力を入れると顔を上げ、踵を返し駆けだした……何故か俺の方に。

 

優花「あ、あのさ!南雲!」

ハジメ「うん?」

少し言葉に詰まりながら、それでも大きな声で俺に呼びかける園部さん。

気になったので、そちらを振り返る俺。ユエ達も、何事かと振り返っている。

 

首をかしげて用件を問う俺の視線に、園部さんは少したじろぐ様な様子を見せたていたが……

直後には、何故かキッと眦を吊り上げて俺を睨む様な眼差しで、

優花「あ、ありがとね!あの時助けてくれて!」

と言ってきた。

なんだか表情といい口調といい声量といい、傍から見ると喧嘩を売っている様にも見えるけど……

まぁ、なんとなく気持ちは伝わったよ。

 

優花「あの、えっと、その……それで……」

再び言葉に詰まる彼女だったが、一つ大きく深呼吸すると、

優花「無駄にしないから!あの時助けられた命、絶対無駄にしないから!」

そう叫んだ。

このままではいけないと、心折れたままではいけないと、そう決心して再び立ち上がったあの日の想い。

自分達が無能だと思っていた錬成師が、自分達の脅威を必死に食い止めていたから、今自分達は生きている。

 

救ってくれた事。クラスメイトを逃がす為に、隠していた力を振るってくれた事。

決して無駄にはしない。たとえ、俺と比べるべくもない程弱くても。

そうだとしても、立ち止まる事だけはしない。

見れば、少し離れた場所にいて彼女の言葉を聞いていた玉井君達も、俺を真っ直ぐに見ながら深く頷いている。

気持ちは同じ、か……。でもね、少し違うかな?

 

ハジメ「まぁ、その礼は半分だけ受け取っておくよ。もう半分はそうだね……元の世界に帰った時に、ね?」

そう訂正しておいた。実際、俺がいなくなった後も、彼らは死に物狂いで頑張って生き延びてきたのだ。

俺だけが頑張ったんじゃあない。皆も頑張ったんだ。それぐらいは誇ったっていい。

ハジメ「あ、後園部さん。」

優花「!?」

俺が声を掛けると、何故か園部さんは、その場でリアルに小さくピョンッと跳ねた。驚かせちゃったかな?

玉井君達もか。まぁいい、このまま続けるか。

 

ハジメ「君、根性あるよね。ここまで皆を奮い立たせてくれたし。」

同じ世界の出身とはいえ、だ。

戦いとは縁の無い世界に生まれ、トラウムソルジャーに文字通り真っ二つにされかけるという想像もしたくない殺され方一歩手前を経験しておきながら、彼女はその後他のクラスメイト達を助ける為に直ぐ駆け出していた。

今尚トラウマに囚われている程の恐怖を抱えながら、それでも駆け出したのだ。

 

優花「え、えぇっと……?」

意図が分からないのか、俺の言葉に園部さんは戸惑った様に視線を彷徨わせている。

なので、はっきり言っておいた。

ハジメ「君は死なないよ。なんか、そんな気がする。」

優花「……。」

 

園部さんは言葉も無く、まじまじと俺を見つめる。我ながら、傍から見ると随分軽く聞こえる言葉だった。

が、彼女にとってはその言葉が欲しかったとでもいうような表情をしていた。

まるでこびり付いて取れなかったヘドロを吹き飛ばされたかの様な、そんな晴れやかな表情だった。

皆にとっても俺は『死』を認識させた核だ。

だからこそ、その俺から「君は死なない。」と言われたら、心を揺さぶられない訳が無かったようだ。

 

優花「……ありがと。」

風に攫われる程小さな、囁きの様な礼の言葉。

優花は苦笑いにも似た笑みを俺に向けると、スッと踵を返して駆け出した。

迎える玉井君達は何とも言えない表情をしているが、そんな彼等に「行くわよ!」と元気に声を掛ければ

──根性のある愛ちゃん護衛隊の副リーダーの号令だ。玉井君達は「応!」と強く返し、一緒に駆け出した。

その応えは、今までより少し力強さを増している様だった。

 

そうこうしていると、遂に肉眼でも魔物の大群を捉える事が出来る距離になってきた。

"壁際"に続々と弓や魔法陣を携えた者達が集まってくる。

大地が地響きを伝え始め、遠くに砂埃と魔物の咆哮が聞こえ始めると、そこかしこで神に祈りを捧げる者や、今にも死にそうな顔で生唾を飲み込む者が増え始めた。

さて、ようやくか。そう思った俺は上空に飛び上がり、あの言霊を発した。

 

ハジメ「"変身"。」

 

ゴォーン!!!

 

『祝福の刻!』

 

 

『最高!』(より良く!)ガチャッ!ガキンッ!

 

 

『最善!』(より強く!)ゴキッ!ゴキンッ!

 

 

『最大!』(より相応しく!)シュルルルル!シュパンッ!

 

 

『最強王!!!』(仮面ライダー!)パァァァ!ガチーン!

 

 

《vib:1》『≪オーマジオウ!!!≫』

 

その姿が露わになった時、周囲の者達は言葉を失った。戦ったことのあるティオでさえ、驚愕していた。

尤も、ユエ達は一度目にしていたので何ともないが。

民草は皆全ての感情を忘却の彼方に捨てたように、私から目を離さなかった。

本能に忠実な魔物共も、その威に恐れを成したかのように、その場に立ち尽くしていた。

さぁ、開戦の合図だ!

 

ハジメ「美しき【ウルの町】の諸君、御機嫌よう。

私はオーマジオウ、只今を以てこの町を統治する事になる者だ。」

その場で先生が「えっ!?」と驚いた顔をしていたようだが、説明は後にする。

ハジメ「本来であれば、この地を通り過ぎるつもりではあったが、お前達の信仰する"豊穣の女神"が、態々私に頭を下げて頼んできた故な。

その民を思う気持ちに応えることにした。」

 

その言葉を聞き、皆一斉に先生の方を向いた。またもやギョッとしてはいたが、それは後回しだ。

私が振り返ると、魔物どもはその覇気を感じ取ったのか、洗脳が解けた者達までいた。

だがもう遅すぎる。本来ならば我が友の場所までの道を開ければよいものを……。

一列に並ばれるとかえって鬱陶しいわ。なので、清掃を開始することにした。

 

ハジメ「よって先ずは今この町に迫る脅威を退け、私が皆の安心出来る強き王である事を証明しよう。」

そう告げた私は、全分身技能を発現させた。

あぁ、因みに数えるのが面倒だとは思うが一応比率を書き記しておいた。(メメタァ!)

 

『TRICK VENT』(5倍)[5人]

『STRANGE VENT』(5倍)[25人]

『GEMMNI』(2倍)[50人]

『ATTACK RIDE ILLUSION』(6倍)[300人]

『"ブレンチシェイド"』(50倍)[15,000人]

『"スーパーブランチシェード"』(100倍)[1,500,000人]

 

『"デュープ"』(5倍)[7,500,000人]

『"イリュージョン"』(6倍)[45,000,000人]

『"ジェミニ"』(2倍)[90,000,000人]

『"ミッドナイトシャドー"』(5倍)[450,000,000人]

『"ロビン眼魂"』(6倍)[2,700,000,000人]

『"闘魂ロビン魂"』(6倍)[16,200,000,000人]

 

『エナジーアイテム「複製」』(2倍)[32,400,000,000人]

『エナジーアイテム「ガタキリバ」』(50倍)[1,620,000,000,000人]

『エナジーアイテム「増殖」!』(50倍)[81,000,000,000,000人]

『エナジーアイテム「ジェミニ」』(2倍)[162,000,000,000,000人]

『エナジーアイテム「デュープ」』(5倍)[810,000,000,000,000人]

『エナジーアイテム「分身」』(10倍)[8,100,000,000,000,000人]

 

『"分身の術!"』(6倍)[48,600,000,000,000,000人]

『"子豚三兄弟!"』(3倍)[145,800,000,000,000,000人]

『"シノビ!"』(30倍)[4,374,000,000,000,000,000人]

『"ギファードレックス!"』(50倍)[218,700,000,000,000,000,000人]

 

総勢2垓1870京の私が、ここに君臨した。もはや空すらも既に覆いつくしているかのようだ。

現に大気圏外まではみ出した分身までいるのだから。神域とやらを目撃した分身もいるようだ。

とはいえこの程度の魔物の数にはいささか不相応か。仕方がないので少しだけ分身技能を解除した。

まぁ、それでも魔物どもの10倍の数にはなるが。

 

ハジメ「さぁ、蹂躙を開始しよう。」

そう言って私は一歩前進した。分身達も同様に前進した。

その圧倒的な数を前に魔物共は震え上がったまま動かず、民達は歓喜の声を上げた。

これが後の世で語られる「魔王の初陣」になることを、私は知る由もなかった。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

早くも深淵卿の弊害が出てしまった、我らが浩介君。
彼の明日は一体どこにあるのでしょうね?
そして仲間からも人外扱いされるハジメさん……まぁ、ドンマイ。
どうやら浩介の分身殺法は、明るい服じゃないと閉まらないみたいです。
世知辛いですねぇ……。

そしてハジメさんの全力の分身、これある意味とんでもない威力なんですよねぇ……。
正直、一人で最終決戦行けるんじゃないかっていうくらいの戦力ですし。
まぁ、流石にハジメさんも一人でぶっ飛ばしに行くのは寂しいので、断念しましたが。

さて、次回は無双開始です!因みに、第3章最終話です!
果たして、トシの行方は、そして、黒幕の末路は!?

宜しければ、高評価・コメント宜しくお願い致します。

追記:リースティアさん、毎度の誤字報告ありがとうございます!

次回予告

オーマジオウ
「遂に始まったウルの町の戦い。
果たしてハジメは、トシを、ウルの町を救い出すことが出来るのか。
次回「怒り爆発!?進撃!オーマジオウ」爆裂的に鎮火する故、楽しみにな。」

もし今作品のハジメさんが、少しの間だけ別世界に飛ばされてしまったとしたら、どの世界に行くと思いますか?

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