ありふれない錬成師は最高最善の魔王の力で世界最強を超越する   作:天元突破クローズエボルハザード

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ハジメ
「お待たせいたしました!さて、今回のオープニングゲストは、こちら!」
愛子
「えっと……どうも!畑山愛子です!」
ハジメ
「豊穣の女神、AIKOだァー!」
愛子
「ハジメ君!その名前で呼ばないで下さいって言ったじゃないですか!」
ハジメ
「ごめんて。さてそれじゃ、前回のあらすじ!
香織とイナバが加わったから、グリューエンに出発だ!」
愛子
「ハジメ君、天之河君や皇帝陛下にも暴力奮ってましたよね?」
ハジメ
「人聞きの悪いこと言わないでよ。俺はただ、懲らしめてやっただけだって。」
愛子
「限度があります!せめて今度からは、自重してください!」
ハジメ
「へいへい。それじゃ、第4章第8話、」
ハジメ・愛子
「「それでは、どうぞ!」」


46.蠢く悪意

檜山「くそっ!くそっ!何なんだよ!ふざけやがって!」

時間は深夜。

【宿場町ホルアド】の町外れにある公園、その一面に植えられている無数の木々の一本に拳を叩きつけながら、押し殺した声で悪態を吐く男が一人。

軽戦士(笑)、檜山大介である。

檜山の瞳は、憎しみと動揺と焦燥で激しく揺れていた。

それはもう、狂気的と言っても過言ではない醜く濁った瞳だった。

 

???「おやおや、思っていた以上に荒れているね……。まぁ、無理もないか。

愛しい愛しい香織姫が、目の前で他の男に掻っ攫われたのだからねぇ?」

檜山「!?だ、誰だ!?」

檜山が聞き覚えのない声の方へ振り向くと、そこにはローブを被った謎の人物がいた。

 

???「なに、私は怪しい者じゃあない。君の協力者だよ。」

檜山「な、何を言って……!」

???「南雲ハジメが、あの男が憎いのだろう?」

檜山「!……」

檜山のその表情を見たのか、ローブの男はほくそ笑み、さらに続けた。

 

???「恐らくまた会った時には、あの男は更に強くなり、より彼女も彼に惚れこむことになるだろう。

それに対し、今や君の立場は、崖っぷちに等しいままだ。君はそれでいいのかい?」

檜山「ッ!それは……。」

するとローブの男は、懐からある物を取り出した。

それは、ハジメの使うライドウォッチに似ているが、造型が悍ましく禍々しいオーラを纏っていた。

 

???「もし君が力を望むのなら、私がその力を授けよう。

その代わり、君にはあの男を苦しめてほしい。あぁ、肉体面でなくとも構わない。

精神面で自分から死を望むように仕向けてもいい。どうだい?

この取引が成立すれば、君は想い人を手に入れ、私は目的を達成する。

お互いにメリットがある話だとは、思わないかね?」

男の言葉に檜山は、汚泥の様に濁った暗い瞳を爛々と輝かせていた。

 

檜山「……本当に、俺の望みが叶うのか?」

???「勿論だとも。あの男さえ排除してくれれば、後は好きにしてくれてもいい。

それこそ、魔王にだってなることも可能だよ。さぁ、どうする?」

男の言葉に対し、檜山は冷酷に返答した。

 

檜山「……わかった。その力を俺に寄越せ。」

???「いいとも。あぁ、それと。

この力を使う時はなるべく、人にバレないようにね?

何せ、相手は時の王だ。念には念を入れておかなくては。」

檜山「……分かっている。」

もう後戻りはできない。檜山は男からある物を受け取った。

そこに書かれていたのは、歪に書かれた文字と数字だった。

 

《Grand Zi-o》《2019》

 

???「ククク……後はお膳立てをするだけだね。

事を起こすタイミングは、こちらから知らせるよ。

連絡が取りたくなったら、そのウォッチに話しかけてくれ。」

檜山「……あぁ。」

そう答える檜山を見るローブの男の目には、どす黒い悪意が宿っていた。

 


 

一方、町外れの広場で怪しげな会談が行われていた頃、別の場所でも二人の少年少女が月明かりに照らされて佇んでいた。

一方の密談場所とは異なり、その場所は、小さなアーチを描く橋の上だった。

町の裏路地や商店の合間を縫うように設けられた水路に掛けられたものだ。

水路は料理店や宿泊施設が多いことから必要に迫られて多く作られており、そのゆるりと流れる水面には、下弦の月が写り込んでいて、反射した月明かりが橋の上から水面を覗き込む少年の整った顔を照らしていた。

 

もっとも、正確には覗き込んでいるのではなく〝項垂れている〟の方が相応しい表現であり、また、整った顔は暗く沈んでいて普段の輝きからは程遠い有様だった。

そんな、まるで会社が倒産した挙句、多額の借金を背負ってしまった零細企業の元社長が今後の人生に絶望しつつ橋の上で遠くを見ながら黄昏ている姿にそっくりな様相の少年は、我らの勇者天之河光輝である。

 

光輝「……何も言わないのか?」

光輝が、水面の月から目を逸らさずに声をかけた。

その相手は、十年来の幼馴染、行ってしまった女の子の片割れ、八重樫雫だ。

雫は、光輝とは違って橋の欄干に背を預けながら、少し仰け反るように天を仰ぎ空に浮かぶ月を眺めていた。

欄干の向こう側に、トレードマークのポニーテールが風に遊ばれるようにゆらりゆらり揺れている。

視線を合わせない幼馴染の言葉に、雫もやはり視線を合わせず、月を見つめたまま静かに返した。

 

雫「何か言って欲しいの?」

光輝「……。」

何も答えない、いや、答えられない光輝。水面に映る月を眺めていても、頭に浮かぶのは香織が想いを告げたときの光景。

不安と歓喜を心の内に、祈りを捧げるように告げられた想いは、その表情と相まって嘘偽りではないのだと、病気レベルで鈍感な光輝を以てして確信させるものだった。

 

光輝は、香織とは10年来の付き合いがあるが、未だかつて、あれほど可憐で力強く、それでいて見ているこちらが切なくなる、そんな香織の表情は見たことがなかった。まさに、青天の霹靂とはこのことだった。

その表情を思い出す度に、光輝の胸中に言い知れぬ感情が湧き上がってくる。

それは暗く重い、酷くドロドロした感情だ。

無条件に、何の根拠もなく、されど当たり前のように信じていたこと。

香織という幼馴染は、いつだって自分の傍にいて、それはこれからも変わらないという想い。

もっと言えば、香織は自分のものだったのにという想い。つまりは、嫉妬だ。

 

その嫉妬が、恋情から来ているのか、それともただの独占欲から来ているのか、光輝自身にもよく分かっていなかったが、とにかく〝奪われた〟という思いが激しく胸中に渦巻いているのだった。

しかし、〝奪った〟張本人であるハジメ(本人は断固否定するだろうが)と共に行くと決めたのは香織自身であり、また、ハジメという存在そのものと、有り得ないと思っていた現実を否定したくて挑んだ決闘では完膚なきまでに叩きのめされ、自分の惨めさとか、ハジメへの憤りとか、香織の気持ちへの疑いとか、色々な思いが混じり合い、光輝の頭の中はぶちまけたゴミ箱の中身のようにぐちゃぐちゃだった。

 

だから、いつの間にか隣にいて何も言わずに佇んでいるもう一人の幼馴染の女の子に水を向けてみたのだが……返答は、実に素っ気無いものだった。

続く言葉が見つからず、黙り込む光輝。

雫は、そんな光輝をチラリと横目に見ると、眉を八の字に曲げて「仕方ない。」といった雰囲気を醸し出しながら口を開いた。

 

雫「……今、光輝が感じているそれは筋違いというものよ。」

光輝「……筋違い?」

雫から、思いがけず返ってきた言葉に、オウム返しをする光輝。

雫は、月から視線を転じて光輝を見やりながら言葉を続けた。

 

雫「そう。香織はね、最初からあんたのものじゃないのよ?」

光輝「……それは……じゃあ、南雲のものだったとでも言うのか?」

ズバリ、内心を言い当てられ瞳を揺らす光輝は、苦し紛れに、ほとんど悪態ともいうべき反論をした。それに対して雫は、強烈なデコピンでもって応えた。

「いづッ!?」と思わず額を抑える光輝を尻目に、雫は冷ややかな声音で叱責する。

 

雫「お馬鹿。香織は香織自身のものに決まっているでしょ。

何を選ぼうと、何処へ行こうと、それを決めるのは香織自身よ。

当然、誰のものになりたいか……それを決めるのもね。」

光輝「……いつからだ?雫は知っていたんだろ?」

〝何を〟とは問わない。雫は、頷く。

 

雫「小学校の時からね……。

まぁ、ハジメ君はその時は筋トレのことしか頭になかったみたいだけど……。」

光輝「……何だよ、それ。どういうことだ?」

雫「それは、いつか香織自身から聞いて。

私が、勝手に話していいことではないし。」

光輝「じゃあ、本当に、教室で香織が何度も南雲に話しかけていたのは……

その……好きだったから……なのか?」

雫「ええ、そうよ。」

光輝「……。」

 

聞きたくない事実を、至極あっさり告げる雫に、光輝は、恨めしそうな視線を向けた。

もっとも、雫はどこ吹く風だったが。

その態度にも腹が立ってきたのか、光輝は駄々をこねる子供のように胸中の思いを吐き出した。

 

光輝「……何故、南雲なんだ。

日本にいたときのアイツは、オタクだし、やる気はないし、将来は王様になるなんて言ってたおかしな奴じゃないか……。

……俺なら、香織をおざなりに扱ったりはしない。

いつも大切にしていたし、香織のためを思って出来るだけのことをして来たのに……

それに、南雲は、あんな風に女の子達を侍らせて、物扱いまでしてる最低な奴なんだぞ?

それだけじゃない、アイツは人殺しだ!無抵抗の女性を躊躇いなく殺したんだ。

どうかしてるよ!

そうだよ、あんな奴を香織が好きになるなんて、やっぱりおかしい。

何かされたに違いなッ『ズビシッ!』グハッ!?」

 

話しているうちにヒートアップして、ハジメの悪口どころか勝手な事実を捏造し始めた光輝に、再度、雫のデコピン(無拍子ver)が炸裂した。

何をするんだ!と睨む光輝をさらりとスルーして、雫は呆れた表情を見せる。

因みに、陰でこっそり聞いていた浩介は、「もし光輝にボロクソ言われたら?」と、ハジメに聞いたところ、「オカマの群れに放り込む。」と即答していたので、さっきのことについては言わないことにした。

 

雫「また、悪い癖が出てるわよ?

ご都合解釈は止めなさいと今までも注意してきたでしょうに。」

光輝「ご都合解釈って……そんなこと。」

雫「してるでしょ?光輝が、ハジメ君の何を知っているのよ?

日本での事も、こっちでの事も、何も知らないのに……

あの女の子達だって楽しそうな、いえ、むしろ幸せそうな表情だったわよ?

その事実を無視して勝手なこと言って……

今の光輝は、ハジメ君を香織にふさわしくない悪者に仕立てあげたいだけでしょうが。それを、ご都合解釈と言わずして何て言うのよ?」

 

光輝「だ、だけど……人殺しは事実だろ!」

雫「……あの時、私は、彼女を殺すつもりだったわ。

私だけじゃない、清水君も、恵理も、遠藤君も……そして香織も。

これから先も……同じ事があれば、私はきっと、殺意を以て刀を振るう。

生き残るために。

私自身と大切な人達のために。本当に出来るかは、その時になってみないと分からないけどね……

一応、殺人未遂なわけだけど……私のことも人殺しだと軽蔑する?」

 

光輝は、雫の告白に絶句する。

幼馴染が、面倒見がよく責任感と正義感も人一倍強い雫が、本気で殺意を抱いていたと聞いて、急に遠い存在に思えてしまった。

しかも、香織も殺意を抱いていたことにも、ショックを受けてしまっていた。

しかし、雫の苦笑いの中に、人を害することへの憂いと恐怖の影がチラついている気がして、光輝は頭を振った。

 

そんな光輝を見つつ、雫は、独白とも言える話を続けた。

雫「確かに、今朝の彼の変貌には驚いたけどね……

日本にいた時の彼の性格を考えると、別人と言っても過言じゃないもの……

まぁ、香織はそれでも彼を思っていたみたいだし、全てが変わったわけではないのでしょうけど……

忘れてはならないのは、彼が、私達を助けるために彼女と戦って、私達の代わりに殺したんだってことよ。」

 

光輝「……殺したことが正しいっていうのか。」

雫「正しくは……ないのでしょうね。人殺しは人殺しだもの……

正当化は出来ないし、してはならないのでしょう。」

光輝「だったら……。」

雫「それでも、私達にハジメ君を責める資格はないわ。

結果を委ねてしまったのは、他ならない私達なのだから……。」

 

要するに、文句があるなら、自分でどうにかすればよかったということだ。

望んだ結果を導き出すことが出来なかったのは、単純にそれだけの実力がなかったから。

他人に、全てを任せておいて、その結果にだけ文句を言うなどお門違いもいいところである。

 

言外に、そう言われたことに気がついた光輝は、ハジメが無双している間、何も出来ずに動けなかった自分を思い出し、反論出来ずにむっつりと黙り込んだ。

その表情には、「でも人殺しが間違っているのは事実だ!」という不満が、ありありと浮かんでいる。

そんな頑固な光輝に、雫は諭すような口調で、今までも暗に忠告して来たことを、この世界に来て自分自身感じた事を交えて語った。

 

雫「光輝の、真っ直ぐなところや正義感の強いところは嫌いじゃないわ。」

光輝「……雫。」

雫「でもね。

もうそろそろ、自分の正しさを疑えるようになってもいいと思うのよ。」

光輝「正しさを疑う?」

 

雫「ええ。確かに、強い思いは、物事を成し遂げるのに必要なものよ。

でも、それを常に疑わず盲信して走り続ければ何処かで歪みが生まれる。

だから、その時、その場所で関係するあらゆることを受け止めて、自分の想いは果たして貫くことが正しいのか、あるいは間違っていると分かった上で、〝それでも〟とやるべきなのか……

それを、考え続けなければならないんじゃないかしら?

……本当に、正しく生きるというのは至難よね。

この世界に来て、魔物とはいえ命を切り裂いて……そう思うようになったわ。」

それに、と雫は続けた。

 

雫「私達がこの世界に来た初日、ハジメ君が言っていたこと、覚えている?」

光輝「……何?」

どうやら忘れてしまっているようだ。そんな光輝に溜息をつくも、さらに続ける。

雫「"戦争である以上、間違いなく誰かが死んで、誰かに殺される。"

"戦争はどんな汚い手を使っても、勝てば全て許される世界。"

彼が言ったこの二つの言葉の意味、分かっているのよね?」

光輝「!それ、は……。」

 

雫「彼はこの世界に来ていた時点で、戦争というのを理解していた。

もし彼がそれに気づかせてくれていなかったら、私達は人を殺す覚悟のないまま、戦場に駆り出されていたのかもしれないのよ?

そんな状態で行っても、直ぐに殺されていたかもしれない。

……今でも時々、戦場で自分が殺される夢を見てゾッとするわ。」

 

雫が、魔物を殺す時やこの世界に来た時、そんな事を考えていたとは露知らず、光輝は驚きで目を丸くした。

雫「光輝。

常にあんたが正しいわけではないし、例え正しくても、その正しさが凶器になることもあるってことを知ってちょうだい。

まぁ、今回のご都合解釈は、あんたの思い込みから生じる〝正しさ〟が原因ではなくて、唯の嫉妬心みたいだけど。」

光輝「い、いや、俺は嫉妬なんて……。」

雫「そこで誤魔化しやら言い訳やらするのは、格好悪いわよ?」

光輝「……。」

 

再び俯いて、水面の月を眺め始めた光輝。ただ、先程のような暗い雰囲気は薄れ、何かを深く考えているようだった。

取り敢えず、負のスパイラルに突入して暴走という事態は避けられそうだと、幼馴染の暴走癖を知る雫はホッと息を吐いた。

そして、今は、一人になる時間が必要だろうと、もたれていた欄干から体を起こし、そっとその場を離れようとした。

そんな踵を返した雫の背に光輝の声がポツリとかかる。

 

光輝「雫は……何処にも行かないよな?」

雫「……いきなりなによ?」

光輝「……行くなよ、雫。」

雫「……。」

 

どこか懇願するような響きを持った光輝の言葉。

光輝に惚れている日本の生徒達や王国の令嬢達が聞けばキャーキャー言いそうなセリフだったが、生憎、雫が見せた表情は"呆れ"だった。

香織がいなくなった喪失感に弱っているのかもしれないが……

雫はチラリと肩越しに揺らめく月を見やった。

先程から、光輝がずっと眺めていた水面の月だ。

 

雫「少なくとも私はその"月"ではないけれど……縋ってくるような男はお断りよ。」

それだけ言い残し、雫は、その場を後にした。

残された光輝は、雫が消えた路地をしばらく見つめたあと、再び、水面の月に視線を移す。

そして、先程の言葉の意味に気がついた。

 

光輝「……水月……か。」

鏡花水月。

それは、鏡に映る花や水に映る月のように、目に見えれど手に取ることが出来ないものを差す言葉。

無意識に眺めていた水面の月を香織とするなら、確かに手に取れないものなのかもしれない。

あの時の、ハジメに想いを告げた時の香織の表情を見るならば。

 

雫は、自分を"水月"ではないと言った。手に取れる可能性があるのだ。

だが、そのあとの言葉は痛烈だ。思わず、光輝は苦笑いする。

幼馴染の女の子に自分は何を言っているんだと。

光輝は、幻の月を眺めるのは止めて、天を仰いだ。

手を伸ばせば無条件に届くと信じて疑わなかった"それ"が、やけに遠く感じる。

光輝は、深い溜息を吐きながら、厳しくとも優しい幼馴染の言葉をじっくり考え始めた。

変わるのか、変わらないのか……それは光輝次第だ。

*1

 


 

時間は少し進む。

光輝達が、【宿場町ホルアド】にて、再会によって受けた衝撃と別れによる複雑な心情を持て余していた夜から三週間程経った。

現在、光輝達は王都に戻って来ていた。

理由は唯一つ。光輝達の致命的な欠点──"人を殺す"事について浅慮が過ぎるという点を克服する為だ。魔人族との戦争に参加するなら、"人殺し"の経験は必ず必要となる。

克服できなければ、戦争に参加しても返り討ちに遭うだけなのだから。

 

尤も、考える時間はもうあまり残されていないと考えるのが妥当だ。

【ウルの町】での出来事は既に光輝達の耳にも入っており、自分達が襲撃を受けた事からも、魔人族の動きが活発になっている事は明らかだ。

それはつまり、開戦が近いという事。

故に光輝達は出来るだけ早く、この問題を何かしらの形で乗り越えねばならなかった。

 

そんな光輝達はというと、現在只管メルド率いる騎士達と対人戦の訓練を行っていた。

龍太郎や近藤達、永山達も、ある程度の覚悟はあったものの、実際ハジメが女魔人族を殺す瞬間を見て、自分にも出来るのかと自問自答を繰り返していた。

時間は無いものの、無理に人殺しをさせて壊れてしまっては元も子も無いので、騎士団員達も頭を悩ませている。

 

一方、雫、恵理、浩介の三人は至って平然としており、それはそれでどうなのかと、思う騎士団員もいるとかなんとか。

またどういった風の吹き回しか、光輝も雫やメルドに対人戦を時々申し込んでいる。

勇者としての自覚か、それとも自分を打ちのめした魔王に対する対抗心か……

そんなある意味鬱屈した彼等に、その日ちょっとした朗報が飛び込んできた。

 

愛子達の帰還だ。

普段なら光輝のカリスマにぐいぐい引っ張られていくクラスメイト達だったが、当の勇者に覇気がないので誰もがどこか沈みがちだった。

手痛い敗戦と直面した問題に折れてしまわないのは、雫や永山といった思慮深い者達のフォローと鈴のムードメイクのおかげだろうが、それでも心に巣食った深い靄を解決するのに信頼出来る身近な大人の存在は有難かった。

誰もが、いつだって自分達の事に一生懸命になってくれる先生にとても会いたかったのだ。

 

愛子の帰還を聞いて、真っ先に行動したのは雫だ。

雫は、色々相談したい事があると先に訓練を切り上げた。

ハジメに対して何かと思うところのありそうなクラスメイト達より先に会って、愛子が予断と偏見を持たない様に客観的な情報の交換をしたかったのだ。

 

ハジメから譲り受けた漆黒の鞘に収まる、これまた漆黒の刀身に片刃造りの妖刀を腰のベルトに差して、王宮の廊下を颯爽と歩く雫。

そんな彼女の姿に、何故か男よりも令嬢やメイドが頬を赤らめている。

世界を超えても雫が抱える頭の痛い問題だ。

自分より年上の女性に「お姉様ァ」と呼ばれるのは本当に勘弁して欲しいのだ。

まぁ、リリィ経由で聞いた「お兄様の妹になり隊」の存在もあるので、幾分かはマシだが。

当の本人は頭を抱えているが、それは雫の知るよしもないだろう。

 

雫は【ウルの町】で、ハジメが色々暴れた事を聞いていたので、愛子からハジメについてどう思ったかも直接聞いてみたかった。

愛子の印象次第では、今も考え込んでいる光輝の心の天秤が、あまり望ましくない方向に傾くかもしれないと思ったからだ。

どこまでも苦労を背負い込む性分である。

 

雫「きっと、ウルでも無茶苦茶して来たのでしょうね……こんな刀をポイッとくれちゃうくらいだし……。何というか、ある意味で魔王に相応しいかもしれないわね。」

そんな事を独り言ちながら、そっと腰の刀に手を這わせる雫。

愛子の部屋を目指しながら、この刀のメンテナンスについて相談する為、国直営の鍛冶師達の下へ訪れた時の事を思い出す。

 

この刀、雫は単純に“黒刀”と呼んでいるが、黒刀をこの国の筆頭鍛冶師に見せた時の事。

最初は“神の使徒”の一人である雫を前に畏まっていた彼だったが、鑑定系の技能を使って黒刀を調べた途端、態度を豹変させて雫の肩を掴みかからんばかりの勢いで迫って来たのだ。

そして、どこで手に入れたのか、誰の作品なのかと、今までの態度が嘘の様に怒涛の質問、いや、尋問をして来たのである。

目を白黒させる雫が、何とか筆頭を落ち着かせ、何事かと尋ね返した。

 

すると彼曰く、これ程の剣は王宮の宝物庫でも見た事が無く、出力や魔力を受けるキャパシティ、武器としての機能性、作りの精密性等、全ての点において聖剣すら軽く凌駕する代物だったのだという。

そして詳しく調べた結果、黒刀は魔力を流し込む事で何かしらの仕掛けが発動するという事が分かった。

また、鞘の方にも仕掛けがあるらしい事も分かった。

刃の部分は、少なくともアザンチウムが含まれているのでまず欠ける事も無く、メンテナンスも殆どいらないという。

 

ただ問題があるとすれば、魔力を流し込む為の魔法陣が無い事である。それも当然だ。

ハジメが直接魔力を操れる事もあるが、元々製作段階で雫以外が使えない様ロックが掛かっているのだ。

尚、その問題に関しては実は解決済みである、

出発前夜、ハジメは外付け用の魔法陣を作成しており、これをブレスレットに付与、身に着けることで武器に流れ込むという仕組みなのだ。

その上、高速魔力回復機能も宝石にあるため、ちょっとの間に魔力補充が可能なのだ。

 

そして、これだけ専門家の自分達が全力を尽くしても一割も解析出来ないという不可解な黒刀に、王国直属の鍛冶師達は闘志を燃やした。

同時に、製作者であるハジメの神格化が起こった。……どこかで魔王が身震いしたそうな。

*1
尚、ハジメさんの場合、こう言っていただろう。

ハジメ「誰しも心には、自分なりの正義がある。俺にも、お前にも。

そこに曲げられないものがある以上、お前がそれについてとやかく言えるもんじゃあない。

昨日の魔人族に対しても、だ。お前の正義を、他人に押し付けるな。

正しさを説くだけじゃ、何も変えられないんだよ。」

 

ハジメ「それとだ、たとえ間違ったとしても、後戻りできないとか思うな。

生きている限り、やり直せる機会なんざ幾らでもあるんだ。

それが出来ないっていうなら、まずは自分を許してやれ。

弱い自分も、嫉妬している自分も、俺を憎いと思っている自分も、だ。

それで前に進めるのなら、俺はいくら憎まれてもいい。

だからお前は、自分が本当に何をするべきなのか、よく考えてくれ。」




ハジメ
「ここまで読んでいただき、ありがとうございます!さて、今回のゲストさん、いらっしゃい!」
龍太郎
「おう!筋トレ大好き、坂上龍太郎だ!」
ハジメ
「さて今回は、俺は名前しか出てこなかったわけだが……光輝、相当言っていたなぁ。」
龍太郎
「オイオイ、その話はもういいだろ。それより、俺等はいつ強化されるんだ?」
ハジメ
「まだ先だよ。少なくとも、浩介よりちょっと後かな?」
龍太郎
「そっか。まぁ、気長に待つか。それじゃ、次回予告!」

次回予告
ハジメ
「前回、次回は愛子誘拐といったな。あれは嘘だ。」
龍太郎
「いきなりコマンドーかよ……じゃあ記念企画は次の次か?」
ハジメ
「あぁ、折角だし第2クールに合わせる。」
龍太郎
「じゃあ、次の記念は神山後かぁ。」
ハジメ
「次回、愛子の運命や如何に!?」
龍太郎
「エイドリアーン!」

もし今作品のハジメさんが、少しの間だけ別世界に飛ばされてしまったとしたら、どの世界に行くと思いますか?

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