ありふれない錬成師は最高最善の魔王の力で世界最強を超越する   作:天元突破クローズエボルハザード

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ハジメ
「お待たせいたしました。
今回からは他のキャスト陣も加えた会話を盛り込んでいきたいと思っております。
さて、今回の記念すべきトップバッター、カモン!」
優花
「えぇ~と、どうも。」
ハジメ
「雫以上のガチガチツンデレこと園部優花さんです!」
優花
「ちょっと!?どういうこと!?」
ハジメ
「どういうことも何も、ねぇ……?あ、前回のあらすじお願い。」
優花
「その意味深そうな表情は何かしら!?後、質問に答えなさいよ!」
ハジメ
「3つの出来事があったな。
一つ、ハイパータイムジャッカー、やっと登場。
二つ、魔人族の将軍、遂に動く。
そして三つ、愛子、リリィ、浩介の三人が王都からの脱出を試みる!」
優花
「しかも、もう終わり!?…ハァ、まぁいいわ。それじゃ第5章第1話、」
ハジメ・優花
「「それでは、どうぞ!」」


原作第5巻~二大迷宮攻略編:2072/襲来のF/親子の絆
48.砂・塵・異・変


赤銅色の世界。

【グリューエン大砂漠】は、正にそう表現する以外にない場所だった。

砂の色が赤銅色なのは勿論だが、砂自体がキメ細かいのだろう。

常に一定方向から吹く風により易々と舞い上げられた砂が大気の色をも赤銅色に染め上げ、360°見渡す限り一色となっているのだ。

 

また、大小様々な砂丘が無数に存在しており、その表面は風に煽られて常に波立っている。

刻一刻と表面の模様や砂丘の形を変えていく様は、砂漠全体が"生きている"と表現したくなる程だ。

照りつける太陽と、その太陽からの熱を余さず溜め込む砂の大地が強烈な熱気を放っており、40度は軽く超えているだろう。

舞う砂と合わせて、旅の道としては最悪の環境だ。

尤も、それは"普通の"旅人の場合である。

 

現在、そんな過酷な環境を知った事ではないと突き進む赤い巨大な乗り物──

"キングライナー"が、砂埃を後方に巻き上げながら爆走していた。

道なき道だが、そんなの知ったこっちゃない。

 

シア「……外、凄いですね……普通の馬車とかじゃなくて本当に良かったです。」

ティオ「全くじゃ。この環境でどうこうなる程柔い心身ではないが……

流石に、積極的に進みたい場所ではないのぉ。」

ミレディ「ミレディさん達も、こういうの欲しかったね……。」

オスカー『ミレディ、これを作るとなると一ヶ月はかかると思うよ……。』

いや、これを1ヶ月で作れる時点で相当だと思うんだが。

車内で窓にビシバシ当たる砂と赤銅色の外世界を眺めながらシア、ティオ、ミレディ、オスカーがしみじみした様子でそんな事を呟いた。

 

ミュウ「前に来たときとぜんぜん違うの!とっても涼しいし、目も痛くないの!

パパはすごいの!」

香織「そうだね~。ハジメパパは凄いね~。ミュウちゃん、冷たいお水飲む?」

ミュウ「飲むぅ~。香織お姉ちゃん、ありがとうなの~。」

窓際の席で香織の膝の上に抱えられる様にして座るミュウが、以前誘拐されて通った時との違いに興奮した様に万歳して、快適空間を生み出した俺にキラキラした眼差しを送る。

まぁ、当然か。

 

海人族であるミュウにとって、砂漠の横断はどれ程過酷なものだったか。

4歳という幼さを考えれば、寧ろ熱中症や栄養失調で衰弱死しなかった事が不思議なくらいだ。

そんな環境を耐えてきたミュウからすれば、ギャップも相まって驚きも一入だろう。

なにせこのキングライナー、冷暖房は勿論、ホテルにゲーセン、レストランまである超有能列車なのだから。

それはさておいて、と……。

 

ハジメ「香織、流石に同級生からパパって言われるのは、むず痒いからやめてほしいんだが……。」

香織「?でも、ミュウちゃんには普通に呼ばれてるよね?」

ハジメ「いや、ミュウは俺の娘だし……。同級生、それも女の子からだと、ね?」

トシ「要は照れ臭いんだろ、お父さん。」

ハジメ「その呼び方もやめなさい。」

ハァ、しばらくはこれで弄られるんだろうなぁ。

 

香織「そう?なら呼ばないけど……でも、私もいつか子供が出来たら……

その時は……。」

ユエ「……残念。先約は約束済み。」

香織「えっ!?」

ハジメ「いや、順番で喧嘩するくらいなら、全員一度に相手するよ?過負荷全力で。

後、ミュウもいるからこの話はおしまいね?」

まだミュウが知っちゃいけない領域なんだよ!この手の話は!

 

ティオ「ん?何じゃあれは?ご主人様よ、三時方向で何やら騒ぎじゃ。」

ユエと香織の仲裁をしていると、ティオが注意を促した。窓の外に何かを発見したらしい。

言われるままにそちらを見ると、どうやら右手にある大きな砂丘の向こう側にサンドワームと呼ばれるミミズ型の魔物が相当数集まっている様だった。

砂丘の頂上から無数の頭が見えている。イナバも耳をピンと立たせながら警戒している。

 

このサンドワームは平均20m、大きいものでは100mにもなる大型の魔物だ。

この【グリューエン大砂漠】にのみ生息し、普段は地中を潜行していて、獲物が近づくと真下から三重構造のズラリと牙が並んだ大口を開けて襲いかかる。

察知が難しく奇襲に優れているので、大砂漠を横断する者には死神の如く恐れられている。

幸いサンドワーム自身も察知能力は低いので、偶然近くを通る等不運に見舞われない限り、遠くから発見され狙われるという事は無い。

なので、砂丘の向こう側には運の無かった者がいるという事らしいけど……

 

ハジメ「?何であんな動きしているんだろ?」

そう。ただサンドワームが出現しているだけなら、ティオも疑問顔をして注視させる事はなかっただろう。

そもそも奇襲なら十分警戒しているし、キングライナーの速度なら十分攻撃範囲から抜け出せる。

異常だったのは、サンドワームに襲われている者がいるとして、何故かサンドワームがそれに襲いかからずに様子を伺う様にして周囲を旋回しているからだ。

 

イナバ「きゅ、きゅう。(奴等、まるで食うのを躊躇っているようでっせ。)」

ハジメ「確かに……あれって雑食じゃなかったっけ?」

ティオ「うむ、妾の知識にあのような事例は無いのじゃ。獲物を前にして躊躇う事は無い筈じゃが……。」

まぁ、自分から行くことはないから大丈夫そうだけど……一応距離をとって、ッ!

ハジメ「皆、捕まって!」

 

そう叫んで一気にキングライナーを加速&空へ上昇させる。直後、砂色の巨体が後方より飛び出してきた。

大口を開けたそれは件のサンドワームだ。こっちもハズレか!

上昇中も襲ってくるサンドワームを、ハンドルテクで何とかかわす。

香織「きゃぁあ!」

ミュウ「ひぅ!」

シア「わわわ!」

ッ!ミュウは……シアが受け止めたようだ。下敷きになっているトシは……ドンマイ。一方の香織は……

 

ハジメ「ちょっと香織!?何でそこにしがみついているの!?」

香織「危ないから!危険が危ないから!しがみついてるの!」

ユエ「……おのれ香織、私を下敷きにして奇襲とは……やってくれる。」

言ってる場合か!てか股間に顔埋めないで!吐息、吐息がかかる!位置的に色々マズいから!

 

何とか敵が届かない位置まで上昇したので、香織を元の位置に……なんで簀巻きにされてんねん。

香織「わ~!ごめんなさい!決してエッチな目的があった訳じゃないの!

ただ、ちょっと、抱きついてみたかったというか!」

ユエ「……そして、あわよくば、そのままハジメを堪能しようと?」

香織「うん、そうなんだ……って違うよ!私は、ユエみたいにエッチじゃないよ!」

ユエ「……私をエッチと申したか……確かに、ハジメと二人っきりだと否定は出来ない。」

ハジメ「少しは危機感持ってくれませんかねぇ!?」

そう言いながら、下の地面諸共爆撃する準備をする俺であった。

 

ハジメ「今までの分だ、残すなよ?」

そう言って、ギガントの大群を下のサンドワームに向けて放った。序に、圧烈弾もお見舞いしてやった。

するとどうだろう。さっきまでサンドワームだったものが肉塊に変わり、辺り一面を赤く染めた。

まるで、血で出来た砂漠だな。すると、他のサンドワームもやってきた。今度は速度重視か。

ならこっちはこれで行くか。そう思った俺は、他のライナーを召喚・連結させた。

 

ハジメ「ライナーフルバースト!」

全ライナーの武装を展開、膨大な質量の攻撃で逃げ場すら封じる大技だ。

後は這い出てきたところへ爆弾投下するだけだ。圧烈弾の効果で誘爆も可能だ。

その結果、数分も経たずにサンドワームは全滅した。さて、もうそろそろ進もう「ハジメくん!あれ!」うん?

 

ユエ「……白い人?」

香織が指を差した先には、ユエが呟いた様に白い衣服に身を包んだ人が倒れ伏していた。

恐らく先程のサンドワーム達は、あの人物を狙っていたのだろう。

しかし何故食われなかったのかは、この距離からでは分からず謎だ。

 

香織「お願い、ハジメくん。」

ハジメ「合点承知。」

さて、原因は一体なんだろな?そんな訳で、倒れている人の近くまでやって来た。

その人物は、ガラベーヤ(エジプト民族衣装)に酷似した衣装と、顔に巻きつけられるくらい大きなフードの付いた外套を羽織っていた。

顔は分からない。うつ伏せに倒れている上に、フードが隠してしまっているからだ。

キングライナーから降りた香織が、小走りで倒れる人物に駆け寄り仰向けにした。

 

香織「!……これって……。」

フードを取り露わになった男の顔は、まだ若い20歳半ばくらいの青年だった。

だが、香織が驚いたのはそこではなく、その青年の状態だった。

苦しそうに歪められた顔には大量の汗が浮かび、呼吸は荒く脈も早い。

服越しでも分かる程全身から高熱を発している。

しかも、まるで内部から強烈な圧力でもかかっているかの様に血管が浮き出ており、目や鼻といった粘膜から出血もしている。

明らかに尋常な様子ではない。ただの日射病や風邪という訳ではなさそうだ。

 

まるでウイルスのようだが……それなら浄化作用が働いている筈だしな。

餅は餅屋というので、香織に任せることにした。香織は"浸透看破"を行使する。

これは魔力を相手に浸透させる事で対象の状態を診察し、その結果を自らのステータスプレートに表示する技能だ。

 

ハジメ「どうだった?」

香織「う、うん。これなんだけど……。」

そう言って香織が見せたステータスプレートには、こう表示されていた。

状態:魔力の過剰活性、体外への排出不可

症状:発熱・意識混濁・全身の疼痛・毛細血管の破裂とそれに伴う出血

原因:体内の水分に異常あり

 

香織「恐らくだけど、何かよくない飲み物を摂取して、それが原因で魔力暴走状態になっているんだと思う。

……しかも外に排出できないから、内側から強制的に活性化・圧迫させられて、肉体が付いてこれてない……このままじゃ、内蔵や血管が破裂しちゃう。出血多量や衰弱死の可能性も……。"万天"。」

香織はそう結論を下し、回復魔法を唱えた。使ったのは"万天"。

中級回復魔法の一つで、効果は状態異常の解除だ。しかし……

 

香織「……殆ど効果が無い……どうして?浄化しきれないなんて……それ程溶け込んでいるという事?」

ふむ……ではこれでいくか。そう思い俺は、とあるライダーの力を発動した。

ハジメ「"彼の毒が全て俺の体内に転移する"。」

香織「!?」

 

すると、俺の中に猛毒が流れ始めたのか、少々痛みが走った。……最初の時に比べればそれ程じゃないな。

体内で毒を浄化しながら、分析を開始する。すると……

ハジメ「……どうやら、人為的に生み出された毒じゃねぇようだ。

それも誰かが手を加えたような魔物の毒っぽいな。」

トシ「そこまで分かるのか。てか、身体は何ともないのか?」

ハジメ「若干痛ぇが、それ以外は何ともないな。肉体もいざとなったら、ヘルライジングで「それは止めとけ。」……おぅ。」

 

取り敢えず、毒による暴走は収まった。後は、体内の魔力を何とかするだけか。

ハジメ「香織、お願いできる?」

香織「うん、任せて!"廻聖"!」

光系の上級回復魔法"廻聖"。これは、一定範囲内における人々の魔力を他者に譲渡する魔法だ。

基本的には自分の魔力を仲間に譲渡する事で、対象の魔力枯渇を一時的に免れさせたり、強力な魔法を放つのに魔力が足りない場合に援護する事を目的とした術だ。

 

また、譲渡する魔力は術者の魔力に限らないので、領域内の者から強制的に魔力を抜き取り他者に譲渡する事も出来る。

謂わばドレイン系の魔法としても使えるのだ。

但し、他者から抜き取る場合はそれなりに時間が掛かり、一気に大量にとは行かず実戦向きとは言えない。

尤も、香織はトシ同様俺の特訓を受けているので、無詠唱で使用が可能だ。

相当疲れていたが、翌日にご褒美デートに誘ったら、一気に回復した。愛の力って凄ぇな。

 

白菫色の光が青年を中心に広がり、蛍火の様な淡い光が湧き上がる。神秘的な光景だ。

目を瞑り、青年の胸に手を起きながら意識を集中する香織の姿は、淡い光に包まれている事もあって、どこか神々しさすら感じる。

ミュウはシアに抱っこされながら、「きれい……。」とうっとりした表情で香織を見つめている。

香織は青年から取り出した魔力を、俺が送った神結晶の指輪に収めていった。

どうやら、上級魔法による強制ドレインは有効だった様だ。

 

すると徐々に青年の血色が良くなり、脈動が正常なものへと変化していた。

呼吸も安定し、傍目から見ても健常者がただ眠っている様に見える。

身体の赤みも薄まり、出血も収まってきたようだ。

香織は"廻聖"の行使をやめると、初級回復魔法"天恵"を発動し青年の傷ついた血管を癒していった。

 

ユエ「そう言えばハジメ、さっきのは何?」

さっきの?あぁ、あれか。

ハジメ「ライダーの能力の一つだよ。

正直、初見殺しに等しいレベルの切り札だから、あまり使わないけどね。」

ティオ「ほぅ、一体どんな能力なのじゃ?」

ハジメ「簡単に言うと、言ったことが現実になる能力。」

シア「反則過ぎません!?」

まぁ、言われてみればそうか。

 

ハジメ「正確には未来を決める能力なんだけどね。絶対に起こらないことは無理だけど……

ほら、もしかしたら状態異常を移す魔法とかもあるだろうし……。」

オスカー『成程、仮定によって未来の予言をする、ということかな?』

ハジメ「正解、他にもやり方はあったけど、これが一番手っ取り早いかなって。」

ミレディ「そういえばハジメン、時の王だったね……。」

正直、歩くゲームオーバーレベルだからなぁ……。

 

そうこうしていると、青年が呻き声を上げてその瞼がフルフルと震えだした。

ゆっくりと目を開けて周囲を見わたす青年は、自分の間近にいる香織を見て「女神?そうか、私は召し上げられて……」などと口にした。

そして今度は違う理由で体を熱くし始めたので、正気になれという意味を込めて、香織に手を伸ばそうとしている青年の頭にサッカーボール大の水球をぶつけた。

 

???「わぶっ!?」

香織「ハ、ハジメくん!?」

砂漠のど真ん中でびしょ濡れになるという珍体験をした青年と、驚いた様に声を上げる香織を尻目に、俺は青年に何があったのか事情を尋ねる。

青年の着ているガラベーヤ風の衣服や外套は、【グリューエン大砂漠】最大のオアシスである【アンカジ公国】の特徴的な服装だったと、俺は記憶している。

王国に滞在していた時、気分転換に調べていた。

青年がアンカジで何かに感染でもしたのだというなら、これから向かう筈だった場所が危険地帯に変わってしまう。

是非ともその辺の事を聞いておきたかった。

 

先程の水球で正気を取り戻した青年は、自分を取り囲む俺達と背後の見た事も無い赤い物体に目を白黒させて混乱していたが、香織から大雑把な事情を聞いている内に冷静さを取り戻した様だ。

???「最早私も公国もこれまでかと思ったが、どうやら神はまだ私を見放してはいなかったらしい……。」

青年がそう呟く。その神が碌でもないクズ野郎なんだけどねぇ……。

 

取り敢えず、暑い中での話し合いは危険なので、青年をキングライナーに招いた。

招かれた青年は、車内の快適さに思わず「やはり神の領域か!?」と叫ぶ。

先程まで死にかけていたというのに案外元気なものだ。てか、俺王様なんだけど。

尤も、冷たい水を飲んで一息つくと自分が使命を果たせず道半ばで倒れた事を思い出した様で、直ぐに表情を引き締めた。

 

???「まず、助けてくれた事に感謝する。

あのまま死んでいたらと思うと……アンカジまで終わってしまうところだった。

私の名は、ビィズ・フォウワード・ゼンゲン。

アンカジ公国の領主ランズィ・フォウワード・ゼンゲン公の息子だ。」

ウィ!驚いた事に、ビィズと名乗った青年はとんだ大物だったらしい。

 

【アンカジ公国】は【海上の町エリセン】より運送される海産物の鮮度を極力落とさないまま運ぶ為の要所だ。

そして、エリセンからの海産物の供給量は北大陸全体の8割に及ぶ。

つまり、北大陸における一分野の食料供給において、ほぼ独占的な権限を持っているに等しいという事だ。単なる名目だけの貴族ではなく、【ハイリヒ王国】の中でも信頼の厚い屈指の大貴族という事である。

 

ビィズの方も、香織の素性("神の使徒"として異世界から召喚された者)や俺達の冒険者ランクを聞き、目を剥いて驚愕を露わにした。

そして「これは神の采配か!我等の為に女神を遣わして下さったのか!」といきなり天に祈り始めた。

この場合、女神とは当然香織の事なのだが、当の本人はキョトンとしている。

話が進まないので"威圧"で急かすと、ビィズは冷や汗を流しながら咳払いしつつ語りだした。

 

ビィズ曰く、こういう事らしい。4日前、アンカジにおいて原因不明の高熱を発し倒れる人が続出した。

それは本当に突然の事で、初日だけで人口27万人のうち3000人近くが意識不明に陥り、症状を訴える人が1万人に上ったという。

直ぐに医療院は飽和状態となり、公共施設を全開放して医療関係者も総出で治療と原因究明に当たったが、進行を遅らせる事は何とか出来ても完治させる事は出来なかった。

 

そうこうしている内にも、次々と患者は増えていく。

にも関わらず、医療関係者の中にも倒れるものが現れ始めた。

進行を遅らせる為の魔法の使い手も圧倒的に数が足りず、何の手立ても打てずに混乱する中で、遂に処置を受けられなかった人々の中から死者が出始めた。

発症してから僅か2日で死亡するという事実に絶望が立ち込める。

 

そんな中、1人の薬師がひょんな事から飲み水に"液体鑑定"をかけた。

その結果、その水には魔力の暴走を促す毒素が含まれている事が判明したのだ。

直ちに調査チームが組まれ、最悪の事態を想定しながらアンカジのオアシスが調べられたのだが、案の定オアシスそのものが汚染されていた。

 

当然、アンカジの様な砂漠のど真ん中にある国においてオアシスは生命線であるから、その警備・維持・管理は厳重に厳重を重ねてある。

普通に考えれば、アンカジの警備を抜いてオアシスに毒素を流し込むなど不可能に近いと言っても過言ではない程に、あらゆる対策が施されているのだ。

一体どこから、どうやって、誰が……。

首を捻る調査チームだったが、それより重要なのは、2日以上前からストックしてある分以外使える水が失くなってしまったという事だ。

そして結局、既に汚染された水を飲んで感染してしまった患者を救う手立てが無いという事である。

 

ただ、全く方法が無いという訳では無かった。1つ、患者達を救える方法が存在していたのだ。

それは、"静因石"と呼ばれる鉱石を必要とする方法だ。

この"静因石"は、魔力の活性を鎮める効果を持っている特殊な鉱石で、砂漠のずっと北方にある岩石地帯か【グリューエン大火山】で少量採取できる貴重な鉱石だ。

魔法の研究に従事する者が、魔力調整や暴走の予防に求める事が多い。

この静因石を粉末状にしたものを服用すれば体内の魔力を鎮める事が出来るだろう、という訳だ。

 

しかし、北方の岩石地帯は遠すぎて往復に少なくとも1ヶ月以上はかかってしまう。

また、アンカジの冒険者、特に【グリューエン大火山】の迷宮に入って静因石を採取し戻ってこられる程の者は既に病に倒れてしまっている。

生半可な冒険者では、【グリューエン大火山】を包み込む砂嵐すら突破できないのだ。

それに。仮にそれだけの実力者がいても、どちらにしろ安全な水のストックが圧倒的に足りない以上王国への救援要請は必要だった。

 

その救援要請にしても、総人口27万人を抱えるアンカジ公国を一時的にでも潤すだけの水の運搬や、【グリューエン大火山】という大迷宮に行って戻ってこられる実力者の手配など容易く出来る内容ではない。

公国から要請と言われれば無視する事は出来ずとも、内容が内容だけに一度アンカジの現状を調査しようとするのが普通だ。

しかし、そんな悠長な手続きを経てからでは遅いのだ。

なので、強権を発動出来るゼンゲン公か、その代理たるビィズが直接救援要請をする必要があった。

 

ビィズ「父上や母上、妹も既に感染していて、アンカジにストックしてあった静因石を服用する事で何とか持ち直したが、衰弱も激しくとても王国や近隣の町まで赴く事など出来そうもなかった。

だから私が救援を呼ぶため、一日前に護衛隊と共にアンカジを出発したのだ。

その時症状は出ていなかったが……感染していたのだろうな、恐らく発症までには個人差があるのだろう。家族が倒れ、国が混乱し、救援は一刻を争うという状況に……動揺していた様だ。

万全を期して静因石を服用しておくべきだった。

今こうしている間にも、アンカジの民は命を落としていっているというのに……情けない!」

 

力の入らない体に、それでもあらん限りの力を込めて拳を己の膝に叩きつけるビィズ。

アンカジ公国の次期領主は、責任感の強い民思いな人物らしい。

護衛をしていた者達もサンドワームに襲われ全滅したというから、その事も相まって悔しくてならないのだろう。

僥倖だったのは、サンドワーム達が恐らくこの病を察知して捕食を躊躇った事だ。

病にかかったが故に力尽きたがそれ故にサンドワームに襲われず、結果俺達と出会う事が出来た。

人生、何が起きるかわからないものである。万事塞翁が馬とはよく言ったものだ。

 

ビィズ「……君達に、いや、貴殿達にアンカジ公国領主代理として正式に依頼したい。

どうか、私に力を貸して欲しい。」

そう言って、ビィズは深く頭を下げた。

領主代理がそう簡単に頭を下げるべきでない事はビィズ自身が一番分かっているのだろうが、降って湧いた様な僥倖を逃してなるものかと必死なのだろう。

十中八九、魔人族の仕業で間違いないだろう。さっきの毒も魔物由来だと考えれば、妥当だろう。

さてと、まずは作戦を立てなきゃな。

 

ミュウ「パパー、たすけてあげないの?」

ハジメ「うん?いやぁ、作戦を考えていただけだよ。どのみちアンカジには行くし、勿論助けるさ。」

物凄く純真な眼差しで言ってくるミュウに、俺はいつものように笑顔で返す。

ハジメ「そういう訳だから、戦艦に乗ったつもりでいるといいよ。」

トシ「そこは大船でいいだろ。いや、コイツの場合はマジで空飛びそうだな。」

トシや、少し失礼じゃないか?俺は相転移砲なんて作れないぞ?

 

ビィズ「ハジメ殿が"金"クラスなら、このまま大火山から静因石を採取してきてもらいたいのだが、水の確保の為に王都へ行く必要もある。

この移動型のアーティファクトは、ハジメ殿以外にも扱えるのだろうか?」

ハジメ「生憎自動操縦は今は無理だ。まぁ、まずは飲み水の確保と患者の治療を優先しよう。

そっちからの方がやりやすい。」

ビィズ「やりやすい?それはどういう事だ?」

まぁ、当然の疑問だろう。だがここにいるのは、常識知らずのチート軍団だ。

 

ユエとミレディの二人で新たにため池を作り、シアと香織は患者の応急手当、ティオ、トシ、イナバの三人はミュウの護衛、俺はちょっとした奥の手を使って毒の浄化という作戦が、既に頭の中で出来上がっている。

その辺りの事を掻い摘んで説明すると、最初は信じられないといった様子のビィズだったが、どちらにしろ今の自分の状態では真面に王国まで辿り着けるか微妙だったので、"神の使徒"たる香織の説得も相まってアンカジに引き返す事を了承した。

さぁて、さっさと国を救っちゃいますか!




ハジメ
「ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
さて、ここで登場するゲストは……この人だ。」
ビィズ
「ハロー!ニューワールド!!」
ハジメ
「真面目にやれ。初めての人が混乱するでしょうが。」
ビィズ
「ハッ!どうも、聖女様の忠実なる下僕、ビィズ・フォウワード・ゼンゲンです。」
ハジメ
「余計なものを付け足すな。もう一度やり直しなさい。」
ビィズ
「それにしても思い返せば、ここから私の新世界が始まったとも言えますね。」
ハジメ
「話聞けよ。まぁいい、次の予告だ。」
ビィズ
「承知いたしました、聖王様!」
ハジメ
「それも止めろォ!」

次回予告
ハジメ
「次回はアンカジの異変解決に乗り出すぞ。」
ビィズ
「遂に我等が香織様の御活躍がみられるのですね!」
ハジメ
「言っておくが、メインは俺だぞ。そも、主人公が俺だし。」
ビィズ
「ですが、香織様の雄姿こそ聖女の名にふさわしい。聖王様もそうお思いでしょう?」
ハジメ
「その呼び名止めろって。後、オアシスの異常を調査だ。」
ビィズ
「するとそこから女神が!」
ハジメ
「現れません!ちょっとお前黙ってろ。」
ビィズ
「是非、ご覧あれェ!」
ハジメ
「もしもしランズィ公?お宅の息子ちょっとシバかせてもらうわ。」

リースティアさん、誤字報告ありがとうございました!

もし今作品のハジメさんが、少しの間だけ別世界に飛ばされてしまったとしたら、どの世界に行くと思いますか?

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