ありふれない錬成師は最高最善の魔王の力で世界最強を超越する   作:天元突破クローズエボルハザード

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ハジメ
「お待たせいたしました!
前回からお気づきの方がいるとは思いますが、オープニングゲストは暫くクラスメイト達でお送り致します。
さて、今回のオープニングゲストは……こちら!」
奈々
「ども~!あなたのハートをロックオン!宮崎奈々です!」
ハジメ
「愛子の護衛女子の中じゃ、一番モテそうな子が来たなぁ~。」
奈々
「そう?私的にはロマンチックな出会いがいいんだけど。例えば、南雲君とユエさんの出会いとか……。」
ハジメ
「まぁ、確かにそりゃあロマンティックかな?さて、前回のあらすじだ。」
奈々
「えぇっと、アンカジの問題児って……一応次期領主だよね、この人?」
ハジメ
「こういうタイプは悪気が無くて俺等に好印象だからやり辛ぇんだよ。正直、まいってる。」
奈々
「あ、アハハ……王様も大変だね……。それじゃ、第5章第2話!」
ハジメ
「「それでは、どうぞ!」」


49.Oasisを取り戻せ!

赤銅色の砂が舞う中たどり着いたアンカジは、【中立商業都市フューレン】を超える外壁に囲まれた乳白色の都だった。

外壁も建築物も軒並みミルク色で、外界の赤銅色とのコントラストが美しい。

ただフューレンと異なるのは、不規則な形で都を囲む外壁の各所から光の柱が天へと登っており、上空で他の柱と合流してアンカジ全体を覆う強大なドームを形成している事だ。

時折何かがぶつかったのか波紋の様なものが広がり、まるで水中から揺れる水面を眺めている様な、不思議で美しい光景が広がっていた。

 

どうやら、このドームが砂の侵入を防いでいる様だ。

月に何度か大規模な砂嵐に見舞われるそうだが、このドームのお陰で曇天の様な様相になるだけでアンカジ内に砂が侵入する事は無いという。

ミレディ曰く、【グリューエン大火山】と【神山】の解放者の使用する魔法が組み合わさったものと同様らしい。

 

俺達は、これまた光り輝く巨大な門からアンカジへと入都した。

砂の侵入を防ぐ目的から、門まで魔法によるバリア式になっている様だ。

門番はキングライナーを見ても少し目を見開く程度で、大した反応を見せなかった。

アンカジの現状が影響しているのか暗い雰囲気で気迫も無く、どこか投げやり気味だ。

尤も、キングライナーの窓から次期領主が顔を出した途端、直立不動となり兵士らしい覇気を取り戻したが。

 

アンカジの入場門は高台にあった。

ここに訪れた者がアンカジの美しさを最初に一望出来るように、という心遣いらしい。

確かに美しい都だと、俺達は感嘆した。

太陽の光を反射してキラキラと煌めくオアシスが東側にあり、その周辺には多くの木々が生えていてい非常に緑豊かだった。

オアシスの水は幾筋もの川となって町中に流れ込み、砂漠のど真ん中だというのに小船があちこちに停泊している。

町のいたる所に緑豊かな広場が設置されていて、広大な土地を広々と利用している事がよく分かる。

 

北側は農業地帯の様だ。

アンカジは果物の産出量が豊富という話を証明する様に、俺達の目には多種多様な果物が育てられているのが分かった。

実を言うと、この国の果物に関しては密かに楽しみにしていたので、台無しにしてくれた魔人族には、ヘルライズをオーソライズしてプログライズして、文字通りの地獄を味合わせてやると、心に決めた俺であった。

 

西側には一際大きな宮殿らしき建造物があり、他の乳白色の建物と異なって純白と言っていい白さだった。他とは一線を画す荘厳さと規模なので、あれが領主の住む場所なのだろう。

その宮殿の周辺に無骨な建物が区画に沿って規則正しく並んでいるので、行政区にでもなっているのかもしれない。

砂漠の国でありながら、まるで水の都と表現したくなる……【アンカジ公国】はそんな所だった。

 

ハジメ「これはまた……フェアベルゲンとは別種の美しさがあるね。」

ユエ「……ん。綺麗な都。」

思わず感嘆が漏れた俺に、ユエが同意する。

他のメンバーも気持ちは同じ様で、「ほぅ……。」と息を漏らしている。

ミュウ「でも、なんだか元気がないの。」

ポツリと呟いたのはミュウだ。

 

その言葉通り、その壮観さに反してアンカジの都は暗く陰気な雰囲気に覆われていた。

普段はエリセンとの中継地である事や果物の取引で交易が盛んであり、また観光地としても人気のある事から活気と喧騒に満ちた都なのだが……

今は通りに出ている者は極めて少なく、殆どの店も営業していない様だった。

誰もが戸口をしっかり締め切って、まるで嵐が過ぎ去るのをジッと蹲って待っているかの様な、そんな静けさが支配していた。

 

ビィズ「……使徒様やハジメ殿にも、活気に満ちた我が国をお見せしたかった。

すまないが、今は時間がない。都の案内は全てが解決した後にでも私自らさせて頂こう。

一先ずは、父上の下へ。あの宮殿だ。」

ビィズの言葉に頷き、俺達は原因のオアシスを背にして進みだした。

最高最善の魔王の名に懸けて、この異常事態を解決してみせる!

 

ビィズ「父上!」

ランズィ「ビィズ!お前、どうして戻ってきた!?」

ビィズの顔パスで宮殿内に入った俺達は、そのまま領主のランズィ公の執務室へと通された。

衰弱が激しいと聞いていたのだが、どうやら治癒魔法と回復薬を多用して根性で執務に乗り出していたらしい。

そんなランズィ公は、一日前に救援要請を出しに王都へ向かった筈の息子が帰ってきた事に驚きを露わにする。

 

俺達によって病原を取り除かれたお陰で、確りと自身の足で立って事情説明を手早く済ませるビィズ。

話はトントン拍子に進み、あっという間に俺達の出番がやってくる。

ハジメ「それじゃあまずは、抗体の散布だね。今回は、コイツを使わせてもらおうか!」

そう言うと俺は、とあるライドブックを取り出し、その中身を開いた。

 

〈スーパーヒーロー戦記!〉

 

音声と共に、ライドブックから複数の光が飛び出し、人型の形へと姿を変えていく。

そこに現れたのは、数人の仮面ライダーに、彼等同様世界を救った戦士達、「スーパー戦隊」の面々だった。

その中でも俺は、毒の浄化・治療に特化したエキスパートを召喚した。

 

猛る烈火の天空勇者、ウルザードファイアー。

モヂカラ侍、ハイパーシンケンレッド。

宿命の騎士、ゴセイナイト。

魔法=「マジで凄い方法」、ゼンカイマジーヌ。

 

超越肉体の金、仮面ライダーアギト グランドフォーム。

治療ならお手の物だ、仮面ライダーフォーゼ メディカルステイツ。

最後の希望の魔法使い、仮面ライダーウィザード インフィニティースタイル。

めっちゃ痛いけど腕はピカ一、仮面ライダードライブ タイプテクニック マッドドクター。

 

デカくて硬くて強い奴、仮面ライダーエグゼイド マキシマムゲーマー lv.99。

完全無欠のボトルヤロー、仮面ライダービルド ジーニアスフォームwithハザードトリガー。

君の未来に光あれ、仮面ライダー最光。

 

そして俺も変身する。

ハジメ「変身。」

〈祝福の刻!〉

〈オーマジオウ!〉

それらを纏める最高最善の魔王、仮面ライダーオーマジオウ。

 

トシ「……なんか、多くねぇか?ライダー以外もいるし……。」

ランズィ「ハジメ殿、一体何を?」

ハジメ「ちょっとした下準備だよ。香織の治療を円滑にするためのね。」

そう言って俺は、呼び出した戦隊&ライダー達に、作戦を伝えた。

 

ハジメ「まず、俺の中にある抗体を、マキシマムで変容させる。

魔力の活性を鎮める効能にリプログラミングして、それをウィザードの魔法で風に乗せて運ぶんだ。

念のために、アギトと最光の治癒能力を、その抗体にウルザードの魔法でエンチャントしてくれ。

届かないところには、マッドドクターの能力を付与した、メディカルステイツ製のカプセルに入れて、飲み薬にして配布するぞ。

シンケンレッド、ゴセイナイト、マジーヌ、ジーニアスの4人は、毒の浄化だ。」

俺の作戦を聞き、彼等は頷いた。早速俺は抗体を能力で複数個取り出し、エグゼイドに預けた。

 

まずエグゼイドが必殺技を発動させた。

〈Maximum Mighty Critical Finish!〉

放たれた光線により、抗体が最適化されていく。

 

〈"ルーマ・ゴンガ・ルジュナ"〉

次に、ウルザードファイアーが、アギトと最光の治癒能力を、抗体に付与した。

〈"ウィンド プリーズ"〉

ウィザードが魔法によって、出来上がった抗体の半分を、国へと散布した。

その効果は直ぐに表れたのか、ランズィ公達の症状が軽くなったように見える。

 

残り半分の抗体をカプセルに詰めると、俺は仲間たちと作戦その2を開始した。

ハジメ「香織はシアと一緒に、患者の元へ行って治療をお願い。魔晶石も全部持って行って。

イナバはミュウの護衛。それ以外は水の確保と浄化だ。

ランズィ公、最低でも200m四方の開けた場所はありますか?」

ランズィ「む?うむ、農業地帯に行けばいくらでもあるが……。」

農業地帯か……尚のこと都合がいいな。

 

ハジメ「ならそこにしましょう。シアは魔晶石が溜まったら、そこへ来て。皆、頼んだよ!」

ユエ「ん!」

シア「はい!」

ミレディ「うん!」

ティオ「うむ!」

トシ「おう!」

ミュウ「はいなの!」

香織「うん!」

イナバ「きゅう!」

俺の号令に、全員が元気よく頷いた。さぁて、作戦開始だ!ん?他のライダー達はって?それはここからさ。

 

現在、ランズィ公と護衛や付き人多数、そして俺、ユエ、ミレディ、ティオ、ミュウ、トシ、イナバはアンカジ北部にある農業地帯の一角に来ていた。

200m四方どころかその3倍はありそうな平地が広がっている。

普段は、とある作物を育てている場所らしいのだが、時期的なものから今は休耕地になっているそうだ。

 

未だ半信半疑のランズィ公は、この非常時に謀ったと分かれば即座に死刑にしてやると言わんばかりの眼光で俺達を睨んでいた。

まぁ、疑うのも無理はない。百聞は一見に如かずというやつだな。

尤も、その疑いを孕んだ眼差しはユエとミレディが魔法を行使した瞬間驚愕一色に染まったが。

 

ミレディ「──"壊劫"。」

行使されるのは神代の魔法。一切合切を圧壊させる超常の力。

スッと伸ばされた白く嫋やかな手の先、農地の直上に黒く渦巻く球体が出現する。

その球体は農地の上で形を変え薄く四角く引き伸ばされていき、遂に200m四方の薄い膜となった。

そして一瞬の停滞の後、音も立てずに地面へと落下し、そのまま何事も無かったかの様に大地を圧し潰した。

凄まじい圧力により盛大に陥没する大地。局地的な地揺れが発生し地響きが鳴り響く。

それは宛ら、大地が上げた悲鳴の様だ。

 

一瞬にして超重力を掛けられた農地は200m四方、深さ5mの巨大な貯水池となった。

そしてチラリとランズィ公達を見ると、護衛も含めて全員が顎が外れんばかりにカクンと口を開けて、目も飛び出さんばかりに見開いていた。

誰もが衝撃が強すぎて声が出ていない様だが、全員が内心で「なにィーー!?」と叫んでいるのは明白だな。

 

さて、お次は俺の番だな。

そう思った俺は、ミレディの作った貯水池を生成魔法と錬成でコーティングした。

勿論、素材は逢魔鉱石だ。一応、鉱物分離で土中の鉱物をあらかじめ取り除いてあるので、大丈夫だろう。

そして、コーティングを終えると、ユエが早速魔法を行使した。

 

ユエ「"虚波"。」

水系上級魔法の一つで、大波を作り出して相手にぶつける魔法だ。

普通の術師では、大波と言っても、せいぜい10から20m四方の津波が発生する程度だが、ユエが行使すると桁が変わる。

横幅150m高さ100mの津波が虚空に発生し、一気に貯水池へと流れ込んだ。

 

この貯水池に貯められる水の総量は約200,000tだ。

途中で魔力が切れてしまったものの、俺とトシ、他の戦士たちの力で残りをやった。

一応、魔力譲渡もあったけど、ここでも活躍しておかなきゃね。

 

ランズィ「……こんな事が……。」

ランズィ公は有り得べからざる事態に呆然としながら、眼前で太陽の光を反射してオアシスと同じ様に光り輝く池を見つめた。

最早言葉も無い様だ。

 

ハジメ「取り敢えず、これで当分は保つでしょう。

後はオアシスを調べてみて……何も分からなければ、稼いだ時間で水については救援要請しましょう。」

ランズィ「あ、ああ。いや、聞きたい事は山程あるが……ありがとう。心から感謝する。

これで、我が国民を干上がらせずに済む。オアシスの方も私が案内しよう。」

ランズィ公はまだ衝撃から立ち直りきれずにいる様だが、それでもすべき事は弁えている様で俺達への態度をガラリと変えると誠意を込めて礼をした。

 

そのままオアシスへと移動した俺達。

オアシスは相変わらずキラキラと光を反射して美しく輝いており、とても毒素を含んでいる様には見えなかった。

しかし……

 

ハジメ「……感知系技能にしっかり気配があるな。しかも取り込んだ毒と同じ魔物だ。」

トシ「この下に元凶がいるってことか。」

ランズィ「何だと!?」

おっと聞こえていたか……まぁ、仕方がない。

 

ハジメ「ランズィ公、調査団はどの程度まで調べましたか?」

ランズィ「……確か、資料ではオアシスとそこから流れる川、各所井戸の水質調査と地下水脈の調査を行った様だ。

水質は息子から聞いての通り、地下水脈は特に異常は見つからなかった。

尤も、調べられたのはこのオアシスから数十mが限度だが。オアシスの底まではまだ手が回っていない。」

じゃあそこに付け込まれたってことかな?しかし、なぜ底だけ?

 

ハジメ「オアシスの底には、何かアーティファクトでも沈めてあるんですか?」

ランズィ「いや、オアシスの警備と管理にとあるアーティファクトが使われているが、それは地上に設置してある。

結界系のアーティファクトでな、オアシス全体を汚染されるなどありえん事だ。

事実、今までオアシスが汚染された事など一度も無かったのだ。」

ふむ……さっきのドームに似たような物みたいだね。

 

恐らく、砂の侵入を阻み、空気や水分等必要な物は通す作用がある便利な障壁なのだが、何を通すかは設定者の側で決める事が出来る、ってことだと思う。

そして、単純な障壁機能だけでなく探知機能もあり、何を探知するかの設定も出来る。

その探知の設定は汎用性があり、闇属性の魔法が組み込まれているのか精神作用も探知可能だろう。

つまり、"オアシスに対して悪意のあるもの"と設定すれば、"真意の裁断"が反応し設定権者であるランズィ公に伝わるというわけだ。

勿論、実際の設定がどんな内容かは領主にしかわからないだろう。

因みに、現在は調査などで人の出入りが多い上既に汚染されてしまっている事もあり警備は最低限を残して解除されているそうだ。

 

ハジメ「じゃあサクッと退治してきます。」ジャポンッ!

そう言って俺は液状化を使い、オアシスの中へ潜ると、反応のあった場所を探した。すると……

ハジメ「!」

シュバッッ!

風を切り裂く音と共に、水が無数の触手となって俺に襲いかかってきた。

 

しかし、水中で遅くなるほどオーマジオウは軟じゃない。あっさり避けて、時を止める。

丁度赤黒い魔石があったので、それを引きずり出し、地上へ帰還する。

時間停止を解除すると、慌てた魔物が触手を飛ばすが、俺はサッと避けて離脱した。

 

ザッパァン!

俺がオアシスから飛び出すと同時に、その魔石の主が姿を現した。

何かに引っ張られる様に水面が突如盛り上がったかと思うと、重力に逆らってそのまませり上がり10m近い高さの小山になったのである。

ランズィ「何だ……これは……。」

ランズィ公の呆然とした呟きが、やけに明瞭に響き渡った。

 

その正体は、体長約10m、無数の触手をウネウネとくねらせており、その姿はスライム……

そう表現するのが一番分かりやすいだろう。

だが、サイズがおかしい。通常、この世界のスライム型の魔物はせいぜい体長1m位なのだ。

また、周囲の水を操る様な力も無かった筈だ。

少なくとも触手の様に操る事は、自身の肉体以外では出来なかった筈である。

 

ハジメ「やっぱり魔人族が絡んでいたみたいだな。まぁ、コイツはもう片付いたが。」

そう言って魔石を握りつぶすと、バチェラム擬きは一瞬にしてただの水へと戻った。

ドザァー!と大量の水が降り注ぐ音を響かせながら、激しく波立つオアシスを見つめるランズィ公達。

ランズィ「……終わったのかね?」

ハジメ「えぇ、魔物は仕留めたました。ですがここからが本番です。さぁ、毒の浄化を始めよう!」

そう言うと俺は、4人の戦士達と共に、浄化を開始した。

 

マジーヌ「ぬぬぬマジーヌ!」

マジーヌがそう唱えると、オアシスに魔法がかかった。今回は毒の浄化を促進する魔法みたいだ。

シンケンレッド「フッ!」〈浄化〉

ゴセイナイト「天装!」〈purification!ナイティックパワー!〉

ビルド「ハアッ!」〈オールサイド!ジーニアスフィニッシュ!〉

シンケンレッドのモヂカラ、ゴセイナイトの天装術、そしてビルドジーニアスの浄化能力が合わさり、オアシスを光で満たした。

 

そのあまりの眩しさに、ランズィ公達は目を覆うが、俺は気にせず浄化の詰めを行った。

まず、水中に潜って水質を鑑定・通常のイオン水と比較して、マキシマムゲーマーの力を応用する。

そのまま、毒だけを召喚した戦士たちのいる場所へ向け、隅々まで調査・浄化しながら、毒を一点集中させた。

後はそのまま毒素を追い詰め、原子レベルで浄化するだけだ。

 

しばらくして、オアシス全体の水質が正常化したのを確認した俺は、オアシスから出てきた。

ハジメ「ランズィ公、ご確認を。」

ランズィ「!あ、あぁ!鑑定を頼む!」

ランズィ公は、部下に命じて水質の調査をさせた。

部下の男性が慌てて検知の魔法を使いオアシスを調べる。

固唾を呑んで見守るランズィ達に、検知を終えた男は信じられないといった表情でゆっくりと振り返り、ポロリとこぼすように結果を報告した。

 

部下「……戻っています。」

ランズィ「……もう一度言ってくれ。」

再確認の言葉に部下の男は、息を吸って、今度ははっきりと告げた。

部下「オアシスに異常なし!元のオアシスです!完全に浄化されています!」

その瞬間、ランズィ公の部下達が一斉に歓声を上げた。

手に持った書類やら荷物やらを宙に放り出して互いに抱き合ったり肩を叩きあって喜びをあらわにしている。

ランズィ公も深く息を吐きながら感じ入ったように目を瞑り天を仰いでいた。

 

ハジメ「まだ安心はできません。オアシスが元に戻ったとはいえ、やるべきことはまだあります。」

ランズィ「あぁ、だがオアシスが元に戻ったのは、貴殿等のおかげだ。

これでこの国も、元に戻るだろう。」

俺の言葉で気を持ち直しながらも、復興に向けて意欲を見せ始めたアンカジの民。

ランズィ公を中心に一丸となっている姿から、アンカジの住民は皆がこの国を愛しているのだという事がよく分かる。

過酷な環境にある国だからこそ、愛国心も強いのだろう。

 

ミレディ「あの~、作物のことなんだけど、ね。」

?どうしたんだ?まさか……当てがあるのか?

オスカー『そのまさか、さ。メイルの持つ"再生魔法"なら、それが可能なんだよ。』

まさかの情報だった。となると、まずは【グリューエン大火山】の攻略を進めねば。

幾ら抗体があるとはいえ、またいつ発症するかもわからない。抗体のストックも補填しておかなければ。

 

ランズィ「……しかし、あのバチュラムらしき魔物は一体なんだったのか……。

新種の魔物が地下水脈から流れ込みでもしたのだろうか?」

一方、気を取り直したランズィ公が首を傾げてオアシスを眺める。まぁ、原因は大体予想がつく。

ハジメ「恐らくですが……魔人族の仕業だと思われます。」

ランズィ「!?魔人族だと?ハジメ殿、貴殿がそう言うからには思い当たる事があるのだな?」

俺の言葉に驚いた表情を見せたランズィ公は、しかし直ぐ様冷静さを取り戻し続きを促した。

水の確保と元凶の排除を成し遂げた俺達に敬意と信頼を寄せている様で、最初の胡乱な眼差しは最早微塵もない。

 

ハジメ「推測できる手掛かりはいくつかあります。

まず、他の地域でも新種の魔物が確認されていることです。

あまり知られてはいませんが、【ウルの町】や【オルクス大迷宮】でも、そう言った事例が確認されています。」

ランズィ「何と!?愈々本格的に動き出したという事か。……ハジメ殿、貴殿は冒険者と名乗っていたが……

その見識といい、強さといい、やはり香織殿と同じ……。」

ハジメ「まぁ、色々事情がありますが正解です。それに、一か所じゃ得られない情報もあるので。」

俺がそう言うと、ランズィ公はそれ以上の詮索を止めた。なので話を続けた。

 

ハジメ「恐らく魔人族の魔物の軍備は既に整いつつあります。

今回も、危険や不確定要素、北大陸の要所に対する調査と打撃を行ったのでしょう。

豊穣の女神や勇者達を狙ったのがいい証拠です。

そしてここ、アンカジは、エリセンから海産系食料供給の中継点であり、果物やその他食料の供給も多大である事から食料関係において間違いなく要所であると言えます。

しかも襲撃した場合、大砂漠のど真ん中という地理から救援も呼びにくいので、魔人族が狙うのもおかしな話ではないでしょう。」

 

それを聞いたランズィ公は、低く唸り声を上げ苦い表情を見せた。

ランズィ「成程……魔物の事は聞き及んでいる。こちらでも独自に調査はしていたが……

よもや、あんなものまで使役できるようになっているとは……見通しが甘かったか。」

ハジメ「まぁ、仕方がありませんよ。王都でも恐らく新種の魔物の情報は掴んでいないでしょうし。

何せ、勇者一行が襲われたのもつい最近です。今頃あちこちで大騒ぎでしょうからね。」

俺がそう言うと、ランズィ公を含め彼等の部下達が深々と頭を下げた。

 

ランズィ「……ハジメ殿、ユエ殿、ミレディ殿。

アンカジ公国領主ランズィ・フォウワード・ゼンゲンは、国を代表して礼を言う。

この国は貴殿等に救われた。」

う~ん、領主たる者がそう簡単に頭を下げるべきじゃないんだけどね……。

まぁ、愛国心が並々ならぬものだということは伝わった。

だからこそ、周囲の部下達もランズィが一介の冒険者を名乗る俺達に頭を下げても止めようとせず、一緒に頭を下げているのだ。

この辺りは、息子にもしっかり受け継がれているのだろう。仕草も言動もそっくりである。

 

ハジメ「そうですね、お礼はもう少し後でお願いします。

それと、ご子息から死者が出ていると聞きましたが、その死体はもう埋葬しましたか?」

ランズィ「……は?」

ハジメ「もしかしたら、生き返らせることが可能かもしれないんです。お願いします。」

ランズィ「!?それは誠か!?」

実をいうとこの策は、ミレディ達から再生魔法について聞いた時に思い付いたものだ。

正直、魂魄魔法もあった方がやりやすいだろうが、生憎ない物ねだりは出来ない。

だが、それもライダーの力が合わされば、どうとでもなるはずだ。

 

ハジメ「……断定はできません。ですが、条件がそろえば、全員を理論上蘇生可能です。」

ランズィ「そうか……

その時点では魔法が原因だと判明していなかったから、未知の病である可能性も考慮して弔いも出来ていない。」

ハジメ「分かりました。その死体を、一か所に集めて下さい。

出来るだけ死体が傷まない場所が好ましいでしょう。」

ランズィ「了解した。……それで、アンカジには未だ苦しんでいる患者達が大勢いる……

それも、頼めるかね?」

一先ず落ち着いたランズィ公は、感染者たちを救う為、"静因石"の採取を俺達に改めて依頼した。

 

ハジメ「元々、【グリューエン大火山】に用があったので構いません。静因石に詳しい人もいますし。

ただ、どの程度採取する必要がありますか?」

あっさり引き受けた俺にホッと胸を撫で下ろし、ランズィ公は部下に資料を持ってこさせ、現在の患者数と必要な採取量を伝えた。

……こりゃ、相当な量が必要そうだ。

 

ランズィ「かなりの量が必要だ、荷物持ちぐらいならこちらから出すが?」

ハジメ「いえ、この量ならアーティファクトで運搬は可能です。」

ランズィ「……もう何でもありだな、これも神の御導きか。」

ランズィ公は最早呆れ顔だ。まぁ、俺達チート軍団だし、何より俺魔王だし。

 

そんなこんなで医療院へ行くと、とんでもない光景が広がっていた。

ハジメ「えっ、ちょっ、えっ!?思ったよりも早ェ!?」

シアを伴った香織は、獅子奮迅の活躍を見せていた。

緊急性の高い患者から魔力を一斉に抜き取っては魔晶石にストックし、半径20m以内に集めた患者の病の進行を一斉に遅らせ、同時に衰弱を回復させる様回復魔法も行使する。

その手際のいいこと早いことよ。これ、再生魔法手に入れたら、回復系で俺とタメ張れるんじゃ……。

 

一方のシアは、動けない患者達をその剛力をもって一気に運んでいた。

馬車を走らせるのではなく、馬車に詰めた患者達を馬車ごと持ち上げて、建物の上をピョンピョン飛び跳ねながら他の施設を行ったり来たりしている。

緊急性の高い患者は、香織が各施設を移動するより集めて一気に処置した方が効率的だからね。

尤もこの方法、非力な筈のウサミミ少女の有り得ない光景に、それを見た者は自分も病気にかかって幻覚を見始めたのだと絶望して医療院に駆け込むという姿が多々見られたので、余計に医療院が混乱するという弊害もあったらしい。

 

医療院の職員達は、上級魔法を連発したり複数の回復魔法を当たり前の様に同時行使、それも無詠唱でやり切る香織の姿に驚愕を通り越すと深い尊敬の念を抱いた様で、今や全員が香織の指示の下患者達の治療に当たっていた。

そんな彼等も、俺達が来たと知るや否や、医療院のスタッフや患者達が一緒にやって来たランズィ公に頭を垂れようとした。

 

それを手で制止しながら、ランズィ公は彼等の前に出ると、

ランズィ「皆の者、聞け!

たった今、オアシスを汚染していた原因が排除され、オアシスは完全に元に戻った!

水の確保も成った!救援が来るまで十分に保つ量だ。

更に、ここにいる金ランクの冒険者達が静因石の採取依頼を引き受けてくれた!後数日だ、踏ん張れ!

気力を奮い立たせ、この難局を乗り切ろう!」

耳に心地よいランズィ公のバリトンボイスが響く。

流石は北大陸の要所を治める貴族と言うべきか、その演説には力があった。

 

誰もが一瞬、何を言っているんだろうと戸惑った様に硬直していたが、領主の晴れやかな表情で言葉の意味が浸透したのだろう。

次の瞬間、建物が震える程の大歓声が上がった。

多くの人が亡くなり、砂漠の真ん中で安全な水も確保できず、絶望に包まれていた人達が笑顔を取り戻し始める。

患者やその家族達は互いに抱き合い、安堵に涙し、医療院のスタッフは仲間と肩を叩きあい気合を入れ直している。

うん、やっぱり笑顔が一番だ。

 

その時、ランズィ公がチラリと俺を見た。逃亡を恐れているのか?

ハジメ「……舐められたものだね。

この程度の問題、解決できないだの面倒だので投げ出す程、矮小なわけないでしょう。

それに、既に解決策は見えている。後はその術を身に着けてしまえば、万事解決は確定だ。」

ランズィ「!……失礼した。」

さも当然の事の様に告げる俺にランズィ公は目を見開く。

 

俺はランズィ公から視線を外し、香織に声を掛ける。

ハジメ「香織、何か手伝えることはあるかい?回復は勿論、分身や抗体生成なら、任せてくれ!」

香織「!うん!ハジメ君、お願い!」

なんかさっきより顔色良くなってないか?やっぱり愛の力かこれ?

 

その日は患者の治療に専念し、俺達は一夜を過ごした。

そして翌日……。

俺達一行は【グリューエン大火山】へと出発するのだった。

念のため、ミュウもつれていく。勿論、全身には、体温調節用のアーティファクトを身につけさせている。

誘拐の懸念もあるが、万が一の事態に、アンカジの民に危害が及んではいけないと思った俺の判断だ。




ハジメ
「ここまで読んでいただき、ありがとうございます!さて、今回のゲストは、こちらの方!」
ランズィ
「お呼びに預かり、光栄です。どうも、アンカジ公国領主、ランズィ・フォウワード・ゼンゲンです。
以前は愚息がご迷惑をおかけいたしました。」
ハジメ
「ホントだよ、前回は大変だった……。お宅の息子どうなってんの?」
ランズィ
「……領主としても、父としても頭が痛いものだ……。」
ハジメ
「……とても苦労している事だけはしっかり伝わった。アイリ―ちゃんの為にも、何とかしようか?」
ランズィ
「お気遣いありがとうございます。ですがこれは我が国の問題、貴殿の手を煩わせるまでもない。」
ハジメ
「真面目なこって。それじゃあ気分転換に。」
ランズィ
「うむ、次回予告、だったかな。」

次回予告
ハジメ
「遂に【グリューエン大火山】へと出発した俺達。静因石を採る上で様々な試練が立ちはだかる!」
ランズィ
「よもやここまで険しい環境だったとは……改めてハジメ殿に依頼してよかったと思う。」
ハジメ
「そろそろ火山の観光区でも設置しようかな?サンドワームと砂嵐が鬼門だけど。」
ランズィ
「……貴殿にとって、この世界の自然は観光で済むのかね……?」
ハジメ
「俺だけ例外なのでご安心を。そして冒険者達の未到達領域へ足を進める!」
ランズィ
「まさかさらに奥がこのようになっていたとは……マグマすらコントロールするものもあるのか……。」
ハジメ
「敵はマグマばっかり、熱気で皆汗だく、俺達どうなっちゃうの!?」
ランズィ
「それではどうか、次回をお楽しみに。」

もし今作品のハジメさんが、少しの間だけ別世界に飛ばされてしまったとしたら、どの世界に行くと思いますか?

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