ありふれない錬成師は最高最善の魔王の力で世界最強を超越する   作:天元突破クローズエボルハザード

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ハジメ
「お待たせいたしました。今回のオープニングゲスト、ポーン!」
重吾
「なんか……だんだん適当になっていないか?特に男性陣。」
ハジメ
「そう?あ、今回は"最強のお巡りさん"、永山重吾君に来てもらいました。」
重吾
「最強のお巡りさんて……いや、いいのか?」
ハジメ
「さて、紹介も済んだし前回のあらすじと行こうか。」
重吾
「おう、確かフリード首相との一騎打ち、だったか?」
ハジメ
「思えばあの時から、"縁ができた"のかもね。」
重吾
「さいですか……。それじゃあ、第5章第7話」
ハジメ・重吾
「「それでは、どうぞ!」」


54.二人交わす、ソノ月(アカ)

ハジメとフリードの技がぶつかり合ったその頃……

アナザーウォッチの影響で、存在が消失しかけて苦しんでいたティオに、またもや異変が起こった。

ティオ「うぅ……むぅ?急に楽になったのぅ?」

シア「!ティオさんの体が……!」

ミレディ「元に戻っている……ってことは!」

 

そう、突然存在の消失が止まったかと思えば、先程まで透けていたティオの体が徐々に戻りつつあった。

それはアナザーウォッチが破壊されたこと、即ちハジメが敵を倒したということだ。

しかし、当の本人は何故か直ぐに帰ってきていない。

トシ「ユエさん、ハジメはどうしている?アイツに限って万が一はないとは思うが……。」

ユエ「……ん、まだ連絡なし。でも、ハジメだから大丈夫。」

香織「そうだよね、だってハジメ君だからね。」

 

ユエ達はハジメの安否を心配をしながらも、引き続き患者の治療に当たった。

それから暫くして、患者の治療がひと段落ついて、ティオの容態も快方に向かっていたその頃であった。

ハジメ「ただいまー。」

ユエ・シア・ティオ・香織・トシ・ミレディ「「「「「ハジメ(さん)(君)(ン)!」」」」」

ミュウ「パパ!」

イナバ『王様!』

 

先程まで死闘を繰り広げていたであろう、ハジメ本人がようやく帰ってきた。

ユエ達はハジメに駆け寄り、その生還を喜んでいた。が、当の本人は少し申し訳なさそうな顔で答えた。

ハジメ「先ずは、ごめんね、ティオ。

俺がもたついていたせいで、苦しい思いをさせちゃったみたいだし……。」

ティオ「そう気に病むことではあらんよ、ご主人様。

ご主人様ならきっと何とかしてくる、そう信じておったのじゃから。」

 

ハジメ「そう……じゃあお詫びと言っちゃあなんだけど、膝枕とかどう?」

ミレディ「あっれぇ~?もしかしてハジメン、照れてるゥ~?」

ハジメ「……うるせぃ。」

若干頬を赤らめながら反論しても、全く説得力のない魔王であった。

皆の目が温かい視線になる。耐えられなくなったハジメがティオに助けを求める視線を送る。

 

ティオ「ふぅむ……妾としては添い寝が良いかの。それも耳元で愛の言葉つきでの♪」

ハジメ「俺を恥ずか死させる気か!?」

トシ「それで済むなら安いもんだろ。」

ハジメ「ぐぅ…分かっているよ。折角だ、両方やったらァ!……ユエ達にも後でやったげるから。」

ティオ「フフ、大盤振る舞いじゃの。」

 

ティオの優しい返事に、ようやくハジメも元の調子に戻ると、先程までのことについて説明した。

魔人族のフリードとの対話内容、神による精神干渉、そして背後に潜むタイムジャッカーの存在について、ハジメはユエ達に話した。

尚、ディンリードのことについては、ユエのことも考えて伏せておいた。

自分の敬愛する叔父が、肉体を乗っ取られていると知ったら、彼女は更に悲しむだろう。

そんな顔、守ると誓った魔王としてさせたくない。そう思ったハジメだった。

 

ハジメの話を聞いていたユエ達だが、ふとシアが気になったことを尋ねた。

シア「そう言えばハジメさん、あのフリードとかいう魔人族はどうなったんですか?」

ハジメ「……死んだよ。ウォッチの副作用に耐え切れなかったみたい。」

ユエ「……そう。」

ハジメの言葉に、何かを察したユエ。しかし、敢えて何も言わなかった。

 

その後、ハジメはランズィ達のもとへ向かい、とある提案をした。

ランズィ「ギルドに救援を依頼、ですとな……?」

ハジメ「えぇ。王国への救援要請も一応一緒に出しますが、それもいつ来るかは分かりません。

幸いにも俺達は商業都市のギルド支部長や、ユンケル商会のお偉いさんとも知合いですし、俺がゲートで彼等を運べば、道中の危険はないでしょう。

それに、こちらには彼等が欲しがる報酬がありますし。」

 

良い笑顔で提案するハジメ。確かに、救援物資は重要だが、それには準備が必要になってくる。

水源が確保されているとはいえ、まだ土壌自体は危険なのだ。その為、相手を選んでいる暇はないのだ。

ランズィ「分かった。こちらも書状を書き次第、貴殿に伝令を頼みたい。」

ハジメ「分かりました。こちらも向こうへの話を、予め通しておきます。」

そう言ってハジメが最初に向かった場所は……

 

 

ハジメ「……という訳なので、ギルドの一部を入り口として使用させてもらえませんか?」

イルワ「まさかそんな依頼をされるとは思ってもいなかったよ。それも、いきなり窓からきて。」

商業都市フューレンのギルド支部、イルワの所だ。

ハジメはまず、アンカジの現状と魔人族の侵攻度合いについて説明し、そのための対策を講じたのだ。

 

イルワ「……しかし、商人たちも馬鹿ではないからね。そう易々と商談に乗るとは思わないよ?」

ハジメ「そう?これが報酬だって聞いたら、全員飛びつくと思うけど?」

イルワ「……い、一体何を報酬にするつもりなんだい?」

ハジメ「宝物庫だけど?まぁ、量産型だから小屋一軒分しかないけどね。」

簡単に言ってのけるハジメに、思わず頭を抱えたくなるイルワ。

 

確かに"宝物庫"が貰えると聞いたなら、商人たちは迷わず飛びつくだろう。

何せ、神代のアーティファクトなのだ。

商人にとって常に頭の痛い懸案事項である商品の安全確実で低コストの大量輸送という問題が一気に解決、それも全商会に配布……間違いなく志願者が殺到すること間違いなしだ。

 

ハジメ「一応、ギルドにもアーティファクトを幾つか提供するつもりだけど……ダメかな?」

イルワ「……ハァ、分かったよ。こちらから商人たちに話は通しておくよ。だから……。」

ハジメ「あぁ、"宝物庫"の量産自体は完了しているよ。後、ユンケル商会にも勧誘お願い。」

イルワ「手が早いなぁ……。あぁ、それと一応君の名を使わせてもらうよ?」

ハジメ「二つ名無しでお願いね。まぁ、違法商人がいたらこっちでシバいておくよ。」

イルワ「フフ、楽しくなりそうだね……。」

イルワとの話を済ませると、早速作成しておいた宝物庫を一応多め(余ったらギルドに寄付する分込み)に渡し、アンカジへといったん戻り、次の場所へと向かった。

 

 

ハジメ「……という訳で、こちらがその救援依頼です。宜しくお願い致します。」

メルド「まさかいきなり窓からきて、そんなことを言いに来るとは思っていなかったぞ……。」

次に向かった場所は王宮、それも騎士団長であるメルドの部屋だ。

本来ならリリアーナに渡した方が一番手っ取り早いのだが、何かを察知したハジメが、急遽変更したのだ。

 

ハジメ「そう言えば、何だか王宮内に変な気を感じたんですが……異常とかはありませんでしたか?」

メルド「……相変わらず鋭いな。そうだなぁ、お前になら相談できるかもしれない。」

そう言うとメルドは、ここ最近起こっている不可思議な現象について話した。

メルド「……ここ最近、数人の者に"虚ろ"という奇妙な現象が起こっているんだ。」

ハジメ「……"虚ろ"?」

 

話を聞くとこうだ。

最初は下級の兵士や騎士等に表れた症状で、簡単に言えば無気力症候群と言うべきか。

仕事はキチンと果たすし受け答えもするのだが、以前に比べると明らかに覇気に欠け笑う事が無くなり、人付き合いも最低限となり部屋に引き籠る事が多くなる。

その症状は徐々に広がりつつあるらしい。

 

ハジメ「……何かの精神干渉の類ですかね。或いは……いや、そんなはずはない。」

メルド「何か心当たりがあるのか!?」

ハジメ「確証はありませんが……恵理の使う死霊術に、それに関連するかもしれない魔法がありました。」

メルド「何ッ!?」

ハジメはホルアドを発つ前のことを思い出しながら、事の顛末を搔い摘んで話した。

 


 

それは、ハジメがホルアドを旅立つ前。宿に香織達が来た時だった。

勿論、浩介の影の薄さを利用してお忍びで。

ハジメ「そう言えば、皆は修業をつけて貰ったらしいけど……どれぐらい凄くなったの?」

香織「えへへ~、それはもうとっても強くなったよ!」

雫「もう、香織ったら…ハジメ君に会えてうれしいのは分かるけど、浮かれすぎでしょ。」

クラスの二大マドンナに囲まれ、桃色空間に包まれつつも、ハジメは香織達のステータスプレートを見ていた。

 

ハジメ「……うん?恵理、この死霊術はどれぐらい使えるんだ?

流石に妹がリッチじみた行為をしているとなると、兄さんどうすればいいか分からないんだが。」

恵理「流石に酷くない!?それに、死霊術と言っても、死体だけを操れるわけじゃないんだよ?」

トシ「そうなのか?てっきりそう言った系統の魔法が多そうだと思ったんだが?」

その問いに恵理は首を振り、修行中に聞いたことを話した。

 

恵理「死霊術と一口に言っても、最初から死体しか操れない訳じゃなくてね……。

中には、相手を強制的に死なせてから操る魔法や、魂に干渉する魔法もあるって、ヒカリちゃんから聞いたの。」

彼女曰く、キョンシーやネクロマンサーといった死霊術を使うには、そもそも魂に干渉する必要があり、その魂の操り方によっては、死体が生きているように動かして見せる術や、自身や他の生者を死霊に変える術、死体に空の魂を乗り移らせる術等々、用途によっては相手の生気をなくすことも可能だと言う。

 

浩介「それ、敵に回ったら間違いなくヤバいよな……。」

ハジメ「お前の深淵卿に比べたらマシだろうに。」

浩介「それを言うなぁー!」

微妙な空気になりつつも、その後は門限まで談笑を楽しんだ一行であった。

 


 

メルド「……つまり、恵理がその魔法を知っている可能性がある、ということか?」

ハジメ「それは……分かりません。

でも、それが使えるとしても、アイツはあんなことをする奴じゃないんです。」

ハジメは迷っていた。今すぐにでも恵理に聞きに行って、真相を確かめたかった。

しかし、血は繋がっていないとはいえ、数年家族として一緒に暮らした仲だったのだ。

そう簡単に自分の仲間を、ましてや妹を疑いたくない。そんな思いが彼を鈍らせていた。

 

メルド「そうか…分かった。

こちらは取り敢えず、闇属性の魔法に精通している者を集めて、"虚ろ"の正体を探る。

もし対抗策が見つかったら、協力してくれ。」

ハジメ「えぇ、一応精神干渉をとく術はありますが……

もし死霊術なら、効果がないないかもしれません。気を付けてください。」

ハジメの言葉に強く頷くメルドだが、また難しそうな顔になった。

 

ハジメ「まだ何か問題でも?……もしかして、皆に何かあったんですか?」

メルド「いや、そう言ったものはなかったが……それよりもマズいことになってな。」

ハジメ「?どういうことですか?光輝達は無事ですよね?」

メルド「いや、問題になったのはな…ハジメ、お前達のことなんだよ。」

ハジメ「?」

意味が分からない、といった顔をするハジメに、メルドは意を決したように答えた。

 

メルド「お前達が、"異端認定"を受けるかもしれないんだ。」

ハジメ「あぁ、そんなことですか。それよりも物資の支援についてですが「待て待て待て!?」何か?」

メルド「あのなぁ、これは由々しき事態なんだぞ?教会からは勿論、王国からも狙われるんだぞ?」

ハジメ「そんなこと言ったって、こちとら正当防衛で神の使徒一体始末したので今更だと思いますが?」

平然と返すハジメに、メルドは驚きつつも頭を抱えたくなった。

 

リリアーナから情報を聞いたとはいえ、自分の教え子同然の少年が異端認定を受けることは、メルドにとってはショックだった。

しかし当の本人は、「寧ろドンと来いよ、全員纏めて返り討ちにしてやるからよぉ!」とでも言わんばかりの態度なのだ。

その実力も本物なので、余計に敵対したくないし、年端も行かぬ少年に同胞殺しはさせたくはないのだ。

 

ハジメ「あぁ、心配は無用です。光輝達が来ても、当身で済ませられそうですし。

メルドさん達やリリィにもそこまで酷いことはしませんよ。ただし、教会及びその勢力は別ですけどね。」

メルド「そう来たかァ……。」

もうこの際、コイツの好きにやらせておいた方が、人類にとっていい方向に進むかもしれない。

そんな考えが頭に浮かぶメルドであった。

 

ハジメ「それじゃあ俺はそろそろ……あぁ、忘れていた。」

戻ろうとしてゲートを開こうとしていた手を止め、"コネクト"で二つのアーティファクトを取り出した。

ハジメ「この指輪、浩介に届けておいてください。それとこっちは、メルドさんに。」

そう言ってハジメは、乳白色の鉱石に小さめの魔晶石が埋め込まれているペンダントを渡した。

 

メルド「お、俺にか!?浩介は分かるが……何故俺に?」

ハジメ「……何か、嫌な予感がしてならないんです……。念のため、逃走用のアーティファクトです。

それに魔力を送れば、安全地帯に転移できます。ただ、一回しか使えないので、お気をつけて。」

メルド「嫌な予感、か……分かった、大切に使わせてもらう。」

 

その後、アンカジからの救援要請の書類をリリアーナに届けてもらい、一旦ホルアドで素材の換金をした後、フューレンに立ち寄るハジメであった。

ギルドにて依頼を見て殺到した商人たちをさばいて送り、"朝の7時と夜の9時にそれぞれ転移する"という約定を取り付け、一緒にアンカジに転移し、後は残っている患者たちの治療補助をユエ達と行った。

 

そうして自分達がいなくても十分な位になった翌朝、ハジメ達は海上の町エリセンへ向かった。

その先に待ち受ける、運命的な出会いを、彼等はまだ知らない……。

 


 

……ここ、は……

 

……私は……一体……

 

――ま!――様!

 

……誰、だ……?私を……呼んでいる、のは……

 

???『フリード様ッ!』

 

ハッ!?

……私が目を覚ますと、そこにいたのは、私の顔を覗き込んでいたウラノスだった。

ふと周りを見ると、ウラノス以外には誰もいなかった。

……おかしい、先程女の声が聞こえたはずだが……。

 

???『あぁ、良かった!ご無事で何よりです!』

ッ!?また聞こえてきただと!?いや待て!声の聞こえる方にはウラノスしかいない!

他には誰も……誰、も……

 

???『……どうかなされましたか、フリード様?』

フリード「……。」

……いかん、どうやら余りの出来事に驚きすぎて放心していたようだ。

幻聴の類だろうか、ウラノスが念話を使えるようになるなどと……

ウラノス『もしや、先程の戦のダメージがまだ残っているのですか!?』

慌てながら私の周りをまわるウラノスがいる……私は深呼吸をして大声で言った。

 

フリード「一体何がどうなっているんだウラノスゥ―!?」

 

 


 

時はハジメとフリードの技がぶつかり合った時まで遡る……。

 

二人の技のぶつかり合いによって発生した、世界を包むほどの光がだんだんと収まってゆき、土煙がそこら中から湧き上がっていた。

そして、そんな煙の中に、佇む一つの影がいた。そして煙が晴れ、現れたのは……。

 

ハジメ「敵ながら見事だったぞ、フリード・バグアー。

私はお前という存在を、記憶の中にとどめておくだろう……。」

堂々とそこに立つのは、最高最善の魔王。我等がハジメさんである。

そして、フリードはというと……

 

フリード「ハ、ハハハ……まさか、ここまで実力差がはっきりしていたとはな……

ハァ…ハァ…全く……私もまだ未熟者だった、ということか……。」

敗北したにも関わらず、清々しい表情を浮かべ、大の字に倒れ伏していた。

相棒のウラノスはその近くに横たわっており、息をしてはいるものの気絶していた。

 

ハジメ「確かに、実力としては私には及ばないだろう。

だが、同胞を想うその心意気は、私にも劣らぬ気高さがあったぞ。

現に私も、自分が殺したお前の部下の名を、覚えておこうと思う程に心を動かされたのだからな……。」

そう言いながら、手を差し伸べるハジメ。その声色は、とても優しそうな雰囲気であった。

 

ハジメ「認めよう、フリード・バグアー。お前は間違いなく、魔人族における勇敢な戦士だと。」

フリード「ハァッ…ハハッ…最高最善の魔王とやらに、そう思ってもらえるとはな……。」

自分が絶対に追い付けないであろう相手からの賛辞に、諦め半分と嬉しさ半分で答えるフリード。

そんなことを同胞以外から言われるとは思ってもいなかった。それも同胞を殺した相手から、だ。

 

目の前の相手は、自分達を一方的に嬲り殺せる力を持っている。それも圧倒的な力で。

それにも関わらず、相手を一人の敵として相対し、最期の時まで戦争相手の魔人族として扱い、彼等の死後を決して嗤うことはなかった。

 

そして不遜にも立ち向かった自分を、一人の戦士として認めたのだ。

自身が殺した敵の名を覚えようと思うまでに、自分はこの男を動かしたのだ。

これ以上の成果はないだろう。これ以上はもう望めない。何故なら、自分は負けたのだから。

だがせめて、自分に最期まで寄り添ってくれた相棒には、この先も生き延びてほしい。

 

フリード「ガハッ……ハァッ……頼みを…聞い、て…くれるか……。」

ハジメ「?何だ?」

フリードは疲労困憊の体に鞭を打ちながらも、ウラノスを指さした。

フリード「ハァッ…大事な、相棒、を……たの…む…。」

そう言ってフリードは、意識を失い、その場に倒れた。

 

ハジメ「ハァ……やれやれ。全く、世話のかかる男だ。」

そう言いつつも、ハジメはウラノスの方へ向かった。

気がついたウラノスは近づいてくる相手に警戒心をむき出しにしつつも、主を守ろうとその体を動かそうとしていた。

 

ハジメ「心配しなくてもいい。このまま生かすつもりだ。お前も、お前の主もな。」

そう言ってハジメは、因果律操作でウラノスとフリードの傷を治した。

突然の行動に思わず困惑するウラノス、するとハジメさんは懐からある物を取り出した。

それは、一本の試験管だった。中身は勿論、神水だ。

 

ハジメ「こいつをくれてやる。私を楽しませた礼だ。」

そう言ってハジメが試験管を投げると、ウラノスは反射的に口に含んだ。すると……

ウラノス「ク、クルァ……?」

イナバの時と同様に、力が漲るウラノス。そして念話が使えるようになったのか、ハジメに話しかける。

 

ウラノス『何故……私とフリード様を、助けたのですか?』

ハジメ「そうさな……しいて言うなれば、その男が気に入ったというところだろうか?

まぁ、お前を生かす理由は唯一つだ。その男、絶対に死なせるなよ?殺すには惜しい男だからな。」

そう言うとハジメは、オーロラカーテンを出現させた。

 

ハジメ「この先はライセン近くの草原に繋がっている。

そこから国に帰るなり、どこかで隠れるなり、後は好きにしろ。」

そう言って、オーロラカーテンでフリードとウラノスを移動させたハジメ。

一人と一匹がいなくなった後、ハジメはつぶやいた。

 

ハジメ「全く……俺も甘くなったものだ。

敵をみすみす逃した上に、塩まで送ってしまったとあっては、光輝の事は言えんな……。」

自分を卑下していたその表情には、どこか嬉しそうなところが見られた。

正直、とても楽しかったのだ。

これほどまでに楽しい戦いは、特服で全国制覇を成した時以来だったからだ。

(尚、ついその気になってやってしまったので、後から辞退した。しつこい奴等は返り討ちにした。)

 


 

ウラノス『そうしてガーランドヘ移動した私は、フリード様が目を覚ますまで、周辺の警護をしておりました。』

フリード「……そうか……。」

理解し難い状況をウラノスから聞いた私は、一旦間を置き、状況を整理した。

 

ウラノスの言っていた通り、我が懐かしき故郷、魔国ガーランドの夜空が広がっていた。

向こうに氷雪洞窟が見えるのがその証拠だ。

ウラノスの先程の話が真実ならば、私は敵に見逃された、ということなのだろうな……。

そして大声で叫びたい気持ちを抑えながら、心の中で回想にツッコんだ。

 

いくらなんでも敵に塩を送りすぎだろ南雲ハジメェー!?

確かに相棒を強くしてくれたのは嬉しいがな!?認めたとはいえ敵にそこまでやるか普通!?

後ウラノスもウラノスだ!敵から貰ったものをいきなり飲むな!?毒かもしれないのだぞ!?

幸いにも、真逆の効果が出たがな!?反射的にとはいえダメだろ―!?

そしてなぜ嬉しそうに答えた私ィ―!?目の前にいる奴は、魔人族の宿敵になり得る男だろ―!?

 

ゼェ……ゼェ……ひとしきり心の中で叫んだ私は、ウラノスの方へ振り返った。

当のウラノスは私に見つめられていることに、キョトンとしている。

……ハァ、奴との戦いに生き延びたことを誇るべきだろうか、それとも生かされた己の不甲斐なさを恥じるべきだろうか……。

 

…いずれにしろ、部下たちや陛下にも報告せねばなるまい。

あの男は異常だ。私に友好的な印象を持ったとはいえ、奴は人間側。油断はできん。

恐らく、レイスやカトレアを葬った際にも、全く本気を出していないだろう。

そんな化け物と敵対すれば、多くの同胞達が危険に晒される。迂闊に手が出せんな……。

 

それに、進化した我が相棒のことも気になる。一体奴はウラノスに何を飲ませたのだ?

ただの水で念話が強くなったり、魔力量が上がるとは思えん。霊薬の類か?

とはいえ、気に入っただけであれ程の霊薬をいとも簡単に渡すとは思えん。

 

……ダメだ、情報が少なすぎる。奴はイレギュラーだなどという、容易い存在ではない。

では何と言えばいい?そんなことわかる訳がない。

得体のしれない何かが、奴の中に眠っているとしか言えない。

 

一先ずは、奴に好感を持たれてることだけでも収穫か。

上手くいけば、他の大迷宮や神代魔法について、聞き出せるやもしれん。

ククク……そう考えればこれは好機と言えるな。我ながら恐ろしい考えが浮かんだものだ。

そう思うことにしたおかげか、幾分か心労が減ったと思える。それにしても……

 

いやぁ~、ほんっとあっぶなかった……。最近、失敗続きのせいか胃痛が続いていたからなぁ……。

何故か、抜け毛も増えていたせいで、若ハゲも気になってきたから、ほんっとよかったぁ……。

これなら厳罰は下るかもしれないが、即「おかえり、死ね!」なんてことにはならないだろう。

後は僅かな情報で、どれだけ対策が立てられるかだ。それに私の命運がかかっている。

 

……ただ、陛下が本当に魔人族なのか、少し疑わしくなってきたがな……。

南雲ハジメが見せたあの映像……

本当に陛下は、アルヴ様が乗り移っただけの存在であって、肉体は吸血鬼なのか……?

……これは誰にも相談できんな……私自身の目で確かめろ、ということか。

やれやれ、生き延びたと思えばこんな悩みを持つとはな……難しいものだ。

そう思いながら、私は空を見上げた。

そこに移っていた月は、まるで鬼灯のように夜空に紅く輝いていた。

 


 

一方同じ頃、アンカジにて……

ハジメ「紅い月、かぁ……。まるで、鬼灯のような紅だなぁ……。」

ミュウ「みゅう……すぅ……。」

フリードと同じく、夜空に浮かぶ月を見上げるハジメがいた。

その腕にしがみついて寝ているミュウを抱えながら、その光景に感慨深く呟いた。

 

既に町では、商隊による支援が始まっており、徐々に回復の兆しを見せていた。

土壌や作物の回復はままならないものの、状況はよくなっているようだ。

商人達も報酬の"宝物庫"にニヤケ顔が止まっていない。以前出会ったモットーもその一人だった。

 

明日の明朝に出発するので、ユエ達はまだ眠っている。

深夜、急に目が覚めたハジメは、空を見ようとして外に出ようとしたはいいものの、腕枕で寝かせていたミュウが腕にしがみついてきたのだ。

まるで「パパから離れたくない!」と主張しているかのようで、「寝ていてもそれは変わらないのか。」と苦笑いしながら、風邪をひかぬ様暖かくしてそのまま連れてきたのだ。

 

同じ頃に違う場所で、同じ空を見上げる二人。相容れぬ筈の二人の道が交わる日は、来るのだろうか。

その答えを知るのは、ただ浮かんで見下ろすだけの、夜空の紅月(あかつき)のみである。




ハジメ
「ここまで読んでいただき、ありがとうございます!さて、今回のゲストはこちら!」
フリード
「魔国ガーランド首相、フリード・バグアーだ。この度は機会を頂き、感謝する。」
ハジメ
「おう、こっちこそオファー受けてくれてサンキュ!いやぁ~それにしても……。」
フリード
「?なんだ?」
ハジメ
「お前、あんな心境だったのか?若ハゲって……。」
フリード
「ストレス過多になるとそうなるのだよ!主に誰かのせいだったがな!」
ハジメ
「そうか、だが俺は謝らない。だって俺も肉体のストレスでハゲそうだし……。」
フリード
「……今のは聞かなかったことにしよう。それでは、次回予告だな。」

次回予告
ハジメ
「ハジメです。ここらで漸く(ミュウ)を母親のもとへ送り届けることができます。
少し王国の方が騒がしいので、残してきた皆が心配ではありますが……。
さて次回は、『雫、猫になる』『フリード、変成魔法でハゲを治す』『うp主、廃課金で破産する』の3本です。」
フリード
「いきなり違うものになっているではないか!?後、3つ目に至っては作品に関係ないものだろ!?」
ハジメ
「なんか……普通に予告するのに飽きちゃって。」
フリード
「せめて次回の内容だけでも触れろ!いきなり意味不明だと読者達が混乱するだろうがァー!」
ハジメ
「分かったよ。次回はしずにゃんとリリィの談笑だね。」
フリード
「お前、全然分かっ、て……。」
ハジメ
「うん?どした「しずにゃん、ねぇ……。」の……。」

「フフフ……。」(笑顔で愛刀構えながら)
ハジメ
「あっ……。(察し)」
フリード
「……それでは、次回も楽しみにしてくれ!」

リースティアさん、誤字報告ありがとうございました!

もしこの中の他作品の女性キャラで、ハジメさんに絡ませるとしたら?

  • 星野アイ
  • 篠ノ之束
  • ラキュース(オーバーロード)
  • ヤマト(ONEPIECE)
  • 歌住サクラコ
  • シェーレ
  • 白織
  • イーディス(SAO)
  • エキドナ(リゼロ)
  • 八重巫女
  • 東堂刀華
  • 大好真々子
  • 森ノゾミ
  • スヤリス姫
  • ロード・ディアーチェ
  • 鬼龍院皐月
  • 湾内絹保
  • 安心院なじみ
  • ネプテューヌ
  • ウィズ
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