ありふれない錬成師は最高最善の魔王の力で世界最強を超越する   作:天元突破クローズエボルハザード

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ハジメ
「うp主が最近、アイ生存IF推しの子二次創作にハマったせいで更新が遅くなった今日この頃。
今回からゲストさんはモブ9人衆書籍名簿順でお送り致します。」
優也
「いやモブ9人衆って……紹介雑だなオイ。」
ハジメ
「いやね、正直トップバッターが常識人でよかった!ホントマジで……!」
優也
「どんだけ苦労してんだよ……あ、どうも。苦労人狙撃手、鈴木優也です。」
ハジメ
「いやだって初っ端からイロモノはお腹にキツいでしょ?読者さんの眼にも優しく配慮しないと。」
優也
「……まぁ、確かにな(後ろの二人を見て)。」
ハジメ
「前回は旧教会への宣戦布告、さて今回はオッタマゲなことになるよ~!」
優也
「はいはい。それじゃ、第5章第20話」
ハジメ・優也
「「それでは、どうぞ!」」


67.Aの奇跡/時代の動く場所

老害共の処刑から数分後。

ランズィ「取り敢えず死者達はリストの並び通りにここに集めているが……どうするつもりだ?」

ランズィ親子によってアンカジの民衆は浄化された作物の周辺に留められ、今回の一件で亡くなった死者達の遺体も全てその近くに周辺に移送された。

人々はその中に家族や友人を見つけ、その胸に悲しみと寂寥感を思い出す。

 

その姿に心を痛めながら、ランズィは私の意図が読めず疑問符を浮かべている。ユエ達も同様だ。

私はランズィの問いに答えず、数歩前に踏み出す。すると案の定、人々の注目は私に集まる。

ハジメ「今から少し皆を驚かせるが、害の無い事は約束しよう。故に、静かに見ていてくれ。」

私はそう前置き、全ての魔晶石を地面に置き、"宝物庫"からあるものを取り出した。

 

オスカー『あれは……眼魂かい?』

ナイズ『それにしては……多くないか!?』

二人の言う通り、ここにいる遺体全員の眼魂だ。

いつ手に入れたのかだと?

ランズィから貰ったリストで死亡時期を特定し、その時間軸にてこっそり回収しただけだ。

それを全員分やったのだから、中々に堪えたがな。

 

そうして、ランズィのリストの順に、その眼魂を遺体の上に置く。

メイル『まさかと思うけど……あれで終わりじゃないわよね?』

当然だとも。そう返すように、私は笑みを浮かべる。

全ての眼魂を遺体に乗せ終わると、私は魔晶石の近くに立ち、奥義の一つを解放した。

 

ハジメ「ハァッ!!!」

("その時、不思議なことが起こった!")

途端、その場を眩い光が包み込んだ。それは暫く続くと、温かさを放って収まった。

先程とは何も変わっていないように見えるその光景に誰もが困惑の声を上げ……

次の瞬間には驚愕に固まった。

 

「……んぅ、あれ? 俺は……」

「私、何で……」

「おかあさん……?」

何と遺体が、先程まで遺体だった筈の人々が目を開けた。声を上げた。体を起こした。

ある程度の時間差はありつつも、皆炎が落ちて数秒後、まるでただ眠っていただけの様に起き上がった。

その姿からは、病に侵された弱った様子は一切無い。オアシスが汚染される以前の、健常な姿だった。

その光景を見た人々は数瞬の沈黙の後……

 

──歓声に包まれた。

 

皆、もう会えぬと思っていた大事な存在を抱き締め、涙を流している。

先程まで死んでいた者達もまた、自分達は死んだ筈という記憶と目の前の光景が嚙み合わず、何が何やら分からないながらも笑顔を浮かべて抱き返す。

 

ランズィ「こんな……こんな奇跡が!」

目の前で繰り広げられた有り得ない奇跡に、ランズィ達は驚愕で声を大に涙を流す。

これは夢ではない、夢の様な現実だ。神の所行とは、正しくこの様な事を言うのだ。

尤も、私は魔王なのだがな。

 

私が神に遣わされた救世主ではなく、正にアンカジを救う為に地上に立った神なのだと本気で思ったのか、民も、兵も、医者も、皆再会の喜びと共に私への感謝を口にする。

神だと崇めだす者も現れ始めたが、流石に勘弁してもらおうとしたその時。

 

ハジメ「ッ!!」

ッ……流石に……無茶、しすぎた、か……。

急激に力が抜けていくのと同時に、私は地面に倒れ伏していった。

意識を失う直前、ユエ達の声が響いていたことだけは、無意識だがなんとなく分かった。

 


 

ユエ「ハジメっ!!」

シア「ハジメさん!!」

ティオ「ご主人様っ!」

香織「ハジメくんっ!」

トシ「ハジメっ!!」

イナバ『王様っ!!』

ミレディ「ハジメン!!」

 

咄嗟に飛び出たユエ達がハジメの下へ駆け寄る。

先程正体不明の技能を使った後、急に意識を失い、倒れてしまったハジメに、ランズィ達やアンカジの人々も心配そうな表情で駆け寄る。

ランズィ「ハジメ殿っ!大丈夫か!?」

ランズィも呼びかけるが、反応がない。もしや、死んでしまったのでは!?と周囲が混乱する。

 

ティオ「皆の衆、落ち着くのじゃ!」

しかし、ティオの一声で騒然としていた場は何とか鎮まる。

それを確認したティオは、仲間や周囲に促す。

 

ティオ「先ずは、ご主人様を安静にせねばならぬ。領主殿よ、部屋を借りてもよろしいかの?」

ランズィ「勿論だとも!幾らでも使ってくれ!」

ランズィの快諾を受け、ユエ達はハジメを部屋まで運んだ。

そして、香織による診察の結果は……

 

シア「えッ!?ただの魔力切れ、ですか?」

香織「うん……ステータスプレートの魔力もさっき見た時だいぶ減っていたし……。」

何と、ハジメが倒れた理由は、急激な魔力枯渇による疲労だった。

その原因に肩を落としつつも、ホッとする一同。取り敢えず、命に別状はないようだ。

 

ミレディ「それにしても、さっきは凄かったね!

ミレディさん達も、あんな凄い蘇生術なんて見たことないよ!」

ユエ「……ん、でも眼魂はどうやって集めたか、分からない。」

ティオ「恐らくじゃが前々からではなかろうか。ご主人様は、やる時はとことん用意周到じゃからのぅ。」

トシ「……もしかしてさっきのやつ、大量に魔力を消費するんじゃないか?

だからさっき、魔晶石を地面に置いていたんじゃ……。」

 

イナバ『確かに……それほどの魔力を消費する秘術、ってことでしょうかね?』

メイル『……さっき、宝物庫にしまわれた魔晶石だけど……全部空になっていたわ。』

ナイズ『余程大量の魔力を消費するのだろう。

もしこれほどの魔力が無ければ、どうなっていたことやら……。』

オスカー『そうだ!そう言えば、神水があったはずだ!それで一旦魔力を回復させよう!』

と、オスカーの案で、神水を飲ませることになったものの、誰が飲ませるかでまた討論が始まったのは言うまでもない。

 


 

……ぅ、うぅ、う~ん……なんか、騒がしい……

そう思って目を覚ますと、ユエ達が驚いてこちらを覗き込んでいた。

ユエ・シア・ミレディ・香織・トシ「「「「「ハジメ(さん)(ン)(君)!」」」」」

ティオ「ご主人様!」

イナバ『王様!』

うぉっ……痛っう~、まだ頭が……

 

ユエ「!ハジメ、これ!」

ハジメ「うん?……あぁ、神水か。サンキュ。」

そう言って差し出された試験管一本分の神水を一気に飲み干すと、幾分か体が楽になった。

そう言えばあったなこれ、死蔵していたからかすっかり忘れていた……。

 

その後、香織がランズィ公を呼んできたので、早速事情を話すことに。

ハジメ「いやぁ、すいません。ご心配をおかけしたようで……。ちょっと無理し過ぎちゃいました。」

そう笑って言いながら、ベッドの上で横たわる俺。流石に無茶をし過ぎたと、自分でも思う。

一応、意識は回復したものの、今日は商隊の転移は無理そうだ。

ランズィ「それで、ハジメ殿。貴殿が発動した術はいったい……?」

まぁ、そりゃあ気になるか。よし、折角だから言っちゃうか。

 

ハジメ「あの術の名は、"その時、不思議なことが起こった!"。

技能名はヘンテコな風に聞こえるけど、本来は出来ない奇跡も術者の魔力量次第で実現させる、ある意味俺の最終兵器の一つだよ。」

全員「!?」

驚くのも無理はない。何せこれは、俺の持つ奥の手中の奥の手の一つ。

何が起こるかはほとんどランダムな上に、魔力量によっては別の方法になってしまう恐れもあるのだ。

だが逆に、その奇跡に足る以上の魔力があれば、確実に起こせるという、ある意味最強の魔法だ。

 

ランズィ「そんな凄い術が……。」

ハジメ「まぁ、今回は結構大人数だったからね。一応魔晶石を下に置いといてよかったよ。

もし魔力が足りなかったらどうなっていたことやら……正直起きた時には冷や冷やしたよ。

戻ってこなかった人はいないか心配だったし……。」

そんな民のことを優先的に考えている俺に、皆呆れつつも苦笑いしていた。

因みに、俺はあの時から丸一日眠っていたらしい。時間ロスしちゃったなぁ……。

 

そして、騒動から三日。

農作地帯と作物の汚染を浄化した俺達は、輝きを取り戻したオアシスを少し高台にある場所から眺めていた。

視線の先、キラキラと輝く湖面の周りには、笑顔と活気を取り戻した多くの人々が集っている。

湖畔の草地に寝そべり、水際ではしゃぐ子供を見守る夫婦、桟橋から釣り糸を垂らす少年達、湖面に浮かべたボートで愛を語らい合う恋人達。訪れている人達は様々だが、皆一様に笑顔で満ち満ちていた。

 

ハジメ「ふぃ~、風情だねぇ~。フルーツパラダイスはとても良かったなぁ。」

そう独りごとを呟く俺。

実を言うとあの後、俺が目を覚ましたのを聞きつけたのか、アンカジの皆が大量のお見舞いを持ってきてくれたのだ。

 

お守りやお人形などがあったが、一番多かったのは名産品のフルーツだった。

俺は皆の気遣いに感謝しつつ、出されたお膳を残さず平らげた。

そのおかげか、次の日にはもう完全に回復した。

それと同時に、技能欄にこんな技能が追加されていた。

 

――無限の胃袋(アンリミテッドハングリーワークス)

効果:その無限の胃袋は、満足や満腹というものを知らない。食べる事こそが、わが宿命にあり!

そうして蓄えた無数の命は、我が力へと変わる!……

 

厨二感があるだけじゃなく、人をブラックホール見たいに言いやがるこの説明文。

正直プレートをへし折りそうになったものの、その効果を要約するとこのようだ。

 

効果:食べた分だけ強くなり、魔力も回復、それらを蓄えることも可能なり。

その成長と容量は限界知らずである。

ただし、食への感謝を忘れるべからず。それを忘れること即ち、汝はただの畜生である。

 

つまり、「いくら食べても大丈夫!その分蓄えて強くなれるから!

ただし、いただきますとごちそうさまは忘れないように!」ってことだろう。

使いどころは分からんが、また魔力を大量消費する場合もあるのであるに越したことはないだろう。

 

という訳で、試しに死蔵しまくっていた魔物肉を、一個ずつ感謝しながら食いまくった結果……

先程まで空っぽだった魔晶石が、魔力で一杯になっても、まだ食べた分の半分以上は残った。

後何故か技能欄に"食没"が追加された。なんでやねん。

 

まぁ、燃費が10分の1くらいにまで抑えられるようにはなったようで、実験がてらちょっと小さめの魔力弾を空に撃ったら、大爆発が起こって驚いた。

他の技能も試そうと思ったけど、アンカジの皆さんの心臓に悪いのでやめておいた。

この前も新技披露したせいで、めっちゃ驚かれたし……フレンドリーだ、俺!

 

そんなこんなで、俺達は今日、アンカジを発つ。

すっかり回復した俺は、その後も収束錬成で砂金を集めて金塊を鋳造したり、魔法が付与された属性武器を兵士全員に配布して使い方を教えたり、ランズィ公にも特製アーティファクトをあげたりと色々サービスをして過ごした。

 

アンカジにおける俺達への歓迎ぶりは凄まじく、放っておけば出発時に見送りパレードまでしそうな勢いだったので、ランズィ公に頼んで何とか抑えてもらった程だ。

見送りは領主館で終わらせてもらい、俺達は自分達だけで門近くまで来て最後にオアシスを眺めているのである。

 

後、アンカジにおけるドレス衣装が贈られたが、所謂ベリーダンスで着る様な衣装だった。

チョリ・トップスを着てへそ出し、下はハーレムパンツやヤードスカートだ。

非常に扇情的で、小さなお臍が眩しい。この衣装を着て踊られたりしたら目が釘付けになる事請け合いだ。

領主の奥方からプレゼントされたユエ達がこれを着て披露した時、お腹冷やさないかな?と思ってしまったのは内緒で。

そんなことを思いつつもオーロラカーテンを開き、俺達はアンカジを後にした。

 

そして……

ハジメ「ごめんくださ~い。」

イルワ「……態々小さくなってまで来たのかい?」

取り敢えず最初にイルワさんのところへ行った。

 

今回の異端認定で、俺達の行動が制限される。

フューレンとアンカジを行き来する転移の休止について、報告をしなければならなかったのだ。

最初は神殿騎士達もこちらにやってきてはいたが、商人達がのらりくらりと巧みな話術で躱してくれたようだ。

 

"宝物庫"の配布は大きかったようだ。やはり商人との付き合いで大切なのは、"信頼"だろう。

何せ、"商品の安全確実で低コストの大量輸送"に加え、俺の開発した冷凍鉱石、通称「凍獄石」による異世界版冷蔵庫の存在もデカいのだ。

 

因みに、完成品第一号機はミュウとレミアの家に置いてある。

風呂上がりの牛乳をミュウが気に入ったらしく、お願いされたので備え付けておいた。

勿論、風呂も既に取り付けてある。レミアが一緒に入ってきたのは、最初は驚いた……。

ミュウにはまだ性知識は早いっちゅうに!いやマジで、本当に危なかった……。

 

ハジメ「とまぁ、話は以上です。長居すると怪しまれそうなんで、この辺で。」

と、俺がササッと出ていこうとすると、イルワさんから引き留められた。

イルワ「あぁ、少し待ってくれ。君に会いたいというお客さんがちょうどいてね。

是非会ってもらいたいんだ。言っておくが、教会関係者ではないから、安心してくれ。」

ハジメ「?よく分かりませんが、会ってはみます。」

 

そんな訳で、客間へと足を運ぶと……小柄で目深にフードを被っている二人組がいた。

見た目は物凄く怪しそうだけど……悪意とかは感じないし、大丈夫か。

そう思っていると、フードの二人は顔を上げてこちらを向いた。……ってその顔は!

 

リリアーナ「ハジメさん!」

愛子「ハジメ君!」

ハジメ「リリィ!それに愛ちゃん先生も!」

まさか二人が来ていたなんて……一体どうやって奴等の追跡を撒いたことやら。そう言えば浩介は?

アイツは中々の手練れだから心配はなさそうだが……外の警戒かな?

 

浩介「いや、俺もいるんだけど……。」

ハジメ「うおっ!?浩介!そこにいたのか!やっぱお前が護衛でホント良かったわ!」

浩介「それ、褒めてるのか?褒めてるんだよな?」

ハジメ「この上なく、最強の護衛だぞ!よく来てくれたな、友よ!」

イルワさん達も驚いてはいるようなので、改めて三人を紹介する。

 

イルワ「……ハジメ君はあまりにも規格外すぎるせいか、もうあまり驚かなくなったよ。」

ハジメ「ハハハ……まぁ、色々ありまして……。」

思わず苦笑いしてしまったイルワさんに、なんて返せばいいか分からなかった。

だって、王女様までお忍びで会いに来るんだぞ!?説明つかねぇよ!?

もし俺がイルワさんの立場だったら、胃が死ぬ。間違いなく。

 

ハジメ「まぁ、何はともあれ、だ。三人とも無事でよかったよ。

奴等の刺客が十中八九追ってくるかと思っていたんだが……

流石に浩介を把握することはできなかったか。うん、やっぱお前、人間で人外だわ。」

浩介「どういう意味だ、ゴラァッ!?」

いや、だって自動ドアも反応しない、出席はいつも忘れ去られる、修学旅行でも置いて行かれる、そんな人間居るか普通?

……いや、ここに一人いるけども。それって人間にカウントできるのか?

 

ハジメ「まぁ、積もる話もあるし。場所を変えよっか。」

そういう訳で、俺はこれまでのことを説明するため、後イルワさん達に迷惑をかけないためにも、オルクスの隠れ家に転移することにした。

ユエ達には先にそこで待っていてもらっているので、後は作戦会議だけだ。

さて、どうやって神山を攻略しようかと、呑気にそんなことを考える俺であった。

 


 

【ハイリヒ王国】の王宮敷地内にある騎士や兵士用の食堂に、どこかイライラとした雰囲気の女子生徒──園部優花の姿があった。

優花はただでさえ切れ長な目元をギンッと吊り上げながら、睥睨する様に食堂内を見渡す。

幾人かの兵士と思われる青年達が、そんな優花の視線を受けてビクッと体を震わせた。

 

優花「ここにもいない……か、あぁもうっ!アイツ等、肝心な時に限ってっ!」

栗色の髪を少々乱暴に掻き上げつつ、優花は苛立ちを露わにする。そして更に兵士達をビクッとさせつつ踵を返した。

 

優花「訓練場にも、隊舎にも、食堂にもいない。……やっぱり、街に出たって事?」

独り言を呟きながら、優花は王宮正門の門番詰所へと進路を取る。

ズンズンと音が聞こえてきそうな足取りだ。

奈々「優花っち!」

進撃するかの様な勢いの優花に声が掛けられた。パタパタと走って来たのは宮崎奈々だ。

 

奈々「こっちにはいなかったよ。そっちは?」

優花「食堂にはいなかったわ。さっき玉井くんと妙子にも会ったけど、やっぱりいないみたい。

二人共、他の施設を見に行ってくれてるけど……多分王宮内にはいないんじゃない?」

奈々「だよねぇ。私も相川君達とさっき会ったけど、やっぱりいなかったって。あぁもう!

こんな時にアイツ等、何処ほっつき歩いてんのかなぁ!愛ちゃん先生の護衛失格だよ!」

奈々が頭を抱えて「うがーっ!」と叫んだ。

 

二人──

正確には愛ちゃん護衛隊のメンバーが探しているのは、同じ愛子の護衛隊であるデビット率いる神殿騎士達だった。

3日前、生徒達との夕食の席に現れなかった愛子。

代わりにやって来た教皇イシュタルによれば、ハジメの異端者認定について「覆す事が出来るかもしれない。」と急遽本山に入ったのだと言う。

審議や手続き等で直ぐには戻れないが、2~3日もすれば顔を見せるだろう、と説明を受けた。

 

事前に愛子と接触していた雫から、愛子より重要な話があると聞いていたので当然優花達は訝しんだ。

取り敢えず愛子の所へ行こうと本山入りを訴えたのだが、異端者認定の対象である人間と親交のある者をこのタイミングで入山させる訳にはいかないと断られ、不安に思いながらも2~3日ならと待つ事にしたのだ。

 

しかし3日目の今日。既に昼を過ぎたこの時間になっても、愛子に関する情報が何も手に入らない。

本山行きのリフトは停止したままで、教会関係者も要領を得ない説明しかしない。

痺れを切らした優花達は一先ず、デビット達神殿騎士に現状を尋ねようとしていた訳だ。

しかし、昨日の夕方までは姿を確認していたデビット達まで今日の朝には姿を晦ませてしまった。

何処を探してもいないのだ。最早街に行ったとしか考えられないのだが、この状況で愛子溺愛者である彼等が街中をふらつくとも思えない。

 

優花「……嫌な、感じね。」

歯噛みしながら、優花はここ最近の王宮内の異様な雰囲気と、姿を消していく身近な人々を思い、まるで背筋に虫が這っているかの様な恐怖を覚えた。

するとそこへ、

 

雫「優花?それに奈々も……?」

やって来たのは雫だった。

優花達へ呼びかけながら、しかし誰かを探している様に周囲へチラチラと視線をやっている。

雫「デビットさん達は……その様子だと、まだ見つかってないみたいね。」

優花「うん。そっちも、団長さんとは会えなかったみたいだね。」

優花の言葉に、雫は憂いを帯びた表情で目を伏せる。

 

あの日から姿を見せなくなったのは愛子だけではない。

メルドやリリアーナを筆頭に、雫の専属侍女兼友人であるニアを始めとした幾人かの使用人達。

他にも訓練等で親しくなった騎士や兵士等も、何かと理由をつけて会えなくなっている。

 

奈々「ねぇ……優花っち、雫っち。……大丈夫、だよね?」

雫・優花「「……。」」

奈々が、どこか怯えた様子で問うた。だが二人共、いつもの様に「大丈夫!」と即答する事が出来なかった。

──何かが起きている。

漠然とした不安感が、二人から余裕を奪い去ろうとしていた。

 

雫(こんな時に、貴方がいてくれたら……)

優花(こんな時に、アイツがいてくれたら……)

 

無意識に、雫と優花は同じ方向を見た。

それは遥か西の空。思い浮かべた人物は同じ。

滅茶苦茶で理不尽で恐ろしいが、疑い無く頼りになる一人の王の背中だった。

 


 

浩介「そして俺はいないことにすら気づかれないのだった……ハハッ、笑えよ。」

ハジメ「どうした浩介?お前の影が薄いのはいつものことだろ?影のドンだし。」

浩介「大きなお世話だ、てか誰が影のドンだ。」

この時、ハジメ達以外に影の立役者がいないことには、誰一人気づいていなかった。

そして誰も知らなかった。この男こそが、最強の一人であることに。

 


 

暗い何処かの部屋。それなりの広さがあるその場所に、幽鬼の様に立つ無数の人影があった。

誰も彼も微動だにせず、ただ佇んでいる。

そんな人間味の無い集団が整然と並ぶ部屋の奥に、更に3人の人影があった。

こちらは生気に溢れ、間違い無く人間だと言える。

 

だが、"真面な"という形容詞をつけられるかと問われれば、答えは"否"だろう。

真面と言うには、瞳に宿る狂気の色が強過ぎた。

???「さて、漸く準備も整ったようだ。ククク……これで奴も一巻の終わりさ。

さぁ、始めようか。我々の神話を、ねぇ、我が王よ?」

 

哄笑が響き渡る。そこに込められたのは圧倒的なまでの悪意と嘲笑。

その様子を、隣の人影は冷めきった眼差しで見つめている。仲間意識が皆無なのは明白だ。

だが冷めていながらも口元にうっすらと浮かぶ笑みは、哄笑を上げる人影と同じくたっぷりの悪意と嘲笑に塗れていた。

そして、黙ったままのもう一人の口元にも、悪意と嘲笑が浮かんでいた。

 

同時刻。大陸の果ての王国にて、凄まじい光景が広がっていた。

圧倒的な数の魔物が、整然と並んでいるのだ。その数、裕に10万は超えているだろう。

どれもこれも【オルクス大迷宮】の深層レベルの力を有している事は、その身に纏う禍々しい気配が示している。

正に蹂躙という言葉が、形を持って顕現したかの様な光景だ。

 

驚いた事にその何体かには、人が騎乗している様だった。

この集まりが、単なるスタンピードでない事は明白だ。

???「神託が降りた。神の代弁者である我等の魔王陛下から、勅命が下った。──異教徒共を滅ぼせと。」

厳かで、しかし使命感を帯びた声音が地に降り注ぐ。

そして、爆発的で熱狂的な歓声と共に長と思しき者の声が響く。

 

???「知らしめてやろう。神意を、我等の強さを。

我が物顔で北大陸を闊歩する愚か者共に、身の程というものを!」

踏み鳴らされた大地が揺れ、狂気の絶叫が大気を震わせた。

――その長と思しき男が、密かに歯を食いしばっているとも知らずに。

 

奇しくも薄暗い部屋の人影と、南の果てで大群を統べる男が宣言したのは同時だった。

──さぁ始めよう!勝利は我々にこそある!今ここで、新しい歴史が始まるのだ!

──さぁ、雄叫びを上げろ!我等が神に勝利を!開戦の時だ!

 


 

この時、誰も知る由はなかった。既に事態は動き、歴史が定まっていったことに。

狂人も魔人も、教会も国も、果ては神を騙る者ですらも気づけなかった。

それを知るのは、ただ一人。

世界のどこでもない、何もない空白にポツンと佇む、荘厳な玉座に腰かける、孤高の王たる者だけである。

 

???「漸く、動き出したか……。さて、お前はどのようにして切り抜ける?若き日の、"私"よ。」

その王の視線の先には、最高最善の魔王を目指す少年がいた。

そしてその王の仮面の下では、少年の行く末が見えたかのような笑みが浮かんでいた。

 

最高最善の魔王を目指す、前世と今世の魂が混じり合った少年は進む。運命に導かれる様に。

仲間と共に、未来を切り開く為。

そして、神意と狂気と裏切りで彩られた陰謀を、信念と暴力を持って打ち砕き、己の望む結末を創る為に。




ハジメ
「ここまで読んでいただき、ありがとうございます!さて……今回も彼等の一人に来てもらいました。」
クリス
「女神護衛隊近衛騎士、クリス。只今ここに。」
ハジメ
「またかよ……まぁいい、今回は久々に他の面子も再登場だったな。」
クリス
「ハッ!我等が女神も漸く脚光を……!」
ハジメ
「あ、悪いけど愛子とリリィは次の章以降は、終盤近くまであまり出番無いぞ?」
クリス
「なん……ですと……!?」
ハジメ
「いや、リリィは帝国で出番あったな……あれ!?この作品の原作ヒロイン、一番不憫なの愛子じゃね!?」
クリス
「そっ、そんなことは!次回、次回できっと!」

次回予告

ハジメ
「次回から王国動乱編、そして旧教会RTAはっじまっるよ~!」
クリス
「りあるたいむあたっく?なるものは分かりませんが……あの"女神のお説教事件"ですか……。」
ハジメ
「だからそれをやめい……まぁ、次回は俺にとってはあまりよくない回だな。」
クリス
「い、一体旧教会は何を……!?」
ハジメ
「ネタバレになるから言えないけど……まぁ、この件でぶっ殺確定だったね☆」
クリス
「は、はぁ……それで、女神のご活躍はいつなのでしょうか?」
ハジメ
「あ、その回はデビッドにゲストやってもらうことになってるから。」
クリス
「グハァッ!?」(血を吹いて倒れる)
ハジメ
「……そんなに羨ましかったのかよ……それじゃ、次回もお楽しみに!」

もしこの中の他作品の女性キャラで、ハジメさんに絡ませるとしたら?

  • 星野アイ
  • 篠ノ之束
  • ラキュース(オーバーロード)
  • ヤマト(ONEPIECE)
  • 歌住サクラコ
  • シェーレ
  • 白織
  • イーディス(SAO)
  • エキドナ(リゼロ)
  • 八重巫女
  • 東堂刀華
  • 大好真々子
  • 森ノゾミ
  • スヤリス姫
  • ロード・ディアーチェ
  • 鬼龍院皐月
  • 湾内絹保
  • 安心院なじみ
  • ネプテューヌ
  • ウィズ
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