ありふれない錬成師は最高最善の魔王の力で世界最強を超越する   作:天元突破クローズエボルハザード

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ハジメ
「お待たせいたしました!それじゃあ、前回のあらすじ、ドーン!」
リリアーナ
「最高最善の魔王を目指す少年、南雲ハジメは、冒険者ギルドにて依頼達成を通達し、周りに傲慢な態度をとる金ランクを取り締まったのであった。」
ハジメ
「いや、まさかクリスタベルさんの影響力があそこまで凄いとはなぁ……敵だったら確かに怖いかも。」
リリアーナ
「彼女?達が王国民だったことが、不幸中の幸いでしたね……。
魔人族だったら、間違いなくハジメさん対策に前線に立たせていたでしょうし。
ハジメ
「それは流石に勘弁願いたいなぁ!?……さて、今回は結界修復とランデル君の失恋だ。」
リリアーナ
「アハハ……今もランデルは恋愛に関しては、茨の道まっしぐらですけどね……。」
ハジメ
「そもそも、ミュウと結婚したいなら、俺よりも強い最高最善の魔王にならないといけないんだけどね。」
リリアーナ
「させる気ないじゃないですか……あ、第6章第11話」
ハジメ・リリアーナ
「「それでは、どうぞ!」」


78.Kの政治/初恋、敗れて

冒険者ギルドを後にした俺達は、雫の案内で大結界へと向かった。

案内されてやって来たその場所は、かなりの数の兵士によって厳重に警備されていた。

警備員達は近づく俺達に驚きの視線を向けた。しかし、傍らに雫がいるとわかると直ぐに目元を和らげる。

 

雫のお陰で殆ど顔パスで通った先には大理石の様な白い石で作られた空間があり、中央に紋様と魔法陣の描かれた円筒形のアーティファクトが安置されていた。

そのアーティファクトは本来なら全長2m程度あったのだろうが、今は半ばからへし折られて残骸が散乱している。

その周りには頭を抱えてうんうんと唸る複数の男女の姿があった。

恐らく、大結界修復にやって来た職人達なのだろう。

 

???「おや、雫殿ではありませんか。どうしてこちらに?」

その内の一人──

口髭をたっぷりと生やした、見るからに職人気質な60代位の男が雫を見つけるなり声をかけてきた。

どうやら雫とは顔見知りらしい。

 

雫「こんにちは、ウォルペンさん。私はただの案内兼護衛です。

大結界が修復できるかもしれない方をお連れしました。」

ウォルペン「なんですと?もしや……やはり新王陛下!?」

雫にウォルペンと呼ばれた男は、俺に視線を転じると途端に驚愕の眼差しを向けた。

事前に来訪を伝えられてない要人が来たとなれば、その反応もさもありなんと言えるだろう。

 

ハジメ「アンタは確か…筆頭錬成師のウォルペン、だったか。リリィから話は聞いている。

俺も同じ錬成師だから、この作業がどれだけ困難かはよーくわかっているさ。」

そう、大結界のアーティファクトは当然神代のアーティファクトであり、現代ではたとえ王宮の筆頭錬成師といえどもその修復は極めて困難だ。

その理由を教えるべく、俺はスタスタとウォルペン率いる職人達の間を通り抜けアーティファクトの残骸に手を当てる。

 

ハジメ「ふむふむ、成程なぁ……よく頑張ったものだ、お疲れさまとでも言っておくか。」

ウォルペン「お疲れ様……?ふん、新王陛下は随分と気楽なようで。」

いや、ただ労っただけでそんな風に思うか?まぁいいや、さっさと作業を済ませるか。

そう思った俺は、"錬成"を開始した。

 

紅と黄金のスパークが俺を中心に広がり、その手元にあるアーティファクトの残骸が次々と元の位置に融合されていく。

その錬成速度と精度に、ウォルペンのみならず彼の部下達が一斉に目を剥いた。

雫とレミアとミュウも、白い空間に舞い散る鮮やかな紅と黄金に目を奪われている様で、「綺麗……。」と呟いている。

 

ハジメ「素材は逢魔鉱石、いや、レジェンドキュービマテリアルも加えておくか。

結界も刃王剣やファンタジーの応用でやって……っと、これでいいか。」

僅か十数秒で神代のアーティファクトを改修し終えた俺は、序に魔力を注ぎ込み大結界を発動させてみた。

円筒形のアーティファクトは、その天辺から光の粒子を天へと登らせていく。

直後、外で警備をしていた兵の一人が部屋に駆け込んできて、第三障壁が復活し、更に障壁が倍の数に増した事を告げた。

 

ウォルペン「……なんという事だ……神代のアーティファクトをこうもあっさりと……。」

呆然とするウォルペンに雫が苦笑いしながら例の黒刀も俺の作品だと告げる。

瞬間、彼等の眼がギラリと獣の様に輝いた。

なんか面倒ごとっぽい感じがしたので、作業終了と言わんばかりに身を翻そうと歩き出す。

 

ウォルペン「待って下されぇーー!!弟子に!是非、我等を弟子にして下されぇーー!!」

ハジメ「だが、断る。」

ウォルペン足にしがみついて弟子入りを懇願しようとする。

が、そんな彼が飛びついてくることなどお見通しだったので、障壁を張って拒絶する。

更に、次々とウォルペンの部下の錬成師達が逃がしてなるものかと飛びかかろうとするが、結果は同じだ。

というか、そもそもこの中に武闘派でもいない限り無理に決まっているだろう。

 

ハジメ「あのさぁ……俺この後めっちゃ忙しいんだよ。だからそう言うのは後にしてくれる?

大体、弟子にしても教えられることなんて何もないんだよ。」

ウォルペン「ですが、アーティファクトをあっさり修復し、雫殿の黒刀まで手がけたと。

我等にはどうやったらそんな事が出来るのか皆目見当も付きませんぞ。それを教えていただければ……。」

ハジメ「無理だね。

オルクスの奈落で"生成魔法"を手に入れた上で、全ライダーの歴史を継承しないといけないし。

それか邪神狩りでも始めたら?適当に狩っていればこれくらいは簡単に身につくでしょ。」

ウォルペン「そんな……。」

 

俺の言葉にガクリと肩を落とすウォルペン達。

実際大結界のアーティファクトには生成魔法により空間魔法が付与されており、王都の結界は特殊な空間遮断型の障壁だったのだ。

普通の錬成師には修復出来ないわけだ。

まぁ、空間魔法は鉱石に付与されているので、地道に復元していけば、完全とは言えないまでもある程度の修理はできるかもしれなかったけど。

 

ウォルペン「それでも、貴殿の錬成技能が卓越していることに変わりはない!是非、弟子にぃー!!」

ハジメ「くどい!」

それでもしつこいので、思わず強い口調で否定し、威圧で職人たちを吹っ飛ばしてしまう。

 

ハジメ「あっ…ごめん、つい。」

一瞬で正気に戻り、周りを見れば……困った顔で「あらあら、うふふ。」と笑うレミア、ミュウの目と耳を塞いで教育を守るユエ、頭を抱える雫、そして死屍累々(死んではいないがぶっ倒れている)の職人たちだけであった。

やっちまったと思いつつも、俺はユエ達を連れてその場を後にした。

 

が、噂を聞きつけたのか、現場にいなかった職人達まで集まりだし、少しでも俺から技術を取り入れようと群がってきた。

なので衛兵を動員し、群がってきた全員に減給を叩きつけた。

後、俺の情報を職人たちに提供した、旧政権の貴族はO☆HA☆NA☆SHIしてやった。

 

そして騒ぎを収めて王宮に戻った俺は、玉座の間にも執務室にも戻らず、王宮に関わる人員なら自由に出入り出来るテラスルームで、ユエ、ミュウ、レミア、雫と共にティータイムと洒落込んでいた。

シアはまだ女子達と恋バナで盛り上がっており、ミレディ達も久しぶりに解放者トークを楽しんでいるようだ。

ティオは未だに睡眠中だったので、安眠用グッズを置いてきた。

 

ユエは俺のカップが空になった事を確認すると、即座に次のお茶を注ぐ。

レミアは俺がメイドに頼んだお茶請けをミュウの口に運び、ミュウはそれをモシャモシャと頬をリスのよう膨らませながら頬張っている。

そして当の俺は、分身と同期しながら各地の視察に赴いている。

休憩中じゃないのかって?お茶はユエが、お茶請けはレミアが口に運んでくれるから大丈夫。

そんな俺達の様子に「私はそろそろお暇しようかしら?」と思っているのか、雫が頬をヒクつかせていると、突然俺達のいる部屋の扉がノックもされずにバンッ!と音を立てて開け放たれた。

 

何事かとそちらに視線を向けた俺達の目に映ったのは、10歳程度の金髪碧眼の美少年がキッ!と俺を睨む姿だった。

しかも、両隣にユエとレミア、膝の上にミュウがいる事が気に食わないのか、一瞬ユエを見た後更に目を吊り上げ、怒りを倍増しで滾らせた様だ。

 

???「お前か!香織をあんな目に遭わせた下衆はっ!

し、しかも、香織というものがありながら、そ、その様な……許さん、絶対に許さんぞ!」

はて、こいつは誰だったか。そんなことを思っていると、当の少年は拳を握り締め「うぉおおおお!」と雄叫びをあげながら勢いよくこちらに向かって駆け出した。

殴る気満々のようだが……

 

何に怒っているのかがさっぱり分からん上に、愛娘とのティータイムを邪魔するのはどうかと思うけどなぁ。

そんなふうに思いながら、相手が面倒になったので、オーロラカーテンで城内の噴水に移動させた。

相手からすれば突然景色が変わったかと思えば、ずぶ濡れになるなんて不思議としか言えないだろうけど……どうでもいいか、と思っていたその時。

 

「で、殿下ぁ~!貴様ぁ~、よくも殿下ぉ~!」

「叩き斬ってやる!」

「覚悟しろぉ!」

今度はさっきの少年が開け放った扉から、彼を追いかけて来たらしい老人や護衛と思われる男達がいきり立ってこちらに飛びかかった。

 

先程の言動からして、彼は元王子か何かかな?そしてこいつらは恐らく旧王家の支持者……

というより、少年個人を支持する者達なのだろう。つまりは"不穏分子"か。なら遠慮はいらない。

そう思った俺は、またもやオーロラカーテンで彼等を飛ばした。

座標はエリセンの近海だ。鎧だの法衣だので着飾っていてはまともに動けんだろうが。

流石に死んだら後任考えるのが面倒なので、取り敢えずサルゼさんに連絡しておく。

 

そして静寂が戻った事を認識し、再びティータイムにしようと思っていたら、ドタドタという足音が聞こえてきた。

面倒な気配を察知して未来予知を使ってみれば、少年がまたこっちに向かってくるではないか。

2回目は面倒な上に、ずぶ濡れのままでは不快なので、姿が見えた途端に重力魔法で適当に空中で転がす。

 

雫が何か言いたそうにしていたが、ユエがミュウに飛びつくように命じて封じた。

そしてミュウがこの光景を食い入るように見ていたので、慌ててレミアがインターセプトした。

メイル見たくドSにならないようにしなければ、そう思って魔法を解除した。序に傷も治しといた。

そして漸く思い出した。リリィに弟がいて、この少年が件の弟であったことを。

 

確か名前は……エンゲ「ランデル王子よ。」あぁ、それだ。

雫の指摘のおかげで何とか思い出していると、突如室内にシクシクとすすり泣く声が聞こえ始めた。

ランデル君はまるで暴漢に襲われた女の子の様に両足を揃えてしなだれながら、床に顔を埋めてシクシクと泣き声を上げていた。

どうやら、俺の容赦ない迎撃に心が折れてしまったらしい。

床にある水溜まりは、ズボンを濡らした涙だと信じたい。

 

と、そこへタイミングよくリリィがやって来た。

やり過ぎだと叱る雫、俺の膝の上で平然と茶請けをもきゅもきゅと食べているユエとミュウ、その様子を「あらあら、うふふ。」と微笑ましそうに見て現実逃避するレミア、そして雫の注意を聞き流しながら紅茶に口をつける俺に、泣き崩れるランデル君。

リリィは、それらを見て状況を把握したのか片手で目元を覆うと天を仰いだ。

 

リリアーナ「遅かったみたいですね……。」

ハジメ「すまんね、リリィ。君の弟とはいえ、ティータイムを邪魔されたのでつい、ね?

取り敢えず、何でこうなったか知っていたら教えてくれないかな?」

リリィは「はい……。」と返事しながら、それはもう深い溜息をつきながらランデルを助け起こした。

 

話を聞くと、どうやらランデル君が突撃に至ったのは、香織の事が原因のようだ。

雫の補足によると、彼は香織に相当お熱だったそうで、それはまぁ何とも難儀な……と思ってしまった。

何せ香織の気持ちには前々から気付いていた俺からすれば、それは玉砕宣言の様なものだからだ。

そんなこととはつゆ知らず、以前とは変わり果てた香織に愕然としたランデル君は、どうしてそんな事になったのかと理由を問い詰めたらしい。

 

その結果、どうやら"ハジメくん"とやら、つまり俺が原因らしいと理解し、更にその香織が正に恋する乙女の表情で俺の事を語る事から、彼は真の敵が誰なのかを漸く悟ったようだ。

そして、「香織に元の体を捨てさせる様な奴は碌な奴じゃない!」と決めつけて突撃した先で、心から香織に想われておきながら他の女に囲まれている俺を目撃し、怒髪天を衝くという状態になったそうだ。

 

彼としては、まさに魔王に囚われたお姫様を助け出す意気込みで俺に挑んだわけだが……この始末☆だ。

殴るどころか近づく事すら出来ずに片手間で弄ばれて、情けないやら悔しいやら、遂にポロリと涙が出てしまったようだ。

リリィに抱き起こされ、つい「姉上ぇ~」と抱きついたランデル君。

その様を見て、公爵家の将来を不安に思う俺であった。そして何故か、雫から呆れの視線が突き刺さる。

だが、ランデル君にとって不幸はまだ終わっていない様だった。

彼がリリィの胸元に顔を埋めて泣きついた直後、香織が部屋にやって来たのである。

 

香織「あっ。ランデル殿下、それにリリィも。……って、殿下どうしたんですか!?そんなに泣いて!」

ランデル「か、香織!?いや、こ、これは……決して姉上に泣きついていた訳では……。

リリアーナからバッと離れて必死に弁解するランデル。

好きな女の前で、姉に泣きついて慰めてもらっていたなど男の子として口が裂けても言えない。

しかし香織は、ランデルが泣いている状況と俺の存在、雫とリリアーナの表情で大体の事情を察し、久しぶりに爆弾を落としていく。

 

香織「もう……ハジメくんでしょ?殿下を泣かしたの。年下の子イジメちゃだめだよ。」

ハジメ「その言い方もどうかと思うけど、こっちはちょっと遊んでやっただけだ。いじめじゃない。」

自分は真剣だったのに、俺からすれば撃退ですらなかった事にランデル君はショックを受けている。

でも実際、何とでもなったしなぁ。

 

しかし何よりダメージが深かったのは、自分が被害者側だと当然の様に判断された事のようだ。

胸を抑えて「ぐっ!」と呻くランデル君。

香織「もう!……ちゃんと"手加減"してあげたの?殿下はまだ"子供"なんだよ?」

好いた女から子供扱いされた挙句、手加減を前提にされる屈辱にランデル君が「はぅ!」と更に強く胸を抑えた。

 

ハジメ「重力魔法で浮かせて押しただけだ。赤くなっていたところもちゃんと治してあげたよ?」

香織「でもリリィに"泣きついて"いるじゃない……

それにほら額が赤くなってる。折角"可愛らしい顔"なのに……

殿下はちょっと"思い込みが激しくて"、"暴走しがち"だけど根は"いい子"だから、出来ればきちんと"相手をしてあげて"欲しいな……。」

 

自分がリリィに泣きついていた事をばっちり認識され、男なのに可愛いと評価された挙句、姉からもよく注意される欠点を次々と指摘され、更に追加の子供扱い。

ランデル君は遂にガクッと両膝を折って四つん這い状態に崩れ落ちた。

 

リリィとレミアは「あらら。」「あらあら。」と困った笑みを浮かべているが、雫は「もう止めてあげてぇ、殿下の心のライフは既にゼロよっ!」と内心で悲痛そうな声を上げていた。

そしてユエは我関せずの態度で、ミュウにお茶請けを頬張らせている。

しかし、香織は追撃の手を緩めない。崩れ落ちたランデル君を心配して駆け寄り身を案じる声をかけた。

 

香織「殿下、大丈夫ですか?やっぱり打ち所が悪かったんじゃ……。」

ランデル「……いや、怪我は無い。それより、香織……香織は、余の事をどう思っているのだ……。」

満身創痍のランデル君は、思い切って香織の気持ちを聞く。……何故自分から傷つきに行くのだろうか。

そんな憐れむ目で彼を見ても、結末は変わらなかった。

 

香織「殿下の事ですか?そうですね……時々、リリィが羨ましくなりますね。

私も、殿下みたいなヤンチャな弟が欲しいなぁ~って。」

ランデル「ぐふっ…お、弟……。」

……うん、まぁ、当然のコメントだと思うよ。俺も近所の弟分兼ガキ大将みたいな感覚で接していたから。

 

そして笑顔で落とされた爆弾によって、ランデル君に追加ダメージ。

雫が「何故自ら傷口に塩を塗るような真似をっ!」と泣きそうな顔になりながら、ランデル君に視線でもう止めるように訴える。

が、そこは男のプライドが許さないのか、彼は立ち止まらなかった。そう、進んでしまったのだ。

 

ランデル「では……あんな奴がいいというのか?あいつの何処がいいというのだ!」

そう言ってランデル君は俺を睨むが、俺の手はティータイムを止めない。

というか、ここまでくるともうさっさと玉砕してくれた方がいいのでは、と思い始めてきた。

 

そんな風に思っている俺をキッ!と睨みながら、言外に「目を覚ませ香織!余の方がいいに決まっている!」とランデル君は訴える。

が、香織の反応は分かりきったもので……

 

香織「え?な、何ですか殿下、いきなり……もう~、恥ずかしいですね。でも……ふふ、そうですよ。

あの人が私の大好きな人ですよ。何処がって言われたら全部、としか……ふふ。」

と、ランデル君に見事に止めを刺した。

 

再び俯いたランデル君は四つん這いのままプルプルと震えだす。

それを心配して香織が手で背中をさすりながら声を掛けるが、ランデル君はガバッ!と勢いよく起き上がると香織の手を跳ね除けて入口へと猛ダッシュした。

そして一度、扉のところで振り返ると、

 

ランデル「お前等なんか大っ嫌いだぁぁああああああ!!!」

と、大声で叫び走り去ってしまった。去り際に、彼の目尻がキラリと光ったのは気のせいではないだろう。遠くから「うぁああああああん!!」という泣き声か雄叫びかわからない絶叫が聞こえる。

 

ハジメ「……リリィ、彼には恋の駆け引きについて、講義を受けた方がいいんじゃないか?

あれじゃあ、彼の将来が心配だ。」

雫「ひ、他人事みたいに……貴方が泣かしたんでしょうが。」

ハジメ「止めを刺したのは香織だけど?」

雫「くっ、反論出来ない……。」

 

ランデル君が初恋を桜の花びらの如く散らせた後に駆けていったのを眺めながら、俺が呟き雫がツッコミを入れる。

香織は、一体ランデルはどうしたのかと追いかけようとしたが、それはリリィが止めた。

リリィは、遅かれ早かれランデル君の初恋は散ると分かっていたようなので、今夜は一緒に寝て弟を慰めるつもりだろう。

まぁ、彼はいずれ、この国の(俺の代理統治という実質の傀儡政権とはいえ)代表になる人間なのだ。

失恋の一つや二ついい経験だろうと肩を竦めていた。

 

リリィは開けっ放しの扉をしっかり閉めると、香織を伴って俺達の方へ歩み寄って行く。

どうやらランデル君を追いかけて来ただけでなく、俺達に話もあった様だ。

リリィは雫の隣の席に腰掛け、香織はユエを退けて俺の隣に座ろうとして……

ユエとプロレスで言うところの"手四つ"状態でギリギリと組み合っていた。

二人ともパワー自体は前から拮抗していたので、使徒の肉体で強化された香織は寧ろ押している様だ。

 

雫「香織……貴女、こんなに逞しくなって……。」

リリアーナ「いえ、雫。感心していないで止めましょうよ。」

どこか寂しげな表情でズレた発言をする雫に、リリィがツッコミを入れる。

というか、このままだとリリィの話が聞けないので、ユエをもう片方の膝に乗せ、空いた隣に香織を座らせた。

ハジメ「二人とも、ポジションでケンカしないの。ごめんねリリィ、話をお願い。」

溜息を吐きつつ二人を促すと、リリィは「コホン。」と咳払いして口を開いた。

 

リリアーナ「話と言うのはですね、ハジメさんが伝えたこの世界の真実についての国民の認識把握調査の事なのですが……

存外、正確に伝わっている様です。

やはり、"元"教皇イシュタルを始めとした、神山含む全主要都市の司教以上の階級者達を、一斉に拘束及び粛清したことで、事の重大さが伝わったのでしょう。」

 

ハジメ「そう。

保身目当てに自首してきた教会関係者の対応、報酬目当てで無実の者を貶めようとした馬鹿共の確認、それとこの前言った人物達は既に保護下に?」

リリアーナ「そうですね……

まず、出頭した方達には、踏み絵と信仰破棄の宣誓・署名を行った後に、隔離・面接・選別・判決といった順に進めています。

ハジメさんが設置したアーティファクトのおかげで、後から"やっぱり信仰する"等とは言えなくなっているので、全員こちらの命令に従順になっています。」

 

リリィが言った俺のアーティファクト――"真実の鏡(Mirage Of Truth)"。

これには、魂魄魔法と電王・ゴースト・クイズ・リバイスの力が備わっており、一度宣言したことは契約としてみなされ、たとえその場凌ぎで鞍替えしただけでも、後からそれを無かったことにはできなくなるのだ。

 

万が一、無理矢理なかったことにしようとすれば、契約の代償として魔物に貪り食われる幻覚を死ぬまでかけられ続けるので、実質命を握られているようなものだ。

実際、何人かがそれを試みようとした結果、地獄を見たことで、他の者達にもその危険性が伝わったようだ。

 

リリアーナ「濡れ衣を着せる様な方は今のところゼロです。

流石にハジメさん相手に嘘をつけば、以前壊滅させられた裏組織のようになることは明白なので、誰も逆らわないでしょうけど……。

それと、シモン司祭と一族の方々には、既に衛兵たちが護衛に回っております。

国王命令の証明書もあるので、勘違いする方はいないようです。

それにしても……見事な采配ですね。

これなら以前言っていた、万が一エヒトが攻めてきた時の対策にもなりそうです。」

ハジメ「ふふっ、リリィのアシストもあってこその結果だよ。それにまだ、問題は山積みさ。」

澄ました表情で報告するリリィに、そう返す。

すると、雫が「対策って何の事?」と首を傾げて説明を求める。

 

ハジメ「神っつーのはよぉ~、信仰がエネルギーになる分、それに比重を置きやすくなるもんだ。

それも歴史が古けりゃ古い程、それは強固になる。」

雫「あぁ、成程。この世界はエヒトの一神教だから……。」

ハジメ「Exactly!特にこのハイリヒ王国は、最も信者が多かった。

それが現在、俺の政策で信仰を捨て去るか、その場で死ぬかの2択を迫られている。

まぁ、大半が前者だとは思うが。そうなればどうなる?

最も多かった信者が国ごと離れることになって、奴の力は激減する。

それに、アンカジやエリセンでも、フューレンを通じて教会関係者への対応が進んでいるから、後は帝国での信仰を削げば、奴は丸裸も同然って寸法さ。」

 

それに、アンカジは既に教会とは決別済みであり、それもあってスムーズに教会関係者を選別している。

エリセンでは、出生率管理制度の撤廃、海産物貿易の拡大について、現在交渉を進めている。

まぁ、それでも根強い教会関係者は既に町の男たちによってボッコボコにされているようだが。

 

雫「なんていうか……前からとんでもない位の行動力を発揮するわよね。」

ハジメ「これでも先々を見越して動いているつもりなんだけどねぇ?

まぁ確かに大体は思いつきだし、脳筋っぽいけど……それも計算に入れてはいるんだよ?」

雫「ふふ、別に脳筋だなんて思ってないわよ。

頼りになるって言ってるの、褒め言葉として受け取っておいて。」

 

……やれやれ、これで素直だったら俺も嬉しいんだが……

光輝のこともあるからか、少し無理してる感があるな。今度何か埋め合わせしてあげなきゃな。

そんな風に雫を気遣う俺の様子に、ユエ達は気づいているような感じがした。




ハジメ
「ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
さて、今回の感想はこれだな。"泣くな、ランデル"。」
ティオ
「いや、ご主人様が泣かせたんじゃろ?止めを刺したのは香織じゃが、それ以前に大人げ無さ過ぎぬか?」
ハジメ
「何を言っているのさ。貴族はプラナリア並みに強くなきゃあ、この先上手く生きていけないよ?」
ティオ
「何処のドS補佐官じゃ!?いや、それが出来るのはご主人様くらいじゃろ!」
ハジメ
「俺だって折れたい時もある。それでも強くいられるのは、皆がいるからだよ。」
ティオ
「いいこと言っておるつもりじゃが、どちらにしろご主人様じゃなきゃ無理じゃろ。」
ハジメ
「……さぁ~て、次回予告だ。」
ティオ
「誤魔化しおったな。」

次回予告
ハジメ
「次回は愛子の気持ちを受け止める回でもあり、これで原作第6巻の話はお終いだ。」
ティオ
「その次の回からは、おりじなる展開?じゃったかの。それが2つほど、と言っておったか。」
ハジメ
「あぁ、取り敢えずこの辺でメタは置いておくとして……
今回説明できていなかったけど、シモンおじいちゃんとも会談はしているよ。」
ティオ
「うむ、確かご主人様がリリィ経由で面会したのじゃったな。そして、ナイズの子孫じゃったのぅ。」
ハジメ
「そう、ナイズとスーシャの面影が二人にもあったからねぇ……
時代を超えて受け継がれるって素晴らしいね!」
ティオ
「そうじゃな……フットワークが軽すぎるのが玉に瑕じゃが。」
ハジメ
「それでも裏を返せば、親しみやすくていいってことだよ。
あ、でも仕事はちゃんとやってもらいたいね。」
ティオ
「じゃな。それでは、今回はここまでじゃ。また次回、よろしくのぅ。」

もしも、ハジメさんが召喚するとしたら、どのサーヴァント?

  • 勿論我妻、モルガン陛下
  • 本家後輩、マシュ
  • 正義の味方同士、エミヤ
  • 魔王と賢王、ギルガメッシュ
  • 勝ち確の死神、山の翁
  • 影の国の槍姫、スカサハ
  • 最強の母、ティアマト
  • 建築と錬成師、トラロック
  • 武器庫の獣、コヤンスカヤ
  • どう見ても嫌な予感、LA
  • ヒーロータイム、シャルル
  • かつての推し、魔人さん
  • 時空と戦国の魔王ズ、ノッブ
  • 出来る良妻賢母、キャス狐
  • 恋する剣豪、武蔵ちゃん
  • 騎士道か覇道か、アーサー
  • 中国産AI皇帝、即ち朕
  • 恋愛クソザコ、カーマちゃん
  • え⁉未実装⁉オルガマリー
  • その他(活動報告4にコメントを)
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