ありふれない錬成師は最高最善の魔王の力で世界最強を超越する 作:天元突破クローズエボルハザード
「お待たせいたしました!早速前回のあらすじ、行ってみよう!」
愛子
「最高最善の魔王を目指す少年、南雲ハジメは、王都の大結界を見事に修復し、旧教会勢力の対処を迅速に進めていったのであった。」
ハジメ
「漸く次の大迷宮へ行くための準備が出来そうだよ。いや~、結構溜まっていたなぁ……。」
愛子
「ハジメ君、あまり根を詰め過ぎてはいけませんよ。
幾らハジメ君が凄くても、過労で倒れてしまったら元も子もありませんからね?」
ハジメ
「分かっているよ。さて、今回は愛子の気持ちについて、クローズアップしていくよ~。」
愛子
「うぅ……い、今でも思い出すと少し恥ずかしいです……。」
ハジメ
「そんな可愛い愛子だから、皆女神様扱いするんじゃないかなぁ?」
愛子
「か、可愛いって!もう、ハジメ君ったら!///そ、それじゃあ第6章第12話」
ハジメ・愛子
「「それでは、どうぞ!」」
夕方。
茜色の空が広がり人影が大きく薄く伸びる頃、王宮の西北側にある山脈の岸壁を利用して作られた巨大な石碑の前に人影が佇んでいた。
愛子「ごめんなさい……。」
そう呟く人影の正体は愛子だ。
忠霊塔前には、今回の騒動で亡くなった人々──
ハジメの改革に反発した結果、下された重い罰に耐え切れず死んだ貴族達等の遺品や献花が置かれている。
そんな遺品の中には、愛子にとって見覚えのある槍がそっと置かれていた。
それは、処刑されたことになっている愛子の生徒──檜山大介のアーティファクトである。
本来彼は国逆の大罪人としてイシュタルや司祭達と共に、ハジメが王都の外れに作った
が、そこは流石にハジメも配慮したのか、檜山の肉体自体は王都の牢獄に氷漬けにされており、捨てられたのは四肢だけだ。
そして眼魂も、堅牢な箱に入れられ、「パンドラボックス(笑)」として、石碑の横に飾られているのだ。
だが彼が使っていた武具に関しては、元々国庫で保管されていたアーティファクト──
つまり国宝に等しい物であった為、リリアーナの嘆願により修復され特例として忠霊塔に置く事を許されたのだ。
愛子がポツリとこぼした懺悔の言葉は、一体何に対するものなのか。
檜山を五体満足で日本に連れて帰る事が出来なくなった事か、それとも自分の生徒達が起こした事で(蘇ったとはいえ)多くの人々が亡くなった事に対してか、或いは……。
愛子が悄然とした雰囲気で俯きながら何かを堪える様に立ち尽くしていると、「ザッ、ザッ」と足音が響いた。
やけに響くそれは、恐らく自分の存在を知らせる為に態と鳴らしたものだろう。
普段の彼は、そんな雑音を立てたりはしないのだから。
愛子がハッとした様に俯いていた顔を上げ、視線をそちらへ向けた。
愛子「ハジメ君……。」
ハジメ「ここにいたんだ、先生。」
愛子の視線の先にいたのはハジメだ。
夕日に照らされながらも、それを上回る様に輝く瞳を真っ直ぐ愛子に向けている。
その手には花が一輪、見るからに献花しに来たと分かる。その事に愛子は少し意外そうな表情をした。
ハジメは愛子の表情から何を考えているのか察し、苦笑いしながら献花台にパサリと花を置いた。
ハジメ「俺にだって、死者を悼む気持ちはあるよ?」
愛子「え?あっ、いや、そんな、私は別に……。」
如何にも心外そうな声音で愛子に話しかけたハジメに、愛子は動揺した様に手をワタワタと動かして誤魔化す。
ハジメは冗談だとでも言う様に肩を竦めると、無言で愛子の傍らに佇んだ。
愛子はチラチラとハジメを見るが、巨大な石碑を見上げるハジメは愛子の事を特に気にした様子も無く、話をする気配も無い。
無言の空間に何となく焦りを覚えて、愛子は仕方なく自分から話しかけた。
愛子「え~と、そのお花は……。」
ハジメ「今回の改革で締め上げ過ぎた貴族の人達にね。"やり過ぎてごめん。"って意味を込めて。」
愛子「……そう、ですか……。」
ハジメの言葉に、愛子はどこか優しげな表情になった。
敵とあらば容赦無く殺意を向ける印象のハジメだが、それでも人の死を悼む気持ちがちゃんとある事に愛子は嬉しくなったのだ。
態々お供えまで持参して来た事に自然と頬が緩む。
ハジメ「……責めないんですか?」
愛子「え?」
突然のハジメの言葉に、愛子は首を傾げる。
ハジメ「今回の事全部です。
俺自身、本当は嫌な予感がしつつも、ミュウやレミアのことを優先して、先生達をほったらかしにしていたんですよ?
……そして他のクラスメイトという餌を使い、クズ共をおびき出した。
結果的に助かったとはいえ、クラスメイトを政治の道具として利用したんだ。
先生なら説教の一つや二つぶつけてくるかなって思ったんだけど……。」
愛子「……。」
愛子は微笑みを消して、再び俯いてしまった。
ハジメは無言だ。返答を促す事はしない。
どれ位無言の時間が続いたのか……やがて、愛子がポツリポツリと言葉を溢す様に話し出した。
愛子「……正直、そう簡単には割り切れません。
檜山君が白崎さん達を殺そうとした事は許される事ではないけれど、出来る事なら無事に生きて罪を償って欲しかったという想いがあります。
ハジメ君も、事前に分かっていたなら未然に止めてほしかったと思っています。
……でも私には、ハジメ君を責める資格はありませんから。」
愛子は、両腕を組む様にして肩を震わせる。
ハジメ「……総本山での件は、俺に非がある。俺がうかつだったせいで、二人を危険に晒したんだから。
それに、まだ何か抱えているんじゃないの?偶には生徒を頼って、弱さをさらけ出してもいいんだよ?」
愛子「……。」
無言の肯定。
よく見れば目の下には化粧で隠しているが隈が出来ており、ここ数日眠れていない事が明らかだった。
もしかすると、悪夢でも見ているのかもしれない。
再び降りる静寂。
ハジメは何を言うでもなく無言のままだ。
場の空気に居た堪れなくなったのか、愛子が覇気のない声音でハジメに尋ねる。
愛子「……ハジメ君は……辛くないですか?」
ハジメ「人を殺す事?それがただの敵であるなら、何も思わないよ。
相手に何か思い留まらせるものがあれば別だけど……
それ以外で、俺の大切に手を出す奴に容赦なんて一切ないね。
それに殺したことを辛いと思うのは、我儘だと思うんだ。
それでも、目を背けずに向き合い続けて、背負い続けることこそが、俺の平和への覚悟だから。」
愛子「……。」
ハジメの言葉に、愛子が辛そうに顔を歪める。
その言葉には、国を纏める王としての確かな信念を覚悟が籠っていたのだから。
しかしその真っ直ぐな瞳は、愛子を更に締め上げる要因となった。
愛子「……誰も……責めないんです。」
愛子が、堪りかねた様に言葉を漏らした。
愛子「誰も、私を責めないんです。
クラスの子達の私を見る目は変わらないし、王国の人々からは、称賛じみた眼差しさえ向けられます。」
それは事実だった。
クラスメイト達はハジメの凄惨な政策の印象が強すぎて、愛子がそれを許容したという事に気づかず、寧ろ愛子は自分達の為に矢面に立って戦ってくれたという印象を抱いているし、王国の貴族や役人達は洗脳を解いてくれたと感謝している位だ。
愛子「デビッドさん達にも全て話しましたが、彼等でさえ『少し考えさせて欲しい』とその場を離れるだけで直ぐに責める様な事はしませんでした。
私は、彼等の大切なものを見殺しにしたというのにっ!」
噛み締めた唇から血が滴り落ちた。
愛子は、責めて欲しかったのだろう。人を殺すという行為は……重い。
狂人や性根の腐った者、或いは覚悟を決めたり割り切ったりした者でもない限り、普通は罪悪感や倫理観という名の刃によって己の精神をも傷つけるものだ。
そういう者にとって、責められる、罰を与えられるというのは、ある意味救いでもある。
愛子自身も、無意識にそれを求めたのだろう。しかし、それは与えられなかった。
ハジメ「責められて変わる、なんていうのは我儘ですよ。」
愛子「我儘……?」
そんな愛子を見て、ハジメは些か不思議な返答をした。疑問符の浮かぶ愛子にハジメはそのまま続ける。
ハジメ「今回直接手を下したのは全部俺だよ。
それに仲間達は罰を承知の上でついてきてくれた、リリィにメルドさん、先生だってそう。
でも、それで何かを背負うのであれば、それは俺だけだよ。
他の誰にも、背負わせるつもりはないさ。でもそうだね……先生が出来る贖罪があるとすれば……
"これからも先生であり続ける"ことだと思います。」
愛子「先生であり続ける、ですか?」
顔色も悪く今にも崩折れそうな愛子は、ハジメの口から飛び出した言葉に困惑するような表情となった。
ハジメ「ああ、それが先生への、"罰"だよ。」
そんな愛子に、ハジメは頷きながら石碑に向けていた視線を外して体ごと愛子の方を向き真っ直ぐに視線を合わせた。
自分を見つめるハジメの瞳に、どこか包み込むような温かさが宿っている気がして、愛子はまるで吸い寄せられるように見つめ返す。
ハジメは、愛子の瞳に自分がしっかり映っていることを確認すると、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
ハジメ「正しく戦い、正しく背負って、正しく苦悩し、正しく弱音を吐く。
王としてはそうあるべきなんだけど、そうすることが出来ないことだってある。
そんな時程、それがとても人間らしくて、少し眩しく見えるんだ。
だから……俺が"人間らしさ"を忘れない良い見本になってほしいんだ。
俺はそんな人間らしい先生をしっかり見ているからさ。そうすれば俺も、人でいられる。
そんな気がするんだ。」
愛子「ハジメ君……。」
ハジメの言葉に、愛子が目を大きく見開く。
まさか、責めるでも慰めるでもなく、これからも苦悩の中で"先生"としていてくれと言われるとは夢にも思わなかったのだろう。
だが、愛子の心は、その我が儘で、ある意味、追討ちを掛けるような言葉にまるで暗雲を払われるような衝撃を覚えた。
自分のした決意と行動の結果を受け止めることは大変なことだ。ましてそれが痛みを伴うものなら尚更。
逃げてしまいたくなるし、折れてしまいそうになる。
生来の性格が、あるいは決意と覚悟がそれを許さないから余計に苦しい。
だが、そんな自分を見て、助けになるという人がいる。大切なものを失わずにいられる人がいる。
愛子は思った。
――ああ、本当に、何て、何て甘くて苦しい罰だろう。
愛子の頬を透明な雫がするりと零れ落ちた。
今まで、自分がやったことなのに泣くなんておこがましいと耐えてきたものがあっさり決壊してしまった。
ホロリホロリと涙を流す愛子に、ハジメが泣いている子供をあやすような眼で、その小さな体を抱き寄せる。
ハジメ「大人でも、どうしても、苦しくて苦しくて折れてしまいそうな時だってあります。
そんな時、他に誰もいなくて泣きたくなった時は……俺がそれを受け止めてあげます。
だって俺、先生の生徒で王様だから!大事な民の涙一つ、受け止めてみせるさ。」
愛子「っ……本当に……貴方という人は……。」
愛子が泣いていることに気がついてなんていませんよ?と言わんばかりに腕を広げるハジメに、愛子は、泣き笑いをしながら近寄ると、ポスっとその胸の中に顔を埋めた。
愛子「では……少しだけ、貸して貰いますね。」
ハジメ「……あぁ、幾らでも。」
優しく語り掛けるハジメに愛子は頬を緩めつつ、その身を預ける。
そして、溜め込んだものを吐き出すように涙を流しながら、改めて誓いを立てた。
彼等、少年少女達の教師で在り続けると。
どこかの我が儘で王様な教え子が見ていてくれるというのなら……頑張れそうな気がしたのだ。
二人の影が大きく東に伸びる。暫らくの間、日暮れの中ですすり泣く声が響いていた。
この後、ようやく泣き止んだ愛子と連れ立って王宮に戻ったハジメだったが、やたら頬を染めて恥ずかしげに俯きながら、そそとハジメの傍を歩く愛子に、「これ、ユエ達に誤解されないかな?」と思いながら歩いていた。
そして、案の定、ユエ達に気付かれて、部屋に連れ込まれたのも言うまでもない。
なお、デビッド達神殿騎士について、王宮に戻る途中で偶然出会った彼等だったが、愛子愛が圧勝したらしい。
元々、ウルの出来事もあり、価値観がさらに強固になりつつあった彼等だったが、王都に戻ってから愛子と強制的に引き離され、安否の確認も出来ないまま下山させられた事や、その時の教会関係者等の言動で不信感が募っていたらしい。
そこに聖教教会や世界の真実が重なって、相当ショックではあったものの、やはり愛子を憎むことは出来ないという結論に至ったようだ。
どこかやけっぱち感が漂っているような気がしないでもなかったが……
これからは、"豊穣の女神"を信仰しつつ、王国の一騎士として復興や守護に努めることにしたようである。一周回って、愛子への愛が変な感じに昇華されているような気がしないでもないが……
きっと彼等にも色々あるのだろう。
シア「まったくもう、ホントにもうっ!ですよっ!」
香織「ハジメくん……少し自重しようね?」
ティオ「ふふふ、流石ご主人様よ。ほんの少し目を離した隙に止めを刺すとは……」
レミア「あらあら、本当におモテになるのですね。」
ミュウ「みゅ、愛子お姉ちゃんも、女の顔をしていたの!」
ミレディ「とうとう愛ちゃんまで……ハジメン、一夫多妻制でも始めるつもりなの!?」
メイル「うふふ……まさかここまでスケコマシだったとはね……
お姉さん、ハジメ君にはちょっと教育が必要だと思うの。」
……どうしてこうなった。
王宮内の食堂にて、食卓を囲みながらシア達のどこか責める様な声が響く。
それを向けられている俺はというと、今夜の一品に手をつけられずにいた。
俺の右隣に座るユエは何も言わないが、どこか困った人を見る様な目を向けている。
そして他のクラスメイト達はそうもいかない様で、ある者は興味津々な様子で、ある者はどこか気まずそうに、またある者はどういう態度をとればいいのか分からないと戸惑った様にそわそわしている。
何故だ……。そして愛ちゃん先生、そのチラ見はなんだ。いや、まぁいいか。
トシ「ハジメが天然たらしだなんてこと、今に始まったことじゃないだろ。」
恵理「確かに。何でも屋やっていた時も未亡人の女の人にも何回か誘われていたし。」
雫「道理で香織をデートに誘う回数が多いと思ったら……そんな理由だったのね。」
浩介「もうこの際開き直っちまえよ、その方が皆にとってきっといいと思うぞ。」
君たち……他人事だと思って好き勝手言いおって……。おい光輝、同類を見るような眼をやめろォ!
俺は自覚ある分気まずいんだぞ!?お前はさっさと令嬢たち振ってビンタされて来いバーロー!
ハジメ「先生、例の"ブツ"はあるよね?」
『ブツ!?』
愛子「お醬油!お醬油ですから!持ってきていますから!」
そうか、フフフ……遂にこの時が来たか!
ハジメ「じゃあ今夜の一品は、海鮮丼と特製味噌汁だ!お供達、じゃんじゃん食って力をつけろォ!
ハーハッハッハッハ!!」
『どこの暴太郎!?でも久々の和食ー!』
俺の意気揚々とした掛け声に、戸惑いながらも日本人の血が騒ぐクラスメイトが湧いた。
そう、実は王都襲撃を鎮圧した後、先生に醤油と味噌を持ってきてもらったのだ。
これでかねてから楽しみにしていた、海鮮丼と味噌汁を振舞えるようになったというわけだ。
それだけじゃない、米・醬油・味噌の三品もあれば、他の物も欲しくなる。という訳で、だ。
ハジメ「先ずはこいつを食ってもらおうか、"鰻の天ぷら"だ!」
『おぉ―ッ!』
こんなこともあろうかと、魚の種類はよく調べ上げていたのだ。
そしてこの鰻擬き、やはり異世界では食さない傾向にあるので、それはもう大漁だった。
序に一緒にとれた鰌も、折角なので調理して、付け合わせとして置いてある。
勿論、侍女やシェフ達にも振舞った。大絶賛だったぜ。
香織「雫ちゃん!こっちこっち!」
雫「香織。隣いいかしら?」
香織「勿論だよ。」
ニコニコと使徒のクールフェイスで人懐っこい笑みを浮かべる香織に、雫も自然と頬を緩めて隣の座席に座った。
香織が体を変えたという信じ難い事実に最初は戸惑っていたクラスメイトも、その笑顔に香織の面影を見たのか僅かに場の雰囲気が和む。
体は変わっても、香織の持つ和やかな雰囲気はクラスメイト達の心を穏やかにする様だ。
寧ろ、俺が姿を消してピリピリとしていた頃に比べれば、以前の香織が戻ってきた様で嬉しそうにしているクラスメイトも多いらしい。
雫が座席に座ると、その隣に光輝が、向かい側に愛ちゃん先生が、その隣に鈴が座った。
愛ちゃん先生は丁度ユエの隣だ。続いてクラスメイト達が他の座席に座っていく。
鈴がユエを見て座る際、「お姉様のお側……し、失礼します!」と言いながら妙に緊張している姿が見られた。
ユエが、「……何故お姉様?」と首を傾げる。そりゃそうだろうね。
因みに、トシと恵理は先生の席の近く、浩介は……どこだ?「同じところだよ!」
とその時、ユエの頭越しに先生の視線が俺に向けられた。
チラリと視線をやれば、途端に先生の頬が薄く染まり、恥ずかしげに目が逸らされる。
それでもチラチラと俺を見た後、内緒話でもする様に声を潜めて声をかけた。
愛子「あ、あの、ハジメ君……、さっきのは……その、出来れば……。」
ユエは自分越しに話をされて若干居心地悪そうに身動きするが、恐らく教師でありながら俺に泣きついた事が恥ずかしくて口止めしたいのだろうと察し、何も言わなかった。
その愛子の様子に、雫達が俺へジト目を向けている。
幸い、他の生徒には位置的に死角となってバレていない様だが、比較的近くにいる前線組は訝しそうな眼差しを向けていた。
玉井君達愛ちゃん護衛隊の男子メンバーは「あいつ、とうとう愛ちゃんまで……」と畏敬と諦めの籠った視線を向けていた。
宮崎さんや菅原さんは苦笑い、園部さんは如何にも「興味ありません!」といった様子だが、その視線はもの凄い頻度でチラチラと俺に飛んでいる。
なのでここは全力ですっとぼけた。後が面倒なので。
ハジメ「何かあったっけ?」
愛子「ふぇ?」
ここは合わせて、と視線を送れば、先生はその態度に一瞬呆けるものの、秘密にしてくれるのだろうと察し苦笑いしながら「いいえ、なんでもありません。」と答えた。
頬が綻んでいるのも隠してほしいかなぁ……。女性陣からの視線が……。
唯一、ユエだけが俺の肩をポンポンと叩き、更に「あ~ん。」をしてきた。
ミュウ「パパ、ミュウはお腹がすいたの!」
ミュウ……!流石俺の娘!こんな空気でもサッと変えてくれる対応力はレミア譲りだ!
そう思いながら、ユエからの「あ~ん。」を受ける。
すると、逆サイドに座るシアがハジメの袖をクイクイと引っ張った。
シア「ハジメさん。あ~ん、ですぅ。」
どうやら恋敵が増えそうな事に憤るよりも、アピールに時間を費やすべきだと判断したらしい。
頬を染め、上目遣いでそそとフォークを差し出している。
その際、ウサミミをひっそりと俺に寄り添わせることも忘れない。素晴らしいあざとさだった。
すると、香織とティオも黙ってはいられないのか、二人も慌てて、料理にフォークを突き刺す。
香織「ハ、ハジメくん、私も、あ~ん!」
ティオ「ご主人様よ。妾のも食べておくれ。あ~んじゃ」
ハジメ「分かった分かったから!一斉に差し出されても口は一つしかないから!」
慌てて「あ~ん。」を捌く俺。そして4人の「あ~ん。」を捌き終えると……
レミア「はい、あなた。あ~ん♪」
ハジメ「……おう。」
タイミングを狙ったのか、レミアがフォークを差し出す。でも食いつく。据え膳食わねば何とやら、だ。
え?意味が違う?そっちの奴はまだ先だが?
雫「何、この空気……半端なく居心地が悪いのだけど……。」
雫、そんなこと言わんでおくれ。ただでさえこっちは大渋滞起こしているんだから。
それと先生、自分もすべきかとか考えなくていいし、やるとしても責めないから、一人ノリツッコミしないの。
ミレディと他の女子生徒は突然の甘い空気に先程までのぎこちない空気を霧散させて、俺達をチラ見しながらキャッキャッと騒ぎ始めた。
俺に対する何処か畏怖している様な目が一瞬で恋バナのネタを見る様な目に変わった。
奈落に落ちたあの日から、何があれば"あの彼"がこんなハーレムの主になるというのか……
なんて事前の説明も忘れ、女子達の目が好奇心に輝き俺を見つめる。
一方男子達も、女子と同じ様に一時的であれど畏怖の宿る目を向けなくなっていた。
但しそこにあるのは、メラメラと燃え盛る嫉妬と羨望の眼差しだ。俺でも分かる。
何せ俺を囲むのは、"絶世の"と称しても過言ではない美女・美少女達だ。
特にシアに多くの視線が集まっている。
やはり、ウサミミ少女というのはオタク的な趣味を持っていなくても男心を的確に擽るのだろう。
まして今のシアは、俺の隣で実に可憐な微笑みを振りまいており、時折ピコピコと動くウサミミは破壊力抜群である。
だがいくら嫉妬と羨望に身を焦がそうと、どれだけ異世界の美少女達と仲良くなる秘訣を聞き出したかろうと、何を言えるわけでもない。
だって俺国のトップで魔王だもん。文句なんて言ったら不敬罪みたいなもんだし。
まぁ、だからと言って厳しい罰なんてないけどさ。
するとそんな俺の側で、何故か頬を染めたままジッとフォークを見つめる香織の姿があった。
香織は少し目を泳がせると、何か決意した様に申し訳程度に料理を乗せてパクッとフォークを口にした。
そして再び頬を染める。いや、思春期か。すると、ユエの痛烈なツッコミが入った。
自分をジッと見つめるユエに気がついた香織が、目を合わせたと同時に解き放たれる言葉の矢。
ユエ「……変態。」
香織「!?ち、違うよ!何て事言うの!わ、私は普通に食事しているだけだし!」
ユエ「……と言いつつ、ハジメ様の味を堪能。」
香織「し、してないってば!だ、大体、そんな事言ったら、ティオこそ変態でしょ!
ほら、こんなに堂々とフォークを舐めてるんだよ!」
ティオ「レロレロレロ、んむ?」
顔を真っ赤にしてユエに反論する香織は、ビシッ!とティオを指差した。
その先では、普通にフォークを口に含んでモゴモゴレロレロしているティオがキョトンとしている姿があった。
如何にも「何か問題でも?」といった表情だが、それが問題なんですけどねぇ!?
ハジメ「ティオ、流石にそれはダメ。ミュウの教育に悪いよ。」
ティオ「むぅ、仕方なかろう。ユエ達もまだじゃが、ご主人様は未だに妾と口づけをしてくれんし。
こういう時に堪能しておかねば、欲求不満になるのじゃ。」
ハジメ「何の話だよ。」
何故か非難する様な眼差しを返されて、俺は怪訝な顔をする。
するとその時、ティオが何かを思い出した様に突然その瞳を輝かせた。
ティオ「そうじゃ!ご主人様よ、ご褒美を未だもらっていないのじゃ!妾は約束のご褒美を所望するぞ!」
ハジメ「そう言えばそうだったなぁ……まぁ、3日間はミュウとレミアが独占状態だったし、いいけどさ。」
ティオの言葉に、俺もそれを思い出して呟く。
何の話かわからない者達が首を傾げる中、シアが代表して尋ねる。
シア「ご褒美って……何の話ですか?」
ティオ「うむ。
総本山でな、先生殿を預けられた時に『最後まで無事ならご褒美をくれる』という約束を取り付けたのじゃ。
ぬふふふ……ご主人様よ、よもや約定を違えるような真似せんじゃろうな?」
シアや香織が「そんなのズルイ!」と騒ぐ中、ティオが妖しげに笑いながら約束の履行を迫る。
何となく皆の注目が集まる中、俺はその時のことを思い出した。
あれは神山突入前、ティオと先生が下準備を進めている中、木偶人形共の襲撃の危険性もあるので、先程言った約束を取り付けたのだ。
それにティオには、アンカジでも命の危機に晒してしまったので負い目もある。そう簡単には断れない。
ハジメ「あくまで俺の"出来る範囲"だよ?子作りとかは、まだ勘弁してね?」
ティオもその意図を察している様で、心得ているとでもという様に大仰に頷いた。
そして、ほんのり頬を染めてもじもじしながら要望を伝える。
ティオ「……前にシアにつけていた、首輪が欲しいのじゃ。」
両頬を手で挟んで、「きゃ!言っちゃった!」とでも言うようにイヤンイヤンするティオ。
……俺の物宣言でもしろと?
既に一度している事なのだから無茶ではなかろう?と、とんでもない要望を伝えてきた。
案の定、その発言はユエ達以外の全ての人間を激しく動揺させた。
俺に向けられる眼差しが、どこか犯罪者を見る様な目になっている。
……別に首輪の一つや二つ、どうってことないんだけどなぁ……。
ハジメ「それくらいなら、何時でも作ってあげるよ?他にない?例えば……もてなし執事コースとか。」
『!』ガタッ!
いや、
後、クラスの女子達や愛ちゃん先生もステイ、雫は頬を赤らめないの。
ティオ「ほぉ~、ご主人様が執事……イイ!ぜひそれを所望するのじゃ!」
ハジメ「……分かった。」
まぁ、後日皆に埋め合わせしてあげるってことで許してもらおう、ッと。
そんなことを思いながら、俺は久々の海鮮丼に箸をつけるのであった。うん、旨いッ!!!
ハジメ
「ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
さて今回の感想だけど、久しぶりの和食、美味しかったなぁ~。」
レミア
「あらあら、愛子さんのことについては触れないんですか?」
ハジメ
「もう今更だし……それに、今ここで語りきれなさそう。この時の心情、結構長いし。」
レミア
「め、メタい理由ですね……。でも、この時もハジメさんは誰よりも前にいたんですね。」
ハジメ
「自分の身を預けられる背中があるってさ、素晴らしいことだと思うんだ。
その人を信じて、また前に進めるようになれるからさ。」
レミア
「えぇ、そうですね。現に私も、前に進むことが出来ましたし。ありがとうございます、あなた。」
ハジメ
「夫として当然のことだよ、これからもよろしくね!」
レミア
「はい!それでは、次回予告ですね。」
次回予告
ハジメ
「次回は光輝の特訓回だな。ここはある意味重要なポイントでもあるからな。」
レミア
「そうなんですか?それってもしかして、あの時のことでしょうか?」
ハジメ
「多分その時で合っているよ。
光輝ファンの人たちにとっては、漸く光輝がクラスメイトから"仲間"になれた回でもあるから、必見だよ!」
レミア
「ハジメさんって、光輝さんととても仲がいいんですね……でも、あの本のことが心配です。」
ハジメ
「それは例の薄い本か!?この前全部回収したうえで、禁書扱いで燃やしたはずなんだけど!?」
レミア
「え、えぇ~と……てへ☆」
ハジメ
「……まぁいい、次回はオリジナル展開だから、原作派の人はブラウザバッグでも構わないよ。」
レミア
「うふふ、それでは皆さん、また次回。」
もしも、ハジメさんが召喚するとしたら、どのサーヴァント?
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勿論我妻、モルガン陛下
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本家後輩、マシュ
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正義の味方同士、エミヤ
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魔王と賢王、ギルガメッシュ
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勝ち確の死神、山の翁
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影の国の槍姫、スカサハ
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最強の母、ティアマト
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建築と錬成師、トラロック
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武器庫の獣、コヤンスカヤ
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どう見ても嫌な予感、LA
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ヒーロータイム、シャルル
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かつての推し、魔人さん
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時空と戦国の魔王ズ、ノッブ
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出来る良妻賢母、キャス狐
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恋する剣豪、武蔵ちゃん
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騎士道か覇道か、アーサー
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中国産AI皇帝、即ち朕
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恋愛クソザコ、カーマちゃん
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え⁉未実装⁉オルガマリー
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その他(活動報告4にコメントを)