ありふれない錬成師は最高最善の魔王の力で世界最強を超越する 作:天元突破クローズエボルハザード
「お待たせいたしました!さて、早速前回のあらすじだ!」
雫
「最高最善の魔王を目指す少年、南雲ハジメは、自責の念に苦しむ愛子を救い、次なる旅への準備を進めたのであった。」
ハジメ
「前から好意に関しては薄々感づいてはいたけど……ここがターニングポイントだったのかぁ。」
雫
「全く……ハジメの天然たらしにも困った者ね。」
ハジメ
「雫にだけは言われたくない。
男女共に慕われて、妹を名乗る女の子を続出させているんだし、雫も同じじゃないか。」
雫
「いや、私はそこまで酷くないわよ!?……ないわよね?」
ハジメ
「さぁ?さて今回は、光輝の特訓回だ。ここもある意味、ターニングポイントだ。」
雫
「原作とは違ったやり取りを期待している人は必見ね!それじゃあ、第6章第13話」
ハジメ・雫
「「それでは、どうぞ!」」
ハジメの真王即位から2日後のある日、光輝達遠征メンバーは王国の訓練場に集められていた。
そんな彼等の前に、ハジメ達がやってきた。
光輝達がやってきたことを確認したハジメは、ゲームエリアを展開、より広い訓練フィールドへと全員を移動させた。
もう既に規格外な所を見せられているので、光輝達は「何でもありだなぁ。」と思っていた。
ハジメ「よく来たな、今日から早速特訓を開始するぞ!ただし光輝、今回はお前だけ俺とマンツーマンだ。」
光輝「?何で俺だけなんだ?」
ハジメ「色々と事情があるんだよ、今後のためにも。」
光輝「は、はぁ……。」
ハジメ「先ず鈴は香織と結界の応用について、龍太郎と浩介はシアと近接戦の特訓、恵理はそうだな……
トシに任せてもいいが、応用についてはユエやミレディ、ティオ辺りがいいだろう。
雫は……どうしようか。」
雫「私もハジメ君に挑んでみたいのだけど、ダメかしら?」
ハジメ「……いや、それもありか。よし、それじゃあ解散!」
そして各自それぞれの場所へと移動した。
因みにミュウとレミアはメイルに護衛を任せており、窓から訓練の光景を眺めている。
ハジメ「さて、先ずは雫。一回本気で打ち合ってみようか。」
ハジメがそう言うと、腰元にドライバーを呼び出し、その両端を押した。
ハジメ「"変身"。」
ゴォーン!!!
『祝福の刻!』
『オーマジオウ!』
雫「……えぇ、胸を借りるわ。」
変身したハジメの覇気を感じたのか、雫も抜刀の構えをとる。
光輝はその光景をじっと見ており、どのような戦いになるのかを考えていた。
そして一陣の風が吹いた瞬間、
雫「シッ!」
ハジメ「!」
雫の一閃がハジメの胴をとらえようとしていた。
が、ハジメも即座に反応し、予備用に作っておいた刀で受け止める。
ハジメ「今のは全集中の呼吸か……余程強力な使い手のようだね、お師匠さんは。」
雫「フフッ、そう言ってもらえるとあの子も嬉しいでしょう、ねッ!」
軽口をたたき合いながらも、互いに切りかかっては刀で受け止め、攻守の反転が見えない程に早い打ち合いであった。
それを見ていた光輝は驚愕に包まれていた。
タイムジャッカーによる王都襲撃時にも、雫の刀捌きは見ていたが、あの時は守りに徹していただけで、攻めに転じればこうも素早く、鋭く、しなやかで、そんな剣技を美しく思えるほど、雫の強さに見惚れていた。
それと同時に、それを難なく受け止め、捌ききるハジメの強さにも圧倒されていた。
雫が動による剣技であれば、ハジメは静、それもまるで凪の様に静かに返し、受け流す。
まるで、あるがままを受け入れる自然のように攻撃を受け止め、それでいて技能も使っていないのに、時を止めたかのように瞬時に怒涛の連撃を繰り出している。
その様は、まるで川と滝。二つの姿勢を瞬時に切り替えているようにも見えた。
二人の打ち合いに「こんなにも強くなれるのか。」という期待と同時に、「自分はまだここまでのレベルに達していない。」という劣等感を抱いてしまう光輝。
しかし、数分経った辺りで、二人は刀を止めた。光輝が「何故?」と不思議がっていると……
ハジメ「そろそろ本番と行こうか。技能無しでも十分楽しんだし。」
雫「そうね、折角だし、全力で行かせてもらうわ。」
そう言ってまた抜刀の構えをとる雫。それを無言で見据えると、刀を逆手に持ってハジメは駆けだした。
そして雫へと刀を振り下ろした瞬間、
雫「虚空陣奥義"悪滅"!」
雫のカウンターがハジメをとらえた、はずだった。
ハジメ「……!」
しかしハジメはそのまま刀を振り下ろし、雫の刀とそれが触れ合った瞬間だった。
雫「ッ!?」
咄嗟に雫が距離をとったと同時に、ハジメの刀が勢いよく振り下ろされ、地面にヒビを入れた。
光輝「!?」
一瞬の間ではあったが、ハジメ自身は隙だらけの筈だった。
そこへ雫が最大のカウンターを叩き込み、その一撃すら弾く筈であったのだ。
しかし、結果は御覧の通り。何が起こったのか分からずにいると、雫が呆れていった。
雫「ハジメ君……流石に負けず嫌い過ぎじゃないかしら?
あとちょっと遅かったら、刀が折れていたかもしれないわよ?」
ハジメ「……すまん、雫の本気を見てつい、"こちらも全力を出さねば、不作法というもの"って感じがして。」
雫「どこの兄侍よ……。」
そんな風に軽く話す二人を見て、光輝は唖然としていた。
雫の本気は前々からよく知っていた。それはこれまでの鍛錬の賜物なのだなと納得はしていた。
しかし、そんな雫ですら危機感を抱かせるほどに、圧倒的なハジメの強さを目の当たりにし、後頭部をガツンと殴られたような衝撃を受けてしまったのだ。
そんな光輝に、変身を解除したハジメが話しかける。
ハジメ「さてと、ウォーミングアップはここらでいいか。光輝、次はお前だ。」
光輝「ッ!……あぁ。」
思わず警戒してしまう光輝。それに気づいたハジメは溜息をつくと、光輝を諭した。
ハジメ「別に今すぐこのレベルになれって無茶は言わねぇよ。
今回の特訓はいわば、精神力を高めることにある。そこに肉体の強さ弱さの貴賤はない。」
光輝「?どういうことだ?」
ハジメ「この訓練で、光輝には生身の俺を切り殺せるレベルになれって意味だ。」
光輝「さっきと言ってることが変わってないんだが!?」
まさかの自分が殺害する側宣言に光輝は慌てるが、それを気にせずハジメは続ける。
ハジメ「生身と変身状態じゃ意味がちげーよ。
抑々だ、前回は殺しても憂いの無い奴だったから、お前も気が楽だっただろう。
だが、いずれどうしても相手を殺らねばならん時がある。
そのもしも、の時の為にこうして俺が相手になっているという訳だ。
安心しろ、再生魔法にアンデッドの技能もある。遠慮なく、かかって来い。」
光輝「い、言ってることは分かるが、手段が無茶苦茶だ……。」
だがいきなりやれと言われても、光輝は流石に躊躇ってしまう。
あの時、確かに信用してもらって、一時的にとはいえライダーの力を貰ったのだ。
そんな相手を不死身状態とはいえ、いきなり切り殺せと言われても"はい"とは言えない。
が、そんな光輝をじれったいと思ったハジメは、雫に念話で話しかけた。
ハジメ『雫、今からの俺と光輝の会話の内容について、お前は一切口を出さないでくれ。』
雫『それは……どういうことかしら?』
ハジメ『そのままの意味だ。それと……くれぐれも邪魔はするなよ?
これは、男の信念をかけた戦いになるだろうからな。』
そう言ってハジメは、光輝を叱咤するように言い放った。
ハジメ「何を躊躇ってる!お前には守るものがあるんじゃないのか!?
自分が信じる正義の為に戦うんじゃないのか!?あの時俺に啖呵を切ったのもその為なんじゃなかったのか!?それとも全部嘘だったのか!?」
何処の万丈構文だ。そして更に続ける。
ハジメ「そんなんじゃ何時まで経っても、お前は誰も救えないままだぞ!?いいのか!?
そんなんでいいのか!?いつまでも俺に助けられてばかりでいいのか!?」
光輝「……ッ!」
おや、光輝の様子が……?
ハジメ「お前が迷っている間にも、香織も、雫も、とっくに自分の道を決めているんだぞ。
そこにお前が映っていなくてもいいのなら、ここに残るか!?」
光輝「ッ!!」
ハジメがそう言った途端、返答の代わりに純白の輝きが大瀑布となって頭上から降り注いだ。
勿論、ハジメはそれをサッと避ける。
直後、今の今までハジメがいた場所を凶悪な斬撃が駆け抜けていき、轟音と共に氷の地面と壁に深い亀裂を作り上げた。
瞬く間に修復されていくものの、その破壊痕を見れば冗談抜きで相手が殺すつもりで攻撃したのだとわかる。
もっとも、その前に殺意や込められた魔力量から自明の理ではあったが。
ハジメ「……なんだ、やればできるじゃねぇか。青二才にしては。」
ハジメは怒りによって相手に殺意を持たせるように、光輝を挑発する。
その光輝は、地面をかち割り半ばまで埋もれたままの聖剣を握り締めながら、何かをブツブツと呟いている。
前髪が垂れて目元が隠れているので表情はよくわからないが、明らかに尋常な様子ではない。
光輝「……が…だ。……で、う……ら。」
ハジメ「ごちゃごちゃ言ってねぇで、さっさとかかってきな。直ぐに打ちのめしてやんよ。」
しかし、その言葉に光輝が過剰な反応を示す。
前髪の隙間から炯々と光る瞳が覗き、刺さったままの聖剣が強引に引き抜かれた。
聖剣を引きずりながら、血走った眼差しを向ける光輝。
光輝「…あぁ、終わらせるよ。お前なんかに一々言われなくても、全て終わらせてやるさ!」
そう絶叫するや否や、光輝は瞳孔の開ききった狂気を感じさせる眼差しでハジメに向かって突進した。
"爆縮地"で姿を霞ませながら一気に肉薄し、莫大な魔力を込めた光の斬撃を放つ。
ハジメ「ハハハ!いいねぇ、そう来なくちゃなぁ!もっと来いよ、勇者ァ!」
光輝「黙れ!お前が死ねば全て元に戻るんだっ!さっさと死ねぇえええ!!」
光輝は、そんなハジメの言葉など完全に無視すると、ただ我武者羅に殺意と憎悪を滾らせて最大威力の聖剣を振るった。
明らかにハジメを殺すつもりのようだ。
今の光輝は、言うなれば、以前、香織がハジメ達と旅立った夜に雫と話さなかった場合の光輝と言えるだろう。
あの夜、雫の言葉に含まれた重さに光輝は暴走を防がれた。
直ぐには考え方を変えられなかったし、ハジメに対して思うところは多々あった。
だから、度々突っかかってしまっていたわけだが、それでも、雫の言葉があったから完全な決別もなければ香織のことも口を出さなくなった。
しかし、それは言い換えれば雫が傍にいたから、だとも言える。
光輝の価値観や思考は多分に"子供らしさ"が含まれている。
幼少の時に根付いた"理想の正しさ"を現実の壁に阻まれることなく持ち続け、そのままこの歳まで来てしまったのだから当然と言えば当然だ。
そんな子供な光輝にとって、独占欲を向ける最後の幼馴染の女の子が奪われれば、これも当然の如く"癇癪"を起こすに決まっているのだ。
もっとも、勇者たる力を持つ光輝の癇癪は洒落にならないわけだが……
しかも、自分の非を認めたがらない"子供っぽさ"を持つ光輝は、これまでの出来事によって散々現実を突き付けられ追い詰められた。
ヒーローたる自分には相応しくない感情が心の内に溢れているのだと刃物で切りつけるように刻まれた。
必死に否定して、必死に目を逸らして、ギリギリのところで踏ん張っていたら、最後の砦である雫までもが目の前の男の隣で、他の男に対して明らかに見せてはいない幸せそうな表情で身を預けている光景を想像してしまえば、鈍感な光輝でも、それが何を意味するのか察することが出来る。
そして察することが出来たからこそ砦は崩れ去り、光輝の悪癖は追い詰められた心と相まって最悪の形で現出してしまった。
即ち、南雲ハジメは幼馴染や複数の女の子を洗脳し世界を救おうとする自分を邪魔する諸悪の根源である、と思い込むという形で。
手加減なしのご都合解釈である。
光輝「"天翔剣・嵐"!!」
そうして放たれたのは、広範囲に拡散する幾百の斬撃。
見える光の刃だけで100はあり、その影に潜むようにして300近い風の刃が追随している。
既に殲滅魔法レベルだ。
だが、そんな幾百の斬撃の嵐に対し、ハジメは冷静に抜刀の構えをとる。
ハジメ「覇王陣奥義"逢魔"。」
その瞬間、世界が制止したかのようにスローモーションになった。
そして光輝の斬撃が何かによって次々にかき消されていき、その何かの一つが光輝の足元にまで迫った。
それは、光輝の足元に刺さると盛大に衝撃波を撒き散らし、光輝を足元からひっくり返す。
そして、それと同時に光輝に肉薄したハジメは、まるでサッカーボールのように光輝を蹴り上げた。
光輝「ぐぁ!?」
呻き声を上げながら空中に投げ出された光輝に、ドンナー&シュラークを向ける。
咄嗟に"空力"で宙を蹴り付け射線から逃れようとする光輝だったが、二丁のリボルバーの銃口は光輝から微妙にずれて未来位置を狙っていた。
意図せず、光輝の表情が引き攣る。が、中身はゴム弾なので大したダメージもない。
なのでハジメは遠慮なく、蜂の巣にした。
ズダダダダダ!!!
光輝「ガッ!グッ!ゴアッ!?」
放たれたゴム弾は、空中の光輝を滅多打ちにした。
子供が繰る無様なマリオネットのように、ガクンガクンと体を揺らしながら放物線を描く光輝。
血飛沫を撒き散らしながら少し離れた場所にドシャ!と生々しい音を響かせて落下した。
傍から見れば何発もの銃弾に穿たれた死体に見えたかもしれない。
だが、そうでないことは、直後に光輝が動き出したことで否定された。聖剣を支えに直ぐに起き上がる。
肩、両腕、両足から血を噴き出し、口元からも血が滴り落ちているが、それも瞬く間に治っていった。
血走った瞳が狂気の色を添えられて、更に凶悪な様相になっている。
既に、人々の夢と希望が詰まった勇者の面影はない。
ハジメ「……"限界突破"を使ったか。流石に尚早だとは思わんのか?」
光輝「黙れっ!お前がっ、お前みたいな奴がっ、わかったような口を利くな!
雫と香織のことを本当にわかっているのは俺だっ。二人のことを誰よりも大切にしているのは俺だっ。
俺こそが二人と共にあるべきなんだっ。お前なんかじゃない!絶対に、お前みたいな奴なんかじゃッ!?」
光輝が喚くのを、ハジメはヤクザキックで容赦なくぶった切る。
ハジメ「さっきからうだうだ言い訳並べてんじゃねぇぞ、この餓鬼が!
俺に言いたいことがあるなら他を引き合いになんか出さねえで、テメェの言葉で語りやがれ!
今ここで雫や香織のことしか頭にねぇなら、テメェにアイツ等を守る力はねぇぞ!」
光輝「ッ!だったら遠慮なく言ってやる!俺はお前が大嫌いだ!」
そう言って両者はさらに激しく得物をぶつけ合う。
光輝「お前さえ、お前さえいなければ、全部上手くいってたんだ!香織も雫もずっと俺のものだった!
この世界で勇者として世界を救えていた!それを、全部お前が滅茶苦茶にしたんだ!」
ハジメ「ハッ、弱っちい甘ちゃんが!人一人殺すことすら出来なかった餓鬼が世界を救うだぁ!?
笑わせんじゃねぇぞ、三下ぁ!」
光輝「煩いッ!人殺しのくせにっ。簡単に見捨てるくせにっ。
そんな最低なお前が、人から好かれるはずがないんだ!」
ハジメ「オイオイ、人を見た目で判断してると、いつか痛い目見るぞ~?
大体俺が誰に好かれていようが、お前には関係ないことじゃないのか?」
光輝「黙れッ!お前が何かした以外に何がある!
香織も雫も、ユエもシアもティオもレミアもミュウもミレディもメイルも、みんな洗脳して弄んでいるんだっ。
どうせ遠藤や恵理、清水だって洗脳して、龍太郎や鈴だって洗脳するんだろう!?そうはさせない。
俺が勇者なんだ。みんなお前の手から救い出して、全部、全部取り戻す!お前はもう要らないんだよっ!!」
ハジメ「そんなことしたってなんにも取り戻せるわけねェだろ、バーカ。
そんなんで手に入んのは、仲間殺しの罪状ぐらいだっつーの。つーかさぁ……」
光輝の激しい罵りをのらりくらりと返し、攻撃を受け流し続けるハジメ。
が、光輝がユエ達を呼び捨てにしているのを聞くと……
ハジメ「貴様、誰の許可を得て私の仲間を、娘を、妻を、呼び捨てにしているのだ?雑種ゥ?」
光輝「ッ!?」
これまでにない威圧を放ち、光輝を圧倒する。直後、溢れ出す殺意の奔流。
大瀑布の水圧の如きプレッシャー。人と呼ぶには強大すぎるし、おぞましすぎる圧倒的な"力"の気配。
至近距離から化け物の本気の威圧を叩きつけられて光輝の体が意図せず硬直する。
しかし、そんなことを考慮するはずもなく、ハジメは蹂躙を開始した。
ハジメ「普通のパンチ。」
光輝「ふおぉっ!?」
その一撃は、光輝を1km後ろにあった岩盤に叩きつけた。
まさかただのパンチでここまで吹っ飛ばされるとは思わなかった光輝は、ハジメの強さに思わず戦慄する。
が、それだけではハジメさんは止まらない。
ハジメ「はい、
光輝「クソマァ!?」
岩盤から抜け出した直後に弱めのアッパーを繰り出し、光輝を天高く打ち上げる。
そして打ちあがった光輝にジャンプですぐ追いつき、
ハジメ「踵落とし。」
光輝「あばっふ!?」
ゆっくり下した踵で、エビ反り状態で打ち上がった光輝をくの字に叩きつけて、地上へ送り返す。
が、流石にこの高さからだと死ぬと思ったのか、慌てて光輝の鎧の襟を掴んで減速させる。
光輝「グエッ!?」
ハジメ「これくらい我慢しろ、男だろーが。」
そうして漸く地面の近くで勢いが殺せたので、そのまま先ほどの岩盤へ投げつけた。
が、先程のように直ぐには抜け出さず、頭が刺さった状態になってしまった。
ハジメ「……あ~、ちょいやり過ぎたか?」
雫「明らかにやり過ぎなのだけれど!?」
光輝の本心に唖然とはしていたものの、先程のハジメの蹂躙のせいでそれすらもさっぱり吹き飛ぶほどに衝撃を受けていた雫は、ハッ!と意識を取り戻し、
光輝「グッ……まだ、だ……!」
そのツッコミが聞こえたのか、何とか岩盤から抜け出す光輝。
今度はハジメも空気を読んで、態勢が整うまで待っていた。
が、それが光輝には、まるで相手にされていないかのような気になって光輝の中のドス黒い部分が更に湧き上がってきた。
光輝「これならどうだ、"覇潰"!!」
光輝から更に数倍の規模で魔力が噴き上がった。
全ステータスを5倍に引き上げる"限界突破"の最終派生"覇潰"。
が、それでもハジメは余裕そうにしている。
それが気に入らないのか、光輝は怒りの感情を聖剣に込めるように強く握った。
光輝「ぉおおおおおおっ!」
雄叫びをあげながら、光輝は溜めた力を解放するように爆発的な突進を行った。
正面から、迷いのない唐竹の一撃を繰り出す。
ゴゥ!と風を切る凄まじい音と共に光そのもので構成されているかのような聖剣の凄絶な一撃がハジメを襲う。
しかし、そんな致死の一撃を前に、ハジメは一歩も動かずスっと腕を掲げただけだった。
光輝「なっ!?」
雫「えっ!?」
ハジメ「……。」
その一撃は、ハジメの右手の指、それも人差し指と中指の2本によってあっさりと受け止められていた。
そのままハジメは、光輝に言った。
ハジメ「光輝、"覇潰"に至るまでのお前の努力は認めよう。
だが、その程度では俺の"二指真空把"は絶対に破れん。」
雫「貴方北斗神拳習っていないでしょ!?」
雫の細かいツッコミに、思わず目を逸らすハジメ。それを隠すように、聖剣を指から離して押し戻した。
光輝「……だったら、これならどうだ!ハアァァァ!!!」
そう言って光輝が雄叫びを上げて聖剣を掲げた。激しく渦巻く魔力の奔流。
余波だけで周囲の地面が吹き飛び天井が消滅していく。
膨大な魔力にものを言わせて"神威"を放つつもりのようだ。
ハジメ「なんだ、その緊張した構えは?まだやる気か?
あがいてもあがいても人間の努力には限界があるのさ!」
雫「いや、貴方も人間でしょ。」
雫のジト目とツッコミを、ハジメはスルーした。
ハジメ「派生形技能の修行努力など無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァーーーっ!!
モンキーが人間に追いつけるかーッ!お前はこの俺にとってのモンキーなんだよ光輝ィーーーッ!!」
最早別の時間操作キャラになりきっているハジメ。おふざけ全開感が否めない。
雫の呆れた視線が突き刺さる。だが、ハジメさんはキャラを止めない。
光輝「違う!信念さえあれば人間に不可能はない!人間は成長するんだ!してみせるッ!」
そんなハジメの事情なんて知ったこっちゃないと言いたいのか、それともシリアスに疲れたのか、こちらも何故か相対するセリフになる光輝。
雫の頭痛の種が一つ、増えた瞬間でもあった。
光輝「神意よ!全ての邪悪を滅ぼし光をもたらしたまえ!神の息吹よ!
全ての暗雲を吹き払い、この世を聖浄で満たしたまえ!神の慈悲よ!
この一撃を以て全ての罪科を許したまえ!――"神威"!」
そして持てる全魔力を注ぎ込み、最強の一撃を放つ光輝。
詠唱と共にまっすぐ突き出した聖剣から極光が迸る。
ハジメ「ならば知るがいい!最高最善の魔王の実力を!"
最早ネタに走る気満々のハジメさんである。そして瞬間、世界が制止した。
そしてハジメは、光輝の"神威"を……通り過ぎた。
ハジメ「んしょ、んしょ……ふぅ、大体このあたりか。」
そして何故かそこら辺にあった岩盤を適当に持ってきて、自分の後ろに積み重ねた。
ハジメ「負けフラグ立てたから、ここは勝たせてあげないとね。」
まさかのネタに沿った展開に方向修正しやがった。そして元の位置に戻った。
ハジメ「そして、時は動き出す。」
その言葉と共に、指を鳴らす。その瞬間、"神威"がハジメを呑み込んだ。
雫「ハジメ君!?」
光輝「!」
まさか何も起こらず直撃するとは思っていなかったのか、光輝は驚き、雫は思わず声を上げた。
光輝「は……はは……やった……やったん、だ……。」
ハジメを倒せたのかと勘違いした光輝は、魔力枯渇によってその場に倒れこんで気絶した。
雫「光輝!?」
ハジメ「ただの魔力枯渇だよ。ちょい休ませりゃ、ちったぁよくなるだろ。」
雫「!?」
慌てて雫が振り向けば、無傷のハジメがそこに立っていた。
ハジメ「まぁ、俺がまだ生きているって知ったら、また騒ぎ立てるかもしれんが……
ガス抜きにはちょうど良かっただろうな。これで漸くやりやすくなる。」
雫「ハジメ君……幾らなんでも危なすぎるわよ。それに光輝のことだってまだ……。」
ハジメ「俺はあいつを信じる。これは、あいつが自分で乗り越えなきゃいけないんだ。」
雫「!」
ハジメの言葉にハッとなる雫。これは元々、光輝の特訓であって、雫が口を出してはいけないのだ。
ハジメ「あいつが本当の勇者になれるまで、何度ぶつかってこようが受け止めてみせるさ。
それが俺の、魔王としての俺の役目だ。」
雫「……はぁ、分かったわ。でもあまり無茶はしないでよね?香織も心配するだろうから。」
ハジメ「そこらへんはどうとでもなるさ。さてと、先ずは光輝の回復待ちだな。」
そう言ってハジメは、訓練場の医務室へと光輝を運んだのだった。
そんな訳で光輝を待つこと数時間、既に夕暮れ時になってしまったその時であった。
光輝「……ここは……。」
ハジメ「ようやっと起きたか、お寝坊さんめ。」
光輝「!?南雲!?」
俺が生きていることに驚き、聖剣を構えようとするが、覇潰による肉体疲労のせいか、態勢を整えられないようだ。
ハジメ「さっきの攻撃、あの程度じゃ俺は殺れんぞ。
威力に技能、詠唱破棄、その他諸々、まだまだ鍛え上げなきゃいけない事は沢山あるからな。
これからもビシバシ行くから、今はしっかり休んでおけ。」
光輝「!で、でも俺はあの時……。」
どうやら先程の自分の言動を覚えているようで、罪悪感を抱いているようだ。
全く……本当に世話のかかる兄弟弟子だ。
ハジメ「さっきのは挑発した俺も悪いから五分五分だ。それでも罪悪感があるなら……一つ約束しろ。」
光輝「約束……?」
ハジメ「あぁ、俺が道を間違えた時、必ず殺すと。」
光輝「なっ!?何を言っているんだ!そんなの「約束だ。」ッ……!」
俺は本気だ。そしてこれは、周りに誰もいないからこそできる相談だ。
ハジメ「俺は最高最善の魔王になるって夢がある。だから、俺は自分の正しいと思う道をいく。
でも、もし俺が間違った道を選んで、最悪最低の魔王になるって確信したら、その時はいつでも倒してくれ。
これは、お前にしか頼めない。勇者であり親友のお前の判断なら、俺は信じられるから。」
光輝「……。」
それを聞いた光輝は少し考えこむように俯いたが、やがて顔を上げていった。
光輝「……分かった。」
ハジメ「おう、ありがとな。」
光輝「でも!」
ハジメ「?」
光輝「……絶対に、俺がさせないからな……!最低最悪の、魔王なんかに……!」
……そうじゃなきゃな。だからこそお前にしか頼めないんだよなぁ。
ハジメ「分かった。あ、それとさぁ……いい加減名字呼びはやめてくれねぇか?
そろそろ名前で呼んでくれたっていいじゃねぇか。」
光輝「えっ?あ、あぁ、そうだな……。」
とまぁ、こんな感じで俺は光輝との溝をどんどん埋めていくことにした。
光輝「ハァッ!せいッ!ヤァッ!」
ハジメ「よっと!そう、それでいい!もっと来い!」
翌日、俺と光輝は互いに木剣で打ち合っていた。とはいっても、先が尖っているので十分殺傷力はある。
今日は、光輝に昨日の殺意マシマシの感じを思い出すようにさせ、それを黒い気持ち無しでも扱えるように仕上げていくという訳だ。
その特訓も現在佳境に入っており、そろそろ魔物肉による強化を行ってもいい頃合いになってきた。
やはり心の内に眠っていたどす黒い気持ちを吐き出したおかげか、光輝の太刀筋は昨日よりも更に強くなっていた。
その証拠に、先程からの太刀筋に全くの躊躇がない。
そろそろ真剣でやってもいいかな。限界突破の連続使用による経験値も積ませたいし。
と、そんなこんなで時間が過ぎた、先生やクラスメイト達との食事会後の夜中……
ハジメ「
トシ「まぁ、なんだ……頑張れ。」
光輝「……本当にこれを食えと!?」
恒例行事が始まった。勿論、他の面子(雫・恵理・浩介・龍太郎・鈴)も一緒だ。死なば諸共というやつだ。
ハジメ「魔力操作がねぇと、神代魔法の試練は厳しいぞ~?
詠唱時間も結構ロスになるし、この先あった方がいいと思うけどなぁ~?」
光輝「くっ!分かった!食うよ!食えばいいんだろ!」
ヤケクソ気味に魔物肉を口に入れ、神水で流し込む光輝。それを見て絶句する雫達。
自分達もこれをやるのか?という視線に、俺は頷いて言った。
ハジメ「安心しろ、香織の再生魔法でちったぁ痛みも収まるだろ。
俺も浄化作用使うから毒の心配はいらないぞ~……死ぬほど痛いけど。」
雫「最後聞き捨てならないことが聞こえたけど!?」
そんな雫のツッコミをスルーして、俺は光輝の毒の浄化を開始した。
その夜、遠征組の叫び声が王宮にて響き渡り、ちょっとした騒ぎになった。
ハジメ
「ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
さて、今回は語るにあらず。理由は今後の展開をお楽しみに!」
香織
「それも気になるけど……光輝君があんなに闇を抱えていたなんて……。」
ハジメ
「……ソウダネ。」
香織
「今の間は何かな!?かな!?」
ハジメ
「まぁ、アイツも今は自分の闇を受け止めて、前に進んでいるんだ。
過去のことは一切水に流そうよ。」
香織
「それもそうだね……それに、あの時ハジメ君を……。」
ハジメ
「おっと、そこから先はネタバレになるから、一旦お終いね。」
香織
「え、あ…う、うん。それじゃあ、次回予告だよ!」
次回予告
ハジメ
「漸くフリードと合流して、3大迷宮巡りが開始できるよ。そして次回で第6章はお終いだ。」
香織
「次回はライセンにも行ったよね……ハジメ君が手を加えた、ライセンに、ね?」
ハジメ
「あの時は俺だって悪乗りが過ぎたのは謝ったじゃん……
それとも、メルジーネ海底遺跡のお化け屋敷が嫌だったの?」
香織
「うっ……それもあるけど……でも、あのゴーレムは流石にやり過ぎだって!」
ハジメ
「いやぁ~、ミレディも留守にするだろうから、なるべく強力なガーディアンの方が安心して旅が出来るかなぁ?って思ってたらつい……。」
香織
「もう……でも、そんな優しい所も、おっちょこちょいな所も、私は好きだよ!」
ハジメ
「ありがとう、そして次章は帝国編。あの男がまさかの大活躍!?こうご期待を!」
香織
「それでは皆さん、次回もお楽しみに!」
リースティアさん、誤字報告ありがとうございました!
もしも、ハジメさんが召喚するとしたら、どのサーヴァント?
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勿論我妻、モルガン陛下
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本家後輩、マシュ
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正義の味方同士、エミヤ
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魔王と賢王、ギルガメッシュ
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勝ち確の死神、山の翁
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影の国の槍姫、スカサハ
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最強の母、ティアマト
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建築と錬成師、トラロック
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武器庫の獣、コヤンスカヤ
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どう見ても嫌な予感、LA
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ヒーロータイム、シャルル
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かつての推し、魔人さん
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時空と戦国の魔王ズ、ノッブ
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出来る良妻賢母、キャス狐
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恋する剣豪、武蔵ちゃん
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騎士道か覇道か、アーサー
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中国産AI皇帝、即ち朕
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恋愛クソザコ、カーマちゃん
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え⁉未実装⁉オルガマリー
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その他(活動報告4にコメントを)