ありふれない錬成師は最高最善の魔王の力で世界最強を超越する   作:天元突破クローズエボルハザード

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ハジメ
「神を騙る悪が蔓延る異世界"トータス"にて、最高最善の魔王、南雲ハジメは、色々あってハイリヒ王国の玉座につき、仲間達の強化を行っていた。
そして遂に、全員が神代魔法の習得に成功し、樹海へと出発するのであった!」
シア
「今回は私の家族が久しぶりに出てきます!まぁ、アレなんですけどね……。」
ハジメ
「まぁ、気持ちは分かる。原因は俺にもあるけど……何故よりにもよって二つ名を……。」
シア
「ホントですよ!そう言うのはハジメさんの担当なわけですし。」
ハジメ
「でも一名、それに乗り気になっている奴もいるしなぁ……。」
シア
「まぁ、彼には是非頑張ってもらいたいですね。さて問題です!
私たちは今、どうやって移動しているでしょうか?」
ハジメ
「一応原作でも答えは出ているけど……正解はどうかな?」
シア
「答えはこの後すぐ、ですぅ!それでは、第7章第1話」
ハジメ・シア
「「それでは、どうぞ!」」


原作第7巻~帝国編:2074/帝都震わすVorpal Bunny!
82.見参!首狩り兎(ハウリア)!


眼下の八雲が流れるように後方へと消えていく。

重なる雲の更に下には草原や雑木林、時折小さな村が見えるが、やはりあっと言う間に遥か後方へと置き去りにされてしまう。

相当なスピードのはずなのに、何らかの結界が張ってあるのか風は驚く程心地良いそよ風だ。

 

そんな気持ちの良い微風にトレードマークのポニーテールを泳がせながら、眼下の景色を眺めていた雫は、視線を転じて頭上に燦々と輝く太陽を仰ぎ見た。

雲上から見る恵みの光は、手を伸ばせば届くのでは?と錯覚させるほど近くに感じる。

雫は、手で日差しを遮りながら手すりに背中を預け、どこか達観したような、あるいは考えるのに疲れたような微妙な表情でポツリと呟いた。

 

雫「……まさか、飛空艇ならぬ飛行戦艦なんてものまで建造しているなんてね。

……もう、何でもありね。」

そう、雫が現在いる場所は、ハジメが作り出した飛行戦艦"逢魔号"の後部甲板の上なのである。

この逢魔号は、重力石と感応石を主材料に、その他諸々の機能を搭載して建造された新たな移動手段だ。

今まで使わなかったのは、ハジメ曰く"内部構造の問題"らしい。

 

重力石で物体を動かすこと自体は難しくなく、質量がどれだけ大きかろうとも、ハジメ自身鍛えているのでどうとでもなった。

が、デンライナーゴウカのように快適な旅を自分以外も送れるかと聞かれればそれは否だった。

そんな折、空間魔法・再生魔法といった二つの神代魔法の習得により、この逢魔号の開発は飛躍的に進み、魂魄魔法によってさらにアップグレードされたのだ。

 

王都から出発する際、馬車も魔力駆動車も用意せず王都近郊の草原に集合させたハジメを訝しむ皆の前で、逢魔号をお披露目したハジメは、ドヤ顔しながら

「RPGとかの旅の終盤で、飛行系移動手段を手に入れるのは常識でしょ?」

と、自信満々に語ったものだ。

 

この逢魔号は、全長150mの戦艦のような形をしており、中には前面高所にあるブリッジと中央にあるリビングのような広間の他、更にキッチン・バス・トイレ付きの居住区まである。

と言っても、帝国まで馬車で2ヶ月の道のりを僅か半日で走破してしまうので、どこまで活用されるかはわからない。

 

最も、一度行ってしまえばハジメさんのオーロラカーテンで一ッ飛びだが。

が、それでは風情とロマンがないので、というハジメさんの思惑があったことはここだけの秘密である。

とはいえ、空に浮かせているだけでも、結構な魔力を消費する。

なので現在、ハジメさんは常時変身状態なのだ。半永久機関が無ければ、長時間の使用など不可能である。

 

光輝「雫……ここにいたのか。」

雫「光輝……。」

ハジメのセリフを思い出して、一体どこの常識だと内心でツッコミを入れていた雫に声がかけられた。

雫がそちらに視線を向ければ、ちょうどハッチを開いて光輝が顔をのぞかせているところだった。

光輝は、そのまま雫の隣に来て、手すりに両腕を乗せると遠くの雲を眺め始める。

そして、ポツリと呟いた。

 

光輝「これ……すごいよな。」

雫「そうね。……もう、いちいち驚くのも疲れたわ。みんなは?」

光輝「龍太郎と近衛の人達はシアさんが作った料理食べてる。鈴はリリィと話してる。

清水は恵理と話していて、遠藤は……分からない。ハジメは未だ運転中だ。」

 

ハジメに付いて来たのは、帝国に送ってもらう約束をしたリリアーナ姫とその護衛の近衛騎士達数名、それに光輝達勇者パーティーwith恵理&浩介だけだ。

愛子は戦えない生徒達を放置することは出来ないと残り、永山達前線組も、光輝達がいない間王都の守護を担うと居残りを決意した。

 

因みに、イナバは魔人族達を鍛え上げるために、ライセンの隠れ家に残ることに。

フリードから聞いた話では、魔人族の一部が帝国にも侵攻していたらしく、その損害を補うために樹海に侵攻している可能性があるとハジメは推測していた。

と、その時、今まで一定速度で飛行していた逢魔号が急に進路を逸らし始めた。

帝国までは真っ直ぐ飛べばいいだけのはずなので何事かと顔を見合わせる光輝と雫。

 

光輝「?何かあったのか?」

雫「取り敢えず、中に戻りましょうか。」

二人は、一拍おいて頷き合うと急いで艦内へと戻っていった。

 


 

雫と光輝がブリッジに入った時には、既に全員が集まっており、中央に置かれている水晶のようなものを囲みながら、そこからSFよろしく出ている空中ディスプレイに映し出される光景を見ていた。

 

雫「何があったの?」

香織「あっ、雫ちゃん。うん、どうも帝国兵に追われている人がいるみたいなの。」

尋ねた雫に香織が答えた。

その香織が指差した空中ディスプレイには、峡谷の合間を走る数人の兎人族と、その後ろから迫る帝国兵のリアル鬼ごっこが映っていた。

 

この空中ディスプレイ付の水晶は、望遠鏡のような"遠見石"と、同質の魔力によって景色の中継が出来る"遠透石"を、"境界結石"と共に生成魔法で付加した水晶で出来ており、外部遠方の映像をブリッジに設置されている水晶を通じて、空中に映像を映すことができる。

 

簡単に言ってしまえば、トランスフォームしそうな地球外生命体がよく使う、通信用モニターのようなものだ。

勿論、普通の望遠鏡としても、しっかり使えるし、ア〇アンマンや〇走中に出てくる、3DCGホログラムモニターのようなものも使える。

そして、これらの機能を応用したものが各箇所に搭載されており、空中ディスプレイを操作することで、搭載された機能を簡単に扱えることが出来、より快適かつ柔軟な旅路を行くことが可能だ。

 

雫が、その空中ディスプレイを覗き込めば、確かに、水の流れていない狭い谷間を兎人族の女性が2人、後ろから迫る帝国兵を気にしながら必死に逃げているようだった。

だが、その足はふらついて遅く、馬に乗る帝国兵たちの速度とは比べ物にならない。

追いつかれるのは時間の問題に見えた。

 

加えて、帝国兵のずっと後ろには大型の輸送馬車も数台有って、最初から追って来たというより、逃がしたのか、あるいは偶然見つけた兎人族を捕まえようとしているように見える。

どうやら、ハジメ達は、この状況を見て逢魔号の速度を落としたようだ。

本来なら無視するところなのだろうが、シアが同族ということで酷く気にしたので向かっているところなのである。

 

光輝「不味いじゃないか!直ぐに助けに行かないと!」

ハジメ「まぁ待て、光輝。あいつ等は俺の部下だ、あの程度でやられるほど軟じゃねぇよ。」

光輝「!?で、でも…!」

しかし、焦る光輝に対してハジメは冷静に宥め、興味深そうに空中ディスプレイを眺めている。

 

そうこうしている内に、逃げていた兎人族の女性2人が倒れ込むようにして足を止めてしまった。

谷間の中でも少し開けている場所だ。

それを見て、ハッと正気に戻った光輝がブリッジを出て前部の甲板に出て行こうとする。

距離はまだあるが、取り敢えず魔法でも撃って帝国兵の注意を引くつもりなのだ。

 

ハジメ「行かない方がいいぞ、敵だと思われるから。」

光輝「なっ、何を言っているんだ!か弱い女性が今にも襲われそうなんだぞ!」

キッ!と苛立たしげにハジメを睨む光輝に、しかし、ハジメはニヤリと笑うと、空中ディスプレイを見ながらどこか面白げな様子で呟いた。

 

ハジメ「か弱い?まさか。あいつらは……"ハウリア"だぞ?」

何を言っているんだ?と光輝が訝しげな表情をした直後、「あっ!」と誰かが驚愕の声を上げた。

光輝が、何事かと空中ディスプレイに視線を向けると、そこには……

首を落とされ、あるいは頭部を矢で正確に射貫かれて絶命する帝国兵の死体の山が映っていた。

 

『……え?』

光輝だけでなく、ハウリア族を知らないその場の全員が目を点にする。

その間にも、輸送馬車から離れて兎人族を追っていた部隊が戻ってこない事を訝しんだ後続が、数人を斥候に出した。

 

そして、その斥候部隊が味方の死体の山を見つけ、その中央で肩を寄せ合って震えている兎人族の女2人に、半ば恫喝するように何かを喚きながら詰め寄った。

彼等も、普段ならもっと慎重な行動を心がけたのかもしれないが、いきなり味方の惨殺死体の山を目撃した挙句、目の前にいるのは戦闘力皆無の愛玩奴隷。

動揺する精神そのままに無警戒に詰め寄った……そう、詰め寄ってしまった。

 

斥候の一人が兎人族の女のウサミミを掴もうとした瞬間、どこからか飛来した矢がその男の背後にいた別の斥候の頭部に突き刺さった。

一瞬の痙攣のあと横倒しになった男の倒れる音に気がついて振り返る斥候。

 

その前で、恐怖に震えていたはずの兎人族の女が音もなく飛び上がり、いつの間にか手に持っていた小太刀を振るって、眼前の斥候の首をあっさり落としてしまった。

そして、もう一人の兎人族の女も、地を這うような低姿勢で一気に首を飛ばされ倒れる男の脇を駆け抜け、突然の事態に呆然としている最後の斥候の首を、これまたあっさり刈り取ってしまった。

 

まるで玩具のようにポンポンと飛ぶ首に、まだ人殺しに慣れ切れていない光輝達が「うっ!?」と顔を青褪めさせて口元を押さえる。

リリアーナ姫や近衛騎士達は、兎人族が帝国兵を瞬殺するという有り得ない光景に、思わずシアを凝視する。

特殊なのはお前だけじゃなかったのか!?と、その目は驚愕に見開かれていた。

 

シア「いや、紛れもなく特殊なのは私だけですからね?

私みたいなのがそう何人もいるわけないじゃないですか。彼等のあれは訓練の賜物ですよ。

……ハジメさんが施した地獄というのも生温い、魔改造ともいうべき訓練によって、あんな感じになったんです。」

ハジメ「人聞きの悪いことを言わないでよ。

俺は扇動しただけで、あそこまでなったのは彼等の本能が勝手に野生に回帰したからだよ。

ふむ……狙撃はパル、囮役はラナとミナか。アイツ等、前よりもできるようになったじゃねぇか。」

『十中八九原因お前だよ!(貴方でしょ!?)(兄さんだよね?)(ご主人様じゃろ。)(ハジメ君だよね!?)』

 

全員のツッコミが一斉にハジメに向けられる。

その間にも事態は最終局面を迎える。後続の輸送馬車と残りの帝国兵達が殺戮現場に辿り着いたのだ。

道を塞ぐようにして散らばる味方の変わり果てた姿に足が止まる帝国兵達。

まさか、何事もなかったように死体を踏みつけて先へ進むわけにはいかないし、何より動揺が激しいようでざわめいている。

 

そして、ハウリア族はその致命的な隙を逃さなかった。

いや、全ては、その隙を作るための作戦だったのだろう。相手の帝国兵は残り13名。

対して両サイドの崖から飛び出したハウリア族は、いつの間にか姿を消していた先程の女性2人を入れてもたったの6名。

しかし、帝国兵が、飛び出してきたハウリア族に対して明確な戦闘態勢をとったのは、4人の首が飛び、一人の眉間が矢で撃ち抜かれた後だった。

 

ハウリア族の猛攻は止まらない。流れる水のように、あるいは群体のように帝国兵に襲いかかる。

一人が正面から小太刀を振るい帝国兵が剣で受け止めた瞬間には、脇から飛び出した別のハウリア族があっと言う間に首を刈る。

帝国兵に正面から飛来する矢。

初撃とは比べ物にならないほど遅く山なりに飛んできたそれを、見え透いているとばかりに切り払った瞬間、その帝国兵の矢を追う視線を読んでいたように、別の兎人族が死角から滑り込んで首を刈る。

 

雄叫びを上げて迫る帝国兵に、刈り取った兵士の頭部を蹴りつける。

怒り心頭といった具合にその不埒なハウリアに視線が固定された瞬間、背後から突如現れた別のハウリアに首を刈られる。

右と思えば左から、後ろと思えば正面から、縦横無尽、変幻自在の攻撃に終始翻弄される帝国兵達。

彼等の首が余さず飛ぶまで……そう時間はかからなかった。

 

「こ、これが兎人族だというのか……。」

「マジかよ……。」

「うさぎコワイ……。」

逢魔号のブリッジでそんな戦慄を感じさせる呟きが響く。

 

ハジメ「おぉ~、この前も装備新調したから、練度が上がっているじゃん。でも……詰めが甘いね。

武器の力を過信しちゃあ、いけないよ。」

唖然呆然とする光輝達を放って、ハジメはこれまた新作兵器の対戦車ライフル型アーティファクト"タルタロス03-XZ"を取り出すと、器用に小さなオーロラカーテンを開いて、銃口をそこにつっこむと、立射の姿勢をとった。

現場まではまだ5km程ある。

ユエ達以外が目を丸くし、ミュウが「パパの本場の射撃なの!」と大興奮する中、ハジメは微動だにせずにスッと目を細めた。

そして、静かに引き金を引く。

 

ズガァァァンッッッ!!!

強烈な炸裂音と共にシュラーゲンから一条の閃光が空を一瞬で駆け抜けた。

そして、ちょうど馬車から飛び出てハウリア達を狙い魔法を発動しようとした帝国兵を一片も残さず消滅させた。

 

龍太郎「な、何で分かったんだ?」

鈴「南雲君、エスパー的な力もあったの?」

ハジメ「魔力のうねりがあったからね。そこさえわかれば、後はデストロイするだけさ。」

浩介「もうお前一人でも十分だろ。」

浩介の言葉に頷かない者はいなかったのであった。

 

空中ディスプレイに、驚いたような表情で消失した伏兵を見ているハウリア族が映っていた。

彼等は、すぐさま射線を辿って空高くを飛ぶ逢魔号に気が付く。

普通なら、正体不明の飛行物体と、そこからの攻撃に警戒心をあらわにするものだろうが……

次の瞬間には彼等の表情は喜色に彩られていた。

 

岩陰から飛び出てきたクロスボウを担ぐ少年などは何やら不敵な笑みを浮かべながらビシッ!とワイルドな敬礼を決めている。

彼等は閃光を放った者が誰なのか気がついたようだ。それも、当然といえば当然である。

紅と黄金の閃光は、彼等が敬愛する魔王の代名詞のようなものなのだから……

 

少年にならって惚れ惚れするような敬礼を決めるハウリア族達。

空中ディスプレイにデカデカと映ったその姿に、再びその場の全員がハジメに視線を向けた。

今度は、多分に呆れを含んだジト目で。

何をしたら温厚の代名詞のような兎人族があんなことになるのだと、光輝達の目が無言の疑問を投げかけていた。

 

シア「ハジメさん、ハジメさん。早く、降りましょうよ。

樹海の外で、こんな事をしているなんて……もしかしたらまた暴走しているんじゃ……。」

光輝達のジト目をスルーしてシアがハジメを急かす。

ハウリア族は明らかに作戦を練って帝国兵の輸送部隊を狙っていたため、どうやら、樹海の外まで出張って帝国兵を殺すほど、また戦いに酔いしれて暴走しているのではないかと心配なようだ。

 

ハジメ「……そうだね。もしかしたら、帝国でドンパチやっている可能性も捨てきれないし。」

ハジメは、彼等の様子から自己陶酔はないにしても、やはり樹海で何かがあったと察し、シアが憂い顔であったこともあり、逢魔号を操って谷間に着陸させた。

 

ハジメ達が谷間に降りると、そこにはハウリア族以外の亜人族も数多くいた。100人近くいそうだ。

どうやら、輸送馬車の中身は亜人達だったらしい。

兎人族以外にも狐人族や犬人族、猫人族、森人族の女子供が大勢いる。

手足と首には金属製の枷がつけられていた。

どうやら、輸送馬車は亜人奴隷を運ぶためのものだったようだ。

 

皆一様にハジメ達に対して警戒の目を向けると共に、見たことも聞いたこともない空飛ぶ乗り物に驚愕を隠せないようだ。

まさに未知との遭遇である。

と、そんな驚愕8割、警戒2割で絶賛混乱中の亜人族達の中からクロスボウを担いだ少年が颯爽と駆け寄り、ハジメの手前でビシッ!と背筋を伸ばすと見事な敬礼をしてみせた。

 

パル「お久しぶりです、魔王陛下!再びお会いできる日を心待ちにしておりました!

まさか、このようなものに乗って登場するとは……この必滅のバルドフェルド、改めて感服致しましたっ!

それと先程のご助力、感謝致しますっ!」

ハジメ「相変わらずの暴れっぷりだねぇ。まぁ、さっきのは気にしなくていいよ。

お前等なら、難なく対処できただろうし……でもこれだけいっておく。

"よくやったな、我が精鋭達よ。"」

 

ハジメがニヤリと口元に笑みを浮かべてそう言うと、唖然とする亜人族達の合間からウサミミ少年と同じく駆け寄ってきたウサミミ女性2人と男3人が敬礼を決めつつ、感無量といった感じで瞳をうるうると滲ませ始めた。

そして、一斉に踵を鳴らして足を揃え直すと見事にハモりながら声を張り上げた。

 

『恐縮でありますっ、My load!!』

谷間に木霊する感動で打ち震えたハウリア達の声。

敬愛する魔王陛下に、成長を褒められて涙ぐんでいるが、決して涙は流さない。

全員、空を仰ぎ見ながら目にクワッ!と力を込めて流れ落ちそうになる涙を堪えている。

若干、力を入れすぎて目が血走り始めているのが非常に怖い。

ハジメ、ユエ、シア、そしてミュウの4人は平然としているが、他の面々はドン引きである。

 

シア「えっと、みんな、久しぶりです!元気そうでなによりですぅ。

ところで、父様達はどこですか?パル君達だけですか?

あと、なんでこんなところで、帝国兵なんて相手に……。」

パル「落ち着いてくだせぇ、シアの姉御。一度に聞かれても答えられませんぜ?

取り敢えず、今、ここにいるのは俺達6人だけでさぁ。

色々、事情が込み入ってやして、詳しい話は落ち着ける場所に行ってからにしやしょう。

……それと、姉御。パル君ではなく"必滅のバルトフェルド"です。お間違いのないようお願いしやすぜ?」

シア「……え?いま、そこをツッコミます?っていうかまだそんな名前を……

ラナさん達も注意して下さいよぉ。」

 

相変わらずのパル君にシアが頭痛を堪えるようにこめかみをぐりぐりしながらツッコミを入れる。

しかし、場所を移すべきだという意見はもっともなので、取り敢えずそれ以上の追及はせず、シアは、ラナと呼んだハウリアの女性と他のメンバーにパルの厨二全開の名を改めさせるよう注意を促した。

だが、現実というのは常に予想の斜め上をいくものなのだ。

 

ラナ「……シア。ラナじゃないわ……"疾影のラナインフェリナ"よ。」

シア「!?ラナさん!?何を言って……」

ハウリアでも、しっかりもののお姉さんといった感じだったラナからの、まさかの返しにシアが頬を引き攣らせる。

しかし、ハウリアの猛攻は止まらない。連携による怒涛の攻撃こそが彼等の強みなのだ。

 

ミナ「私は、"空裂のミナステリア"!」

シア「!?」

ヤオ「俺は、"幻武のヤオゼリアス"!」

シア「!?」

ヨル「僕は、"這斬のヨルガンダル"!」

シア「!?」

リキ「ふっ、"霧雨のリキッドブレイク"だ。」

シア「!?」

 

全員が凄まじいドヤ顔でそれぞれジョ○的な香ばしいポーズを取りながら、二つ名を名乗った。

シアの表情が絶望に染まる。どうやら、ハウリアの中では二つ名(厨二)ブームが来ているらしい。

この分だと、一族全員が二つ名を持っている可能性が高い。

ちなみに、彼等の正式名は、頭の二文字だけだ。

 

久しぶりに再会した家族が、ドヤ顔でポーズを決めながら二つ名を名乗ってきましたという状況に、口からエクトプラズムを吐き出しているシアの姿は実に哀れだった。

なので、ハジメは、呆れ顔をしつつ程々にするようにと説教しようとした。

しかし、そこでパルの方から流れ弾が飛んで来た。

 

パル「ちなみに、魔王陛下は"紅き閃光の輪舞曲(ロンド)"と"白き爪牙の狂飆(きょうひょう)""黒き黄金の終焉(ラグナロク)"ならどれがいいですか?」

ハジメ「……なにそれ?」

パル「陛下の二つ名です。

一族会議で丸10日の激論の末、どうにかこの3つまで絞り込みました。

しかし、結局、どれがいいか決着がつかず、一族の間で戦争を行っても引き分ける始末でして……

こうなったら陛下御自身に再会したときに判断を委ねようということに。

ちなみに俺は"紅き閃光の輪舞曲"派です。」

ハジメ「どれでもないよ。俺は最高最善の絶対王者(オーバーロード)って決めているから。」

トシ「論争のスカイウォールに第4勢力介入させるな。」

訂正、原因はハジメさんにもあった。というか、コイツも大概であった。

と、その時、しっとりした声が響いた。

 

???「あの……宜しいでしょうか?」

ハジメに、そう声をかけてきたのは足元まである長く美しい金髪を波打たせたスレンダーな碧眼の美少女だった。

耳がスッと長く尖っているので森人族ということが分かる。

どこか、フェアベルゲンの長老の一人であるアルフレリックの面影があるな、とハジメは感じていた。

 

???「あなたは、南雲ハジメ殿で間違いありませんか?」

ハジメ「?確かにそうだけど……どっかで会ったっけ?」

ハジメが頷くと、金髪碧眼の森人族の美少女はホッとした様子で胸を撫で下ろした。

もっとも、細い両手に金属の手枷がはめられており、非常に痛々しい様子だった。

足首にも鎖付きの枷がはめられており、歩く度に擦れて白く滑らかな肌が赤くなってしまっている。

 

???「では、わたくし達を捕らえて奴隷にするということはないと思って宜しいですか?

祖父から、あなたの種族に対する価値観は良くも悪くも平等だと聞いています。

亜人族を弄ぶような方ではないと……。」

ハジメ「祖父?もしかして、アルフレリック?」

???「その通りです。

申し遅れましたが、わたくしは、フェアベルゲン長老衆の一人アルフレリックの孫娘アルテナ・ハイピストと申します。」

ハジメ「長老の孫娘が捕まるって……どうやら本当に色々あったみたいだね。」

 

長老の孫娘と言えば紛れもなく森人族のお姫様ということであり、当然、その警護やいざという時の逃走経路・方法もしっかり確立してあるはずだ。

それらを使用することもなく、あるいは使用しても捕まってしまったと言うなら、それだけ逼迫した事態に晒されたということだろう。

やはりあの後、帝国が何かやりやがったのかと、ハジメは顔を顰め、益々、パル達から詳しい話を聞く必要があるなと視線を鋭くし、ハジメはパル達に声をかける。

 

ハジメ「お前等、亜人達をここに全員まとめておいてくれ。序に樹海まで送ってあげるから。」

パル「Yes,Your highness!あっ、申し訳ないんですが、陛下。

帝都近郊に潜んでいる仲間に連絡がしたいんで、途中で離脱させて頂いてもよろしいですか?」

ハジメ「そう、それならちょうど、こっちも帝都に送る予定だった面子もいるから、帝都から少し離れた場所で一緒に降ろしてあげるよ。」

パル「有難うございますっ!おい、あんた達!我等が魔王陛下が樹海まで送ってくださるそうだ!

死ぬほど感謝しろ!さぁ、ついて来い!家に帰りたくないって奴ぁ別だがなぁ!」

 

現在、ハジメ達がいるのは帝都のかなり手前の位置だ。

そんな場所で亜人族達の輸送馬車がいたということは、この輸送は樹海から帝都へ行くものではなく、帝都から他の場所へ向かう途中だったということだ。

つまり、パル達は帝都に何らかの情報収集をしに行って、輸送の話を知り、追いかけてきたということだろう。

 

亜人族達が、パルの張り上げた声にビクゥッとなったが、家に帰れると言われれば不安と恐怖はあれど期待はしてしまうのか、不安そうにおずおずと歩き始めた。

それを見て、ハジメ達も逢魔号に戻る。

と、その時、ハジメの近くで「きゃ!」と可愛らしい悲鳴が上がった。

アルテナが、足枷の鎖のせいで躓いたようだ。

わたわたと両手が宙をかき、咄嗟に、近くにあったもの――すなわちハジメの背中にしがみついた。

 

亜人族達が一瞬で青褪めて硬直する。

帝国兵が相手だったなら、支え代わりにした瞬間、平手でも飛んでくるところだ。

「なに許可なく触ってんだ、薄汚い獣風情がっ!」とか何とか怒鳴りながら。

なので、アルテナもそうされるのではないかと、殴られる姿を幻視したのだろう。

が、ここにいるのは最高最善の魔王。そんな低俗なことをするはずもなく……

 

ハジメ「……一回帝国、乗っ取ってみようかなぁ。」

肩越しに振り返ったハジメは、自分の視線にビクッと身を竦ませたアルテナの手と足の枷を見て、「そりゃ歩きにくいわな。」と納得しつつ、物騒なことを呟きながらスッとアルテナの前に跪いた。

その事に、亜人族達がざわっと動揺したように騒めく。

 

アルテナ「あ、あの……。」

ハジメ「いいから、ジッとしていて。」

同じく、いきなり跪かれて動揺するアルテナだったが、次ぐ、ハジメの行為に更に動揺が激しくなった。

というのも、ハジメがアルテナの足に触れたからだ。正確には足枷だが、ビクンッと震えるアルテナ。

未だかつて、男に跪かれた挙句足に触れられたことなどないので、動揺のあまり硬直しつつも目が泳ぎまくっている。

箱入り娘同然だった彼女には無理もないだろう。と、次の瞬間には、驚きで目が丸くなった。

紅と黄金の魔力光が迸ったと思ったら、音もなく足枷が外れたからだ。

 

ハジメ「魔力の無い亜人族用なのが幸いだね。とはいえ、膂力で破壊できないようにしているみたい。

まぁ、こんなの俺には関係ないけど、ねッ!」

今度はアルテナの両手の枷を持つと、それをベキィッ!と砕いてしまった。

その光景に他の亜人族もびっくり仰天してしまった。

まぁ、そんなことできるの、この魔王ぐらいだろうしな。

その時点で、ハジメが何をしているのか理解したアルテナは少し落ち着きを取り戻した。

 

そして粉々になった手枷を放り捨てて、最後にアルテナの首筋に触れる。

奴隷用の首輪が着けられているからだ。

真剣な眼差しで、自分の首筋に手を這わせるハジメに、なぜかアルテナの頬が熱を持った。

 

再び迸った紅と黄金の輝きに、アルテナは目を奪われる。

音になるかならないかというほど小さな声で「綺麗……」と呟く。

最近、ハジメの魔力が研ぎ澄まされてきているのか、以前より鮮やかになっているようだ。

あっさり首輪を外したハジメは、外した枷を幾つもの鍵へと加工し直し、パルへと渡した。

 

ハジメ「多分、全員同じ鍵穴だと思うから、解いてあげて。」

パル「Yes,My load!お心遣い、感謝致します!」

パルの敬礼に頷くと、ハジメは踵を返し、ミュウの下へと向かったのであった。

 

亜人族達は、不思議な者を見るような目で、パル達ハウリアは誇らしげに、光輝達は苦笑し、そしてユエ達女性陣は、呆れと鋭さの両方を含んだ眼差しでそれを見つめていた。

その視線にハジメは、「他意はないから、とっとと行くよ。日が暮れると面倒だし。」といって適当にあしらったのであった。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
さて、答えは「飛空艇"逢魔号"」による長距離高速飛行、でした。
この逢魔号、実はハジメさんが遊びがてらに作った戦闘機も幾つか搭載しており、それらにはAIも組み込まれているので無人操作も可能な代物です。

また、艦首にはドリルやブレード、電磁砲を仕込んであり、電磁砲の威力はマキシマムハイパーサイクロンには劣るものの、直線状の物体を全て虚数空間に叩き込むレベルの威力はあります。
他にも大砲の砲弾には、"暴食の黒天窮"や"涅槃"、"エレメンタル・キャノン"等のトンデモ魔法を付与してあり、両翼には高周波ブレード機能(カーズ様の輝彩滑刀みたいなものです)、2門の巨大ターボ(ワムウ様の神砂嵐をイメージしてもらえると。え?エシディシ様のはちょっと使いづらくて……。)、自動迎撃ファンネルにミサイルランチャー、それらを備え付けの専用宝物庫に搭載済みなので、迎撃用火力面に関してはばっちりです。

また、ファンネルは組み合わせてシールドになる機能もあり、逢魔号自体にも結界が貼ってあるので、防御面でもしっかりしています。
艦装甲は逢魔鉱石フル使用なので、隕石や核爆発があろうとも掠り傷一つつきません。

本来であれば、プールや露天風呂、レストラン街などの設置もしたかったハジメさんですが、今回は安全な空路の為、泣く泣く断念しました。
なので、そう言った機能に関しては、アフター辺りで語られそうです。

それにしても、ガッチャードのサブタイトルにはこれまで毎回ケミーの名前が出てきますが、やっぱりそう言う流れなんでしょうかね?
さて、今回は久しぶりのハウリア厨二解説でした。
しかし、事情が動やら込み入っているようで!?どうなる、次回!

次回予告

ハルツィナ樹海に到着したハジメ一行は、帝国の襲撃を迎え撃っていたハウリアたちと合流する。
そして、囚われていた大量の亜人族奴隷を連れ、フェアベルゲンへと向かう中、ハウリアたちの口から語られた、帝国の残酷な所業に、一同は衝撃を受けてしまう。
そんな中、家族を心配し、悩めるシアの為に、ハジメのとった行動とは!

次回、「急展開!ジュカイが樹海が大ピンチ!」
目撃せよ、歴史の始まり!

ハジメ「沸いてきたぜ!」

もしも、ハジメさんが召喚するとしたら、どのサーヴァント?

  • 勿論我妻、モルガン陛下
  • 本家後輩、マシュ
  • 正義の味方同士、エミヤ
  • 魔王と賢王、ギルガメッシュ
  • 勝ち確の死神、山の翁
  • 影の国の槍姫、スカサハ
  • 最強の母、ティアマト
  • 建築と錬成師、トラロック
  • 武器庫の獣、コヤンスカヤ
  • どう見ても嫌な予感、LA
  • ヒーロータイム、シャルル
  • かつての推し、魔人さん
  • 時空と戦国の魔王ズ、ノッブ
  • 出来る良妻賢母、キャス狐
  • 恋する剣豪、武蔵ちゃん
  • 騎士道か覇道か、アーサー
  • 中国産AI皇帝、即ち朕
  • 恋愛クソザコ、カーマちゃん
  • え⁉未実装⁉オルガマリー
  • その他(活動報告4にコメントを)
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