ありふれない錬成師は最高最善の魔王の力で世界最強を超越する 作:天元突破クローズエボルハザード
「神を騙る悪が蔓延る異世界"トータス"にて、最高最善の魔王、南雲ハジメは、仲間たちと共に、樹海へと向かっていた。
その道中、帝国兵と戦闘していた部下のハウリア達と再会し、奴隷になっていた亜人達を解放する。
そして、新たに製作した飛空戦艦にて、樹海で何があったかを聞くことにしたのであった。」
メイル
「あらあら、ハジメ君ったら急に虚空に話しかけだすなんて……妹達に気味悪がられるわよ?」
ハジメ
「いや、お前はちゃんと仕事しろ。てか、お前の今の表情の方がヤバいぞ?ちょっと涎出ているし。」
メイル
「!?ジュル……何のことかしら?」
ハジメ
「いや、誤魔化しても無駄だからな!?全く……そんなに妹が欲しいなら、俺や雫のとこから……。」
メイル
「いや、アレを妹って呼ぶのは流石にお姉さんでも……というか、ただの厄介払いじゃないの?」
ハジメ
「?妹なら何だろうと構わず囲っちまうんだろ?」
メイル
「O.K.
ハジメ・メイル
「「それでは、どうぞ!」」
あの後、パル達によって全ての枷を外され、香織とメイルによって治療された亜人達が、逢魔号に度肝を抜かれながらも物珍しげにあちこちを探検し、子供たちが甲板で大盛況している頃、俺達はブリッジにてパル達ハウリアの話を聞いていた。
ハジメ「そう……あの後帝国の連中がやって来たのか。道理で、樹海が酷い有様だよ。」
パル「肯定です、陛下。折角補充してもらったトラップも、台無しにされてしまいました。
面目次第もございません。」
リリアーナ「そんな……樹海の攻略のためとはいえ、酷いことを……。」
因みに、王都での反乱の際の出来事だが、パル達曰く、樹海にも魔人族が魔物を引き連れてやって来たのが事の始まりだった。
まぁ、神代魔法の獲得を狙う以上大迷宮に行くのは当たり前だ。
当然、樹海に侵入した魔人族達を、フェアベルゲンの戦士達が許すはずもなく、最大戦力をもって駆逐しに向かった。
しかし、亜人族と樹海の魔物以外は感覚を狂わされ、視界を閉ざされる濃霧の中でなら楽に勝てると思われた当初の予想は、あっさり裏切られることになる。
魔人族はともかく、引き連れた魔物達は、樹海の中でも十全の戦闘力を発揮したのだ。
ほとんどの魔物が昆虫型の見たこともない魔物だったらしく、その固有魔法も多彩かつ厄介でフェアベルゲンの戦士達は次々と返り討ちにあってその命を散らしていった。
その死者達も俺が頑張って生き返らせたが。
そして魔人族は、瀕死状態の亜人族に、「大迷宮の入口はどこだ?。」と聞いて回ったが、彼等が敵に情報を教えるわけもなく、また、そもそも知らないこともあり、魔人族は、ならば長老衆に聞けばいいとフェアベルゲンに向かって進撃を始めたのだそうだ。
余りに強力な魔物の軍勢に、同胞を守るためにもフェアベルゲンの長老会議は、大樹の情報を教えることにした。
が、当時の魔人族の価値観は最悪だった。
曰く、この世界は魔人族によって繁栄していくべきであり、神から見放された半端者の獣風情が国を築いているという時点で耐え難い屈辱だということらしい。
その表情は自らの神を信望する狂信者のそれだったという。
そして、その魔人族は、その思いのままフェアベルゲンに牙を剥いた。
大迷宮に行く前に亜人共を狩り尽くしてやる、と。
しかし、そこで待ったをかけたのが我等が精鋭、ハウリアであった。
ただし、それはフェアベルゲンのためではなかった。
もちろん、フェアベルゲンにも同族である兎人族はいるので、助けたいという思いが皆無というわけではないが、何より、カム達が看過できなかったのは、攻めてきた魔人族の目的が大迷宮であるということだ。
万一、魔人族が大樹をどうにかしてしまったら……
自分達の王である俺がいずれ戻って来る以上、魔人族が何かしたせいで大迷宮に入れなくなっていたら目も当てられない。
敬愛する王の部下たらんとする自分達がいながら、みすみす王の望みが潰えるのを見逃したとあっては、もう胸を張って再会を喜ぶことなど出来はしないし、俺を王と呼ぶ資格もない!と、いうわけだったそうだ。
これもハウリアの矜持というやつか。
その結果、ハウリア族は「われぇ、なに陛下のシマに手ぇ出しとんねん、ア゛ァ゛!?
いてまうぞ、オ゛ォ゛ン!?」という心境で参戦を決意したらしい。
参戦したハウリア達は、まずフェアベルゲンの外側から各個撃破で魔物達を仕留めていった。
魔物達の動きと固有魔法を実地で確かめて戦略に組み込むためだ。
ハウリア族は魔物肉による改造で劇的にスペックも上がり、自らの種族の特性を上手く扱えるようになって、精神が戦闘を忌避しなくなったという三拍子の強化はあったのだ。
だが勿論、未知の敵と正面から戦うような愚は決して犯さなかった。流石は俺の忠臣達だ。
相手を決死の覚悟が必要な難敵と定めて、闇討ち、不意打ち、騙し討ち、卑怯、卑劣に嘘、ハッタリと使えるものは何でも使って確実に情報を集めた。
そして、配置が終わったチェスのように、一斉に攻勢に出たのだ。
濃霧の効果がなくとも、兎人族本来の巧みな気配操作によって確実に魔物を仕留めていった。
そのうち配下の魔物がいつの間にか相当減っていることに気がついた魔人族が、魔物を集め始めた。
各個撃破が出来なくなったハウリア達は自分達を囮にして、今度は新たな集落の周囲に設置しまくったトラップ地帯に誘導を開始した。
誘導は簡単だったそうだ。何せ、散々してやられたことで、魔人族は頭に血が上りまくっていたのだ。
そこで、ちょっと姿を見せて鼻で嗤ってやれば……十分である。
そして、ハウリアに若干の被害を出しつつも、遂に、魔人族の隊長格の首を落として、魔物の殲滅に成功した、といったところで俺がフリードを連れてやってきた、という訳だ。
しかし、今回はそれだけでは終わらなかった。
ハウリアにより窮地を救われ、俺によって死者や負傷者の蘇生&治療が行われ、復興が進んだフェアベルゲンだったがその3日後、隙を突くように今度は帝国兵が樹海へと侵入してきたのである。
それも力押し、なんと樹海に火を放ち、方向感覚を焼け跡で判断したそうだ。
目的は人攫いだったらしく、フリードから帝国にも戦力が向かったことも聞いたので、奴等の目的が労働力の確保と消費、否、亡くなった亜人族の代わりだと察しがついた。
ハウリアも戦後処理で集落に引っ込んでおり、気が付くのが遅れた結果、多数の亜人族が抵抗をする余裕もなく攫われてしまった。
カム達がそれに気がつき、帝国兵の一人を攫って尋問した結果、やはり俺の想像が当たっていた。
いやな予感がしたのか、カム達はハウリア族以外の兎人族の集落に急いで駆けつけたが、その時には既に遅く、女子供のほとんどを攫われてしまっていた。
非力な兎人族を攫う理由が労働力のためでないことは明らかだ。
襲撃を受けて高ぶっている帝国人を慰めるという目的以外には考えられない。何とも下衆な……。
流石に、同族の悲惨な末路を見過ごせなかったハウリア族は、仲間のほとんどを樹海の警備のためにおいて、カム率いる残り少数で帝都へ向かう輸送馬車を追ったのである。
しかし、そろそろ帝都に着いたはずというあたりで、カム達からの連絡が途絶えてしまった。
伝令役との待ち合わせ場所に、時間になっても姿を見せなかったのだ。
何かあったのではと考えて、じっとしていられなくなった樹海に残った者達は、何人か選抜して帝国へ斥候に出した。
結果、どうやらカム達は帝都に侵入したまま、出て来ないようだとわかったのだ。
その後、帝都に侵入してカム達の現状を知るべく、パル達が警備体制などの情報収集をしていたところ、大量の亜人族を乗せた輸送馬車が他の町に向けて出発したという情報を掴み、パル達の班が情報収集も兼ねて奪還を試みて、そこで俺達と合流したというわけである。
ハジメ「まぁ、大体の事情はわかった。
取り敢えず、お前等は引き続き帝都でカム達の情報を集めるんだね?」
パル「肯定です。あと、陛下には申し訳ないんですが……。」
ハジメ「わかってる。旅は道連れ世は情け、捕まってた人達は、樹海まで送り届けるよ。」
パル「有難うございます!」
パル達が一斉に頭を下げる。シアは何か言いたそうにモゴモゴしていたが、結局、何も言わなかった。
俺もそれに気がついていたし、シアが何を言いたいのかも察していたが、取り敢えず、シアが自分で言い出すのを待つことにして、やはり何も言わなかった。
最後に、パル達から樹海に残っている仲間への伝言を預かって、俺は帝都から少し離れた場所でリリィ達とパル達を降ろした。
その序でに、リリィにガハルドへの手紙を預けた。内容はこうだ。
『拝啓、ガハルド君へ。ウチのシマで勝手に誘拐しやがってコノヤロー。後で一回締めに行くから。
もしおいたが過ぎようものなら、息子スマッシュも辞さないからね?――by 魔王南雲ハジメ』
そして、俺達一行は【ハルツィナ樹海】に向かって高速飛行に入るのだった。
遠目に【ハルツィナ樹海】が見えてきた時、そこに残された爪痕を見て、シアは思わずといった様子で息を吞んだ。
無理もない。俺達は現在、帝国の進軍ルートを通っており、その被害を目の当たりにしているからだ。
香織「……酷い。」
ティオ「自然軽視の考えは、少々頭にくるものがあるのぅ。」
ミレディ「……メル姉。」
メイル「何も言わなくてもいいわ、お姉さんも分かっているから。」
炭化し、黒く染まった道筋。幅100m超の樹海の傷跡が続いている。
いい思い出ばかりではないとはいえ、生まれ故郷を破壊されてしまったのだ。
落ち込むシアの手を、ユエとミュウがそっと握る。
ハジメ「全く……忌々しいな、帝国は。」
俺の苛立った言葉に、アルテナが答えた。
アルテナ「疲弊していたとはいえ、流石にフェアベルゲンに直接手がかかるまで気が付かなかったという訳ではありません。
少数の戦士たちが迎撃に出た時点で、彼等は樹海へ火をかけるのを止めたのです。」
ハジメ「攫う奴まで焼いちまったら誘拐の意味がないからだろう。しかし、何故だ?
俺も防壁の修復はしたはずなのに。」
アルテナ「数日前の戦いの後が、外に晒されていたのでしょう。そこで気が付いたのかと思われます。」
ハジメ「成程……尚のこと不遜極まりないな。」
そんな愚痴を零しながら、俺は炭化した場所の霧がかかっている手前辺りに着陸した。
流石にこのまま行ってしまっては、いらぬ騒動を起こしてしまうからな。
囚われていた亜人の皆は、帰って来た喜びと惨状を目にした悲しみを浮かべていた。なので、
ハジメ「香織、メイル、殿をお願いできる?俺達が通った後を再生魔法で直してほしいんだけど……。」
香織「!うん!任せて!」
メイル「えぇ~?もうここで発動した方がいいんじゃないかしら?」
ハジメ「道が分からなくなるから却下。」
メイル「この子たち(亜人族)に案内してもらえばいいじゃな「メイルお姉ちゃん、お願いなの!」やってやろうじゃないの!お姉さんにまっかせなさい!」
……メイルマジちょれぇ。そしてミュウ、ナイス。
俺のサムズアップに、ミュウもニッコリ笑顔でサムズアップする。流石ミュウ、俺の娘!
そんなこんなで、俺達が再び足を踏み入れた【ハルツィナ樹海】は、以前となんら変わらず一寸先を閉ざすような濃霧をもって歓迎を示した。
やはり、亜人族がいなければ、人外レベルになった光輝達でも感覚を狂わされるようだ。
俺?いつでも帝国を迎撃できるように、オーマジオウ状態だから大丈夫だが?
偶にアルテナが俺の近くを歩きたがるようだったが、片手はミュウ、もう片方はシアで埋まっているので無理です。
そして進むこと一時間。傍らを憂い顔で歩くシアのウサミミがピコピコと反応する。
ハッと顔を上げたシアは、霧の向こうを見通すように見つめ始めた。
シア「ハジメさん、武装した集団が正面から来ますよ。」
シアの言葉に周囲の亜人族が驚いたようにシアの方を向いた。
その中には攫われていた兎人族も含まれており、どうやら自分達ではまるで察知できない気配をしっかり捉えているシアに驚いているようだ。
そのシアの言葉の正しさを証明するように、霧をかき分けていつか見たような武装した虎耳の集団が現れた。
全員、険しい視線で武器に手をかけているが、彼等も亜人族が多数いる気配を掴んでいたようで、いきなり襲いかかるということはなさそうだ。
彼等のうち、リーダーらしき虎人族の視線が俺達に止まった。直後、驚愕に目を見開いた。
ギル「お前達は、あの時の……。」
ハジメ「おぉ、ギル!息災だったか?」
ギル「こちらは別に……というか、一体、今度は何の……って、アルテナ様!?ご無事だったのですか!?」
アルテナ「あ、はい。彼等とハウリア族の方々に助けて頂きました。」
ギルは、俺に目的を尋ねようとして、その傍らにいたアルテナに気がつき素っ頓狂な声を上げた。
そして、アルテナの助けてもらったという言葉に、安堵と呆れを含んだ深い溜息をついた。
ギル「それはよかったです。アルフレリック様も大変お辛そうでした。
早く、元気なお姿を見せて差しあげて下さい。……少年。
お前は、ここに来るときは亜人を助けてからというポリシーでもあるのか?
傲岸不遜なお前には全く似合わんが……まぁ、礼は言わせてもらう。」
ハジメ「まぁ、人助けはポリシーだけどさ。今回も偶然だよ、偶然。」
何やら知り合いらしい雰囲気に、雫達が疑問顔になる。
シアが、こっそり何があったのかを簡潔に説明すると、シアが俺に惚れている理由も分かるというもので、皆、納得顔を見せた。
ハジメ「それより、フェアベルゲンにハウリア族はいる?あるいは、今の集落がある場所を知ってる奴は?」
ギル「む?ハウリア族の者なら数名、フェアベルゲンにいるぞ。
聞いているかもしれないが、襲撃があってから、数名常駐するようになったんだ。」
ハジメ「そりゃよかった。じゃあ、さっさとフェアベルゲンに向かおうか。」
そう言って俺はさっさと先を促す。
相変わらず態度がでかいなと再び呆れ顔をしながら、ギルは部下達に武器を収めさせて先導を務め始めた。
以前のような敵意を感じないのは、ハジメに鍛えられたハウリア族に救われたからなのか、あるいは長老衆から何か言われているのか、それともこの前の見せしめが効いているのか……
わからないが揉めなくて済むのは好都合だと大人しく案内を受けることにした。
辿り着いたフェアベルゲンは、大きく様変わりしていた。
まず、威容を示していた巨大な門が崩壊しており、残骸が未だ処理されずに放置されたままだった。
そして、俺をも魅了した幻想的で自然の美しさに満ちた木と水の都は、あちこち破壊された跡が残っており、木の幹で出来た空中回廊や水路もボロボロに途切れてしまって用をなしていなかった。
「ひどい……。」
誰かがそう呟いた。
全くもってその通りだ。
折角再生魔法を高速で使用して直したはずなのに、フェアベルゲンそのものも、どこか暗く冷たい風が吹いているようで、どんよりした雰囲気を漂わせている。
ガハルドめ……やっていい事と悪い事の区別すらつかんのか、あの戯け!
と、その時、通りがかったフェアベルゲンの人々がアルテナ達を見つけ信じられないといった表情で硬直し、次いで、喜びを爆発させるように駆け寄ってきた。
傍に人間族がいることに気がついて、一瞬、表情を強ばらせるもののアルテナ達が口々助けられた事を伝えると、警戒心を残しつつも抱き合って喜びをあらわにした。
連れ去られていた亜人達の中には、俺達に礼をいうと家に向かって一目散に駆けていく者もいる。
次第に俺達を囲む輪は大きくなり、気が付けば周囲はフェアベルゲンの人々で完全に埋め尽くされていた。しばらくその状態が続いたあと、不意に人垣が割れ始める。
その先には、フェアベルゲン長老衆の一人アルフレリック・ハイピストがいた。
アルテナ「お祖父様!」
アルフレリック「おぉ、おお、アルテナ!よくぞ、無事で……。」
アルテナは、目の端に涙を溜めながら一目散に駆け出し祖父であるアルフレリックの胸に勢いよく飛び込んだ。
もう二度と会えることはないと思っていた家族の再会に、周囲の人々も涙ぐんで抱きしめ合う二人を眺めている。
しばらく抱き合っていた二人だが、そのうちアルフレリックは、孫娘を離し優しげに頭を撫でると、俺に視線を向けた。
その表情には苦笑いが浮かんでいる。
アルフレリック「……またも思わぬ再会になったな、南雲ハジメ。
まさか、孫娘を救われるとは思いもしなかった。縁というのはわからないものだ。
……ありがとう、心から感謝する。」
ハジメ「俺は送り届けただけだよ。感謝するならハウリア族にしてよ。
俺は、ここにハウリア族がいると聞いて来ただけだし……。」
アルフレリック「そのハウリア族をあそこまで変えたのもお前さんだろうに。
巡り巡って、お前さんのなした事が孫娘のみならず我等をも救った。それが事実だ。
この莫大な恩、どう返すべきか迷うところでな、せめて礼くらいは受け取ってくれ。」
その言葉に俺は、若干困ったように頬を掻きつつも仕方なさそうに肩を竦めた。
そんなハジメを、皆が微笑ましげに見つめている。
アルフレリック「ハウリア族だが、タイミングが悪かったようだ。ちょうど都の外に出ていてな。」
ハジメ「なら少し待たせてもらおっか。まぁ、見返りは大きいから安心してよ。」
アルフレリック「?よく分からんが、待つくらいで見返りなんぞ求めんよ。
我が家に招待しよう。ハウリア族が戻り次第、知らせをよこすよう門の者にも言っておく。」
ハジメ「それは助かる。」
そういう訳で、俺達はアルフレリックの家でハウリアを待つことにした。
そして待っている間、頬を染めたアルテナが手ずから入れて差し出したお茶を一杯飲んでいると、そのアルテナが何故か俺の周囲をうろちょろ動き回っていた。
ほら、アルフレリックが難しそうな顔して誤解しちゃっているでしょ。戻りなさい。
そんな注意をしつつ、シアのウサミミを愛でていると、ハウリア族の男女が複数人、慌てたようにバタバタと駆け込んできた。
ハウリアA「陛下ァ!!お久しぶりですっ!!」
ハウリアB「お待ちしておりましたっ!!陛下ァ!!」
ハウリアC「お、お会いできて光栄ですっ!Load!!」
ハウリアD「うぉい!新入りぃ!陛下のご帰還だぁ!他の野郎共に伝えてこい!30秒でな!」
新入りハウリアE「りょ、了解でありますっ!!」
う~ん、このランボーラビット共め。
余りの剣幕に、パル達でハウリアの反応を予想していたはずの光輝達がブフゥー!とお茶を噴き出した。
ボタボタと垂れるお茶を拭いながら全員がそちらを見ると、複数の兎人族がビシッ!と踵を揃えて直立不動し、見事な敬礼を決めている姿があった。
見覚えのない奴が何人かいたし、さっきの言動も踏まえると、どうやらハウリアは他の兎人族の一族を取り込んで自ら訓練を施し勢力を拡大しているようだ。
ハジメ「あ~、うん、久しぶり。取り敢えず、皆がドン引いているから敬礼は止めよう、ね?」
ハウリア's「「「「「「「Yes,My,Load!!!」」」」」」」
樹海全体に響けと言わんばかりに張り上げた王への久しぶりの掛け声に、とても満足そうなハウリア族と、初めて経験した本物の掛け声に「俺達もついに……。」と感動しているハウリアでない兎人族達。
やっぱりハートマン軍曹式は不味かったか……。
ハジメ「ここに来るまでにパル達と会って大体の事情は聞いている。
カムたちのいない間、よく頑張った。」
ハウリア's「「「「「「きょ、恐縮でありまずっ!!」」」」」」」
最後が涙声になっているのはご愛嬌。
そんな感動に震えるハウリア達にパル達から預かった情報を伝える。
すなわち、カム達が帝都へ侵入したらしいという情報を掴んだ事と、自分達も侵入するつもりであること。そして、応援の要請だ。
ハウリアI「なるほど。……"必滅のバルドフェルド"達からの伝言は確かに受け取りました。
わざわざ有難うございます、陛下。」
ハジメ「うん………………君にも二つ名があったりするの?」
ハウリアI「は?俺ですか?……ふっ、もちろんです。落ちる雷の如く、予測不能かつ迅雷の斬撃を繰り出す!
"雷刃のイオルニクス"!です!」
ハジメ「……そう。」
やはりハウリア族はもう手遅れらしい。完全に感染してしまっているようだ。
必滅のバルドフェルドから発生したパンデミックを封じ込められなかった事が悔やまれる。
俺は、何とか気を取り直して"雷刃のイオルニクス"に尋ねた。
ハジメ「ハウリア族以外の奴等も訓練させていたみたいだけど、今、どれくらいいるの?」
イオ「……確か……
ハウリア族と懇意にしていた一族と、バントン族を倒した噂が広まったことで訓練志願しに来た奇特な若者達が加わりましたので……
実戦可能なのは総勢122名になります。」
随分と増加したものだと俺のみならずシアやユエも驚きをあらわにする。
俺は、質問の意図がわからず疑問顔を浮かべる"雷刃のイオルニクス"を尻目に一つ頷く。
ハジメ「それくらいなら全員一度に運べるね。イオルニクス、帝都に行く奴等を全員ここに集めて。
今すぐに。俺が全員まとめて送り届けてあげるから。」
イオ「は?はっ!了解であります!直ちに!」
一瞬、何を言われているのか分からなかったようで間抜け顔で聞き返す"雷刃のイオルニクス"だったが、直ぐに俺が帝都に同行してくれるという意味だと察し、敬礼をすると、仲間を引き連れて他のハウリア族を呼びに急いで出て行った。
"雷刃の……イオは、俺は大迷宮のために戻って来たのであって、自分達を手伝ってくれるとは思っていなかったのだろう。
意外すぎる言葉に動揺してしまったようだ。
そして、それは何もイオだけでなく、むしろ一番驚いているのは俺の傍らにいるシアだった。
その大きな瞳をまん丸に見開き、ウサミミをピンッ!と立ててこちらを凝視している。
シア「ハ、ハジメさん……大迷宮に行くんじゃ……。」
ハジメ「うちの部下が心配だしな。何より……。そんな無理した笑顔、シアには似合わないよ?」
シア「っ……それは……その……でも……。」
俺に図星を突かれて口籠るシア。
確かに目的は大迷宮だが、別に部下の捜索、それもシアの家族の行方くらい面倒でも何でもないしなぁ……。
自分達から向かった以上、自己責任であるものの、今回は俺達にも帝国に行かねばいけない理由がある。
抑々、別々の道を歩むと決めようとも、家族の行方が分からないと知れば、心配する気持ちは自然と湧き上がるもので、そう簡単に割り切れるものではない。
それが憂いとなって顔に出たために、俺にもユエ達にもシアの心情は筒抜けだった。
俺は、余計な手間を取らせていると委縮して口籠るシアの傍に寄り、そっとその頬を両手で挟み込んだ。
シア「ふぇ?」
突然の俺の行動に、シアがポカンと口を開けて間抜け顔を晒す。
そんなシアに、俺は可笑しそうに笑みを浮かべながら、真っ直ぐ目を合わせて言い聞かせるように言葉を紡いだ。
ハジメ「家族が心配な時くらい、大丈夫だなんて言わないで、ちゃんと心配だって言う!ね?」
シア「で、でも……。」
ハジメ「"でも"も"だって"もないよ。今更、遠慮なんてしなくていいよ。
いつもみたいに、思ったことを思った通りに言えばいいんだよ。
初めて会った時の図々しさはどこにいったのさ?第一、シアが笑ってないと、俺の……
俺達の調子が狂うでしょ?」
シア「ハジメさん……。」
これは紛れもなくシアを気遣う言葉、シアを想っての言葉だ。
それを理解して、シアは自分の頬に添えられた俺の手に自分のそれを重ねる。
瞳は、嬉しさと愛しさで潤み始めていた。
頬に伝わる優しくも熱い感触と、真っ直ぐ見つめてくる俺の眼差しに、シアは言葉を詰まらせつつも、湧き上がる気持ちのままに思いを言葉にした。
シア「ハジメさん……私、父様達が心配ですぅ。……一目でいいから、無事な姿を見たいですぅ……。」
ハジメ「そうだね。それじゃあ、会いに行こうか!」
シア「!はい!」
その瞳はキラキラと星が瞬き、頬はバラ色に染まっていて、恋する乙女を通り越して完全に愛しい男を見る女の顔だった。
贈られた言葉に、幸せで堪らないという気持ちが全身から溢れ出ている。
ユエ「……ん。シア、可愛い。」
ティオ「ふむ、これはこれでよいのぉ~。」
香織「うぅ~、羨ましいよぉ~。」
雫「まぁ、惚れた男にあんな風に言われれば嬉しいでしょうね……。」
ミュウ「シアお姉ちゃん、とっても可愛いの~!」
レミア「あらあら、おモテになる理由が分かりますね、ア・ナ・タ?」
恵理「兄さんは大体こんな感じだからね、ラブレターも毎日貰っていた時期もあったくらいだし。」
鈴「えぇ!?な、南雲君……小さい頃からドンファンだったの?鈴はびっくりだよ。」
メイル「あら?ミレディちゃん、顔が真っ赤よ?」
ミレディ「う…煩いよメル姉!」///
アルテナ「シアさん……妬ましい、私もハジメ様に……。」
女性陣のコメントに、ようやく周囲に大勢いることを認識したシアが、真っ赤になって両手で顔を隠してしまった。
しかし、羞恥以上に嬉しさが抑えきれないのか、ウサミミがわっさわっさ、ウサシッポがふ~りふ~りと動きまくり気持ちをこれでもかと代弁している。
その時、ちょうどいいタイミングでイオがやって来た。どうやらハウリア族の準備が整ったようだ。
滅茶苦茶迅速な対応である。
俺達は、アルフレリックとアルテナ達の見送りを受けながら樹海を抜け、帝都に向けて再び逢魔号を飛ばしたのであった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
今回はほぼほぼ説明だけだったので、あまり語れることはありません。
強いて言えば、原作にないシーンやセリフをどう表現するかで悩みました。
因みに、このお話が書き上がって投稿されている時点で、既に前書きと後書き以外は完成済みです。
なので、時々コメントが時系列とかみ合っていない場合もあるので、ご了承ください。
さて、今回カム達の安否が心配なシアの為に、帝国に乗り込むことを決めたハジメさん達。
次回、一体どうなる!?
次回予告
【ハルツィナ大迷宮】に挑む前に、カム達の安否を確認することにしたハジメ達。
そのために帝国の中心、帝都に乗り込み、視察がてら情報収集を開始した。
そこで見た光景は、王国以上に亜人に厳しい風潮だった。
そして、カム達の情報を得るためにハジメのとった作戦とは!
次回「帝都」
目撃せよ、歴史の始まり!
ハジメ「バリッと決めるぜ!」
もしも、ハジメさんが召喚するとしたら、どのサーヴァント?
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勿論我妻、モルガン陛下
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本家後輩、マシュ
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正義の味方同士、エミヤ
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魔王と賢王、ギルガメッシュ
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勝ち確の死神、山の翁
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影の国の槍姫、スカサハ
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最強の母、ティアマト
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建築と錬成師、トラロック
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武器庫の獣、コヤンスカヤ
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どう見ても嫌な予感、LA
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ヒーロータイム、シャルル
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かつての推し、魔人さん
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時空と戦国の魔王ズ、ノッブ
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出来る良妻賢母、キャス狐
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恋する剣豪、武蔵ちゃん
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騎士道か覇道か、アーサー
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中国産AI皇帝、即ち朕
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恋愛クソザコ、カーマちゃん
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え⁉未実装⁉オルガマリー
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