ありふれない錬成師は最高最善の魔王の力で世界最強を超越する   作:天元突破クローズエボルハザード

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ハジメ
「神を騙る悪が蔓延る異世界"トータス"にて、最高最善の魔王、南雲ハジメとその仲間達は、ハウリア達と囚われていた亜人達の先導の元、帝国の襲撃を受けたフェアベルゲンへと向かった。
フェアベルゲンについたハジメ達は、帝国によって受けた被害を確認し、先に乗り込んだカム達の連絡が途絶えたことを知る。
それを聞いて、カム達のことを心配するシアの為に、ハジメ達は帝国の帝都に乗り込むことにしたのであった。」
恵理
「そう言えば、今回って確か……あの時だよね?」
ハジメ
「?……あ、多分その時だ。話の長さ的に。」
恵理
「あれは今でも衝撃的だったよ……ある意味で。」
ハジメ
「……まぁ、それはさておき。今回は帝都の視察も兼ねての潜入だ。」
恵理
「そう言えば、この前メイルさんとお話はしなかったの?」
ハジメ
「そう簡単に受けてたまるかっての。即座にわからせてきたから。」
恵理
「メイルさんでも兄さんには敵わなかったか……えっと、第7章第3話」
ハジメ・恵理
「「それでは、どうぞ!」」


84.帝都

雑多。ヘルシャー帝国の首都はどんなところ?と聞かれて答えるなら、その一言だな。

徹底的に実用性を突き詰めたような飾り気のない建物が並んでいる一方で、後から継ぎ足し続けたような奇怪な建物の並ぶ場所もある。

ストリートは、区画整理?なにそれおいしいの?と言わんばかりに大小入り乱れ、あちこちに裏路地へと続く入口がある。

 

雰囲気も、【宿場町ホルアド】のようにどこか張り詰めたような緊張感があり、露店を出している店主達ですら"お客様"という考えからは程遠い接客ぶりだ。

だが、決して暗く淀んでいるわけでも荒んでいる訳でもなく、皆それぞれやりたい事をやりたいようにやるという自由さが溢れているような賑やかさがあった。

何があっても自己責任、その限りで自由にやれ!という意気が帝都民の信条っぽいな。

まぁ、楽市楽座と似たようなもんか。

 

ヘルシャー帝国はかつての大戦で活躍した傭兵団が設立した新興の国で、実力至上主義を掲げる軍事国家と聞いている。

帝都民の多くも戦いを生業としており、よく言えば豪気、悪く言えば粗野な気質だ。

都内には大陸最大規模の闘技場などもあって、年に何度も種類の違う催しがなされており大いに盛り上がっている。

 

荒くれ者「おい、おまえ『ドガッ!!』ぐぺっ!?」

そんな帝都に入った俺達は現在、しきりにちょっかいを掛けられては問答無用に沈めるという事態に三度も出くわしていた。

今の3人目も、ニヤつきながら寄って来たので、強制的にトリプルアクセルさせた上、地面に濃厚なキスをさせたところである。

 

全く……

幾ら美女美少女を侍らせているのが羨ましいからとはいえ、少しは自重も出来んのか、この猿共は。

しかし、周囲はそんな暴力沙汰を特にどうとも思っていないようで、ごく普通にスルーしている。

この程度の"ケンカ"は日常茶飯事か。治安としては×だな。

そんなことを考えながら、面倒だと思ったので"威圧"を放ち、無理矢理道を開けさせた。

 

シア「うぅ、話には聞いていましたが……帝国はやっぱり嫌なところですぅ。」

香織「うん、私もあんまり肌に合わないかな。……ある意味、召喚された場所が王都でよかったよ。」

ティオ「まぁ、軍事国家じゃからなぁ。

軍備が充実しているどころか、住民でさえ、その多くが戦闘者なんじゃ。

この程度の粗野な雰囲気は当たり前と言えば当たり前じゃろ。妾も住みたいとは全く思わんがの。」

恵理「そういえば……ミレディちゃんも帝国出身だったっけ?」

鈴「エリエリ、ミレミレをちゃん付けで呼んでいるの?ちょっと意外……。」

ミレディ「う~ん、でも昔とは色々違い過ぎているから全然分かんないなぁ~。名前も変わっているし。」

メイル「そんなことより、こんな物騒なとこ、さっさと通り過ぎちゃいましょう。その方がいいわ。」

ミュウ「みゅ?パパがいれば安全だと思うの。」

レミア「あらあら、ミュウったら。パパの通った後が、死屍累々なのだけど……。」

 

どうやら、女性陣は帝都がお気に召さなかったようである。

無言ではあるが、ユエも同意するように頷いており、やはり女性には余り好かれない国なのかもしれない。特に、シアにとっては、目に入るものがいちいち心を抉るのだから尚更だろう。

男性陣もしきりに表情を歪めていることから、やはり満場一致で"嫌われている"ようだ。

 

ハジメ「シア、余り見ないほうがいいよ。今は耐えよう、ね?」

シア「……はい、そうですね。」

シアの目に入ってしまうそれは亜人族の奴隷達だ。

確かに、値札付きの檻に入れられた亜人族の子供達の姿は、見るに堪えない。

出来る事なら俺も何とかしてあげたいが、今はカム達を優先しなければ。

 

使えるものは何でも使う主義とはいえ、非常にもほどがあるだろうが。ガハルドの愚か者が。

表情を曇らせているシアの手を、傍らのユエが心配そうに握る。俺も、シアの頭を撫でてあげる。

すると、二人の暖かさが手と頬に伝わったのか、シアのウサミミが嬉しそうにパタパタと動いた。

 

光輝「……許せないな。同じ人なのに……奴隷なんて。」

ハジメ「リリィにも真実について伝えるよう言ってはおいたが……

ガハルドのことだ、どうせ聞く耳は持たんだろうな。気持ちはわかる、だから今は抑えろ。」

光輝「……あぁ。」

実際、歯噛みする光輝を宥めている俺も、今すぐ帝城に乗り込んでガハルドをぶん殴りたい気分なのだ。

だが、まだだ。色々後腐れがない状態でないと、あっちも何をしてくるか、わかったもんじゃない。

 

以前の【ハイリヒ王国】は、聖教教会の威光が強く、亜人への差別意識も高かった。

その分、亜人を奴隷として傍に置くという考え自体が忌避されがちな風習なので、光輝達も王都で奴隷の亜人を見る機会はなかった。

だから余計に心に来るものがあるのだろう。

ハァ……本当に面倒な時に面倒事を起こしてくれたものだ。

 

雫「そういえば、ハジメ君。具体的に何処に向かっているの?」

ハジメ「取り敢えず冒険者ギルドだね。"金"を利用すれば大抵の情報は聞き出せるし。」

雫「……ハジメ君は彼等が捕まっていると考えているの?」

ハジメ「あのガハルドのことだ。

獣人にしては、異常な戦闘力を持つウチの部下に興味津々なのは間違いねぇ。

一応、どこかに潜伏している可能性もなくはないが……

帝都の警備が厳戒態勢とまではいかないが異常なレベルである以上、入ったのはいいが出られなくなったって可能性も捨てきれないし。」

 

俺の言う通り、帝都の警備は過剰と言っても過言ではないレベルだった。

入場門では一人一人身体検査までされた上、外壁の上には帝国兵が巡回ではなく常駐して常に目を光らせていた。

都内でも、最低スリーマンセルの帝国兵が厳しい視線であちこちを巡回しており、大通りだけでなく裏路地までしっかり目を通しているようだった。

 

おそらく、魔物の襲撃があったことが原因で、未だ厳戒態勢とまではいかないまでも高レベルの警戒態勢を敷いているのだろう。

……まぁ、その魔物達を嗾けた犯人である魔人族の仲間を、俺は匿っているんだが。

え?帝国への裏切り?何それ美味しいの?

これは俺とフリードたちの間の問題であって、抑々帝国関係ないじゃん。

 

と、そんな帝都であるから、パル達も侵入には苦労していて未だ隙を窺っている状態だ。

奴隷でもない兎人族が帝都に入れるわけもなく、俺達の奴隷のフリをするのも限度がある。

そのため、一緒に運んできた増援部隊も、今は目立たないように帝都から離れた岩石地帯に潜伏中だ。

寧ろカム達がどうやって侵入したのか不思議なほどだ。

 

俺自身、間違いなくカム達は捕まっているのだろうと考えていた。

アイツ等は気配操作に関しては亜人族随一な上に、カム達はそれを磨き続けてきたのだ。

その上、魔力操作も会得しているので、その隠匿は折り紙付きだ。

人の出入りは厳しくとも、何らかの方法で外に伝言を送るくらいは出来るだろう。

にもかかわず、それすら出来なかったという事は、捕まっていて身動きがとれないと考えるのが自然だ。

 

勿論、冒険者ギルドにカム達の情報がそのままあるとは思っていない。

だが、それに関わるような事件や噂があるのではないかと考えたというわけだ。

傍らで、不安そうな表情をするシアにそっと手を伸ばし、ほっぺをムニムニする。

シアは、ウサミミを触られるのも好きだが、ほっぺムニムニもお気に入りなのだ。

俺は嬉しそうにしながらも若干、不安さを残すシアに冗談めかしていう。

 

ハジメ「捕まっているなら取り返せばいいだけだよ。安心して、シア。

いざとなれば、帝国潰して王国の領土にすればいいだけだから。」

ユエ「ん……任せて、シア。」

シア「ハジメさん、ユエさん……」

雫「いやいやいや、領土にしちゃダメでしょう?目が笑っていないのだけど、冗談よね?そうなのよね?」

香織「雫ちゃん、帝都はもう……」

雫「諦めてる!?既に諦めてるの、香織!?」

 

トシ「こいつはやると言ったらやる奴だ。昔からそうだったろ?」

雫「いや、それでも限度があるでしょ!?」

光輝「……そうだな、いっそのことハジメに何とかしてもらった方が……。」

雫「光輝!?貴方まで物騒な思考しないでくれるかしら!?冗談よね?そうだと言ってちょうだい!?」

光輝の奴、既に目が死んでいやがる……これは一刻も早くどうにかしてやらないと。

まぁ実際、俺達なら一国を滅ぼすくらいわけないし、俺に至っては世界も時空も破壊できるしなぁ……。

 

そんな冗談ともつかない冗談を言いながら、冒険者ギルドに向かってメインストリートを歩いていると、前方の街の様子が様変わりし始めた。

あちこちの建物が崩壊していたり、その瓦礫が散乱していたりしているのだ。

 

道中、耳に入ってきた話によれば、コロシアムで決闘用に管理されていた魔物が、突然変異し見たこともない強力かつ巨大な魔物となって暴れだしたらしい。

都市の中心部に突如出現した巨大な魔物(体長30mはあったようだ)に対して後手に回った帝国は、いい様に蹂躙されたようだ。

まぁ、フリードの変成魔法は俺も凄いと思うものがあるしな。

 

挙句、魔人族がその機に乗じて一気にガハルドに迫ったらしい。

とはいえ、そこは一応"帝国最強"。そのガハルド自らが何とか魔物も魔人族も返り討ちにしたらしい。

が、街の様子を見る限り代償は大きかったようだ。

その証拠に、コロシアムを起点に、数百m単位で放射状に町が崩壊している。

 

そんな瓦礫の山では、復興作業のために裸足の亜人奴隷達が大勢駆り出されていた。

冒険者ギルドは、その崩壊が激しい場所の更に向こう側にあるので否応なく通らなければならず、自然、彼等の姿を視界に入れることになる。

武装した帝国兵の厳しい監視と罵倒の中、暗く沈みきった表情で瓦礫を運ぶ様は悲惨の一言だった。

 

完全にとばっちりだな。

帝国の事情なんて知ったこっちゃないが、そのしわ寄せが亜人族に来ているとなると話は別だ。

こうして復興に役立てるとしても、もう少し配慮というものがあるだろうが……!

これでは亜人族が絶滅しかねんだろうが!本当に腐っていやがる!光輝が怒るのもよくわかるな。

"弱者が悪"だというのであれば、俺よりも弱い貴様等帝国こそ悪であるべきだというのに!

先刻、アルテナ達が他都市に輸送されたのも売上金を復興に当てたりするためなのだろう。

 

と、その時、俺達から少し離れたところで犬耳犬尻尾の10歳くらいの少年が瓦礫に躓いて派手に転び、手押し車に乗せていた瓦礫を盛大にぶちまけてしまった。

足を打ったのか蹲って痛みに耐えている犬耳少年に、監視役の帝国兵が剣呑な眼差しを向け、こん棒を片手に近寄り始めた。

何をする気なのかは明白だ。

 

光輝「おい!やめっ『クロックアップ。』」

(Clock Up)

光輝が、帝国兵を止めようと大声を上げながら駆け出そうとする寸前、クロックアップを発動する。

本当は時間停止でもよかったのだが、何処かにタイムジャッカーが潜んでいるとも限らん。

なのでここは加速系技能で、視認できないうちに解決してしまおうという訳だ。

 

そして加速した時の中で、一瞬で帝国兵の後ろに回り、後頭部に強い一撃をかましてやった。

それと、犬耳少年の怪我も一緒に治しておく。

一応、インビンシブルも使っているので、万が一の視認対策も完璧だろう。そして、時の流れは戻る。

 

(Clock Over)

 

それと同時に、帝国兵が勢いよくつんのめり顔面から瓦礫にダイブしたのである。

ゴシャ!と何とも痛々しい音が響き、犬耳少年に迫っていた帝国兵はピクリとも動かなくなった。

同僚の帝国兵が慌てて駆けつけて、容態を見たあと、呆れた表情で頭を振るとどこかへ運び去っていった。

犬耳少年のことは放置である。

 

犬耳少年は、何が起きたのかわからないといった様子でしばらく呆然としていたが、ハッとした表情で立ち上がると自分が散らかした瓦礫を急いでかき集めて、何事もなかったように手押し車で運搬を再開した。

呆然としているのは駆け出そうとして出鼻をくじかれた光輝も同じだった。

そこへ俺が声をかけた。

 

ハジメ「すまんな、今はカム達のことを優先したい。だからこういうのは、俺に任せてほしい。」

光輝「!今のはハジメが?」

俺が無言で頷くと、光輝も少し落ち着いたのか、顔を俯かせながらも進みだした。

 

帝国以外ではもう既に、奴隷制度の撤廃はされているというのに、帝国では未だに当たり前のことと決めつけている。

確かに酷い扱いではあるが、ここで奴隷にされている亜人族を助けては、面倒なことになる。

奴等にとってそれは一般的に"悪い"ことであり、他人の〝所有物〟を盗むのと同じだと認識している。

 

"それでも"と思うなら、相応の覚悟が必要だ。

それこそ、帝国そのものをぶっ潰す位の覚悟と、二度と亜人族を奴隷にさせない方法を確立させる方法が。でなければ、今、奴隷達を力尽くで助けても、後に帝国からの報復や亜人族捕獲活動が激化するという恐れがあり、そうなれば待っているのは更なる地獄だろう。

 

そんな雰囲気のなか、辿り着いた帝都の冒険者ギルドは、まんま酒場という様子だった。

広いスペースに雑多な感じでテーブルが置かれており、カウンターは2つある。

一つは手続きに関するカウンターで受付は女性だが粗野な感じが滲みでており、もう一方のカウンターは、完全にバーカウンターだった。

昼間にも関わらず飲んだくれ共があちこちにいる。いや、復興手伝えよ雑魚共。

貴様等がそんなんだから、ずっと人手不足なんだろーが、このヴァカがァ!

 

俺達が中に足を踏み入れると、もう何度目になるか分からない毎度お馴染みの反応が返ってくる。

が、いつものように"威圧"で返す。ユエ達に対する不躾で下卑た視線も、いい加減にしてほしいものだ。

そんなことを思いながら、〝威圧〟を初っ端から発動しつつカウンターへ向かう。

 

流石に飲んだくれていても軍事国家の冒険者であっても、俺の"威圧"には耐えきれなかったのか、全員気絶したようだ。

まぁ、今回は色々フラストレーションやストレスが溜まっていたしな。手加減が難しくなっている。

その証拠に、どうやらカウンターの受付嬢も、うっかり気絶させてしまったようだ。反省、反省。

 

ハジメ「あ~、情報をもらいたいんだが!ここ最近、帝都内で騒動を起こした亜人がいたりしなかったか?」

俺が大声でそう呼びかければ、気絶から復活した何人かが怪訝な表情を浮かべる。

亜人奴隷の情報が欲しいなら商人ギルドや何処かの商会にでも行けばいいし、帝都内で騒動を起こせる奴隷…などいはしない。

奴隷の首輪が大抵の反抗を封じるからだ。

そして、帝都内に奴隷でない亜人族などいない事から、俺の質問は有り得ない可能性を尋ねているのと変わらないのである。

とはいえ、先程の威圧の影響もあってか、受付嬢が青褪めた表情と震えた手でバーカウンターの方を指差す。

 

受付嬢「そ、そういう情報はあっちで聞いて!」

俺がそちらを見れば、ロマンスグレーの初老の男がグラスを磨いている姿があり、どうやら情報収集は酒場でというテンプレが守られているようだ。

受付嬢は、それだけ言うと自分の仕事はやり遂げたというように奥に引っ込んでしまった。

 

俺は肩を竦めると、皆を連れてバーカウンターの方へ向かう。

冒険者達は先程の"威圧"の影響もあってか、こちらに全く目を合わせようとしてこなかった。

そんなことを気にせず、俺はバーカウンターの前に陣取り、マスターらしきロマンスグレーの男に先ほど受付嬢にしたのと同じ質問をする。

しかし、流石は酒場のマスターなのか。俺の"威圧"から一早く立ち直り、こう告げた。

 

マスター「ここは酒場だ。ガキが遠足に来る場所じゃない。酒も飲まない奴を相手にする気もない。

さっさと出て行け。」

ほぅ、何ともテンプレな返答だ。少し機嫌が直った気がした。

既にピカピカのグラスしかないのに磨くのを止めないというのも高評価だ。

ここまで来れば、酒をがっぽり飲めば気を良くしてくれるに違いない。

そう思った俺は、納得顔でカウンターにお金を置いた。

 

ハジメ「それは御尤もだ。マスター、この店で一番キツくて質の悪い酒をボトルで。」

マスター「……吐いたら、叩き出すぞ。」

マスターは、俺の注文に一瞬、眉をピクリと動かしたものの特に断るでもなく背後の棚から一升瓶を取り出しカウンターにゴトリと音をさせながら置いた。

 

流石は酒場のマスター、他の奴等よりも肝が据わっている。

そんなことを思いながら、俺はボトルを手に取ると指先でスッと撫でるように先端を切断する。

その行為自体と切断面の滑らかさに周囲が息を呑むのがわかった。マスターですら少し目を見開いている。

封の空いたボトルからは強烈なアルコール臭が漂い、傍にいたシア達が思わず鼻を覆ってむせてしまった。

光輝達も「うっ」と呻きながら後退りする。が、トシが何故俺がこれを飲むのか、という理由を答えた。

 

トシ「味わう気もないのに、いい酒をがぶ飲みするのは、酒に対する冒涜ってか?」

ハジメ「Exactly!酒の味に敬意を抱かん阿保に酒を語る資格はない。そうだろ、マスター?」

そのやり取りにマスターの口元が僅かに楽しげな笑みを浮かべた。

やはりここでか!思った通りのタイミングでマスターの微笑みを頂いたのだ!

酒の味に敬意を向ける冒険者などそうそういないのかもしれない。

 

そんな考察をした俺は、「え~」と批判的な声を出すシア達を無視して、ほとんど異臭と言っても過言ではない匂いを発する酒を、飲むというより流し込むようにあおり始めた。

さぁ、マスター!しっかり見ておけよ!最高最善の魔王の雄姿を!

 

シーンとする店内にゴキュゴキュと喉を鳴らす音だけが響き渡る。

そして、一度も止まることなくものの数秒でボトル一本を飲み干してしまった。

俺は、手に持ったボトルをガンッ!とカウンターに叩きつけるようにして置くと、口元に笑みを浮かべながらマスターを見やる。

その目が「文句あるか?」と物語っていた。

 

マスター「……わかった、わかった。お前は客だ。」

マスターは両手を上げて降参の意を示すと苦笑いを浮かべた。中々、渋くて素敵である。

俺は、使い古されてはいるが心惹かれる"情報通のマスターとの一幕"を体験できて大変満足だった。

 

俺が飲んだ酒は、アルコール度数で言うなら95%という「もう飲み物じゃないよね?」というレベルのもので、品質も最低ランクのものだったらしく、まさにただのアルコールといった感じのようだ。

マスターとしても、それを一瞬で飲み干された挙句、顔色一つ変えない以上、"ガキ"扱いするわけにもいかなかったみたいだな。

 

因みに俺は、いくら飲んでも酔わない体質だ。その原因は"毒耐性"と浄化作用だ。

元々、日本にいた時も父さんに酒の美味しい飲み方というものを教え込まれていたので、それなりに好きな方ではあるのだがなぁ……まぁ、最悪ウォッチで封じればいいか。

 

ハジメ「それで?さっきの質問に対する情報はある?勿論、相応の対価は払うよ?」

マスター「いや、対価ならさっきの酒代で構わん。……お前が聞きたいのは兎人族のことか?」

ハジメ「!……情報があるようだね、詳しくお願い。」

どうやら、マスターは相応の情報を掴んでいるらしかった。

 

曰く、数日前に大捕物があったそうで、その時、兎人族でありながら帝国兵を蹴散らし逃亡を図ったとんでもない集団がいたのだとか。

しかし、流石に十数人で100人以上の帝国兵に帝都内で完全包囲されてしまっては逃げ切ることはやはり出来ず、全員捕まり城に連行されたそうだ。

それでも、兎人族の常識を覆す実力に結構な話題になっていたので、町中で適当に聞いても情報は集められたようである。

 

ハジメ「やはり城か……。」

そう呟きながら傍らのシアを見ると、やはりシアの顔色は曇っている。

果たして、帝都に不法侵入した亜人がどういった扱いを受けるのか……

少なくとも明るい未来は期待できないだろう。

 

だが、連行したという時点で、ガハルドがハウリア達の強化方法について、興味を持ったということが分かった。

であれば、カム達は未だ生きている可能性が非常に高い。

そんな意思を込めてカウンターの下でシアの手を握る。見れば、反対側の手はユエが握っている。

シアも、俺とユエの気持ちが伝わったようで、瞳に力を宿しコクリと頷いた。

 

マスターが、珍しい髪色の兎人族であるシアを意味深な眼差しで見やる。

捕まった兎人族達との関係をあれこれ推測でもしているのだろう。

折角なので、そんなマスターにあることを尋ねてみた。

 

ハジメ「マスター、言い値を払うといったら、帝城の情報、どこまで出せる?」

マスター「!……冗談でしていい質問じゃないが……

その様子を見る限り冗談というわけじゃなさそうだな……。」

俺は笑みを浮かべつつも、その全く笑っていない眼で真っ直ぐマスターを射抜く。

 

得体の知れない圧力に、流石のマスターも少し表情が強ばったようだ。

無理もないだろう。先程までやり取りを楽しんでいた少年が、いきなり魔王に早変わりしたのだから。

質問の内容も、下手をすれば国家反逆の意思を疑われかねないものだ。

尤も、ここは冒険者ギルドであり独立した機関であるから、帝国に対する"反逆"という観念自体がない。

俺も、その辺りを踏まえて、ワンクッション挟んだ上で尋ねたのだ。

 

ただ、いくらマスターが冒険者ギルドの人間であっても、自国の、それも本拠地内部の情報を売り渡したと知られれば、帝国の人間がただで済ますわけがないので安易に情報を渡すわけにはいかない。

お互いの深い部分に関しては、"見ざる聞かざる言わざる"が暗黙の了解なのだから。

かといって、目の前の魔王を相手に返答を渋っても碌な未来は見えない。

さて、どうするマスター?悪魔と相乗りする勇気、アンタにはあるかい?

 

マスター「……警邏隊の第四隊にネディルという男がいる。元牢番だ。」

ハジメ「ネディルね。わかった、訪ねてみるよ。ありがとう、マスター。」

俺自身、マスターがあっさり帝城内部、特に捕虜がいる場所を教えてくれるとは思わなかったし、知らない可能性も考えていたので、知っている人間を教えてもらっただけでも助かったと思っている。

俺があっさり引き下がってくれたことに、ホッとしているマスターに情報料に色を付けて渡し、冒険者ギルドを後にした。

そしてメインストリートを歩く中、シアが先程のやりとりについて尋ねてきた。

 

シア「あの、ハジメさん。さっき元牢番の人を紹介してもらったのは、もしかして……。」

ハジメ「ああ。詳しい場所を聞いて、今晩にでも侵入するつもりだ。

今から、俺とユエ、それとトシと恵理で情報を仕入れてくるよ。だから皆は、近くで飯でも食べていてよ。2,3時間で戻るから。」

シア「?何故ユエさんも?」

ハジメ「再生魔法で無理矢理聞き出すから。

香織にも任せてもよさそうだったけど……なんか嫌な予感がしたから止めておいた。香織の為にも。」

香織「?」

 

ネディルとやらが帝国兵である以上、帝城内の構造を教えてくれと言って素直に教えてくれるわけがない。つまり、"無理やり"聞き出すしかないのだ。

そして、再生魔法が有用というのは、いくらでも〝無理やり〟が出来るということであり、場合によってはユエのスマッシュを使用せざるを得ない場合も考慮し、それを察した雫が香織を宥めてくれた。

そうして俺達は、雑踏の中に消えていった。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

今回はハジメさんがハジメさんしていました。
たとえお隣さんでも、仲間に危害を加えたり、不快な視線を向けたり、嫌な思いをさせる奴等は、ハジメさんがきちんとO☆SHI☆O☆KIしちゃいます。
でも、酒場のマスターには金と酒の楽しみ方で認めさせます。だってそこは、男の世界だもの。みつを。

そして原作と違う点としては、光輝が原作以上にある程度落ち着いていて、ハジメさんも内心怒っていることがわかったからその場は抑えた、所ですかね?
ここで対立させちゃうと、折角上げた好感度ゲージが無駄になってしまうので、邪魔などのマイナス言葉は使わず、ここは抑えてくれ、といった普通の言葉で宥めましょう。
因みに、好感度ゲージが0のままだと、最終決戦で敵対してしまうので要注意を。

さて、今回尋問確定となったネディル君の運命やいかに!?待て、次回!

次回予告

帝城の情報を入手したハジメ達。
カム達が捕まっている牢屋へと、ハジメ達は潜入&解放を計画し、別行動として、光輝達にあるお願いをする。
そして、ハジメ達が牢屋で見た光景とは!?
囚われのハウリア達、その命運や如何に!?

次回「何故ハウリア達の言動はおかしくなったのか」
目撃せよ、歴史の始まり!

ハジメ「燃えてきたぜ!」

もしも、ハジメさんが召喚するとしたら、どのサーヴァント?

  • 勿論我妻、モルガン陛下
  • 本家後輩、マシュ
  • 正義の味方同士、エミヤ
  • 魔王と賢王、ギルガメッシュ
  • 勝ち確の死神、山の翁
  • 影の国の槍姫、スカサハ
  • 最強の母、ティアマト
  • 建築と錬成師、トラロック
  • 武器庫の獣、コヤンスカヤ
  • どう見ても嫌な予感、LA
  • ヒーロータイム、シャルル
  • かつての推し、魔人さん
  • 時空と戦国の魔王ズ、ノッブ
  • 出来る良妻賢母、キャス狐
  • 恋する剣豪、武蔵ちゃん
  • 騎士道か覇道か、アーサー
  • 中国産AI皇帝、即ち朕
  • 恋愛クソザコ、カーマちゃん
  • え⁉未実装⁉オルガマリー
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