ありふれない錬成師は最高最善の魔王の力で世界最強を超越する   作:天元突破クローズエボルハザード

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ハジメ
「神を騙る悪が蔓延る異世界"トータス"にて、最高最善の魔王、南雲ハジメは、囚われていたカム達ハウリア族を救出するために、帝城の地下牢に乗り込んだ。
そして、見事ハウリア族たちを救出し、帝城を後にする。
一方、自分達も何かを成したいと思った光輝達は、ハジメの提案で正体を隠したまま、陽動作戦を開始するのであった。」
光輝
「なぁ、ハジメ。何も本当に戦隊戦士の仮面じゃなくても良かったんじゃないか?」
ハジメ
「いや、今更だなオイ。だとしても、ライダーじゃおんなじだし、他に何かは……。」
光輝
「そうじゃなくて、シンプルにこう、地元起こしの特撮キャラみたいな感じなのはダメなのか?」
ハジメ
「インパクトが弱いからダ……そうか!インパクトだ!光輝、今度はミッ……。」
光輝
「言わせねぇよ!?それ、絶対怒られる奴だろ!?ハァ……あ、第7章第5話」
ハジメ・光輝
「「それでは、どうぞ!」」


86.奇怪な仮面、話は難カイ⁉

一方、少し時間は戻って、ハジメ達が帝城に侵入した頃。

警鐘が鳴り響く帝都の夜に、突如、光が迸った。

光の奔流は闇夜を切り裂いて直進し、瓦礫撤去作業に従事していた亜人奴隷達が寝泊りしている掘っ立て小屋地区、そこにある帝国兵の詰所を吹き飛ばした。

最小限まで手加減していたらしく、建物が吹き飛んだだけで、中の帝国兵は無事なようだ。

ただし、大半が気絶しているが。

それをなしたのは月を背負って悠然と佇む6人の人影。

 

小隊長「何者だ、貴様等!帝国に盾突いてただで済むと思っているのか!」

その人影に向かって帝国兵の小隊長らしき人物が怒声を上げる。

と、それに返事をするかのように、黄金の戦士が名乗りを上げた。

正体は勿論、我等が参謀、トシである。

 

トシ「海賊のパワー!ツーカイザー!」

そして決めポーズをとると、他の面子にも名乗り口上を上げるよう、視線で促した。

その視線に戸惑いながらも、メタリックブルーの戦士、光輝が続いた。

 

光輝「百鬼夜行をぶった斬る‼︎地獄の番犬!デカマスター‼︎」

そして当然のように決めポーズ。

その意図を色々察した他の面子も、続くことにした。

尚、セリフに関しては、ハジメさんによる悪ふざけである。

 

恵理「煌く氷のエレメント!白の魔法使い、マジマザー!」

「だ、大剣人、ズバーン!」

龍太郎「才を磨いて己の未来を切り開く、アメイジング・アビリティ!

ゲキチョッパー!」

雫「……。」

そしてトリを務めるはずの雫は、用意されたセリフが恥ずかしいのか、自分だけオリジナル要素があるのが不満なのか、黙りこくっていた。

が、仲間の視線に耐え切れなかったのか、意を決して言い放った。

 

「揺らめく霞!仮面ピンク!」

そして全員が名乗り終えたのか、即座に一か所に集まって、またもや決めポーズをとった。

光輝「天下御免の精鋭部隊!」

『仮面レンジャー!見参!』

その名乗りと共に、背後で爆炎とカラフルな煙が上がったのは、きっと幻覚である。

 

仮面達の目的は、帝都で騒ぎを起こし、ハジメ達の帝城侵入を手助けすることなのだが……

それに、ヒートアップした帝国兵達が遂に「ふざけた仮面野郎共をとっ捕まえろ!」と襲いかかり始めた。

しかし、そこは異世界召喚チート組、それもハジメによって魔改造がなされた精鋭達だ。

並の兵士如きが敵うはずもなく、次々と蹴散らされていく。

 

帝国兵「ちくしょう!仮面のくせに強すぎる!」

帝国兵が地面に這いつくばりながら悪態と共に呻き声を上げる。

すでに3個小隊ほどが戦闘不能に追い込まれていた。堪りかねた指揮官が思わず叫ぶ。

指揮官「くそっ、お前等、一体何が目的なんだ!」

その質問に、デカマスターはピタリと止まり、溜まりに溜まった鬱憤を吐き出すかのように、声高に宣言した。

 

光輝「亜人奴隷達の待遇改善を要求する!」

指揮官「……はぁ?」

光輝「お前達の亜人族に対する言動は目に余る!むやみに傷つけるのは止めるんだ!」

帝国兵はまさかの要求に、「あいつ何言ってんだ?」という表情で顔を見合わせた。それもそうだろう。

仮面レンジャー達が昼間見た亜人奴隷への対応は、あれで常識なのだ。

それを目に余ると言われても何が言いたいのかピンと来ないのである。

 

光輝「くっ、何だ、その態度は……あんな仕打ちをしておいて……。」

雫「こう……デカマスター。非常識なのは、残念だけど私達の方よ。

私達の目的は陽動であることを忘れないで。」

光輝「わかってる!でも、せめて子供の亜人だけでも……。」

トシ「ダメだ、数が多すぎる上に、選別する時間も惜しい。後でハジメが策を考えてくれるはずだ。

だから今は……。」

光輝「……そうだな。」

デカマスターは、仮面越しでも分かるほど渋々といった感じで引き下がった。

 

仮面ピンクはそれを確認すると、仮面の側面をトントンッと指で叩いた。

すると、仮面の内側、目元の部分に魔力で光る文字が浮き出てきた。

ハジメが、「セリフ忘れたら、こうしてね。」と言って付けた機能である。

その浮かび上がった文章を、仮面ピンクは読み上げる。

 

雫「帝国兵、聞きなさい。私達の行動は帝都の現状を確認する事よ。

皇帝を討つには足りなかったけれど、随分と痛手を負った様ね!」

帝国兵たちがギョッとした表情になった。

帝国兵「まさか、まさか貴様等は魔人族!?そうか、帝国の被害状況を確かめに来たのか!」

帝国兵の勘違いを指摘せず、仮面ピンクはそのまま続ける。

 

雫「今回の件で、亜人奴隷に八つ当たりするのは止めておきなさい。もし、そんなことをしたら……。」

帝国兵「な、なんだっていうんだ……」

異様な雰囲気に恐れおののく帝国兵達へ、仮面ピンクは告げた。

 

雫「夜、シャワーを浴びている時その背後に、寝苦しさに目を覚ました時お腹の上に、誰もいないはずの廊下の奥に、デスクの下に、カーテンの隙間に、鏡の端に、夢の中に……仮面を見ることになるわよ。」

抑揚のない淡々とした語りは不気味の一言。帝国兵達は一斉に生唾を飲み込み、そして思った。

「こえぇ……」と。確かにホラーである。

 

仮面レンジャー達は、それで目的を果たしたとでもいうように「とぅ!」という感じで建物から裏路地に飛び降りた。

そして、慌てて帝国兵達が駆けつけた時には、まるで夢幻のように忽然と姿を消していたのだった。

後に、帝国兵の間で「仮面ピンクの恐怖~奴はいつも君を見ている」という都市伝説が広まるのだが、それはまた別の話。

なぜ、自分だけと……と、仮面ピンクの中の人が崩れ落ちたのも別の話である。

 


 

更に時間は戻る。

リリアーナが侍女や近衛達と共に帝都近郊に降ろされた夜、一行は逢魔号に積み込まれていた馬車と馬に乗って帝都へと入った。

一応、一緒に来た使者と大使、それに近衛騎士が先に先行し、先触れを出したものの、ほぼ同日だったのもあって、帝城の使用人や接待役の貴族達は大慌てだった。

 

ヘリーナ「厳戒態勢でございますね。」

馬車に同乗している侍女――ヘリーナが、小窓から外を覗きつつ言った。

リリアーナが痛ましそうな表情で答える。

 

リリアーナ「魔人族の襲撃のせいでしょう。

ハウリア族の話も聞きましたが、かなりの被害を受けたようですね。」

ヘリーナ「本当に、あの方がいて下さって幸いでした。本命でない帝国でこの被害です。

王国が助かる道はなかったでしょう。」

リリアーナ「そうですね……

ハジメさんが代理の国王として即位したのもあって、国民の皆様も安心していますからね……。」

そんなやり取りをしている間に、馬車は帝城へと辿り着いた。

 

突然の来訪に一悶着あったものの、リリアーナ達は無事に部屋へ通され、その日の夕刻にはガハルド皇帝陛下への謁見が叶うことになった。

リリアーナが、やってきた案内に従って謁見の部屋に行くと、そこには既にガハルドが実に楽し気な笑みを浮かべて待っていた。

 

ガハルド・D・ヘルシャー。

もうそろそろ50代を迎えそうな年齢にも関わらず、見た目は30代後半や、40代前半にも見える若々しさと猛々しい覇気を纏った男。

灰色に近い銀髪、狼のように鋭い目、服越しでも分かる極限まで引き絞られた肉体は些かの衰えも感じさせない。

 

当時の光輝達の実力を確かめるべく、ガハルドがお忍びで王国に来た時以来だが、数か月程度ではやはり変わりないらしい。

魔人族に襲撃されたと聞いていたので、或いは怪我の一つでもしているかと思えば、そんな様子も皆無である。

 

ガハルド「よく来てくれたな、リリアーナ姫。

随分と急な来訪だが、それだけの土産話があるのだと楽しみにしているぞ。」

リリアーナは「ご期待には添えないと思いますが……。」と前置きをし、まず王国で起きた事件のあらましを語った。

 

王国内に蔓延った恐ろしい浸食から始まった一連の出来事。魔人族による魔物の大群の侵攻。

"真の神の使徒"による暗躍と神の真意、聖教教会総本山の崩壊、檜山大介の裏切り、この世界の真実……

そして、南雲ハジメが臨時とはいえ王座に即位し、圧倒的な力と魅力的な政策で、混乱と不安に満ちていた国民の疑念を払拭し、民心をあっという間に鷲摑みにしてしまったこと。

 

ガハルド「……ちょっと待ってくれ、リリアーナ姫。」

リリアーナ「はい、お好きなだけどうぞ。」

口を挟まず黙っていたガハルドは、リリアーナが口を閉ざすと同時に大きく息を吐き、椅子に深く腰を預けると片手で顔を覆って天を仰いでしまった。

 

そして眉間を指でぐりぐりしながら、必死に聞いた内容を呑み込もうとしている。

豪放磊落な皇帝陛下をして、伝えられた事実の有様と真実の大きさには流石に動揺を隠せなかったらしい。

気持ちは分かると、リリアーナがお茶に口をつけつつ待つことしばし。

ガハルドは姿勢を戻し、リリアーナに視線を合わせた。

 

ガハルド「凄まじい状況だったようだな。よく伝えに来てくれた、リリアーナ姫……

いや、今は公爵令嬢だったか。」

リリアーナ「どちらでも構いません。それに、こちらも大変な状況だったようですから。」

ガハルド「しかし、そうか……教会は、神は……こりゃあとんでもない爆弾を落としてきたもんだなぁ。

南雲ハジメは。」

 

リリアーナ「その割には、陛下はそれほどショックを覚えていないようですが。」

ガハルド「いや、結構な衝撃だったぞ。生まれてより信仰していた対象がクソだったんだからな。

だが、まぁ、帝国は抑々実力至上主義。敵あらば殺す、欲しいものは奪う。

弱者は強者に従えってのが信条だ。

神の勢力がぶっ飛ばされたってんなら、そりゃあ、ぶっ飛ばされた方が悪い。

そんな相手を、何時までも崇めちゃいられんさ。」

リリアーナ「そ、そういうものですか……。」

 

帝国の実力至上主義は筋金入りだ。

何せ、王位継承問題すら決闘という対外的に分かりやすい方法で解決するくらいなのだ。

とはいえ、今まで信仰していた神に対してまで、その理念を適用するとは……

本当に、この国の人間は……と、リリアーナは表情を引き攣らせる。

ガハルドは気にした様子もなく、早くも気持ちを切り替えたようだ。

 

ガハルド「だが、それ以上に問題なのは南雲ハジメだ。

大勢の死者をたった一回の魔法で蘇生させるなんて所業、人間の躰で起こせるものじゃねぇ。

それに、同時に国民の傷と崩壊した建物も元通りにしちまうなんて魔法、聞いたことも見たこともない。

その上で、教皇の爺さんや裏切り者を処刑し、反対勢力を指名手配として国民に焙り出させ、洗脳や脅迫で屈服させる手腕……

アイツは本当にただの学生だったのか?どう考えても、政治の経験があるようにしか感じねぇぞ。」

ガハルドはハジメについて考察する。だが、知る由もないだろう。

 

この世界における南雲ハジメという男は、[原作という世界の"主人公"]と、[原作知識を持ちその結末を知っている"転生者"]、その二つの魂が混ざり合ってできた第3の魂、[王となるべくして研磨された"少年"]として存在していることに。

 

リリアーナ「ハジメさん曰く、"学を必死に積み、王としての器を仕上げた"とのことです。

恐らく、元の世界であるだけの知識を詰め込み、それを政治に生かしているのだと思われます。

その上、王国・帝国間をたった半日で移動するアーティファクトも作り出せる、稀代の錬成師です。

国民に配布するアーティファクトの製造ですら、即座に完遂させてしまうほどの技量を持っています。」

困ったような表情で微笑みながら断言するリリアーナ。ガハルドは眉間に深い皺を刻む。

 

リリアーナ「それと、ハジメさんから皇帝陛下宛に手紙を預かっております。」

そう言ってリリアーナはハジメから預かっていた手紙を渡した。尚、中身に関しては全く知らない。

そして、手紙を受け取ったガハルドがその内容を読み上げた。

 

『拝啓、ガハルド君へ。ウチのシマで勝手に誘拐しやがってコノヤロー。後で一回締めに行くから。

もしおいたが過ぎようものなら、息子スマッシュも辞さないからね?――by 魔王南雲ハジメ』

読み終えたガハルドはその後沈黙し、ハジメと敵対してしまったという事実に頭を抱えた。

リリアーナもリリアーナで「なんてことを書いてくれたんですか!?」と動揺し、頭を抱えていた。

そして少し時間をおいて、両者が立ち直り姿勢を直すと、ガハルドが口を開いた。

 

ガハルド「……一つ聞きたい、リリアーナ姫。南雲ハジメの部下に、亜人族はいなかったか?

特に兎人族、それもあまりに特殊な兎人族だ。」

リリアーナ「!?」

ぶわっと毛穴が開くような感覚。しかし、どうにか笑顔でそれを隠す。

が、僅かに呼吸が乱れたのをガハルドは見逃さず、そのまま続けた。

 

ガハルド「樹海の外だというのに、帝国の兵士とまともにやり合いやがった。

とても、兎人族とは思えん殺意と覇気を持ってな。」

リリアーナ「まぁ!温厚の代名詞の様な兎人族に、そのような部族もいるのですね。恐ろしい……。」

ガハルド「それだけじゃない。そいつらの装備がな、これまた凄かった。

見たこともない鉱石で構成されていて、手を加えることも出来なかった。

おかげで他に使い手が見つからねぇから、今も城の宝庫で眠っている。」

リリアーナ「フェアベルゲンの技術力も侮れませんね。」

ガハルド「そうだな。本当に、フェアベルゲンの職人が作ったんならな。

俺には、あんな大業物の装備を量産できるのはあの南雲ハジメ位だとしか思えない。」

リリアーナ「……。」

 

リリアーナは胃がしくしくするのを感じた。

今日の協議を終えたら、ヘリーナ特性のお腹に優しい紅茶を入れてもらおう、そうしよう。

リリアーナは心のヘリーナにお願いしたのであった。

 

ガハルド「……まぁ、それを今更姫に言っても、どうにもならんのは分かっている。

だからこの話題は一旦置いといて、協議の内容を聞こう。」

リリアーナ「……はい。端的に言えば、今後の連携について方針を固めたくまいりました。」

リリアーナはガハルドに同情されたことに内心泣きつつも、その心遣いには感謝したのであった。

因みに、本来であれば支援の要請も予定していたが、ハジメの即位宣言時にそれも解決してしまったので、今回の協議の重要点は、帝国との同盟強化位しかないのだ。

とはいえ、流石に一気に二人だけで決められることでもないので、今のところは概要と、各方面との具体的な協議内容の確認だけしておく。

 

ガハルド「まぁ、こんなところだろう。

後重要なのは、対外的に関係強化をどう示すかだが、それに関してはリリアーナ姫、一役買ってもらうことになるぞ。」

リリアーナ「!そのことなのですが……。」

リリアーナは現状、公爵家の令嬢でありつつもハジメの許嫁でもあるので、リリアーナの一存だけでは決められないのだ。

 

その趣旨について説明すると、ガハルドは「マジか……。」とまた天を仰いだ。

とはいえ、このまま何もなしに関係強化を発表しても、それをどう国民に伝えるかが問題になってくる。

かと言って、断りもなく婚約を進めてハジメの機嫌を損ねれば、最悪の場合帝国が滅ぶし、ガハルドもハジメのアーティファクトの恩恵を受けられなくなってしまう。

そんな訳で、婚約の話のみが進まないまま2日が立った夜、協議を重ねるガハルドとリリアーナのもとに、一報が飛び込んできた。

 

帝国兵「以上で報告を終わります!」

ガハルド「ご苦労、下がれ。」

帝国兵「はっ!」

ツカツカと規則正しい足音を響かせて部下が出て行った扉をしばらく見つめた後、ガハルドは、目の前で澄まし顔をしているリリアーナに視線を転じた。

 

リリアーナは、ガハルドの視線に気が付くと「大変そうですね?」と心配するような、困ったような微笑みを向けた。

隣国の王女として、先程報告された内容を憂いているような、されど口出しは余計だと弁えているような、そんな表情だ。

ある意味、見事な表情だと、ガハルドは思った。

 

ガハルド「全く、困ったものだ。

ふざけた強さの魔物の次はふざけた仮面を着けた、ふざけた強さの6人組の襲撃か……

この件、どう思う?リリアーナ姫。」

リリアーナ「……私には、わかりかねます。

やはり、魔人族の暗躍では?有り得ない魔物を使役するのですから、有り得ない人材もいるのでは?」

ガハルド「そうかもしれんな……。

何が目的かと尋ねたら亜人奴隷達の待遇改善だと抜かすのだから、意味不明すぎてとても恐ろしいと、俺も思う。」

リリアーナ「そう、ですわね。」

リリアーナの表情は崩れない。

 

ガハルドが面白そうにリリアーナを観察しているが、笑顔という名の仮面は鉄壁だ。

何せ、貼り付けたような笑顔ではなく、王族必須スキルであるその場の状況に応じて変幻自在に変わる笑顔なのだから。

しかし、僅かに呼吸が乱れた事をガハルドは見逃さなかった。

 

ガハルド「ところで、リリアーナ姫。」

リリアーナ「はい?」

ガハルド「確か勇者殿は、あの南雲ハジメと一緒に樹海に向かったのだったな?」

リリアーナ「……えぇ、その通りです。ですがそれが?」

ガハルド「いやなに、てっきり帝都に来ているのかと思っただけだ。

そして、どこかで奴隷解放でも詠っているのかとね。」

リリアーナ「あら、ガハルド陛下ともあろう御方が、推測と事実を混同なさっているのですか?

そのようなことありませんわよね?」

ガハルド「はっはっは、もちろんだ!根拠もない推測を事実のように語ったりはしない。」

リリアーナ「ふふふ、そうでしょうね。」

「ははは。」「ふふふ。」と皇帝陛下と王女の笑い声が応接室に響き渡った。

が、その時、再び扉がノックされた。

 

ガハルド「入れ。」

帝国兵「ハッ。失礼します。緊急ゆえ、報告をお許し願いたく!」

ガハルド「構わん、どうした?また仮面でも出たか?」

帝国兵「い、いえ。それが、そのーー地下牢のハウリア族が全員、脱獄した模様です!」

ガハルド「……。」

 

ガハルドの視線がリリアーナに向けられた。珍しく無表情だ。

無機質な目がじっとリリアーナに注がれている。

リリアーナは「あらまぁ、大変!」と言いたげな表情を見事に作り出す!

同時に、内心で絶叫した。

 

リリアーナ(来てる!あの人、絶対に来てるぅ!

帝城の地下牢から気付かれずに脱獄させるなんて、あの人にしか無理ぃ!

というか、これ絶対にバレていますって!もしかして、私も関与を疑われています?

いやぁっ、どうして私がこんな目に!皇帝陛下が未だかつて見たことない目で私を見てますよぉ!)

と、リリアーナが内心で絶叫していたその時。

 

プルルルル

リリアーナ「ひゃっ!?」

ガハルド「うん?リリアーナ姫、それはなんだ?」

ガハルドが指さした場所には、ハジメが以前プレゼントしたブローチがあった。

 

リリアーナ「へ?あ、あぁ~、これですね!ハジメさんから貰ったお守りですので、お気になさらず!」

実はこれ、リリアーナが気づかないうちにハジメさんが改造し、念話機能が魔力操作なしでも使えるよう、電池代わりの神結晶が埋め込まれた、簡易型魔導通信機である。

それが鳴っているということは、ハジメが何かを伝えに来たのだろうか。

ガハルドに見られて内心ビクビクしながらも、リリアーナは意を決してアーティファクトを起動した。

 

リリアーナ『も、もしもし。』

ハジメ『あ、リリィ。ちょうどよかった。今、帝城の上空にいるから、部屋教えて。窓から入るから。』

リリアーナ「何でそんなとこにいるんですかぁ!?」

思わず念話を解除する程、リリアーナは絶叫した。ガハルドが何事か、と見てくる。

 

ハジメ『いやなに。

ついさっき、カム達を近くにいる部下たちのとこに送り届けたし、折角だからリリィの様子見序でに、ガハルドに王様として顔見せに行こうかな?って思ってさ。』

リリアーナ『いや、あんな内容の手紙の後にですか!?このままだと戦争が……!?』

ハジメ『文句ならガハルドに言って。

俺はただ、自分の部下に手を出されたから宣戦布告と受け取っただけだし。』

リリアーナ『だからといって、流石に限度があります!』

ハジメの余りの図太さに、リリアーナは思わず胃と頭の両方を抱えたくなった。

しかし、そんな彼女に更なる追撃が。

 

ガハルド「リリアーナ姫、もしやとは思うが……会話相手は南雲ハジメか?」

リリアーナ姫「ふぇっ!?え、えぇ、まぁ……。」

それを聞いたガハルドは、実に楽し気な笑みを浮かべていた。

リリアーナは嫌な予感が過り、慌ててハジメとの念話を終了させようとしたが、時既に遅し。

 

ガハルド「そうかそうか、折角だ。リリアーナ姫、彼はどこに?

近くにいるのであれば、是非顔合わせをしたいものだが。」

リリアーナ「……はい。」

もうなるようになぁれ~、と言わんばかりにやけっぱちになったリリアーナは、ハジメに部屋の場所を教えた。

すると、直ぐに窓の外に人影が現れた。

 

ハジメ「あ~、もしかしてリリィ……今、タイミング悪かった?」

リリアーナ「遅すぎますよぉ!もっと!私を!労わってください!私!婚約者で!王女です!」

ハジメ「ゴメンゴメンって。後で埋め合わせするから。」

リリアーナの表情から何となく状況を察して宥めたハジメは、改めてガハルドに向き直る。

 

ガハルド「この度の国王ご即位、祝福を申し上げる。南雲ハジメ殿。」

ハジメ「ここは公式の場じゃないんだ、素でいい。寧ろ、そっちの方が気が楽だし。」

ガハルド「くく、そうか。俺も同じだ。その方が相手の成りを把握できるしな。」

両者共に、口元に笑みを浮かべながらも、目は全く笑っていなかった。

それがリリアーナにとっては恐ろしかった。

 

ハジメ「それで?協議についてはどうなったの?」

ガハルド「それなんだがな……うちの息子に、リリアーナ姫を嫁が『ドゴォン!』せ……。」

その言葉が出た途端、ハジメはガハルドの後ろにある壁を打ち抜いた。

拳の跡が壁に刻まれていた。リリアーナは慌てて宥める。

 

リリアーナ「は、ハジメさん!待ってください!どうか、落ち着いて聞いてください!」

ハジメ「……聞き間違いかな?

ウチのシマに手を出した挙句、俺に断りもなく、婚約者を奪うなんて……どういう了見だ?

事と次第によっては……この国、消えるかもしれんぞ?

その瞬間、凄まじい程の殺気が帝城を包み込む。それは正に、覇王の"威圧"だ。

 

ガハルド「ぐおぉっ!?」

その余りの気迫に、ガハルドは気を失いかけるも、何とか踏ん張り耐える。

しかし、念のために控えていた兵士たちは大半が気絶、そうでない者は錯乱し、中には発狂する者まで出る程だった。

 

部屋の柱もミシミシッという音が鳴り、罅が数か所に入ってしまっている。

後に、この事件は『魔王の怒り』という名の絵画として残されるようになった。

尚、その殺気に当てられたせいで、ハジメに興味を抱いてしまった皇女様がいた事には、誰も気がついていなかったのであった……。

 

リリアーナ「んっ!」

ハジメ「んっ。」

が、その殺気も長くは続かなかった。何故なら……リリアーナが咄嗟にハジメの唇にキスをしたからだ。

急な出来事で驚いたのか、ハジメは殺気を抑えてリリアーナに聞いた。

 

ハジメ「リリィ、落ち着かせるためとはいえ、いきなりキスしなくてもいいじゃないか。

気持ちは嬉しいが、一目があるだろ。」

リリアーナ「うぅ…///で、でもこうでもしないと落ち着いてくれないと思ってしまいまして……。」

弁明しつつも、自分の行動に思わず顔を真っ赤に染めるリリアーナ。

ここが帝城であり、皇帝の御前であることを忘れ、やってしまったと、顔を両手で覆った。

 

ガハルド「ハァ……ハァ……幾らなんでも、容赦無さすぎだろ……。」

ハジメ「チッ、殺気が足りなかったか……それで?死ぬ前に訳位は聞いておこうか?」

リリアーナ「ハジメさん?くれぐれもお願いします、ね?」

リリアーナは今すぐここから抜け出したい気持ちになるが、そうなるとハジメがガハルドを殺しかねないと思い、何とかハジメを説得する方向に切り替えたのであった。

 

ガハルド「なに、王国と帝国の関係強化の為だ。

それに、許可についてはお前とも話し合うつもりだったさ。

現に、それについての話し合いはまだ進んでいない。そうだろう、リリアーナ姫?」

リリアーナ「……えぇ。」

それを聞いたのか、ハジメの殺気も少し和らいだ。

 

ハジメ「なら何故その話題を持ち出した?俺が許可を出すとは思わないだろうに。」

ガハルド「まぁ待て。話はここからだ……。」

そう言ってガハルドは、自身の政務机の引き出しから、とある箱を取り出す。

その箱は、一辺が20㎝四方の正四角形だった。ガハルドはその箱を開け、中身を見せた。

 

ガハルド「こいつについて……何か見覚えはあるか?」

ハジメ「ッ!?」

ハジメは驚愕した。何故なら……そこにあったのは、ハジメのアナザーウォッチだったからだ。

王都事変の際に既に回収し、完全に砕いて消滅させた筈のアナザーウォッチが、目の前にあったのだ。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
本当は浩介君も仮面レンジャーに入れたかったのですが、彼は単体の方が一番インパクトがありそうなので、断念しました。
もし戦隊戦士にするなら、忍者系ですかね?ライダーだとシノビ位しか思いつきません……。

さて、今回はとばっちりを受けてしまうリリィ。今回は苦労人でもあり、ヒロインでもあります。
ガハルドもガハルドでハジメさんから怒りの応酬を食らっていますからねぇ……。
流石にこのままでは終われません。勿論、ハジメさんとてそれは同じ。
アナザーウォッチを差し出してきたガハルド、その真意や如何に!?その時、ハジメさんは!?待て、次回!

次回予告

仲間達と合流したハジメは、樹海に集結したカム達ハウリアから、帝国の目的を聞かされる。
そして、ハウリア達は帝国に戦争を仕掛けることを決意する。シアはその答えを前に、迷いが生じてしまう。
その一方、ガハルドがアナザーウォッチを盾に、リリアーナと第一皇子の婚約を認めるように迫られたハジメは、事態を解決するため、ある作戦を思いつくのであった!

次回「樹海に木霊す、兎の咆哮」
目撃せよ、歴史の始まり!

ハジメ「ガッチャ!で行くぜ!」

もしも、ハジメさんが召喚するとしたら、どのサーヴァント?

  • 勿論我妻、モルガン陛下
  • 本家後輩、マシュ
  • 正義の味方同士、エミヤ
  • 魔王と賢王、ギルガメッシュ
  • 勝ち確の死神、山の翁
  • 影の国の槍姫、スカサハ
  • 最強の母、ティアマト
  • 建築と錬成師、トラロック
  • 武器庫の獣、コヤンスカヤ
  • どう見ても嫌な予感、LA
  • ヒーロータイム、シャルル
  • かつての推し、魔人さん
  • 時空と戦国の魔王ズ、ノッブ
  • 出来る良妻賢母、キャス狐
  • 恋する剣豪、武蔵ちゃん
  • 騎士道か覇道か、アーサー
  • 中国産AI皇帝、即ち朕
  • 恋愛クソザコ、カーマちゃん
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