インフィニット・ストラトス〜十の秋、黒の弾丸〜(凍結) 作:とりマヨつくね
一夏の決闘当日。
十秋は校内にあるカフェテリアで、そこそこの味のコーヒーを飲みながら読書をしていた。
ちなみに読んでいる本のタイトルは、『お隣のイケナイ奥様』である。
内容に関しては……ノーコメントということで。
先日、一夏に立ち回りとか、武器の特性とか、戦闘の基礎を実戦形式で叩き込んだ。
恐らく、その口喧嘩した女の子にも勝てるだろう。
「俺もそうだが、アイツもトラブルに愛されているみたいだな……」
そう言って、空になったカップを置く。
そして本へと視線を戻そうとしたところで、
「こんな白昼堂々と、センシティブな内容の本を読んでいるわね」
と聞き慣れた声が聞こえた。
正直に言って、今二番目に会いたくない人間(一番はあの天災)である。
「……なんだよ。別になんでもサボリ魔会長」
十秋は本を閉じて、話しかけて来た人物……楯無に敵意マシマシの視線を向ける。
「サボリ魔はあんたもでしょうが」
と”反論”のふた文字が書かれた扇子を広げて、言葉を返す。
「違います〜、俺はちゃんと資料をデータ化して、虚さんのパソコンに送っています〜。なんなら本来、あ・ん・たがやらなきゃいけない仕事も肩代わりしてやってんだよ」
「え、本当に? 確かにここ最近の仕事の量が少ないとは思っていたけど。そう、それはごめんなさいね」
と、謝罪を入れながら対面の席に座る。
「別に良いよ。趣味と言える趣味もないしね」
「へえ〜、意外ね。私てっきりーー」
「ま、嘘なんだけどね☆」
十秋が言うと、楯無はガクッと椅子から落ちそうになる。
「いや〜、ここ最近は真面目ばっかだったからな〜。ここでおちゃらけキャラだってこと証明しなきゃ。本当はやりたいゲームとかアニメ一気見とか沢山あるさ。だけど俺は面倒くさいことをやりたいのさ」
「面倒くさいことをやりたい?」
「ああ、そうだ。面倒くさいことは良いぞ。誰もやりたがらない事を自分一人がやり切った時、それはーー目に見えて自分の確かな武器になってくれる。そしてその武器は何かデカイ壁にぶつかった時、きっと俺の窮地を助けてくれる知恵になってくれる……そう思えるんだ」
十秋は楯無に視線を戻すと、例の楯無は呆けた顔をしていた。
そしてすぐに彼女は破顔した。
「あははははは!」
腹を抱えて笑う彼女に、十秋は眉を上げる。
……そんなに面白かっただろうか。
人きしり笑い終えた彼女は、姿勢を元に戻して言った。
「いや〜、ごめんごめん。どうやら私はあなたのことを勘違いしていたみたいだったよ」
「ふ〜ん、じゃあ前の俺の印象はどうだったんだ?」
「私、あなたのことを、おちゃらけてて強さだけが取り柄みたいなムカつく人間だと思っていたよ」
「おいおい、ひどくね? 幾ら何でも……俺泣くぞ」
「でも、それは今日話して変わった。君は目的のためだったら、どんなこともするし、どこまでも一生懸命に努力できる人だって分かった。今更ながら生徒会に入れてよかったと思った……おもちゃった」
「さいですか。で? 要件は。まさか日本の暗部を司る更識家の当主が、ただ一緒にお茶しに来たわけじゃないでしょ」
十秋はコーヒーを一口含みながら、不敵な笑みを浮かべながら聞いた。
それに対し楯無も、フッと小さく笑う。
「なんだ……あなたも
「明らかに普通のバイトではないのは察したが、参考までに時給おいくらで? 俺は高くつくぜ」
「うーん。うちは時給じゃなくて、人の数とか対象になってしまうのだけれど……今回の場合は」
楯無は胸ポケットから端末を操作して、金額を見せられ十秋はコーヒーを吹き出しそうになった。
はっきりと言おう。想像よりゼロが一個多かった。
「な、なるほど。でもダメだな」
「ええ〜? これでまだ足りないの?」
「いや、金額はその一桁したもいい。だけどとある事件についての情報をくれ」
「ふ〜ん。その情報って、何なの?」
「『織斑計画』……その研究に携わった人間のリストだ」
十秋が言うと、楯無の表情が一気に真剣なものになった。
「ーーなるほどね。あなた、アレの『被害者』だったのね」
「ああ、それが俺の行動原理だ。そして俺が戦う理由だ」
楯無はなるほどと頷くと、
「分かったわ。その条件、呑んだわ」
と答え、何もなかったかのように話題を変える。
「じゃあ、肝心のターゲットの話をさせてもらうわ」
楯無は胸ポケットから一枚の写真を取り出して、十秋に見せる。
「コイツは……難波ガイストのCEOじゃないか」
「あら、知っていたの?」
「ああ、世界的にも有名な軍事会社じゃないか」
難波ガイスト、元は電化製品を主体にやっていたらしいが、本社がアメリカに移転してから軍事産業に手を出し急成長した会社だ。
なんでも、ISの部品の一部も作っているんだとか。
「そうそう。んでその例のCEOさんが、実は裏でコソコソとテロ組織に武器を横流しをしているらしいのよ」
「はあ、じゃあソイツをとっちめるのが今回の依頼っていうわけか?」
「もちろんそれもある。だけど最重要じゃない」
「……はい? つまりどういうことだってばよ?」
下手な某忍者漫画の主人公のような口調で聞くと、楯無は答える。
「今回のもう一つの
「はへー、って……は?」
元は騙す気満々とはいえ、確かにこれは俺に依頼したい気持ちも分かる。
あまり表向きに言えないが、十秋は数度、ISで数々の戦場に赴いたことがある。
だから戦車に、航空機、戦艦、と色々な兵器と戦ってきた。
だが、そのどれもが悉く鉄屑と己の手で変えた。
そんな最強兵器ことISであるが、それを超える兵器……本当にそんなものが存在するというのか。
そんなことを思考していると、伝えるべきことを伝えた楯無は席を立ち上がった。
「
「了解した」
「ところで、弟さんの試合は見に行かないの? 直接、動かし方を教えてあげたんでしょう」
「別に、どうせ勝てるはずだからな。打鉄の性能と一夏のセンスなら、相手が代表候補でも引き分けぐらいに持ち込めるだろう」
「あれ、でも一夏君が乗っていたのは打鉄じゃなかったような……」
「は? どういうことだよ」
「いや、ついさっき倉持技研から一夏君に専用機をーー」
楯無は言葉を止めた。
十秋が顔を真っ青にして、口をパクパクと何かを言いたげであった。
明らかに焦っている。これまで見たことないくらいに焦っている事だけは分かった。
「そ、そんな、そんな話は聞いてないぞ〜〜〜〜〜〜!」
彼は叫ぶと、急いでアリーナの方へと走っていた。
あとがきです。
次の次ぐらいから少しシリアス路線になるかもしれません。
一夏君が平和に過ごせているのは、兄貴がいるからなんだぞ!と言うところをかけるよう頑張ります。
それでは次回、会いましょう