インフィニット・ストラトス〜十の秋、黒の弾丸〜(凍結) 作:とりマヨつくね
1000増えるのが早すぎてびっくりしている。
あと、今回の話で話の帳尻を合わせるために、一部の話を修正するかもしれません。
どうかご理解を。
あと次回は普通の話とは別に多分設定を出します
長々とすいません。
それでは本編へどうぞ。
<タイラント>のコックピット内で、難波重信は怒りを顕にしていた。
何故なら憎き更識家の当代楯無が先ほど、自分の足止めを分身に任せて、彼女はエネルギーウィップの攻撃で怪我を負った黒いISと共にどこかに隠れてしまったのだから。
それが、彼の神経を逆撫でした。
現に今の彼は、
「ちょけるな、この難波重信をおちょくるのたいがいにせぇや! わいは分身程度でも勝てると思うたなら、大間違いだ。この<タイラント>さえあれば、オノレなんて簡単にひねりつぶせるって思い知らせてやるわ! そもそもとして、そっちから奇襲をかけてきたんやさかい、せめての詫びとして正々堂々戦え」
と、前半はともかく、後半は意味のわからないことを言いながら。先ほどからエネルギーウィップ、防衛用の機関銃、誘導ミサイル、それら全てを使ってアクアナノマシンの分身を薙ぎ倒していた。
だが一向に分身の数が減らない。
本当なら今すぐにでも、楯無の本体を見つけて荷電粒子砲をぶっ放したい気持ちだが、この分身は打突攻撃をチクチクとしてくるので、ひじょーうにウザい。
「こうなったら……!」
重信は<タイラント>を方向転換させて、前方をとある方向へと向ける。
そして荷電粒子砲へとエネルギー供給させながら、着弾の地点の座標を横浜港の石油タンクへと指定する。
ここまでくれば、彼の考えていることは誰にでもわかることだろう。
重信は悪魔のような笑みを浮かべながら、まるで答え合わせのように声を発する。
「もしこのエネルギーの塊が石油タンク群に直撃したら、さぞ綺麗な花火が打ち上がるやろうな〜〜。はよしぃひんと手遅れになってしまうぞ〜〜更識〜〜〜〜。あひゃひゃひゃひゃ!」
彼が表情を絶望色に染まる更識の人間達を想像しながら、高笑いをしていると不意にガクッと右側に傾く感覚があった。
「な、なんや!?」
重信はいきなり起きたことに驚いていると、液晶パネルの端に、右前足の第二関節が煙を出している映像が映し出された。
そしてその奥には、先ほど<タイラント>の攻撃を受けて動けるはずのない、黒いISがバレルの長いエネルギーライフルを構えている姿があった。
◇
今から数分前。
『失敗は許されないわよ』
瓦礫に隠れながら様子を見ていた楯無は、反対側で同様に<タイラント>を見る十秋に言う。
「そう言ってお前もミスるなよ?」
「わ、分かってるわよ。それだけ憎まれ口が叩けるなら、心配なさそうね。それじゃ、三つ数えたら出るわよ」
楯無が聞くと、十秋が無言で同意を示す。
それを察知した楯無は、カウントダウンを口にする。
「三」
十秋はライフルのグリップを強く握る。
「二」
楯無は槍に水を纏わせる。
「一」
二人は相棒を……そして自分自身を信じて。
「GO!」
二人は飛び出した。
楯無は、わざと<タイラント>のメインカメラに映る。
それに反応した<タイラント>は、エネルギーウィップで迎え撃つ。
楯無はそれに対し、回避と防御を行う。
一方、十秋は<タイラント>の足元へと到着すると、エネルギーライフルを前足に向かってビームを放つ。
ビームが直撃したのを確認すると、すぐにもう一つの前足に目掛けてビームをお見舞いする。
それも直撃し、<タイラント>が人間の言う前かがみの状態になる。
「クリア」
短く口ずさむと、今度は後ろ足に銃口を向ける。
上では、楯無がエネルギーウィップを引きつけてくれている。
少しの遅れも取るわけにはいかない、ここで遅れれば待っているのは燃え盛る横浜ーーひいては世界の危機だ。
十秋はライフルのトリガーを引き絞ろうとした時、不意に悪寒を感じてその場を飛んで離れる。
「ーーッ!」
だが、<タイラント>の方もいつまでもやられたい放題というわけでなく、側面の機関銃を発砲してくる。
回避に成功した十秋は、既にチャージを終えていたIBで後ろ右足の側まで接近する。
武器を近距離用のショートピストルに持ち替え、ありったけの弾丸を叩き込む。
「これで三つ目……」
この時点で、自重で<タイラント>を支えていた残り五つの足も、ぐしゃりと耳障りの音ともに曲がる。
上面に装備されたエネルギーウィップも、楯無が発生装置も破壊したため使用不可能。
誘導ミサイルも、残り少ないのは分かっている。
唯一残った兵装である荷電粒子砲も、せいぜい一発が限界だ。
……もう勝ち目なんてどこにもない。
楯無は槍を突きつけ、その中にいるだろう重信に告げた。
「あなたの負けよ。大人しく、機体から降りてお縄につきなさい。安心しなさい、悪いようにはしないわ」
そう、楯無が笑みを作った瞬間ーーーー何かがプツンと切れた気がした。
『ちょけるなよ。おどれらは最初から全部持ってて、それを自分の力のように振る舞う奴らなんかに、なんでワイがホイホイ頭を下げなきゃいけないんや!!」
<タイラント>に備え付けられたスピーカーから、重信の怒気をはらんだ声が聞こえた。
そこで<タイラント>の異変が起こる。
もう使い物にならなくなった足の付け根から蒸気が出ると、足が本体から分離した。
そして分離した本体は、どういうわけか落ちることなく空中で固定され、なんなら上昇し始めていた。
「おいおい、それは卑怯すぎるだろ!」
<タイラント>が飛んでいる理由は、恐らくISに装備されているものと同じ
特殊な磁場を機体周辺に展開し、反重力による飛行、加減速を行うISの基本システムである。
普通ならISで使用されることを想定されているが、一応は別の機械にも流用することは不可能ではない。
不可能ではない……だが何十トンもあるだろう<タイラント>を持ち上げるのには、相当の電力が必要になる。
あまりにも非合理で非現実的で、兵器としてはナンセンスだ。
だが今は、そんなことはどうでもいい。
十秋はよく知っている。追い詰められすぎた人間が怒りを覚えた時、何を起こすかを。
十秋は急いで地面を蹴って飛翔し、追いかけるように上昇させる。
「十秋、不味いわ! 荷電粒子砲にエネルギーが供給されているわ。アイツ、撃つ気だわ! それにその着弾地点が千鳥町の石油タンク群なのよ」
十秋の後を追うように、最大速度で上昇していた楯無から発せられた言葉に、十秋は息を詰まらせる。
もし発射された粒子砲が、タンクの一つでも直撃したら……一体どれだけの被害が出るか分かったものではない。
十秋は上昇スピードを更に上げて、<タイラント>の目の前まで辿り着いて、両手をバッと広げる。
『オドレは消えろーーーーーーーーーーー!」
発射されるた荷電粒子砲は空気を押しのけ、光の柱が彼を焼き焦がして一瞬でSEを削り切る。
「ぐあああああああーーーーーーーー!」
だが業火は決して十秋を許さず、彼が身に纏っている黒影とともに焼き尽くす。
融解する装甲、焼け爛れる肌、焦げる匂い、ありとあらゆる感覚が彼を殺そうとする。
それでも十秋は手を差し伸べ、辛うじて生きている喉を震わせた。
「俺はーーもう何も失いたくないんだよ! そのためだったら、ISでも銃でもなんでも使って邪魔な奴を排除する!!」
ーーーーーーソレガアナタノ願イ?
どこからかそんな声が聞こえた。
十秋はそっと目を閉じ、心の中で返答する。
そうだ、と。
すると突然、荷電粒子砲の光が霧散し、暖かい感覚を伴い機体の内側発せられた光が彼のことを包んだ。
「なんだ……これは?」
十秋は困惑していると、彼を包んでいた光は十秋の元へ離れ収束する。
収束した光は変形し、それは巨大なバスターカノンを象った。
そして彼の視界に、一つの文字の羅列が浮かび上がる。
「《天啓極夜》?」
いつの間にこんなシステムが積まれていたのとか、と色々考えそうになったが今はそれどころではない。
目の前にいる<タイラント>が、再び荷電粒子砲にエネルギーをチャージしていたのが見えた。
十秋はバスターカノンを構え、いつの間にか回復していたSEを込め、狙いを<タイラント>に定める。
そして<タイラント>の荷電粒子砲と、十秋がバスターカノンの攻撃を放ったのは、ほぼ同じタイミングだった。
二つの光の奔流は衝突し、鬩ぎ合い、そして勝敗は決まった。
十秋のバスターカノンの放った全力が勝り、暴君の一撃を飲み込んで鋼の装甲を貫いた。
貫かれた<タイラント>は、小さな爆発を連鎖させ、最後に一際大きな爆発を起こしてバラバラになった。
それを見届けた後、バスターカノンは粒子となって空気に溶けて消えた。
「倒せたのか……? は、はは、ははは……よかった」
全てが終わって安心しきった彼は、戦闘で負ったダメージが今更ながら重石のように押し寄せてきた。
せめて安全な地面に着陸するまで、意識を保とうとしたが先に体力の方が限界が迎えた。
体が制御を離れ、真っ直ぐ地面に向かって落下していく。
だが途中で何かに支えられる感覚と共に、落下していく速度が緩やかになったと思った直後、
「お疲れ様、カッコ良かったわよ」
と、労いの言葉をかけられたところで彼は意識を手放した。
あとがきです。
今回の話はどうでしたでしょうか。
ついにでましたね、彼の単一仕様。
そこら辺の詳しい話は、次回か同時刻に出す設定資料に目を通してください。
それではまた次回会いましょう