TSディオ様もの。   作:荼枳尼天

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どもー。見切り発車です。DIO様はこんなこと言わない!とかあるかもしれませんが、よろしくお願いします


プロローグ
このDIOがッ!女だとッッ!


 

 

 ソレがまぶたの奥に感じたのは光、久しく感じていなかった天上の温もり。

 人をやめた時、感じるのを辞めたも同然のものであった。

 

「ん…ぬ……こ、ここは…」

 

 目を開け、入ってくるのは当然、カーテンにさえぎられることなく部屋を照らす太陽光。

 だがそれを見てもなお、ベッドの上で上体を起こした“DIO”に動揺は微塵もなかった。

 

「体が崩れん……」

 

 起きる直前よりもいくらか軽い体をベッドから下ろし、天敵であった日光の中を休日に食べ歩きをするかのように悠然と歩く。

 今DIOが居る部屋はぬいぐるみや脱ぎ捨てられた服が多く、DIOが必要性を見いだせなくなって久しい勉学の共である参考書が積み重なっている。

 その汚部屋と言っても差し支えない惨状には目もくれず、DIOが数歩歩いた先には鏡が存在していた。

 

「ほう」

 

 そこには一糸まとわず仁王立ちしている美少女がいた。

 DIOの黄金色の頭髪、白磁器のような透き通った白色を持った肌に、瞳孔が縦に割れている獰猛な獅子のような琥珀色の瞳。

 DIOが眠る直前の城塞のような筋肉は元からそこになかったかのように消え失せたが、その身に纏う雰囲気はDIOそのもの。

 

「承太郎のスタンドにそのような能力があるとも思えなかったが…」

 

 そうだ。DIOが眠る前、承太郎と戦っていたはずだ。忌々しい記憶。思い出すだけで腸が煮えくり返る。

 DIOの最強のスタンド、世界(ザ・ワールド)の停止時間をその圧倒的な成長速度で乗り越えDIOに引導を渡してきたはず。

 だが何故かDIOは性別と年齢を変え、そこに存在している。

 

「…承太郎の慈悲か、それとも」

 

 その身のうちに燃える憎悪の炎とは裏腹に冷静に頭を回す。

 だがやはり、DIOの中に答えは生まれなかった。

 なぜDIOは生きていたのか、なぜこの体になっているのか。

 

「神の慈悲というのか」

 

 ならば、と

 

 DIOはまた自らの道を歩き始めたのだ。

 

◇◇◇

 

 状況を無理やり飲み込み、まずは眠る直前の記憶を頼りに女としての体裁を整える。

 付けるのは黒い下着、着るのはハンガーにかけてある一番整ったどこかの学校の制服。

 腰の少し下まで伸びる髪の毛はそのままに自分の部屋から出て階段を降りた。

 

 眠る直前まで吸血鬼であったとしても今は人間、腹が減っている。

 何かあればいい程度の認識で下に降りる。

 

「あら、早いお目覚めね」

 

 そこに居たのはキッチンで腕を振るうDIOの体の持ち主の母親であろう人物。

 DIOは冷めた眼差しでその母親を一瞥し、すぐさまスタンドで殺してしまおうとした。

 だが母親が黒髪を翻して振り返った時、DIOは目を見開くことになる。

 

「っ?!か、かあ、さん…」

 

「え?!ちょっとあんたどうしたのその金髪!!そ、染めたの?!昨日の夜まで黒だったじゃない!!」

 

 似ている。ヤツ(ダリオ・ブランドー)が多大な苦労をかけたせいで早くに死んでしまった“あの人”に

 気づいた時にはDIOの目から涙がこぼれていた。

 

「ちょ、ちょっと!何泣いてんの?!どっか痛いの?!え?!目も金色に…もしかして…」

 

「す、すま」

 

「病院行くわよ!遅刻の連絡は入れておくから!」

 

「ンな?!」

 

 

 

 

 

 

「うん。後天的に個性が発現したようだね?」

 

 突然、病院に連れていかれたDIOはそう言われた。

 今DIOがいるのは町医者だ。

 一番近いところにあり、馴染みがあったから、らしい。

 

「その兆候がその容姿の変化のようだよ」

 

「そ、その娘の個性はどのような…」

 

「…それがわからないんだよ」

 

「それってどういう…」

 

「個性というのは身体的特徴に出ることが多いんだけどね?その特徴というのが見えない。恐らく潜在的な個性か」

 

「聞きたいことがある」

 

「ん?なんだね?」

 

「“個性”というのは個人の特色を言ったものでは無いように思えるのだが、なんなんだ?」

 

「「は?」」

 

「それと、なぜ貴様には角が生えているんだ。貴様は吸血鬼とは違うなにかなのか?」

 

「「…は?」」

 

「……なにか変なことを言ったか…?」

 

 

 DIOのセリフに仰天している2人のうちの片割れが口を開く。

 

「記憶障害があるのか」

 

「うそ…でしょ…」

 

「記憶障害…ふむ。まあこの体の記憶はない」

 

「“世界”!私のことは覚えてるんでしょ?!」

 

「…記憶はない。と、言ったはずだ」

 

「じゃあ、あなたは…だれ…」

 

「……私の名前は…」

 

 

 体が浮くような感覚がDIOを襲う。

 この感覚は眠る前の感覚に似ていた。

 抗うことは非常に難しく、名前を言う前に、“DIO”の意識は沈んで行った。


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