TSディオ様もの。   作:荼枳尼天

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※改稿 2月26日


このDIOに向かってくるのか

 

 

 

『オイオイ、チクショウ。誰が、誰がこんなのを予想できたぁ?! 障害物競走、一番最初に帰って来たのは普通科D組ィ!』

 

 ゲートを余裕の表情でくぐり抜けてきたのはとても可憐で、その可憐な容姿とは似つかわしくない程に冷たい微笑を浮かべた、1人の少女であった。

 

『彼方世界だああ!!』

 

 だが、場の空気は驚くほど冷たい。

 

『ああん? ……安心しろ観客リスナーたち。D組彼方が不正をしていないことの裏が取れたぜ?』

 

 その時、競技場のスクリーンで映像が再生される。

 そこには世界が、恐ろしい速度で走りながら、そして瞬間移動しながら先頭を目指す様子が映し出されていた。

 

「瞬間移動?」「短距離の瞬間移動ばっかりしてる。長距離はできないのかな」「瞬間移動抜きにしても足が速いぞ」「にしてもいい個性だ。なんで最初から先頭争いに参加してないんだ?」「手抜き?」「スロースターターなんじゃないのか?」

 

「好き勝手言うじゃないか。有象無象がァ……」

 

 愉快な気分を表情に滲ませながら周囲を見回す。

 

 懐疑三割、困惑三割、羨望四割、といったところで否定的な視線はDIOが思うよりも少ない。

 

 根本的な倫理観がDIOの知る世界とは違うのだろうか。

 

「謂れのない、怒気や憎悪を滲ませた視線を向けられた世界を見たい気分だったのだがなァ」

 

 DIOは先ほどの一幕にて気に入った世界に歪んだ感情を向ける。

 その愉悦に染まった表情は後方からかけられた声で中断された。

 

「てめえこら金髪ゥ!! どんな汚ねえ手ぇ使いやがった!!」

 

 DIOが表情を冷めさせ、声の方向を向く。

 

 そこには爆発したかのような髪型に激情に染まり悪鬼のように歪んだ表情の少年。

 

 だけではなく、冷たい闇を抱えたかのように鋭い目を持つ左右で違う髪色のこれまた少年。

 

「俺も、お聞かせ願いたいな」

 

「……自己紹介から始めさせてもらおうか。私の名は……彼方世界、という。普通科D組だ」

 

「そんなのどうでもッ「A組、轟焦凍。こいつは爆豪だ」

 

「覚えておこう。それで……? 見ての通り、私も少なくない怪我をしている。早めに済ませてほしいのだがね」

 

 拳の腫れに身体中の鈍痛。

 

 セカイの奮戦で最小限のダメージには抑えられている。

 人体で特に硬い部位である肘と膝で戦いはしていたが、拳も使っていたし、殴る蹴るの戦いを機械相手に行ったのだ。

 ダメージは確かに身体をつつみ、アドレナリンも既に切れている。

 

 それに先頭を目指す過程で足も相応に酷使した。

 ゴールした瞬間肉離れを起こし、もはや満身創痍と言って差し支えない状態になっている。

 

 痛みには慣れているためこの程度では表情にすら出ないが、これがセカイとなると事情が違ってくる。

 

 早く治療を済ませて世界に引き継ぎたいというのが本音だった。

 

 DIOも今世では彼方世界という物語の結末を見るまでは裏方だ。

 

(早く現状に困惑する世界が見たいのだが)

 

「あんた。最後どうやって俺たちを抜いた」

 

「俺たちの後ろからストーカーしてたのかよ?! ああッ?!!」

 

「……その癇癪を起こしたクソガキのような喚き声をなんとかしてくれないか?」

 

「アアンッ?!」

 

「それに、そっちの。轟クンだったか。妙にクールぶっているじゃないか。爆豪クンもそうだが、素直に『負けて悔しいのでどういうズルをしたのか教えてください』とでも言ったらどうだい?」

 

 冷めた表情を先ほどのように歪め、言い放つ。

 

 その場がしんと、一瞬で音が消え雰囲気が氷のように冷えていく。

 

 DIOの物言いに、呆けていた2人は理解すると同時に

 

 

 さらに表情を爆発させ

 

 

 目元を顰めさせた。

 

 

 見れば轟の方は激情に反応してか右半身から個性が漏れ出ている。

 

「おや、怒ってしまったかな。答えを言ってあげよう。私の個性は『時止……ん? もう行ってしまうのかい? 私の個性を聞かなくていいのかな」

 

「「いらねえ(いらねえよ!!)。その上からあんた(てめえ)圧倒する(ぶっ飛ばすッ!!)」」

 

「く、クハハ!!」

 

(これはこれは、世界よ。面倒なことになったようだぞ? 楽しみで仕方ないなぁ)

 

 ここからの展開を予想していくDIO。

 

 今生では勝手が違い予想が当たることも少ないがそれが何よりも楽しい。

 

 思考の海に沈もうとしているDIOを拳の痛みが引き戻した。

 

「婆さんのところに行くか。だがあの婆さんは勘が鋭い気がする。セカイの演技に本気で臨まなければ、バレてしまうかもしれんな」

 

 バレはしなかったが、疑われたことは書いておく。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 ◇

 

 

 ◇

 

「…………? こ……ここは」

 

 視界が焼ける感覚がした。

 

 これは深い眠りから覚めた際の日光に対する反応に似ていて、世界の予想は正しく自らの意識は本当に眠っていたようだ。

 

『水分は取ったかしら? 結果発表よ!!』

 

 ミッドナイトが振るったムチの先にある投影されたスクリーンを見る。

 

 寝ぼけながらそれを見れば、血の気が引いた。

 

 

 一位 D組 彼方世界

 

 二位 A組 轟焦凍

 

 三位 A組 爆豪勝己

 

 四位 A組 緑谷出久

 :

 :

 :

 

 

 

 一瞬で眠気が吹き飛んでいくのを知覚しながら思う。

 

 あ、これDIOがやったわ、と。

 

 

『世界よ。よく眠れたかな?』

 

「DIッ……(DIO、あんたは一体何を……)

 

 返答を待っている間、周りの反応を見るために視線を巡らせれば敵意の滲む視線が複数。

 特に二つの視線は強く、冷や汗を滲ませるには十分すぎるものだった。

 そのすぐ後、DIOからの返事が来た。

 

『やるからには、頂点をとる。それがこのDIOの存在する理由だ』

 

(…あのとき、あのまま気絶してたら貴方の勝ちだったでしょ…?)

 

『いや何、詰めの甘さが目立ったのは確かだがあのまま終わってしまえばつまらない。ソレに最早あれはスクラップと変わらなかった。なら私からの試練はクリアされたも同然…そうだろう?』

 

『予選通過は上位42名!! 残念ながら予選で落ちちゃった子も安心なさい! まだ見せ場はちゃんと残してあるわ! 次からが本選!!! ここからはマスコミも白熱してくるわよ! 気張りなさい!!!』

 

(なんの…つもりかは知らないけど。あたしは貴方の思い通りになったりなんかしない)

 

『それは重畳。君の可能性を私に見せてくれ。そんなことよりも、そら、爆豪クンがこちらを見ているぞ? あの調子じゃ、爆殺されてしまうかも知れんなぁ。世界よ』

 

「ばくさっ?! それはあんたがやりすぎたせいじゃっ!」

 

 こちらに向く視線を思い出し、無理やり口を塞ぐ。

 これもゲームの仕掛けとやらなのだろう。

 周りの生徒を扇動して四面楚歌を作り出す。

 実に悪どいやり方である……。

 

 ちなみにこれはセカイの勘違いである。

 

『さてさて! 第二種目よ!! 私はもう知ってるけど〜! なにかしら?! 言ってる側からー』

 

 

『コレよ!!!!』

 

【騎馬戦】

 

 

「騎馬戦か……」

 

 見てつぶやく。

 

『参加者は2〜4人のチームを自由に組んで騎馬を作ってもらうわ! 基本は普通の騎馬戦とルールは同じだけど、障害物競走の結果に従って各自ポイントが与えられるわ!』

 

「入試みてえなポイント稼ぎ方式か。わかりやすくて助かるぜ!」

「つまり組み合わせによってポイントが違ってくるのかな」

 

『あんたら私が言いたいことをとるんじゃないっ! 各自与えられるポイントは下から5ポイントずつ与えられるわ! そして』

 

『一位に与えられるポイントは1000万ポイント!』

 

『上位のやつほど狙われちゃう。下克上サバイバルよ!!!』

 

 その時、セカイは悟る。

 ああ、これは約束された四面楚歌だったのかと。

 

『上をいくものにはさらなる苦難を与えるのが雄英高。これぞPlus Ultra! 気張りなさい! 彼方世界さん!』

 

「ひっ、ひええええ……!!」

 

『クッ、フッ、フハハハハハハハハハッ!!』

 

 この時、ずっと封印されていた世界の情けない声が解禁された。

 

 

 ◇

 

 ◇

 

 ◇

 

 騎馬を組むために与えられた15分の猶予。

 世界はどうしたらいいかわからないが、わからないままなので解決策を探るために、無意味に視界を忙しなく移動させる。

 

「どっどどっ」

 

『落ち着け世界。少々予想外の展開だが……ククッ。相当に愉快なことになっているな。どうする?』

 

「だ、だって私ここにいる人の個性なにも知らないし!!」

 

『……世界よ。私たちの個性はここにいる人間からは瞬間移動だと記憶されている。そこは覚えておくといい』

 

「しゅ、瞬間移動?」

 

『そのうちわかるだろう。同じことをそう何度も言わせるんじゃあない』

 

「……ぐぅ」

 

 そんな会話を、している世界の後方から話しかけるものがいた。

 

「フフフフ。やっぱり避けられていますね。目立ちますもん!」

 

「え?」

 

「私と組みましょう! 彼方さん!!!」

 

「……だれ……?」

 

「私はサポート科の発目明! っていうか土日会ったじゃないですか。私は覚えていますよ! インパクト抜群でしたもん!!」

 

「わあ近い近い(なにしたのよ)」

 

『エンパイアのことを頼んだのが彼女だ。世界。お前とは別の意味で、かなり面白い人間だ。パイプを作っておいても損はしないだろう』

 

「そういえば私とあなたのベイビーのエンパイアちゃんはどうしたんですか? 壊される前提の子で悲しかったですが役には立ちましたか? というかなにに使うんですか? あ、もしかしてもう使いましたか? 壊すなら大企業たちの目に触れるところで壊してほしいのですが────────」

 

「な、なにこの子。勢いすごっ」

 

「と言うわけで! やりましょう! 一緒に!!!」

 

「あ、うん」

 

 世界はなし崩し的にDIOが誑かしたサポート科の発目明と組むことになった。

 

 ほとんど勢いで組むことにはなったが、メンバーが集まりつつある。

 この勢いを失うわけにはいかないと、世界は周りの生徒に目を向ける。

 

 するとこっちに向かってくる人物が2人。

 

 モサモサ頭に少し自信なさげな顔。

 

 でもどこか決意している顔。

 

 予選四位の緑谷出久だ。

 

 緑谷と一緒にいるのはほんわかしてそうな可愛い女子。

 

「あ、あの」

 

「えっ。あ、はい」

 

「あ、あれ? さっきと雰囲気が……」

 

「え、えっと?」

 

 陰の気流が発生し始めるが、世界よりも先に緑谷が切り出した。

 

 

 

「僕たちと組みませんか? 彼方世界さん」

 

 

 

 

 

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