目の前にいるちびっ子は、どうにも私の同級生に似ている。
いや、似すぎている。
匂いもさながら色彩の色や指紋まで、全てが私の知るところの工藤新一と同じであった。
「──なるほど。黒づくめの男達の取引を目撃ししまい薬を飲まされ目が覚めていたら体が縮んでいた、と」
「そう、だけども。……信じんのかよ?」
「マ、事実は小説より奇なりっていうしね。それに何よりもっと奇怪な存在もこの世にはあることだし」
例えば私の父だとか。母の腹の容量だとか。
体が縮むのかまだマシだと思えることは多々あるわけで。
「それで今は蘭ちゃんのところに身を寄せてるってことね、うん了解。なんか私がすることとかある?」
「別にすることはねぇけど、まぁ、可能であれば味方でいて欲しいっつぅか、協力者になってほしいっつぅか……」
「その体じゃできること限られるしね。いいよ、私にできることは協力する。工藤くん、あー、コナンくん?はまず元に戻ることだけを考えなよ」
「──ありがとよ」
工藤くんもといコナン君は安心した方に微笑み、そのまま毛利家へと帰っていく。いくらなんでもあの年からやり直しで、それと好きな女の子の家に住まなきゃならないなんてある意味地獄でもあろう。一応私と住むかと聞いてはみたが二人暮らしになるし、碌な生活はできそうにもないと断られた。もしかして私は碌でもない生き方をしているとでも思われているのか?
否定はしないが、少しだけ悲しくはなった。
ともかく、私は工藤くんの今後を考えてそこから自宅ではないある場所へと向かうことにした。
そこは米花町のはずれではあるが、私にとっては自宅よりも馴染みのある場所。
少し古ぼけたビルではあるがそこには"桂木探偵事務所"と大々的に看板が掲げられており、どこからどう見ても私の母の事務所。無論、高校生探偵とも呼ばれ始めた私のホームグラウンドでもある。
調べ物をするならばとりあえずここにくるのが一番だと意気込み、ビルの一階に住んでいるゼラさんに声をかけてから事務所へと向かう。
因みにゼラさんとはこのビルを母達から預かっている管理人なのだが、どうも私のに対して畏怖の視線を向けてくるのであまり得意ではない。が、父が対して低姿勢なので悪いヒトではないと思っている。
「さてと、"黒づくめの組織"ねぇ……? 検索して出るものか」
事務所に備え付けであるパソコンで調べても見てもヒットするものはそれほどない。あったとしてもそれは小説や漫画の中の一節であり、目的ものではない。
ならばとそちらに詳しそうな知人の一人に連絡を取ることにした。
「──もしもし吾代さん、今暇? え、忙しいの? ダメ、かな。…………あ、そう? んとね、"黒づくめ組織"的な感じの裏社会の住人知ってる? え、問題ことに首突っ込むんじゃないって? だって謎とかなきゃ私──。うん、うん。お願いね。じゃあまたねぇ」
電話の相手は母の同僚(と言っていいものかわからないが)の吾代おじさん。よく父に逆らって酷い目にあっている哀れな人間の一人でもある。
彼は彼でとある調査会社の福社長という忙しい立場ではあるが、何故だが父と私のお願いには弱いらしくあまり嫌と言われたことはない。まぁ、嫌味に違い『テメェはあのバケモンに似てんだよ、その目が』と言われたことは何度もあるのだが、化け物とはどちらのことを察しているのかよくわかっていない。
一般的に母の方がまともにみえるが、あの人はあの人で鋼の胃袋を持っているし交渉人という立場ではあるし。
子供の立場としては、どちらも化け物だと思うのだが?
まぁそんなことは置いといて。
一応そちら側の情報を吾代さんに集めてもらいつつ、私は私でやれるところまでやろう。
父とは違い数分しか持たないだろうし、あの筺口さんがいるところにハッキングをかますなんて非常識でしかないのだが、ほんの少しでも情報は欲しい。
てなわけで。
「魔界777ッ道具・【
右手をデータ化しパソコン内部に侵入させ、そのまま警察内部の情報をゴソゴソとあさる。一分もしないうちにお腹は減ってくるし、情報も見つからない。やはりこんな能力を教えてもらったとこで、狙い目が分からない私では見つけるべき情報にたどり着くことも不可能に近い。
「こんな事があるのならば土下座で生活しながらでも教えて貰えばよかった。……おっと」
ようやくソレに辿り着いたかなと思いきや、やはりというべきかハッキングされている事に気づいたであろう誰かにそれを阻害され始める。こんなヒト成らざるものの行為を邪魔できるのはきっと、それなりに頭の働きが良い人間。
「──ごめん、筺口さん。まじでゴメン」
なんでかって、こちらは友人の命と恋路がかかっているのだから。
シャットアウトギリギリのところで情報の一部を盗み取るに成功し、私はすぐさまそれを紙へと書き起こす。
データ保存すればそれこそ彼のハッキングの餌食になりかねないし、いくら母の娘だからといっても厳罰ものに決まってる。そうならないためにも紙に書き込み、読んだら燃やして処分するのが一番だ。
抜き取った情報を無心で書き出しその後読んでみれば、日本の警察も優秀な人間を既に何人か潜らせ済みだということがわかる。
しかしまぁ、死んでる人間もいるようだし、まともな仕事ではないのは確かなのだろう。
全くもって工藤くんは面倒な組織と関わりになったものだ。
「──もしもしクド、……コナンくん? ちょっと今から会えたりするー?」
一時間ほど前に別れたばかりの友人に連絡をして、私は途方もない謎の気配に珍しく心を躍らせた。
なにせ、初めて謎の気配だけで思わず涎が垂れていたのだから。
オマケ
「──オレも,協力してくれとは言った。言ったけどよぉ!?」
「いらん情報だった?」
「いるけど!? なんだこんな簡単に出てきたんだよオイ!」
「なんというか、教わったことを試したらでてきたてきな? あ、そのうちもうちょい裏情報に詳しいのも手に入るように手配してるけど、いらない?」
「いるけどぉぉおおお!? なんなのお前!?」
「──探偵?」
「なんか違ぇ! すげぇ腹立ってきた!」
「えー、なんかめんどくさ。あ、調べるのに体力使ったからなんか奢って?」
「──クソっ! てめぇの腹はみたせねぇかんなっ!」
「そんなのわかりきっている!」
たこ焼き10人前で手を打った。