ダンジョン飯、IF   作:ベントロー

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祝!アニメ化!


ファリン√

昔、とある村の墓場に大穴が空いた。

 

穴から出てきた男は古代に滅びた黄金の王国の王を名乗り、

 

「王国は今も狂乱の魔術師に囚われている。魔術師を倒した者には王国の全てが手に入るだろう」

 

と残し、塵となって消えた。

 

そして、大穴の奥にはダンジョンが広がっていた____

 

 

    ◇◇

 

ダンジョンの奥深く、私たちは巨大な竜と戦っていた。

私の防御魔法を受けた前衛の仲間達が、竜の攻撃を物ともせず竜に斬りかかる。

鋼鉄のような鱗と厚い脂肪を持つ竜にはそれも大きなダメージにはならないが、それでも確かな隙が出来る。

そこに後衛の魔術師――私の親友でもある――マルシルが、竜に爆発魔法を放つ。

竜は痛みに暴れて仲間達を襲うが大振りな爪や牙は躱されて、吐いた火炎も私の防御魔法に阻まれて、仲間達に届く事は無い。

 

いける。ここまでの大きさでは無いけれど、竜とは何回も戦っている。準備も万全。負ける要素なんて――

 

――いや。お腹が空いた。

 

地図の書き間違えで一日同じ場所を彷徨った。

 

罠にかかって3日分の食料を無くした。

 

よく見れば、皆の動きにも精彩が無い。 兄さんが決める事ではあるけれど、今回はこれで引き返す事になるだろう。

 

そんな、余計な事を考えていたからだろうか。仲間が私の所に吹き飛ばされてきた時、竜がこちらを狙っているのに気付くのが一瞬遅れた。

――防御魔法、いや、間に合わない‼︎

 

何とか直撃は避けられたものの、大きく吹き飛ばされる。

まずい。今の攻撃で、兄さん以外の前衛がいなくなってしまった。

どうにか態勢を立て直さないと――

 

 

 

 

あれ?竜が、いない?

 

 

 

 

「ファリン!危ない!」

 

後ろから兄さんに突き飛ばされる。

いったい何が?

 

振り向いた瞬間、竜に噛み付かれる兄さんが見えた。

兄さんの手から零れ落ちた剣が、カランと音を立てて落ちる。

竜の顎は、金属鎧を物ともせず、兄さんの体を砕こうとしていた。

ボキボキと、何かが折れる音が兄さんの体から響く。

気付けば、私たち以外の仲間は皆、地面に伏していた。

ゾクリ。と、私の背中に悪寒が走る。

 

全滅する……こんな最深部で……?

 

「兄さん‼︎」

 

「ぐ……ファリン……逃げろ……」

 

兄さんが食われる。早く助けないと‼︎

防御魔法で……いや、もう遅い。

何処かを攻撃して気を引く? でも、どうやって……

違う!脱出魔法!

 

私は慌てて呪文を唱える。呪文の光が瞬く瞬間。

 

 

 

竜に飲まれる兄さんの姿が見えた。

 

 

 

 

「……リン!ファリン! 起きて !」

 

マルシルの呼ぶ声が聞こえて、私は目を覚ました。

 

「ファリン! 目が覚めた?」

 

「マルシル……?そうか、私の魔法で……」

 

「やっぱりファリンの魔法で脱出したのね。 でも、ライオスの姿だけどこにもなくて……」

 

脱出の衝撃でおぼろげだった記憶が晴れてくる。

そうだ……兄さんは……。

 

「竜に……食べられた……」

 

「えっ?」

 

「私の魔法が遅れて……竜の体内で、魔法が効かなかったの。多分、まだ迷宮の中に……」

 

「そんな……!」

 

こうしてはいられない。早く行かなければ、兄さんが消化されてしまう!

 

「ファリン!待って!」

 

迷宮に向かって歩き出そうとする私を、マルシルが引き止める。

 

「私たち、荷物をほとんど迷宮に置いてきたみたいで……

つまり、ほぼ一文無し」

 

「そんな……」

 

「そしてもっと困った事がある」

 

私たちに話しかけてきたのは小人の鍵師、チルチャックだった。

 

「今しがた仲間を一人失った」

 

そう言うと、彼は紙を私に見せる。

それは私たちの仲間の一人、土人のナマリからの辞表だった。

 

「前々から別のギルドに勧誘を受けていたらしい」

 

確かにナマリは彼女の事情もあってか、目的や報酬の事で揉めていた。 仕方ない事ではあるけれど、ここで抜けられるとは困った事になった。

 

「今の装備を売って当面のお金を準備して……足りると思う?」

 

「全然」

 

「それに悠長に準備をしていると、その間にライオスが消化されてしまうぞ」

 

現状について話していると、また新たな声が話へと入った。

 

「シュロー! 何処へ行ってたの?」

 

「ライオスを探していたんだ。もしかしたら、見つけにくい場所に飛んで動けなくなっているんじゃないかと思ってな…」

 

しかし、ライオスは見つからなかった。と彼は申し訳なさそうに頭を下げた。

彼は東方の出身で、変わった風貌をしているが、とても腕の立つ剣士だ。(彼の故郷では「サムライ」と言う職業らしい。)

 

「気にすんな、お前の責任じゃない。それよりこれからどうするかを考えるべきだ」

 

チルチャックがフォローを入れる。少年のような見た目に反して、彼はいつも仲間内で一番大人な性格をしている。

 

「お金の問題はあるけどとりあえず何か食べない? ほら、私達って空腹が原因で失敗したようなものだし、食べ物はきちんと揃えなくちゃ」

 

そう言って、マルシルが店の名前をいくつか挙げる。

ダンジョン深部まで潜っていた私達は、何日もまともな料理を食べていない。店の名前を聞くだけで、空腹感が刺激される、けれど。

 

「いや、今すぐ迷宮に行かないと」

 

迷宮では余程の損傷が無い限りは蘇生が可能だ。完全に消化される前なら、まだ助けられるかもしれない。そのためには、悠長にご飯を食べている時間は無い。

 

「でも……」

 

「一つ考えがあるの」

 

おそらく受け入れられないだろうと考えながら、私は話す。

 

「まず三人には一度ギルドを抜けて装備を売ってもらう、そのお金で私が装備を整えて、ダンジョンに潜るの」

 

「そんな! 一人なんて危険よ!」

 

「でも、これが一番の方法だと思うの。 私一人なら戦いも最小限におさえられるし…… 兄さんを助けたらすぐに脱出出来る。それに、私がすぐに魔法を唱えていれば、兄さんは…………」

 

そこまで言った所で、シュローが決意した表情で口を開いた。

 

「いや、ファリンだけをそんな危険な目には会わせられない。俺も行こう」

 

続いて、マルシルやチルチャックも表情を変える。

 

「私だって! それに、ライオスも早く助けてあげたいし……」

 

「おいおい、鍵師の仕事も忘れるなよ。扉や罠の解除役が不要とは言わせないぜ?」

 

「三人とも……」

 

 

 

 

「――――本当に、覚悟はいいのね?」

 

 

 

 

落ちた荷物を拾い集め迷宮の入り口まで来た所で、私はもう一つの考えを話す。

 

「食糧は迷宮の中で自給自足しようと思うの」

 

「え?」

 

「迷宮内は魔物で溢れているけど、彼らだって無から発生してる訳じゃない。生き物である以上、生態系が存在するの。草食の魔物がいれば肉食の魔物がいる……植物の栄養を作る分解者も。そこは全て外と変わらない。つまり、理論上は人間も生活する事が出来る……って、兄さんが言ってたわ」

 

 

「いやいやいやいや」

「それって魔物を食べるって事!?」

「(ファリンに何を話しているんだ……ライオス……)」

 

 

「今まで倒してきた魔物にも、食べられそうな物はいたでしょ?そうやって生活してる人だっている」

 

「「まあ、いけなくはない……のか……?」」

 

今まで出会った魔物を思い出しながらシュローとチルチャックは考え込むが、納得いかないといった表情でマルシルが声をあげる。

 

「そういうのは地上に戻れない犯罪者の話でしょ!?食中毒で運ばれてたまに新聞に出てる!」

 

そこで、シュローが意を決した表情で口を開いた。

 

「いや、俺はファリンに賛成だ。そもそも俺達には食料を買う金も時間も無い。ついていくと決めたのならこうするしかない」

 

「マルシル。私たちには魔物への知識があるし、回復魔法だって"二人分"ある」

 

「う……でも変な食材はゼッタイダメだからね……」

 

2人分の説得に、マルシルは渋々といった表情で従う事に決めたようだった。

 

 

    ◇◇

 

 

私たちは初心者冒険者達を追いかけてきた歩きキノコと、その辺にいた大サソリを使って鍋を作ろうとしていた。

歩きキノコを食べる、と聞かされたマルシルは全身で嫌悪感を表していたが、やがて諦めがついたようだ。

 

「キノコとサソリって……最初の鍋として大丈夫なのか?」

 

「この兄さんの本によると、歩きキノコは初心者向けらしいよ」

 

書き込みや付箋が所狭しと貼られた、年季の入った本に目を向ける。

 

「どんだけ読んだんだあいつ……」

 

「この鍋も、兄さんが知ったら羨ましがりそうだね」

 

まったくだ。と呆れた表情を浮かべてチルチャックは首を振る。

 

「ファリン。取り敢えず、キノコは適当に切っておいたが……サソリはそのままなのか?」

 

「大丈夫?毒とか回るんじゃ……」

 

「大丈夫。このサソリの毒は食べても害は無いって本に書いてあったの」

 

……というか、味に興味がある。食べても大丈夫な毒とはどんな味なのだろうか?

そう思い、私は茹でられたサソリの尻尾を口に運んだ。すると、得も言われぬ味が口内へと広がった。

 

これは……

 

 

 

「おぇぇ……」

 

「言わんこっちゃ無い!大丈夫ファリン!?」

 

単純に不味かった。私はサソリを吐き出した。

慌てた仲間が私に駆け寄る、そんな中、太い声が響いた。

 

 

「ちょっと待った!」

 

 

出て来たのは、角の生えた兜を被り、豊かな黒髭を生やした、ドワーフの男だった。

 

「サソリ鍋か、しかしそのやり方には関心せんのう」

 

「何者?」

 

「大サソリを食べる時は、ハサミ、頭、足、尾は必ず落とす。尾は腹を下す」

 

そう言いながら、彼は手際よくサソリを調理していった。ちなみに、尾は単純に不味いらしい。

鍋が小さかったので彼の物に変えたり、これだけでは寂しいと自生していた根を持ってくる際にマルシルと一悶着を起こしたり、騒いだマルシルがスライムに襲われたりと様々なことがあったが、順調にサソリ鍋が完成した。

初めの適当に切ったキノコとそのままのサソリだけの鍋とは大違いな、地上の料亭にでも出てきそうな鍋がそこにあった。

完成した鍋を皆でつまむ。

 

「おいしい!……本で見るのと実際にやるのとでは大違いなんだね」

 

「そうだろうそうだろう」

 

食べながら、食材について様々な話をしていると、自己紹介がまだであった事に気付いた。

 

「そういえば、自己紹介がまだでした。私はファリン。彼らは魔法使いのマルシル、剣士のシュロー、鍵師のチルチャック」

 

「わしの名はセンシ、ドワーフ語で探究者という意味だ……君たちは、何かわけのある旅のようだが?」

 

「はい、実は、仲間の1人……私の兄のライオスが、魔物に食われてしまって……消化されてしまう前に、助けたいんです」

 

「なんと魔物に、一体どんな?」

 

「竜です。真っ赤な鱗の」

 

「真っ赤な鱗……下層……炎竜(レッドドラゴン)か!……竜はその巨体を維持するためにほとんど眠って過ごすという。消化も他の魔物よりずっと遅いはずだ」

 

「だといいのですけど……」

 

「……頼む、わしも同行させてはもらえんか」

 

「!」

 

「ぜひよろしくお願いします!」

 

センシは魔物食に対する知識が豊富なようだ。そしてドワーフのナマリがパーティを抜けてしまった今、同じドワーフに加入してもらえるのはとてもありがたい。

早く兄さんを救出する助けになるのは間違いない。私は一つ返事で同意した。

 

「本当か!いや、ありがたい」

 

 

 

炎竜(レッドドラゴン)を調理するのは長年の夢だったのだ!」

 

 

 

炎竜(レッドドラゴン)か……、やはり王道にステーキか、それともハンバーグか。しゃぶしゃぶも捨てがたいが、いや卵があれば親子丼という手も……」

 

……兄さんを食べた炎竜を私達が食べる

 

それは食っていいものなのだろうか?

 

同様の事を皆思ったようだが、誰も何も言葉に出す事はなく、私たちは迷宮の地下へと歩を進めていった。

 




ファリンの口調が難しかった
まあライオスを救う責任感で多少強めになってると考えて下さい
原作の台詞なぞり多すぎるのはごめんなさい……
次回からはあんまり変わらなそうな所は飛ばしめで行きます(次回が書けたらの話)


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