双竜裁き   作:亜楽


原作:仁王2
タグ:仁王2 仁王 一話完結
ゲーム「仁王2」の二次創作小説です。
短編1話完結。

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残照篇「瞳に映りしもの」に登場したマリアとウィリアムの顛末です。
前作「仁王」と話がつながっています。


双竜裁き

 潜入と一緒に脱出の技術も訓練されている。

 平等院鳳凰堂で捕えられたマリアは、付近の寺に身柄を預けられた。エスパーニャとの国交を配慮して、通常の罪人と同じ扱いはできない。近く江戸に護送される。

 運ばれながら位置感覚を記憶。頭の中にはほぼ正確な見取り図が完成していた。今なら警備も薄い。

 廊下から庭園に。木を登って塀を越える。いくつか想定した中でも簡単な手筋だった。徳川の追手が動き出す前に姿を消せる。

 塀から外に降り立つ。月のない夜。日が昇るにはまだ時間がかかる。

 唯一にして最大の妨害。予測できても避けられない。

「ここの仏像は有名らしいぜ。見ていかないのか?」

 ウィリアムがいた。

 

 思い出す、ロンドン塔。

「俺もそうやって日本まで来た」

 あの時のウィリアムと同じく、マリアは武器を没収され、霊石も持っていない。

 マリアを逮捕してすぐ、徳川に報告した。明日には警備が手配される。逃亡するなら今日のうちと踏んで、寺の外に張り込んでいた。

 同じ思考で再会する。

「逃げてどうする。お前に行く先なんてないだろ」

「あるわよ、いくらでも」

 死亡して、身体を失った生命、器をなくしたアムリタは、やがて結晶化して霊石になる。世界の覇権をも左右する錬金術の素材。イングランドとエスパーニャは海外に探し求めていた。

 戦争が続く日本は、無限にアムリタを生み出す、まさに黄金の国だった。

 エスパーニャは国交を名目にマリアを送り込む。終息に向かう戦国時代を乱世に戻すために。力を求める者にアムリタを教える。戦争になれば人が死ぬ。霊石が集まる。

 ウィリアム達により、マリアの計画は再三に渡り阻止される。歴史の表舞台では、織田信長と藤吉郎が台頭。ついには徳川家康が天下統一を実現させた。

「もう徳川に敵がいないとでも思ってるの?」

 全国の武将は江戸幕府に恭順の意を示した。ただ、徳川に反感を持つ者はまだ多く、暗躍する敵対勢力も確認されていた。

 日本でも陰陽術でアムリタを研究している。霊石が出回る限り幕府の安泰はない。公的には死亡と処理されたウィリアムは、霊石を追い、徳川を裏から支えていた。

「あなたの方こそ、なんのつもり。いまさら私を殺すの?」

「それでも、いいんだが」

 マリアの脱走に備えてウィリアムは武装している。互角の刃を交えた青葉城とは異なり、優位は明白だった。

 平等院鳳凰堂での三択。

 その場でマリアを斬る。逮捕して幕府に引き渡す。そして、認め合った戦友に言われた。

「伊達政宗をどう見ている?」

 大坂城では言葉を交わす暇もなかった。預かったままの伝言。

「政宗?」

 唐突な問いかけに困惑するも、ウィリアムの表情に感じる。真実を求める意思。

 長く短い沈黙。

「そうね」

 風が吹く。火花のような光が集まる。

「王にふさわしいのは、猿や狸より、龍だと思うわ」

「ブルードラゴン!」

 ウィリアムが思わず叫ぶ。風雷から現れた青龍。伊達政宗の守護霊。

 

 呪符を取り出す。寺の中で盗み出しておいた。陰陽術で青龍を呼び出せる。

「名前だけの女王に、国は治められない」

「おい。どこの国の話だ」

「あなたの質問に答えているだけよ」

 奥州を追われたマリアは大坂に流れる。淀君に接触した。霊石を得た豊臣は、天下に力を取り戻そうとしたが、徳川との戦いに敗れ去る。

「皇帝の方は見込み違いだったみたいね」

 錬金術で藤吉郎を蘇生させる計画も失敗に終わる。荒魂から解き放たれた藤吉郎は、もはやアムリタを求める暴君ではなかった。

「政宗は機に恵まれなかった。霊石があれば遅れを取り戻せた。徳川を討ち取れた」

「あいつはお前を駒だと思っていたかもしれないんだぜ」

「私達が一緒なら、龍は天に昇れる」

 青龍を背に、迷いなく言う。マリアにとって、政宗は淀君とは違う。守護霊と野心を分かち合う同志。

「会わせられんな」

 独眼竜は地に伏せた。マリアと再会すれば、伏龍は息を吹き返す。マリアと政宗は間違いなく同じ龍を宿している。

 槍を取り、垂直に持つ。

「狸と狐の化かし合い。もう終わった物語だ。龍は登場しない」

 右肩から成釜狸。左肩から飯綱。宙を舞い踊る。混ざり合い、槍は九十九武器になる。関ヶ原で島左近に渡された槍。歴史を創ろうとした者達の思いが重なる。

 マリアが呪符をかざす。青龍が放たれる。ウィリアムは守護霊を宿した槍を振るう。龍の頭を砕いた。

 槍を持ち直す。青龍の胴体を突く。狐が切り狸が叩く。龍は勢いを失い、もがき苦しむかのようにして消えた。

 闇夜が戻る。幕が引かれ直す。

 

 寺の入口に回る。マリアはウィリアムに押さえつけられながら、引き戻される。

 捕らわれ逃げ戦い、そして捕らわれた。何事もなかったかのように。再び正門を通る。

「ニンジャは、まだわかる」

 小さくつぶやく。

「サムライはなんなの。なんのために、なにがしたいの?」

「職業だと思っているうちは、わからないだろうな」

 正門の左右に仁王像が配置されていた。マリアは顔を伏せる。




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