レッツエンジョイピーマン!
細切りにしてニンニク入れて塩コショウ。
1分ぐらいざっと炒めて簡単ピーマンニンニク炒め!
「ほい、お待たせ!ヒシアマ姉さん特製、チンジャオロース。で、ちょっと格好がつかないけれど、こっちのみそ汁の椀はニンジンのポタージュだ。米は沢山あるから、お替りしてくれよ!」
「ありがとう」
寮に帰ってから、私とヒシアマゾンは私服に着替えてから、キッチンへと集合していた。そしてあれよあれよという間に、ヒシアマゾンはピーマンの料理と付け合わせまで作ってくれていた。
途中で一度手伝おうか?と声を掛けたものの、怪我人は大人しく座ってなよ、と笑われてしまった。まったく、面目が立たない。
「それじゃあ、頂きます」
「召し上がれ」
そう言いながら、ヒシアマゾンもテーブルに着いた。そして軽く彼女も頂きます、と手を合わせてから箸に手を伸ばす。そんな彼女を尻目に、私は早速、汁物からということでニンジンのポタージュに口を付ける。ま、本来ならお皿に盛りつけられるものなのだけど、みそ汁の椀に入っているわけなので、器からそのまま飲めるのは有難い。
トロリとしたポタージュの舌触りがまず心地よい。そしてほんのりと人肌に温められたポタージュは、ニンジンの甘さが際立っていて、非常に美味しい。
「美味しいよ、ヒシアマゾン」
「そうだろうそうだろう?今朝仕込んだ奴だからね。自慢の一品さ」
朝仕込み。なるほどねぇ。ポタージュの割にすぐ準備出来ていたから、何かしていたのだろうとは思っていたけれど、流石マメな彼女だ。
「っていうかさ、ファレ。わざわざ敬語を使おうとしてくれなくていいんだぞ?馴染みの仲だ」
「うーん…そう言われても、やっぱりヒシアマゾンは私達の寮長だし、期待されているウマ娘の一人じゃない?やっぱり公衆の面前なら敬語がいいかなって」
「そんなもの気にする奴は居ないさ」
そうは言われても、という奴である。ちなみに彼女とはトレセン前からの知り合いであり、草レースで競い合っていた仲である。一応、そう言う意味だと、彼女の草レースのデビューレースが私の草レースのデビューレースでもある。ある意味、この世界に入った時期で言えば、同期という奴になるであろう。
「もう一度言うけれど、そうは言われても、だよ」
まぁ、トレセンに入ったのはヒシアマゾンが先だから、先輩で、その上に寮長。これは敬語を使わざるを得まいと思うのだけどね。という態度を感じ取ったのか、ヒシアマゾンは肩を竦めてやれやれと言った具合でピーマンを箸でつまんでいた。
「本当に気にする奴は居ないのにねぇ。っていうかあんた私の事を期待されいてるウマ娘の一人、なんて他人事みたいに言っているけどさ。むしろファレ、アンタが結構注目の的になってるんだ」
「え?そうなの?」
「ああそうさ。ウチのチームでもお前の話題が挙がらない日は無いよ。練習にひたむきに打ち込む姿が素晴らしいってね」
「まぁ、その結果がこの怪我なんだけど」
「茶化すんじゃないよ、全く」
ははは、と笑って彼女と私はピーマンがたっぷり入ったチンジャオロースを口に運んでいた。シャキシャキに炒められたピーマン、細切りのシャキシャキのタケノコ、そこに旨味溢れる豚肉。味付けは少し塩っ辛いのだが、この塩辛さが白米とよく合うのだ。
「うん。やっぱりヒシアマゾンの料理はおいしいね」
「そうかいそうかい。ほら、まだお替りあるよ!」
「じゃ、お願い」
空になったご飯茶碗を差し出せば、彼女が笑顔で米を山盛りにしてくれていた。うん、大サービスという感じだね。彼女は彼女で、これまた空になった茶碗を白米で山に盛っていた。やはりウマ娘の食欲は無尽蔵と言えよう。腹いっぱい食えるトレセンの学食に乾杯。
「に、してもヒシアマゾン。こんなに大量のピーマン、どうしたの?」
気になったので彼女に問いかけてみた。何せピーマンは場内では育てていない。学園長がニンジンを育てているのは全員が知っている事実なのではあるが、ピーマンは、本当に話に聞くことがないのだ。それに、ピーマンを好きなウマ娘が少ないのもまた事実。私も午前中にトウカイテイオーからやたらと美味しかったピーマンを貰っていなければ今、こうやってチンジャオロースのピーマンを喰ってはいなかっただろう。
「ああ、それはな。朝にトウカイテイオーから貰ったんだよ。なんでもトレーニング中に直売場で買ったとかで、いい料理法ないですかーって聞いて来てなー。料理をしてやったら、お裾分け、って奴さ」
「へぇー、お裾分けかぁ」
ということは…ああ、なるほどと合点がいった。朝、トウカイテイオーからピーマンを貰った時、私は食堂に向かうために道を歩いていたのだけれど、トウカイテイオーは、逆に寮に向かって歩いていたのだ。なんでだろう?とは思ったのだけれど、気にしてはいなかった。まさか、こんな繋がりがあるとはね。
「でも、直売場の割にっていっちゃあれだけど、旨いだろう?」
「うん。すごく美味しい。苦味が少ないっていうか、旨味なのかなこれ」
「多分そうじゃないか?甘味…というにもちょっと違うしな」
そう、確かにこのピーマンは不思議な美味しさだ。なんだろう、特殊な育て方でもしているんだろうか。あれ、というか、ヒシアマゾンが気になる事を言っていた。料理をしてやった…?
「ちなみに聞くけどさ。朝、トウカイテイオーには何を作ったの?」
料理をしてやった、ということは、何かを作ったという事だろう。非常に気になる。
「ん、ああ。えーと、甘辛味噌で味付けたひき肉を準備して、ピーマンを半分に切っただけの簡単な料理さ。時間も無かったしね。半割のピーマンにひき肉を詰めて、シャキシャキ新鮮ピーマンのセルフ肉詰め。美味しいと言ってくれたよ」
「へー。それもいいねー。甘辛味噌かぁ」
甘辛味噌のひき肉を、新鮮なピーマンの中に入れて喰らう。うん、チンジャオロースでもこれだけシャキシャキで旨いんだったら、間違いないよね。あー、なんだろう。晩御飯食べているのにお腹が減ってきた感じがしてしまう。
「なんだい、ファレも食べたいのかい?」
「うん」
「はは、素直だな!じゃあ、またピーマンを手に入れたら作ってやるよ」
「本当?」
「もちろんだ。私を誰だと思っているんだい?ヒシアマ姐さんだぞ?そんときゃ声を掛けるさ」
どやっと胸を張るヒシアマゾン。うん、じゃあ、楽しみにその日を待とうか。そう思いながら、改めてチンジャオロースを2人で味わい、そして談笑を続ける。気づけば宵の口を過ぎ、長い夜の帳が降りていた。