ウマ娘達の優雅な日々   作:灯火011

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パプリカ イスト ウンダバー


鍛錬の日々ーつながる人々

「カイチョー、お醤油とってー」

「ん、これか」

「ブライアンも良い食いっぷりじゃないか」

「アマさんの料理だから間違いはない」

 

 トレーニングの後は決まってヒシアマゾンの手料理を食うのが、今年に入ってからの私の日課となっている。キッカケは、トウカイテイオーが持ってきたピーマンだ。私とヒシアマゾンが食べたあのピーマン、どうやらトウカイテイオーとナリタブライアンも気に入ったらしく、生産者を見つけてトレセン学園と独占契約をしたのが去年の冬の事。どこか勢いのあるお爺さんだったなぁと記憶をしている。

 

「はは、俺のピーマンを気に入ってくれたらしいな。いいぞいいぞ。好きなだけ届けてやるさ。うちのは旨いからな!なんてったって、肥料が違うからな!肥料が!」

 

 こちらに挨拶に来たおじいさんの元気な姿が思い出される。ま、とはいえ、トレセン広しといっても、今ピーマンを喰らうのはトウカイテイオー、シンボリルドルフ、ナリタブライアンにヒシアマゾン、そしてこの私アップザイツファレぐらいなものだ。とはいっても、シンボリルドルフはあんまり得意じゃないのか、数口食べて箸を止めることが多い。シンボリルドルフ曰く。

 

「努力はしているのだがね、どうも苦いんだ」

 

 だそうだ。そのせいで、この通りヒシアマゾンが毎回頭を悩ませている。

 

「うーん…会長の舌はわがままだねぇ…」

「でも、少しづつ食べてくれるからいいんじゃないですか?」

「そうは言っても、あんたやブライアン、トウカイテイオーみたく良い食いっぷりじゃないからね。どうにか、美味しく食わせたいじゃないか」

 

 うん。確かにそう言われればそうだな。私を含めたこの4人が、一日に数十キロのピーマンを喰らうという事実だけでも、その健啖家っぷりは推して知るべしであろう。シンボリルドルフはまぁ、食べても一個か二個か、という具合だ。

 

「とはいっても、十分に美味しいですし、量もすごいですからね」

 

 ちなみに今日のピーマン料理は味噌汁に始まり、炊き込みごはん、直火焼きに煮びたし、チンジャオロースにハンバーグと多岐にわたる。というか、この学食レベルの夕食を用意してくれるヒシアマゾンの姐さんっぷりには本当に頭が下がる思いだ。

 

「はは、ありがとうよ、ファレ!」

 

 そう言うヒシアマゾンの笑顔は非常に眩しいものであった。いやはや、しかし、冷静になってみれば、すごい面子と飯を喰らっているものだなぁと思う。次期三冠ウマ娘候補のトウカイテイオー。皇帝のシンボリルドルフ、話題沸騰ナリタブライアン、そのライバルとして目されるヒシアマゾン。私は?と言えば、まぁ、練習についていっている根性のあるウマ娘の一人、アップザイツファレ。といったところだろうね。

 と、そんなことを考えていたら、なぜかシンボリルドルフと目が合った。そして、ふっと、あちらが表情を崩していた。

 

「ああそうだ、アップザイツファレ。今日の追い込み、見事だった。日々の練習を見ているが、君は、精神一到を貫いていると感じているよ」

「ありがとうございます。そりゃあ、貴女に対してあれだけの宣言をしましたからね。勇往邁進で行かせて頂いております」

 

 おお、まさかシンボリルドルフからお褒めの言葉を頂けるとは。いやはや、練習している甲斐があったというものだろう。ま、息も絶え絶えだったけれどね。

 

「ファレってすごいよねー。カイチョーにあんな宣言するんだもんなー」

「はははは!本当にそうだな!三冠宣言に追い越す宣言。しかも公衆の面前で!あんたって奴は、すごい器だよ!」

 

 トウカイテイオーとヒシアマゾンにまでそう言われてしまっては、少し小さくなるしかあるまい。いや、すごい器って、そんな器でもないんだけどなぁと卑下したい気持ちは抑え込んで、彼女らに対してはこう、言葉を投げておこう。

 

「あはは。もちろん、テイオーにもヒシアマゾンにもレースで負ける気はないのでよろしく」

 

 そう言ってピーマンの直火焼きを頬張る。うん、甘くて、香ばしくて、良い味だ。ちらっとテイオーとヒシアマゾンの顔を見てみれば、にやりと笑みを浮かべていた。それは、「挑戦状、受け取ったからね」という言葉がありありと伝わって来る表情であった。

 

 

『さあ始まるぜSaturdayNight 調子はどうだい?』

 

 そして夕食後になれば、週に一度行っている、とあるCDの鑑賞会である。CDの出所は、トウカイテイオーがあのピーマンのおじいさんから頂いたものらしい。なんでも、最初にピーマンを頂いたときに、紙袋に入っていたのだとか。返そうと思ったら、突き返されたとかで。

 

『ここは空飛ぶパラダイス 忘れかけてるエナジー NowHurryUp 取り戻そうぜ』

 

 今日の曲はPlanetDanceという曲らしい。マルゼンスキーさんから借りたラジカセ、その液晶モニターにタイトルが表示されていた。

 

「アップテンポで良い曲だねー」

「ああ」

 

 テイオーとブライアンがそう言いながら曲に耳を傾けている。シンボリルドルフはといえば、静かに椅子に腰かけて、ヒシアマゾンは洗い物をしながらリズムを取っている。

 

「そういえばテイオー。このCDの詳細って判ったの?」

「ンー・・・いまのところは何もー。フジキセキさんとかマルゼンスキーさん、あとゴルシとかも調べているみたいだけど、良く判んないって」

「そうなんだ。あのお爺さんには聞いてみたの?」

「んー…夢で出て来た音楽をCDにしただけだ。って言われた」

「え?ってことはこれ、お爺さんの自主製作CD?」

「おじいさんの言葉を信じるならねー。でも、音源とかを考えると、プロオケでしょ?素人の自主製作じゃないよ、このCD」

 

 そうだったのか、と驚くと同時に、確かに自主製作はあり得ないなぁと思う。ミキサーも明らかに素人じゃないし、音源も生のプロオケっぽい音だし、なによりパッケージが凝りすぎているしねぇ。

 

『まるで夢のように 何もかも流されてしまう前に』

 

 そう言っている間にも、曲は進む。そして、このCDの特異な所がここから先にあるのだ。シンボリルドルフが聞き耳を立てて、ヒシアマゾンが洗い物をやめる。

 

『Hey!Everybody 光を目指せ!踊ろうぜ!Dancein'On The Planet Dance!』

 

 サビが終わる。と、同時に、CDの再生が止まった。ラジカセの故障ではない。トウカイテイオーと、ナリタブライアンの視線がラジカセに固定された。そして、シンボリルドルフが、改めてCDの再生ボタンを押す。すると。

 

『紫のパノラマ 銀河のハイウェイ見上げれば』

 

 また別の曲が流れ始める。タイトルを見てみればそれはseventh moonと言うものらしい。また違うテイストの曲である。

 

 ―――さて、ここで一つラジカセの機能を紹介しようと思う。

 

 昨今では、ほとんど見ることが無いラジカセ。ラジオ、CD、カセットテープが備え付けのスピーカーで再生できる音楽機器だ。

 

 そして、今ここにあるこのラジカセには、中央に液晶のモニターが入っている。そこには曲名やアーティスト、そして、()()C()D()()()()()()()()()()()()。という表示がされるようになっているのだ。

 

 例えば、私達のウマ娘の発売されているCDを例にとると、ウイニングライブ集G1特集、全12曲というものがあったとすれば、例えば『ENDLESS DREAM!! マルゼンスキー 1/12』という感じで表示されるものだ。

 

 だが、ここにあるラジカセ。そこに表示されているものは、非常に、興味深いものだった。

 

『seventh moon  none  1/--』

 

 全曲数が表示されていないのだ。 そして、曲によっては1番で終わったり、かと思えばフルだったりと何かが可笑しいCDなのだ。

 

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