こういう、不思議なCDというものもあるんだなぁ…と思う。実の所、ピーマンがさほど好きではないシンボリルドルフがここに居る理由も、これが原因だ。謎のCD。トウカイテイオーが発見したそれは、まさに不思議なオーパーツ。ただ、曲自体はものすごく良いモノなので私個人としては嫌いじゃあない。
「何度聞いても、不思議なCDだ」
シンボリルドルフが一人、ぼそりと呟いた。うん、激しく同意する。ここ居る面子も同じようで、静かに頷いていた。今の所、このCDに入っている曲は、どこにも存在しないことは判っている。今日、聞こえた歌は初出だが、まぁ、おそらく例にもれず、存在しない曲なのだろう。
「でも、ボク、曲は好きだなー。なんか、前を向けるって言うか!」
トウカイテイオーの言葉にも、皆が頷く。実際、私なんかもこのCDの曲を聴くと、辛い練習を乗り越えられるような気がするのである。実際、私もそうだけど、エアダブリンもお気に入りの曲があり、それを聞いているからかはさておき、日々の練習を超えられているしね。
「本当だねぇ。ブライアンはどうなんだい?」
「私?…そうだな、せっかくなら、歌ってみたいと思う曲が数曲ある」
「へー!?そうなのブライアン!何何!?」
「落ち着けテイオー。…ま、そうだな、夢の道、は姉貴と謳ってみたいと思ったな」
「結構渋いね!?ボクはDYNAMITE EXPLOSION!カイチョーは?」
「ん…そうだな…。Heart&Soulあたりが少し気になっている」
ちなみに、私としては今の所聞いた中では、NEWFRONTIERという曲がお気に入りである。前しか見ていないと言うか、希望にあふれる歌。しかも、仲間たちと先に進む、そして、夢を後押ししてくれるような歌詞にすごく惹かれていた。
『響いてくるリズムに イカれたダンスで答えを探すだけさ』
ふと、そのタイミングで、サビが終わり、またCDの再生が止まる。全員で、お互いの顔をみやる。さあ、どうする?もう一度再生する?それとも、今日はここでお開き?
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「また楽しみは来週に取っておこう。今度はマルゼンスキーもフジキセキも来れるはずだ」
シンボリルドルフの鶴の一声で、食事会というか、鑑賞会はお開きと相成った。トウカイテイオーは自らの寮へ、シンボリルドルフは一度生徒会長室に用があるらしく、足早にキッチンを後にしていた。私とヒシアマゾンは、皆の食事の後片付け、という奴だ。ナリタブライアンは既にお風呂へと向かっている。ま、こういう片付け事は彼女に期待しない方が良いだろう。
「今日も美味しかったです。ヒシアマゾンさん。毎回、本当に助かります」
「いいっていいって。私も好きでやってるからねー」
気にすんなーと軽い笑顔でそう答えてくれるヒシアマゾン。なんだろう、ここまでくると、お母さんとでも呼びたくなるぐらい面倒見が良い。ヒシアマお母さん。…呼んだら叩かれそうなので自重しておこう。そう思いながら食器を片付けて、机を拭いていると、不意にヒシアマゾンから声を掛けられた。
「そういえばファレ。あんた、トレーナーは決まったのかい?」
「ん?なんですか?」
「トレーナーだよトレーナー。あんた、まだ決めかねてるじゃないか」
ああ、トレーナーか。確かに、決めかねている節はある。私の練習風景を見てくれているトレーナー数名から、スカウトを受けているのは確かだ。ただ、なんというかピンとこないというのが正式な所である。この人ならば、というトレーナーが居ないのだ。それに面と向かって『まだ体が出来ていないが、これから期待が出来るからな!』だとか言われると、いや今でも結構頑張っているんだけれど伝わっていないのかなー?という、ちょっと天邪鬼な気持ちにもなってしまうというものなのだ。
「ピン、と来なくて」
なので、正直に決めていない理由を彼女に話す。実際、彼女はトレーナーというか、チームが既に決まっていて、いずれは私達の練習よりもそちらの練習が多く、つまりは強くなることが約束されているウマ娘だ。なので、彼女には正直に理由を話して、すこしぐらいはアドバイスを頂けないかなぁという算段も含まれている。
「ピンと、ねぇ。ま、こういうのは直感が大切だとは言うけれどね。ただな?近くでファレ、アンタを見てるとおもっちまうのさ。こんなに努力しているのに、トレーナーを決めていないのは勿体ない!ってね」
「勿体ない、ですか」
「ああ!トレーナーがいれば、食事、練習、体調をすべて見てくれるからね。今のアタシだってそうさ。自分だけじゃあ出来ない事を二人三脚で目指してくれる。それがトレーナーさね」
「二人三脚…」
それは確かに必要な存在だと思う。やっぱり、一人じゃ限界もあるし、ウマ娘どうしでも限界があるのも確かだ。シンボリルドルフはアドバイスはしてくれるけれど、でも、様々な管理をしてくれているわけでは無い。テイオーやブライアン、ヒシアマゾンやエアグルーヴは練習を行ってくれるけれど、それ以上の存在ではない。
「ただ、言っているようにピンとこない気持ち。それも判るから、ま、焦らずに、納得する形でアンタがアンタのトレーナーを決めればいいとアタシは思うよ」
「ありがとうございます。あ、ちなみに…ヒシアマゾンさんのトレーナーは、どう選んだんですか?」
私の問いに、うーん、と判りやすく悩むヒシアマゾン。だが、次の瞬間、ああ、と納得したように笑顔を浮かべていた。
「アタシがトレ公を選んだ理由は…ピン、と来たからだ!」
あははは!と豪快に笑うヒシアマゾン。なるほど、直感というものはどうやら、非常に大切なモノらしい。