という事で。
①ピーマンをまずは真っ二つにぶった切ります。
②それを、氷水にぶち込んで冷蔵庫で1日冷やします。
③食います。
シンプルながら、ぱりっぱりのクッソ旨いピーマンが出来上がるやでぇ。
「君はニンジンハンバーグか。やはり、人気のメニューだな」
シンボリルドルフは相変わらずピーマンを寄せながら、食事を進めている。よくよく彼女の食べているメニューを見てみれば、ご飯、スープ、そしてメインは豚肉の中華風炒め、といったところだ。そこに少しだけ入っているピーマンを器用に寄せている。
「ええ。量も多いですし、美味しいですから。会長は…中華炒め、ですか?」
「ん?ああ。豚バラともやしのXO醤炒めだ。頼むウマ娘は少ないけれど、個人的な意見にはなってしまうが、ぜひ一度食べてみることをお勧めしたいな」
「判りました。今日のお昼にでも食べてみます」
「そうかそうか」
そうか、と言った会長の顔には笑顔が浮かんでいた。というか、普段、学園ですれ違ったとしてもなかなかに話しかけずらい雰囲気を漂わせている人だなぁと思っていたのだが、それは私の思い込みだったらしい。
このように相対して話してみれば、非常にとっつきやすい雰囲気漂う一人のウマ娘であるなと感じていた。しみじみとそんなことを感じながらハンバーグを頬張る。肉汁がじわりと口内に広がった。うん、やはり、特製ニンジンハンバーグは旨なぁと思いながら味噌汁に口を付ける。ふと、そんな私を、会長の両の瞳が捉えていた。なんだろうか?
「そういえば、アップザイツファレ。君の足は大丈夫かな?先週の自主練で痛めたと記憶しているが」
おや、まさか私の怪我の事を会長が知っているとは思わなかった。確かに、先週の自主練で痛めたのは事実なのだが、それを知っているのは私の治療をしてくれたエアグルーヴとウイニングチケット、あとは教員の数名程度なものだろう。
「よく私の怪我をご存じですね」
「ふふ。私が君の怪我を知っていることが、不思議かな?」
「ええ。とても不思議です。もしかして、どこかで見てらっしゃいました?」
会長は軽く頷いていた。なるほど、見られていたか。ならば仕方あるまいよ。ただ、会長に見られていたとなれば、少しねぇ。
「これは恥ずかしい所を見られてしまったようですね」
「恥ずかしがることはないさ」
「あはは。ありがとうございます。ああ、じゃあ何かの縁ですし、怪我をしない方法なんて伺っても?」
私がそう言うと、会長は箸を置いて右手の人差し指を額に軽く当てていた。数秒後、会長はその姿勢のまま視線だけを此方に向けた。
「君の練習量たるや並ではないし、その強度も十二分と言って良いだろう。ただ個人的にはもう少し、体のケアを覚えることをお勧めするかな」
「体のケア、ですか。事前の動的ストレッチ、事後の静的ストレッチやアイシングはしているつもりですが…」
前後に30分のストレッチ、あとはアイシングも20分は行っている。十二分だとは思うのだけれどね?
「うん。確かに君はしっかりと、一般的な時間はケアを行っているようだ。ただ、はっきりと言わせてもらえば、君の練習量と強度にケアの強度が見合っていないんだ。せめて…そうだな、ストレッチは今の2倍の時間…1時間程度を、アイシングはあと5分は追加でケアに充てることをお勧めするよ」
随分具体的な時間が出て来たなぁと思う。もしや、この会長、私のスケジュールをどこかで聞いたのだろうか?しかもそれを、覚えているのだろうか?
「…私のケアの時間まで把握していらっしゃるんですか?」
「当然だとも。君は私の知るウマ娘の中でも上位に入る実力者だからね。きっと、クラシックレースに出場する権利を勝ち取ると信じている。勝利できる…かは時の運かな」
額から指を離した会長の顔には少しだけ苦笑いが浮かんでいた。うん、確かに勝敗までは判らないであろう。それに、上位に、ということは私は最強クラスではない、ということでもあろう。ただ、それはそうとしても、こんな風に期待されているとは知らなかった。
「まさか会長にそんなに期待して頂いているとは思いませんでした。照れますね」
「そうかい?」
「ええ、何せ私は同期のナリタブライアンやトウカイテイオーのように、何かこう光るものを持っているわけではありませんからね」
「光るもの、か」
「はい。それは貴女も持っているものです」
私がそう言うと、判りやすく会長は悩んでしまっていた。おそらくは自覚があるのだろう。やはり、己が抜きんでていて、抜きんでていないウマ娘も多数いるという事に。でなければ、皇帝なんて名乗っていないはずだ。
ただ、それと同時に私はこうも思うのだ。
「まぁ、ただ、私は持たざるものの一人ではあるのですけれど、それでも、レースの一番を譲る気は一切ありませんからね。それが例え、貴女相手でも」
「…ほう、言うじゃないか」
楽しそうにシンボリルドルフが笑った。そう、どのウマ娘だって、自分に才能がないと自覚していようとも、他人如きにレースで一番を譲る気などさらさら無い。特に中央でレースに出よう、なんていう連中は、特にそうだと思っている。
「それならばいずれ、私とドリームトロフィーで走れるように、まずはその脚を治さなければな」
どこか満足げな笑みを浮かべて、彼女は私の顔を真っすぐに見てくれた。ならば、私が返す言葉はこれしかないであろう。
「そうですね。しっかりと治して実力を付けていきますよ。ああ、どうせなら、なにがしかの三冠ぐらい引っ提げてそちらに行きましょうか?とはいえ、まだトレーナーも居ない、浅学非才の身ですけれどね」
「…はははは!面白い事を言うなぁ君は。アップザイツファレ、刮目相待、期待しているよ」