ToLOVEる VII   作:フェンネル

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ソルゲム

今日も彩南高校は、いつも通りに時間が過ぎていく。

 

「なぁリト、最近美柑ちゃん元気か?」

 

「お陰様で楽しくやってるよ」

 

「そら良かった」

 

「この前のすき焼きの時なんて、ヤミと仲良くなろうとしててさ。あいつも満更じゃなさそうな顔してたよ」

 

「あっマジ?そりゃ良かった......そういやその日春菜ちゃんも来たんだっけ?」

 

「おう。結局うちに泊まることになってさ......」

 

リトは話し始めたと思いきや、急に赤面した。

 

「まーたお得意のラッキースケベでやんすか」

 

「ラ、ラッキーとか言うなよ!」

 

「はいはい、程々にしろよ......あ、御門先生ー♡」

 

心外そうなリトを尻目に、御門の方へ突撃していった。

 

「くそ〜、猿山のやつ他人事だと思って......」

 

一方その頃。

ケイズ達宇宙の悪党は地球に上陸した。

まだ地球の誰も、そのことに気づいていない。

 

「御門先生、前くれたチョコもうないんすか?」

 

「ないわよ。ついでに作っただけって言ったでしょ?」

 

「えぇ〜!あれめっちゃ美味いのに......」

 

「そんなに気に入ったんなら、レシピ教えてあげようか?」

 

「や、御門先生から貰わねーと」

 

「結局そっちが本命なんじゃない」

 

御門は嬉しいやら悲しいやら、よく分からない気持ちになった。

 

「そういえばあなた、ララさんと私以外からチョコ貰ってないの?」

 

びくり、と猿山の体が跳ねる。

 

「な、何ヶ月前の話してんすか〜!そんなの忘れちゃいましたよ〜!」

 

「貰ってないのね」

 

その数秒後、泣き崩れた。

その様子がおかしくて、御門は笑ってしまう。

 

「......そんなに欲しいんならまた作ってあげるわ。ただし、手間もあるから何かしらのご褒美としてね」

 

そう言うと猿山は膝立ちになって祈り始めた。

 

「女神......!」

 

「こら、変なノリやめなさい」

 

「いやぁ、あんまり嬉しかったもんで。ところでご褒美って俺は何すりゃいいんすかね?」

 

御門は考える。

どちらかと言うと(主に治療費方面で)自分が助けてる立場では?

褒美を貰うべきは自分では?と。

 

「そうねぇ。私のピンチに駆けつけて、カッコよく助けてくれたらとか?」

 

だから少し夢見がちな発言をしてみる。

 

「助けるってのはどのように......?」

 

「王子様みたいに?」

 

「御門先生の王子様になれるんなら光栄でやんすよ!」

 

目の前の男は張り切っているが、日頃の行いを鑑みると明らかにそういう柄ではない。

 

「ま......そこまではいかなくても、何かの力になってくれたらね」

 

なので妥協した。

 

「よーし!この猿山ケンイチ、今日から王子を目指しま......あれ?」

 

「どうしたの?」

 

「思ったんですけど、御門先生銃持ってるしピンチになることないんじゃないすか?」

 

「......ハイ、減点」

 

「嘘嘘嘘嘘!!」

 

すぐに土下座の構えに入る猿山。

これから王子になろうとしている様にはとても見えない慌てっぷりがおかしくて、つい笑ってしまった。

 

「やっぱ普段の大人な雰囲気も最高ですけど、笑顔が1番素敵ですよ」

 

「......こんなに笑うのも、地球に来てからかしらねぇ」

 

「俺に会えたからでやんすかねぇ?」

 

「......0.1%くらい?」

 

猿山は寝込んだ。

御門はまた笑った。

 

「ほら、早く戻りなさい。授業始まるわよ」

 

「はーい」

 

その言葉を皮切りに、猿山は保健室から出ていく。

これが御門の日常だった。

 

「(ピンチにならない、ね......)」

 

先程言われた言葉を思い出す。

 

「(もしほんとに、王子様みたいに助けてくれることがあるなら......あげてもいいかもね)」

 

冗談半分で、そんなことを考えてみた。

 

時は進み昼頃。

彩南高校にケイズの部下の宇宙人が侵入した。

御門を自分たちの組織に引き入れるためである。

 

「(できればドクター・ミカドと関わりの強い者が望ましいが......)」

 

しかしただで承諾するはずがないというとは分かりきっていた。

そこで御門の地球での生活を調査する中で得た、彼女が生徒を大事に思っているということを利用することにしたのだ。

 

「(あの娘達が手頃だな)」

 

「(よし、行くぞ)」

 

彼らは唯と春菜を標的にした。

交渉材料として拉致するために。

人質として利用した後の商品価値を考えて。

気配を殺し、彼女らに近づく。

 

「古手川さん、手伝いましょうか?」

 

大量の資料を1人で抱える唯に、春菜が声をかけた。

 

「西連寺さん......いいえ、1人で十分───」

 

唯が言い切る前に、春菜は大量の資料を自分の方が多くなるように持った。

 

「遠慮しないの」

 

「......ありがとう」

 

そんな2人のやり取りの外で、ケイズの部下達は物陰に潜んで機を伺っている。

そんなことは露知らず、唯と春菜は日常会話をしていた。

 

「これ何の資料?」

 

次第に、唯と春菜以外の生徒の数が減っていく。

 

「今度風紀委員に提出するの。どうすればこの学校をより良くできるか考えないと......」

 

拐うにはうってつけの状況だった。

そして廊下を歩いているのが唯と春菜の2人だけになった時、ケイズの部下達は飛び出し、彼女らに手を伸ばす。

 

その数分後、御門は保健室に侵入した虫型のメカを通して、ケイズからの脅迫を受けていた。

 

『今から指定した場所に1人で来ていただく。断れば───あなたの生徒達の安全は保証しない』

 

唯と春菜を人質に取られながら。

彼女達の体には、粘性の生き物がまとわりついていた。

 

『あのスライムは我々が作った合成生物でね。命令1つで彼女らを窒息させる事もできるんですよ』

 

「くっ......」

 

悔しげな表情を浮かべる御門に、追い討ちとばかりにケイズは続けた。

 

『それと......あなたとよく関わりのある生徒。たしか

......猿山とかいう』

 

思いもしない情報に、御門は狼狽する。

 

「っ、あなた達、彼に何を───」

 

『どうやら我々の邪魔をしてくれたようで、部下と交戦していたのですが───』

 

ケイズから容赦なく放たれたその言葉が。

 

『先程始末したと、部下から報告が入りました』

 

「......は?」

 

「......え?」

 

リトと御門の心を、深く抉った。

 

「......」

 

その一方で、ララは意味深な表情を浮かべている。

 

「(今、なんて言った......!?)」

 

脈が、早くなる。

始末した?誰を?

よく関わりのある生徒?

分かりきっていた、聞こえていたはずの答えから思わず目を逸らしてしまう。

 

『中々手こずらせてくれたみたいですが、ね』

 

余裕綽々なケイズに対して。

 

「(さ、猿山が殺された......?う、嘘だよな?)」

 

リトの体温が、まるで全身の血液が凍ったように急激に下がる。

 

「(美柑になんて言えば......!))」

 

拳を強く握りしめる。

ケイズ達ソルゲムと、自分の無力感への怒りで。

 

「(ちくしょう......!!)」

 

許すわけにはいかない、必ず報いを受けさせる。

リトの腸が煮えくり返る中。

 

『さぁ、これ以上生徒達を見殺しにできますか?』

 

勝利を確信した声で、ケイズは言った。

 

「て、てめぇ!やめろっ!!」

 

唯と春菜が今にもスライムに襲われそうになるのを見て、リトは声を荒らげる。

 

「(くそ、どうすれば......でも2人の居場所がわからねーとどうにも......!)」

 

このままいけば2人は解放される代わりに、御門はケイズ達の組織”ソルゲム”の手に落ちる。

そんなことは絶対にさせるわけにはいかない。

そもそも本当に2人を解放するのかもわからない。

リトの焦りが強まる中。

 

「......あなた達の言う通りにするわ」

 

「!」

 

『フッ、懸命な判断だ』

 

「御門先生......」

 

「大丈夫よララさん......彼女達は、必ず助けるわ」

 

そう言って、御門はケイズの指定する場所へ向かってしまった。

保健室を出る間際、リトとララが見た御門の顔は、覚悟を決めたものだった。

しばらく呆然としていたリトだったが。

 

「リト、私達もできることをやろう!」

 

「ララ......」

 

「あんな風に春菜と唯を......友達を傷つけられて、黙ってられない」

 

同じように燃えるような怒りを露わにするララを見て、止まっている場合ではないと心を切り替えた。

 

「よし、まずは2人を───」

 

「御門先生!!」

 

そんな時、勢いよく保健室の扉が開いた。

2人が視線を向けるとそこには。

 

「......って、リトとララちゃん?」

 

いつもと変わらぬ様子の猿山がいた。

突然の事に、リトは頭が追いつかなかった。

 

「お、お前、生きて......」

 

「えっ?」

 

リトは、堪らず猿山に飛びついた。

 

「リ、リト、死ぬ、死ぬ!」

 

猿山がタップし、何とかリトを離れさせる。

 

「あ、あぁ悪い......」

 

「ったく、なんでそんな熱烈だったんだ?」

 

「だ、だって───」

 

リトはケイズたちから聞いた話をそのまま猿山に伝えた。

すると猿山は納得したように頷いた。

 

「そういうことだったのか」

 

「なぁ猿山、さっきまで何があったんだ?」

 

リトは猿山の右手につけられた特殊なグローブを見る。

以前オキワナ星で自分と春菜を助けてくれた時も、同じものをつけていた。

それをつけているということは只事では無いのだろうと、直感で察する。

 

「あぁ、実はな───」

 

時はケイズの部下が唯と春菜を拐おうとした頃まで遡る。

人気が無くなったことを確認し、今にも彼女らを襲おうかと手を伸ばした瞬間。

 

「(な、何......!?)」

 

その手は届かず、春菜達はどんどん離れていく。

 

「(か、体が......!)」

 

「(う、動けん......!)」

 

彼らは音もなく、何者かによって拘束された。

 

「私は今のままでいいと思うけどなぁ」

 

「さ、西連寺さん!困るわ、クラス委員のあなたがそんなことじゃ!」

 

「えぇ?そうかなぁ?」

 

「(くっ、標的が......!)」

 

驚いている間にどんどん離れていく2人を追いかけようとするが、ケイズの部下達の体は全く動かない。

「糸」か何かで縛られたように。

春菜達が見えなくなるまで離れた後、ようやく拘束は解けた。

 

「っ、何だったんだ......今のは......!?」

 

「あ、あぁ。何かに縛られたような......」

 

「ったく」

 

「「!!」」

 

そして。

 

「女の子拉致ろうなんて趣味悪いぜ?」

 

そう言いながら姿を表したのは、エクセリオンを武装した猿山だった。

ケイズの部下達は標的を逃がしたことで苛立ちながら、横槍を入れてきた猿山を睨みつける。

 

「貴様、よくも邪魔を......」

 

「そりゃするだろ。レディーは丁重に扱わなきゃ」

 

そしてケイズの部下達は、ここで何かを思い出す。

 

「(こいつ、見覚えがある......確かドクター・ミカドとよく関わっていた地球人だ)」

 

「(人質としてなら、利用価値はあるな)」

 

唯と春菜の代わりに猿山を人質にしようとした時、その右手がカチン、カチンと金属音を鳴らす。

まるで戦闘準備をするように。

 

「......チッ!」

 

それを見たケイズの部下達は、先程自分達を拘束してきた力を警戒して校舎を離れる。

猿山もそれを追いかける。

さらに、そんな彼らを追いかける影があった。

 

「妙な地球人?」

 

『はい、ですが心配は無用です。すぐに片付けます』

 

「ちょうどいい。ドクター・ミカドに思い知らせてやれ。命の保証はしない、とな」

 

『は』

 

ケイズは部下とのやり取りを終えた後、彼女の心を折る要素が増えるのは好都合だと笑った。

 

「───お宅ら宇宙人だろ?何で2人を狙った?」

 

少し離れた人気のない場所で、猿山は問う。

 

「ふん、別にあの娘達だけを狙った訳では無い。あの学校の生徒なら誰でも良かった......ドクター・ミカドを誘き寄せられればな」

 

「誘き寄せる?」

 

「貴様は知らんだろうが、彼女は宇宙でも有数の医者でな。その医療技術を我が組織のものにし、最強の兵士を造り上げるためだ」

 

「そのために生徒を拉致って交渉材料にしようってことね......確かに御門先生なら、生徒優先するな」

 

「そう。だから誰でも良かったのだ......貴様でもな」

 

「ほぉ」

 

「先程は不意を突かれたが、この数相手ならば無事では済むまい。大人しく付いてきてもらおうか、地球人」

 

「ぜってーやだ」

 

「そうか。ならば───」

 

ケイズの部下達は銃を構える。

 

「力ずくでも連れて行かせてもらう!」

 

その数4人。

猿山が1人で向き合っているという状況である。

 

「......言っとくけど、お宅らの相手は俺じゃないぜ」

 

そう言った瞬間猿山は首を横に傾ける。

すると突然とてつもない速度で飛んできた鉄球が、ケイズの部下達4人の内、1人を顔にめり込むほどの衝撃で吹っ飛ばした。

 

「なっ!?」

 

「ホッ、飛んだ飛んだ」

 

笑う猿山と動揺するケイズの部下達。

 

「さすが野球部」

 

猿山は伸びをしながら、後ろでやる気満々といった様子の鉄球を飛ばした男、弄光にバトンタッチした。

 

「......猿山ぁ、てめーは学校に戻るんだろ?」

 

「ええ、万が一、この人らの連れがまだいたりしたらまずいでしょ?校長と佐清さんも今日はいねぇし。ここは弄光さんに任せます」

 

「へっ、上等だ」

 

というやり取りの後、猿山は急いで保健室へ向かってきたのだった。

 

「───っていう事があってさぁ、俺は戦わずに済んだんだよ」

 

「でもあいつら、猿山のこと始末したって......」

 

「あぁ、多分───」

 

猿山がその場を離れた後。

弄光とケイズの部下達は。

 

「これで俺も気兼ねなく戦れる」

 

「ふん、わざわざ不利にするとは馬鹿な奴め」

 

「御託はいいからよォ......」

 

グリップを操作すると、鉄球はブースターの力で弄光の手に戻る。

それを握りしめながら。

 

「まとめてかかってきな、虫ケラ」

 

好戦的な笑みで挑発した。

”貧弱な地球人”に見くびられているのが気に食わなかったのか、ケイズの部下達は怒り心頭といった様子で銃口を弄光に向ける。

そして。

 

「知らんぞ。それが最期の言葉になっても」

 

「そりゃてめーらだろ」

 

引き金に指をかけ。

 

「ほざけぇッ!!」

 

「どっちにしろてめーらは───」

 

一斉に引いた。

 

「”完・全・滅殺”決定だ!」

 

そこからは一瞬の出来事だった。

弄光は持ち前の強肩を駆使し、残る3人を鉄球であっという間に叩きのめした。

そして、顔を腫らした4人の内1人を起こして、目の前にしゃがみ込む。

 

「で、てめーらの頭はどこにいる?」

 

「ケ、ケイズ様はすでに交渉材料を手に入れた......今頃ドクター・ミカドを呼び出している頃だろう」

 

「ほぉ、そうかい」

 

それを聞き出した後もう一度鉄球をぶつけ、意識を刈り取った。

 

「(ケイズって野郎もぶちのめしてぇとこだが......今はこいつらを拘束すんのが先だ)」

 

そしてもう1度叩き起す。

 

「おい、今からそのケイズって野郎に連絡しな」

 

用件を済ませた後、弄光は鉄球の鎖をロープ代わりにし、4人全員を縛り上げ、引きずりながらどこかへ向かった。

 

「───多分こういう事じゃねぇかなぁ?」

 

「よ、良かった......」

 

それを聞いたリトは心の底から安堵した。

その光景を見ながら、ララはわかっていたように微笑む。

 

「ねぇペケ」

 

《はい?》

 

「私ね、猿山が殺されたって聞いた時、全然悲しくなかったの」

 

《......何故ですか?》

 

「だって、猿山があの人達に負けるって思わなかったから」

 

そう言って、ララも2人の元へ駆け寄った。

 

「おかえり、猿山!」

 

「た、ただいま?......よくわかんねぇけど、歓迎されてるならいいや!」

 

その後、詳しい事情の説明が始まった。

 

「───ってことがあって......」

 

嫌な予感が当たってしまった。

 

「(くそ、2人を危険に晒しちまった......!)」

 

猿山は心の中で歯噛みする。

 

「しっかし高架下か......」

 

今自分が向かう分には問題ない。

だが、唯と春菜の安全が気がかりだ。

 

「(どうする......!?)」

 

居場所を敵に吐かせようにも、肝心の敵の居場所が分からない。

学校にいるのか、外にいるのか。

ララ達と協力すれば見つけられるだろうが、そんな時間の余裕があるかも分からない。

どちらを取るか、苦渋の決断をしようかという時。

 

「お困りのようですね、猿山ケンイチ」

 

1人の少女の声が保健室に響いた。

 

「あーっ、ヤミちゃん!」

 

「お久しぶりですプリンセス、結城リト」

 

「そ、そうだ!ヤミに助けてもらえば......!」

 

リトの言葉を聞き、猿山はヤミを頼ることに決めた。

彼女は今この場においては、とてつもなく大きな戦力になる。

ララとリトに加えてヤミもいれば、かなり早く見つけられるだろう。

 

「私達が敵を見つけ出して、居場所を吐かせます。あなたは早くドクター・ミカドの元へ」

 

「よーしリト、頑張ろうね!」

 

「お、おう!」

 

光明が見えた。

 

「よっしゃ3人共、古手川サンと春菜ちゃんの事は任せたぜ!」

 

その一方で、御門はケイズ達の元へ向かいながら、心の中で猿山に謝罪していた。

 

「(ごめんなさい猿山くん、巻き込んでしまって)」

 

そう思いながら歩みを進める。

 

「(向こうで会えたら、またいつもみたいにしてくれるかしら?)」

 

最期の歩みを。

彼女は、ケイズ達と共に散るつもりだった。

猿山を巻き込んだ責任を取るために。

 

「(その時は、少しくらい素直になろうかしら)」

 

そして高架下に到着し、物陰に隠れて敵の様子を伺う。

彼らが乗ってきたであろう車が止まっているのを見て、すぐそこに標的がいることを確認する。

 

「(彼らは私が何とかするわ。何があっても絶対に......!)」

 

御門の銃を握る力が強くなる。

一呼吸置いてから物陰から顔を出した時、彼女が見たのは。

 

「!?」

 

手足から血を流して縛り上げられたケイズと。

 

「よし、後はこれをこうして......」

 

それを見据える、無傷の猿山だった。

御門は思わず銃を落とす。

その音で猿山が振り返る。

 

「あ」

 

目が会った瞬間、猿山はぎょっとした。

 

「ちょ、先生!?なんで泣いて......どわぁ!?」

 

そんな反応を他所に、御門は力一杯猿山を抱きしめた。

生きていることを確認するように、二度と失わないように。

 

「よかった......!」

 

止まらない涙を、拭うこともせず。

御門の掠れる声を聞いた猿山は。

 

「......俺に会えたからでやんすか?」

 

朝と同じようにそう問うた。

御門は何も答えない。

ただ。

 

「(バカね......)」

 

その問いかけに答えるように、より強く猿山を抱きしめた。

 

 

 

 

 

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