ToLOVEる VII   作:フェンネル

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1人目の婚約者候補

猿山は、またもや保健室にいた。

 

「今回は珍しく軽傷なのね」

 

「あー、はは......」

 

猿山は何の傷が答えるわけでもなく、落ち込みながら笑った。

 

「まぁすぐに対処できるから私も楽だけど」

 

「そういえば先生知ってますか?」

 

「?」

 

「今日、うちの学校にすごい美少女が来たんですよ」

 

「転校生ってことかしら?それにしては......」

 

「いや、リトに弁当届けに来ただけらしいです。しかもリトの嫁さんだって自分で言ってました」

 

その美少女というのはララの事で、クラスの男子達は修羅になっていた。

猿山にしてみても、春菜というものがありながら他の女に現を抜かすリトは敵そのものだった。

 

「(でもあのリトが春菜ちゃんを裏切るはずねーよなぁ......まだ付き合ってねぇけど)」

 

「結城くんの?彼も大変ねぇ」

 

「ほんと羨ましいですよ。あんなカワイイ娘と」

 

「大してお咎めなしでしょ?校長が校長だから」

 

「そうっすね。しかもその後服だけ残して消えるしで訳わかんなかったんですよ」

 

「服だけって、ファンタジーか何かかしら?」

 

「もしかしたら宇宙人かもしれないっすよ」

 

御門はそんな猿山の報告を有り得るわけないと諭し、自分の仕事を済ませるため、急かすように伝えた。

 

「早く帰りなさいね」

 

「うっす」

 

そんな日の翌日、猿山達のクラスに転校生がやってきた。

 

「やっほーリトー!私もガッコ来ちゃったよー♡」

 

「ラ、ララ!!?」

 

クラスが一斉にざわめき出す。

春菜も、猿山も。

そしてララの事はクラスどころか学校中に広まり、あちこちで噂になっていた。

 

「見た?あの転校生」

 

「見た見た!超カワイーよね〜、スタイルいいし」

 

「オレ、写メ撮らせてもらっちゃった!」

 

「ララ・サタリン・デビルークって言うんだってよ」

 

「日本人じゃねーんだ!道理で発育いいと思った〜♡」

 

「でもよ、好きな男がいるらしいぜ。同じA組の結城リトってヤツ。うわさじゃ一緒に住んでるとか......」

 

そして当のリトはというと、ララが同棲していることをバラしたせいで、それを聞いたクラスメイト達の対処をした後、ララを屋上に呼び出していた。

 

「何のつもりだよララ!いきなり転校してくるなんてっ!おまけにオレん家にいる事までバラしちまって!」

 

「えーだって......」

 

ララは両手を頬に当て、照れながら言った。

 

「いつもリトのそばにいたかったんだもん」

 

それを見て一瞬ドキッとしたリトだが、ララ転校の経緯を聞いて校長が校長だからと大きなため息を吐いた。

 

「でも宇宙人ってことはヒミツにしてあるから」

 

「そんなん当たり前だ!」

 

そんな時、屋上のドアを開いた者がいた。

 

「リト」

 

「猿山!?」

 

リトの親友、猿山ケンイチである。

ララがいるのを見て、聞こえないように質問した。

 

「お前さ、春菜ちゃんの事まだ好きだよな?」

 

「あ、当たり前だろ!?何聞いてんだよ」

 

「じゃあララちゃんとはどういう関係なんだ?」

 

「だ、だから遠い親戚だって......」

 

「嘘つくな」

 

確信を持った発言に、リトは一瞬肩を震わせる。

だがララが宇宙人と気づかれないよう、細心の注意を払って話を聞いた。

 

「ララちゃんとお前が親戚じゃねーのは見りゃわかるよ。何年の付き合いだ」

 

リトは親友相手故、こういうところでボロが出やすくなる。

何か言おうとするも、肯定するかのように言葉を選んでいた結果、無言になってしまった。

 

「で、どうなんだ?」

 

「......実はさ、この間偶然会ったんだ。そんで家出したって言ってたからなし崩し的にこう......あ!春菜ちゃんには変な事言うなよ!?」

 

「わかってるよ。正直死ぬ程羨ましい。春菜ちゃんというものがありながらお前は......」

 

「ほ、ほんとに違うから!あいつとは何も無いって!」

 

「でも前に告白してきたじゃん」

 

リトが必死の弁解のため思わず声を大きくしてしまったせいでララに聞こえてしまい、思わぬ爆弾が投下されてしまった。

 

「リ、リト......」

 

「さ、猿山!信じてくれって!ほんとに、ほんとに違うから!」

 

これには流石の猿山も頭を抱えてしまった。

自分の親友が思いきり二股をかけようとしている事実に。

 

「むー、ちょっと待ってよリトー」

 

「お前黙ってろ!」

 

普段は軽い様子でナンパに勤しむ猿山だが、この日ばかりはそんな気にもなれず、リトが本気で焦る程落ち込みながら屋上を去った。

 

「お前マジでふざけんなよ!」

 

「だってー」

 

「(あんな猿山見た事ねーよ!コイツほんとに......!)」

 

その後ペケからララの存在が公になれば宇宙の危機がどう等の話をされたが、リトはほぼ頭に入っていなかった。

しかもララはララでリトに謎の期待をかける始末。

 

「猿山くん」

 

「春菜ちゃん......」

 

春菜は、教室に戻ってきた猿山の異常な落ち込みようを見て声をかけた。そして猿山は春菜の顔を見て涙が出そうになったが何とかこらえた。

 

「大丈夫?すごく落ち込んでるように見えるけど

 

「何でもないよ......春菜ちゃんは二股かけたりしないでくれよ」

 

「二股!?」

 

更にその日の放課後、何の偶然か春菜と猿山は担任にララに部活案内を頼まれた。その時の猿山は最早窶れてしまっていた。

 

「春菜ちゃんとララちゃん2人で行ってきなよ。俺はちょっと......」

 

「えー猿山も行こうよ。楽しそうだよ」

 

「いいから」

 

「うーん......わかった!じゃあ2人で行く!」

 

少し渋りつつも猿山の言葉に従い、春菜とララは部活案内を始めた。

 

「猿山、2人に隠れてついて行こう!」

 

「はぁ?」

 

道中、学校の楽しさ、自分の知らない世界、同じ場所にみんなで集まり、賑やかに楽しむこと。そのどれもがララにとって学校に来て良かったと思える理由になっていた。

 

「そういえば春菜」

 

「なぁに?」

 

「猿山ってどんな人なの?」

 

「猿山くん?なんで?」

 

「ちょーっと気になるんだよね」

 

「へー......」

 

春菜は転校して間もなくそう思う理由が分からなかったが、ララの雰囲気から恋愛感情では無いことを察した。

 

「女の子はすごく大切にするよ。普段はその、ナンパとかするけど」

 

「うーん......じゃあさ、たまにどっか行ったりしない?」

 

「え?しないと思うけど......」

 

「そっかぁ......宇宙がどうとか言ってた?」

 

「言ってないよ?」

 

春菜がララにとって猿山ケンイチという男がどう見えているのだろうと思った時、野球ボールが2人の近くに転がってきた。

 

「わ!何コレ?」

 

「あ......野球部の......」

 

「私にもやらせてー!」

 

「ララさん!?」

 

ララはボールを拾った瞬間、春菜が止める間もなく練習中の野球部の元へ突撃していった。

 

「おいあのコ。ウワサの美少女転校生!」

 

「野球やりたいって?」

 

部員達がざわめく中、不敵な雰囲気でマウンドに立つ1人の男。

 

「おもしれーじゃんか。オレが相手してやるよ」

 

「弄光センパイ!」

 

「野球を楽しもうってんだ。やらせてくれ」

 

ララはバットの持ち方がわからず逆に握っていたが、弄光はそれを注意した後、投球フォームに入った。

 

「(あの嬢ちゃん、ヤベぇ身体能力だ。相応にやらねーとな!)」

 

初級は本気球こと通称弄光ボール。

将来はプロ確実(予定)の弄光が開発した、ただ速い球である。

 

「え?」

 

コースは決まっているため読まれやすいが、ただただ速いため、対応できる人間が極わずかとなっている。

ララも初見ながら見切ってバットを降ったが、何故か空振ってしまった。

 

「(オレの本気球を見切るとは、やっぱ只者じゃねぇな)」

 

「もーいっかい!もーいっかいやろ!」

 

楽しそうに目を輝かせるララ。

次は打つぞと言わんばかりにバットを構える。

 

「......いいな」

 

次に投げたのは、本気球より速度は劣るが異常な回転がかかった球。

ララはバットを振って打ち上げたが、ピッチャーフライにより2敗。

 

「次で最後だが、いけるか嬢ちゃん?」

 

「もっちろん!次は思いっきりはねかえしてやるんだから!」

 

それを聞いて弄光は目付きを変えた。

ララも弄光の変化に気づき、集中力を高める。

 

「ふんっ!!!」

 

最後の球は、本気球だった。

だがその速度は今までより数段上で、瞬きをしてしまえばストライクになるものだった。

 

「えいっ!!」

 

ララがバットを本気で振ると、ボールとバットの衝突音が鳴った。

 

「マジかよ......まぁいいぜ。捕ってやらぁ!」

 

弄光が守備に移ろうとしたその時、2人の異常な力に耐えきれなかったことでバットは折れ、ボールが燃え尽きてしまった。

 

「あー惜しーっ!」

 

「3戦2勝1分か。すげぇな」

 

「ララさん、部活案内あるから早く行かないと......」

 

「あっ、そうだった!」

 

ララが嵐のように忙しなく去っていった後、野球部は何事も無かったように練習を再開した。

ララと弄光の勝負を見ていた猿山とリトは、あることに気づく。

 

「ところで、さっきから校門にいるのって不審者か?」

 

「え?......げっ!ザスティン!?」

 

「リト、知り合いか?」

 

「......ララの、兄貴的な」

 

リトにしてみれば苦しい言い訳だったが、何かと謎の多いララの事だからと猿山は信じた。

 

「お前に用あるんじゃねーの?行ってこいよ」

 

「......おう」

 

猿山は心做しか気分の下がっているリトを見送り、その後は特にすることがなかったので帰宅した。

 

「そういや最近、佐清さんと連絡つかないような......」

 

その日リトは、ザスティンからデビルーク王直々の通信を聞かされ、期待に添えなければ星諸共木っ端微塵だと脅しを受けた。

その期待というのが銀河全体にいるララの婚約者候補達からララを守り抜き、無事に「婚姻の儀」を迎えるというものだった。

実際に王の前で無礼を働いた者が母性ごと破壊された話を聞いて、リトは胃が痛くなるばかりだった。

 

「地球の運命背負っちまった!」

 

翌日。

ララは体育で100m10秒9などの記録を叩き出し、クラスを驚かせていた。

その間春は、離れた場所でサッカーをしているリトを見ていた。

 

「もーっ!どうしたの春菜っ!」

 

「なーんか最近ボーッとしてる事多いよ春菜ー!」

 

不意打ちで春菜の胸を揉む友人。

 

「さては好きな男でもできたか?」

 

「わかった!佐清先生でしょー!カッコイイもんねー」

 

「ち、違うよ、そんなんじゃないってー」

 

時は経ち、チャイムが鳴る。

 

「はい、今日はここまで」

 

「佐清先生!一緒にお弁当食べましょ♡」

 

「あっずるーい!私達と食べよセンセー♡」

 

「ハハ、悪いね。今日は大事な用事があるんだ」

 

佐清は邪な思いを秘めた目で、1人の女子生徒に声をかけた。

 

「......西連寺」

 

昼休み。

弁当を食べる者、友人と話す者、各々思うように過ごす中で、リトは春菜がいない事に気づいた。

 

「ねぇ春菜は?」

 

「春菜ならさっき佐清先生と部室の方へ歩いていくとこ見たよ」

 

女子の会話に聞き耳を立て、少し不安に駆られるリト。

 

「リト!お弁当食べよー!美柑が私の分も作ってくれたんだー♬︎」

 

「お前な!自分の席で食べろって!」

 

「えーリトのそばがいいんだもん」

 

2人のやりとりを見て嫉妬する男子達。

だが春菜と佐清の件でリトの心は穏やかではなく、ララを無視して教室を飛び出してしまった。

 

「待ってよリトー!」

 

それを好機と見た男子達は、ララの前に立ち塞がった。

 

「あんな冷たいヤツ放っといてオレ達と弁当食おーよ!ね!」

 

「リトー、どこ行ったのー?」

 

「ラ、ララちゃーん......」

 

そしてリトは、教師の注意を無視して廊下を全力ダッシュしていた。

女子テニス部の部室へ。

 

「佐清......!」

 

リトは、2人の件でどうしても不安が拭えずにいた。

結果として見に行こうとしたところ、佐清から電話がかかる。

その時の言葉が、今のリトを動かす理由だった。

 

「デビルーク星の姫君の事で話がある。今すぐ会えるかな......断るなら、君のクラスの女が1人、大変なことになるかもねぇ」

 

そして大急ぎで向かった結果、佐清が思うより早く到着した。

だがリトが到着した時には、既に触手のようなものが春菜の身体全体に這っている状態だった。

 

「てめーっ!何してんだ!!」

 

急いで春菜を助けようと駆け出したリトだったが、佐清の変身により思わず足を止める。

 

「や、やっぱ宇宙人......」

 

「そう、佐清の姿を借りてただけ......全く、ヒト型に化けるのは神経使うぜぇ......」

 

その容姿はギョロ目に長く伸びた舌、鋭い牙に灰色の肌と、化け物そのものだった。

 

「オレの名はギ・ブリー。結城リト、ララから手を引いてもらおう」

 

「!」

 

「ララと結婚し、デビルーク王の後継となるのはこのオレだ。お前なんかじゃねぇんだよ」

 

「(こいつ......!)」

 

「応じなきゃこの女は返さねーぜ?ま、それもありかもしれねーがな。クククッ......」

 

場面は変わり屋上。ララが上からリトを探すも、見つからずにいた。

 

《ララ様、もうあんなの放っときましょう。ララ様になびかないなんて、あいつの低レベルな頭脳にはついていけませんよ》

 

「まだ知り合ったばかりだもの。私もリトも、もっとお互いの事を知らなきゃダメだと思うの」

 

《は?》

 

「お互いの事知ればきっと、もっともっと仲良くなれるよ♡」

 

《はぁ......》

 

「それに、私になびかないって猿山とかあのボール投げてた人もそうなるよ?」

 

《あの2人は特別おかしいのですよ。あと───》

 

「とにかくリトを探さなきゃ」

 

ララは携帯を取り出し、新しいロボ「くんくんトレース君」を召喚した。

 

「いい?このにおいの人を探すんだよ♡」

 

そう言ってリトのパンツを嗅がせる。

 

《ラ、ララ様!そんな汚らわしい物を!》

 

《了解ダス!》

 

《そーいえば、王宮でよくザスティンが逃げ出した時もコレで見つけてましたよね》

 

「え?そーだっけ」

 

《彼はいつもララ様のイタズラ......もとい新発明の実験台でしたから》

 

「あー、そうだったね」

 

《ム!このにおいは!》

 

くんくんトレース君が何かのにおいを察知して角を曲がり、ララもそれについて行く。

曲がってすぐの部屋にリトがいると思い、勢いよくドアを開けると、更衣中の女子生徒たちに飛び込むくんくんトレース君の姿が。

 

《いいニオイダスー♡》

 

「もーっ!マジメに探しなさーい!」

 

《ゴ......ゴメンなさいダス......》

 

その頃リトは、下手に動けずにいた。

 

「(こいつ、やっぱり狙いはララとの結婚か。オレに手を引けって......!?」

 

リトとしてもそう出来るならばそうしたい所だった。

だがデビルーク王に脅迫という名の期待をかけられているせいで、ララから手を引いたならば地球ごと滅ぼされてしまう。

 

「(でもヤツの言う事きかねーと春菜ちゃんが......)」

 

などと考えていると、ギ・ブリーはリモコンのボタンを押し、触手で春菜の体操服を引きちぎった。

 

「(は、春菜ちゃんの白いム、ムネが......って!コーフンしてる場合かオレー!!)」

 

それにより春菜の下着が露になり、リトはふらつきながらショート寸前になっていた。

 

「キヒヒ......お次はもっと大変な事になるぜぇ?さぁ言え!ララから手を引くと!」

 

だが今のリトの中には、緊張よりも大きなものが今なお膨れ上がっていた。

 

「てめー......そんな事してまで......カンケーない女の子を人質にとって、ひでー目にあわせて......それでララが振り向くとでも思ってんのか」

 

「何かカン違いしてねーか?お前ララはオレと結婚するんだよ。オレがそう決めたんだ。ララは性格こそまだガキだが、最高にオレ好みのヒト型だ。その上ララと結婚すれば、デビルーク王の支配する銀河は全てこのオレのものになると来た。こんなチャンス見逃す手はねーだろ。まぁ性格だって教育してオレ好みにすればいいしなァ」

 

「てめーにとっちゃララも春菜ちゃんも道具みたいなもんってワケか......」

 

「ハハ!そんな言い方されたらオレが悪人みてぇじゃねーか」

 

「あぁ最悪だ!!!」

 

静まることのない怒り。

声を荒らげ、目の前の化け物に臆することなく春菜を想い、リトは憤った。

思わず驚くギ・ブリー。

 

「(な......なんだコイツ......)」

 

これから2人の戦いが始まろうかという時、もう1人、部室に入ってきた者がいた。

 

「こんにちはー」

 

突然の来訪者に2人の視線が一点に集まる。

 

「お、お前......どうしてここに」

 

リトはあまりの驚きに瞬きができずにいた。

 

「校長が突然ここに行けって言ってきてさ。弄光さんも食い過ぎで動けねーし、佐清さんは連絡もつかねーから俺が来たってワケ」

 

謎の地球人に、ギ・ブリーは訝しげな目を向ける。

 

「誰だお前?」

 

「俺?リトの親友だよ」

 

 

 

 

 

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