ToLOVEる VII   作:フェンネル

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提案とくじ引き

2人して想定外の事に思わず気を取られる。

猿山はそれを意に介さず、部室内を見渡す。

 

「親友?結城リトの?そんな奴が何の用だ」

 

「猿山.......」

 

「校長からの指令で来たんだ」

 

「.......なんで.......」

 

「春菜ちゃん大好きのリトなら、佐清さんと春菜ちゃんが2人っきりで会ってると知ればじっとしてられる訳ねーよな。で、学校中探し回ってここに着いたらこの有様だ」

 

「お、お前.......」

 

「数が増えたところで無駄なんだよ!」

 

ギ・ブリーは目の前の男に対して所詮は地球人だと、自分には敵わないと見た目で判断させられる程度の存在と軽んじていた。

 

「お宅、レディーは大切にしなきゃ。その子だってか弱い女の子だぜ?」

 

「んな事知らねぇよ。この女はララとオレが結婚するための交渉材さ。まぁ、ララが結婚しないならこいつでも良いがな」

 

「テメェッ.......!!」

 

今感じる色々な気持ちにリトが拳を強く握る。

目の前の宇宙人に少なからず臆している自分の情けなさ。

自分の想い人を物扱いするギ・ブリーの外道ぷり。

婚約者候補でありながらララを大事に思っていない事。

そして何より、思わぬ来訪者に驚愕していた。

 

「リト、あんな奴に春菜ちゃん取られて良いのか?」

 

「良い訳ねぇだろ!!」

 

それを聞いた猿山はギ・ブリーに恐れを抱く事なく、普段と変わらないように歩く。

 

「.......!」

 

リトが危ないと止めようとするが、何故か猿山がギ・ブリーにやられる未来が想像出来ず、直前で中断した。

 

「(.......今の猿山には”読めなさ”がある.......!)」

 

ある種底知れなさに近いものを感じていた。

加えて、猿山がギ・ブリーを見る目に浮き出る感情が何かわからなかった。

抱くのは怒りか恐怖か未知への好奇心が。

それとも、何も抱いていないのか。

 

「リトはな、その子がすげぇ好きなんだよ。それを服まで破って.......これは親友としても、俺自身としても見過ごせない」

 

「だったら何だ?地球人がオレに敵うと思ってんのか?」

 

返答までの間を作らず、猿山は断言した。

 

「勝てるよ」

 

「そうか.......なら見せてやるよ、真の姿を!!」

 

ニヤつきながら、体を肥大化させるギ・ブリー。

 

「へっ、どんなもんだ。パワーは地球人の100倍はあるぞ」

 

「(ひ、100倍.......!?そんな化け物.......いや、春菜ちゃんを助けるんだ!あのクソ野郎から!)」

 

人間の数倍はあろうかという体躯に一瞬恐怖したが、すぐに怒りが全てを塗り潰した。

気持ちをきっちり切り替えた今のリトには、闘志があった。

猿山は特に反応せず、淡々と告げる。

 

「力の優劣なんてどっちでもいいんだ。ただお宅は、怒らせちゃダメなヤツを怒らせちまっただけさ」

 

そう言うと猿山はいきなりしゃがみ、彼の名を呼んだ。

 

「リト!!」

 

「うおおおお!お前はオレがぶっとばしてやる!!」

 

リトは全力で猿山の方へ走り、背中を踏み台として利用し、高く飛んだ。

 

「オラアアアッ!!」

 

そして落下の勢いに任せ、ギ・ブリーの顔面を思い切り殴った。

 

「ゴベッ!!」

 

「春菜ちゃんに手出しはさせねぞ!.......って、あれ?」

 

威勢よく叫んだリトだったが、ギ・ブリーは気を失った事でどんどん体が縮んでいく。元の姿に戻ったのだろう。

 

「こいつまさか、見た目でハッタリかますだけで弱い.......?」

 

それを知り、一気に体の力が抜けるリト。

 

「よ、よかった.......」

 

結果として春菜を助けられた事を今は大いに喜ばしい。

だが勝負は数秒で決したが相当の勇気を振り絞ったせいか、汗だくだった。

 

「.......なぁリト、1つ聞きてーんだけどさ」

 

「それよりも春菜ちゃんだ!」

 

「.......好き過ぎるだろ。良い事だけどさぁ」

 

リトはすかさず春菜を助け、安全を確認する。

 

「よかった.......怪我はないみたいだ」

 

安心から抱きしめようとするが、セクハラ小僧にはなるまいと思い留まった。

 

「で、リト」

 

「あぁ.......いっ!?」

 

リトが見たのは目を回して縮んでいるギ・ブリーを摘む猿山。

 

「この化け物は何なんだ?」

 

「そ、そいつは───」

 

猿山は改めて質問し、リトが数秒開けて答えようとした時。

 

「リトー♡やっと見つけたー!!」

 

「ごばふっ!」

 

突如入室してきたララに飛びつかれ、リトは倒れる。

その際、ララの凄まじまいパワーの乗った肘が猿山の顔を襲い、猿山は鼻血を出してしまった。

 

「(さ.......さすがララちゃん。トンデモパワーだ.......)」

 

「猿山!大丈夫か!?おいララ!何してんだお前は!」

 

「ご、ごめん猿山!怪我ない?.......ってしてるよね」

 

「はは、大丈夫。保健室行ってくるよ」

 

そう言ってすぐ保健室へ向かっていった猿山だったが、そのせいで宇宙人関連の話が有耶無耶になってしまった。

 

「ねぇリト、なんでここにいたの?」

 

「こいつが西連寺を酷い目に合わせようとしてたんだ」

 

「えっ、何でギ・ブリーが.......」

 

「ララと結婚するとかなんとか言ってたぞ。それから───」

 

リトは部室で起きた事を全てララに話した。

 

「そーゆー事か。まったくもう!」

 

経緯を聞いた後、ララは便器の形を模した「じゃーじゃーワープ君」なる機械を使い、ギ・ブリーを地球外に追放した。

 

「二度と来ないでね!ギ・ブリー!」

 

その方法というのが、ギ・ブリーを便器の中に落とし、レバーを引いて流すという、ただのトイレと同じ手法だった。

 

「なんつーメカだ」

 

一件落着したが、課題はまだあった。

 

「ララ、とりあえず西連寺を降ろそう」

 

春菜の服が破れている事である。

このまま保健室に連れて行こうものなら惨事になる。

リトにとっても、春菜にとっても。

 

「ペケ、破れた服の修理できる?」

 

《この程度、私のシステムを応用すれば簡単に修繕できますよ》

 

「.......ララ、オレは先に教室に戻るから、服を直したらお前が西連寺を保健室に連れてってくれ」

 

ペケの万能ぶりに感謝しつつも、リトは服が破れた春菜の下着や素肌が頭に焼き付いている事から、まともに顔を見れずにいた。

 

「え?でも.......」

 

「2人して付き添うのも変だろ。それに、オレは大した事してねー」

 

そう言って足早に部室から去り、ララは1人残った。

 

「そうかなぁ?話を聞いた感じだとリトも春菜のために頑張ったと思うけど.......でも今は───」

 

《ララ様?》

 

何か考えているララに対し、ペケはほぼ思考をしていなかった。

主人が黙り込んだので名前を呼んで話しかけるのみ。

 

《ララ様!》

 

「え?あ、なんでもないよ!」

 

《どうしたのですか?地球に来てからというもの、ララ様はずっと何かを考えている様に見えますか.......》

 

「.......ペケ、1つ聞いてもいい?」

 

《はい?》

 

「地球に私より強い人がいると思う?」

 

《いないでしょう。スペックが違いますからね》

 

「そっかぁ.......」

 

ペケの意見を聞いたものの、ララが疑問を解決出来ずにいた頃、猿山は保健室におり、付着した血を御門に拭き取ってもらっていた。

 

「どうしたの?鼻血なんて。少し遅かったら不味かったかもしれないわよ」

 

「御門先生.......血付くんで俺やりますよ?」

 

猿山が言うと、御門はどこからか聞こえたピキッという音と共に眉間に皺を寄せ、心做しか髪が逆立とうとしていた。

猿山自身心配の意味も込めて気遣ったつもりが、結果としてその言葉は御門の怒りを沸き立たせるだけだった。

 

「少し前に君が血だらけで廊下を歩いてたの忘れてないわよ?理由聞いたら「ちゃんと拭いたつもりなんですけどね〜」って言ったわよね?今日だって私が偶然会ってなかったら来るつもり無かったでしょ?普段はナンパしてくるのに、こんな状況になったら逃げるんだから分かりやすいったらないわ」

 

「あ、あれ?先生?」

 

「そもそも怪我してるのに保健室に来ないなんて学生としてダメ。もっと大人を頼りなさい。普段から君の世話をしてる私にしてみればね、流血してるのにそのまま教室に行くなんていうのは論外よ。次やったらもう二度と診ないからね」

 

「う、うっす」

 

ここまでの過程を知っているリトやララなら、そう怒る事もなかっただろう。

だが御門は猿山が大量の鼻血を流しているという結果のみを見てしまったが故に、大変な状況だと思ってしまった。

だからこそ今こうして脅しも込めて念を押したのだった。

 

「で、なんでそんな事になったの?」

 

「ちょっと女の子に.......」

 

「またナンパ?」

 

「いや、肘が顔に当たって」

 

「え?」

 

この時、御門はここ最近で1番のため息を吐いた。

ただただ間抜けな理由に、自分がここまで心配した事が馬鹿らしくなる程だった。

 

「あ、先生心配してくれてました?」

 

「呆れの方が強いわ.......」

 

「.......すんません」

 

「良くも悪くも君は常識を飛び越えるわね」

 

それからの処置は段々と雑になっていった。

御門が苛立ちを覚えている節が所々あったが、猿山は気のせいだと思う事にした。

 

「せんせー!この子貧血?で倒れちゃって───ありゃ?猿山?」

 

「あ、ララちゃん」

 

「さっきはごめんね?鼻、大丈夫?」

 

「この通り全然余裕さ!先生がちゃーんと処置してくれたからな」

 

「.............」

 

そう言うものの、猿山は何か言いたげなジト目の御門からは目を逸らしていた。

 

「あ、あの、先生?ちょっと頼みが───」

 

「分かってるわよ。少し外すわね」

 

「.......ありがとうございます」

 

御門が保健室から去ったのを確認し、猿山はララの方を見た。

 

「そういやリトは?」

 

「なんかね、「オレは大した事してねー」って言ってどっか行っちゃった」

 

「なるほどな」

 

その後携帯で連絡し、遅れて来たリトは猿山に何度も謝っていた。

 

「ホントすまん.......」

 

「気にすんなって。謝らせるために呼んだんじゃねぇよ」

 

ララと出会ってからというもの、リトは猿山をろくな目に遭わせていない事に少なからず負い目を感じていた。

それ故に被害者側だとしてもララ関連の出来事については何度も謝るのだった。

 

「それよりも聞かせて欲しいんだけどさ」

 

「え?」

 

「さっきの怪物の事だよ。ララちゃんと結婚するとか言ってたよな」

 

「あ、ああ。あいつらは───」

 

「私の婚約者候補だよ!」

 

ララの言葉に少し引っかかる猿山。

婚約者という一般人とはかけ離れた展開だったが、ララの容姿等を見て無理やり納得した。

 

「婚約者”候補”って事は、他にもあんなのが?」

 

「うん。結構いるよ」

 

「確か銀河全体にいるとか何とか」

 

まるで漫画の様なスケールの話を聞くが、猿山は現実的に受け止めることは出来なかった。

 

「急に嘘臭くなったな」

 

「俺だって信じたくねーよ。地球の運命握らされちまったし」

 

「地球の運命?」

 

リトのデビルーク王との話を聞き、猿山は王の考えを正気の沙汰とは到底思えなかった。

そして自分達も巻き添えを食う事と先程のギ・ブリーの件を振り返った上で、1つ提案を述べた。

 

「そんじゃ、リトやララちゃんに危険が及んだ時は俺が助けてやるよ」

 

「その提案は嬉しいけど、相手は地球人じゃ勝てるか分からないよ?もしかしたら捕まっちゃうかも.......」

 

「大丈夫だよララちゃん。君が思うより、地球人は強い」

 

その発言をまともに受け取るのは、あまりにも難しかった。

リトはギ・ブリーの様な見掛け倒しはともかく、ザスティンみたく戦闘に秀でた宇宙人が来た場合、逃げるしかない事はよく分かっていた。

だからこそ猿山にその事を教えようとした。

 

「猿山、宇宙人はトラックをぶん投げたり俺達とは比べ物にならない速さで走ってすぐ追いついたり剣を持ったり───」

 

「リト」

 

妙な不安に駆られるリトの肩を掴み、猿山はただ一言。

 

「大丈夫だ」

 

猿山は、自身の発言を微塵も疑わない、2人を守るという決意の表れと共に、負けると思っていない顔をしていた。

 

「猿山.......?」

 

「ん?」

 

その表情に自分の知らない親友を感じたリトは、無意識に名前を呼んでいたが、反応した時のいつものような優しい顔を見て、違和感を胸にしまった。

 

「.......いや、なんでもねー」

 

そんなリトに比べ、先程の発言からララは猿山に対して信頼を置いているらしく、色々質問していた。

 

「ギ・ブリーって2人でやっつけたの?」

 

「俺はちょーっと手伝ったよ。でも1番頑張ったのはリトだからな。ちゃんと春菜ちゃんを守ったんだよ」

 

「へー、さすがリトだね!猿山は怖くなかったの?」

 

「まぁ、リトとか春菜ちゃんの気持ちを考えると怖がってる場合じゃないからな」

 

「ありがとうな、猿山。礼、言いそびれちまった」

 

「お前が無事でよかったよ」

 

拳を交わす2人。

それを見たララは、「男の子っていいな」と、自分も親友を欲しがった。

 

その日からしばらく婚約者候補を警戒していた猿山とリトだったが、特に何事もなく臨海学校の日が明日にまで迫ってきた。

 

《引き続き台風情報です。大型で強い勢力の台風が速度を速めながら北上しており.......》

 

だが生徒達の気持ちを嘲笑うかのように台風が今夜直撃するというニュースが流れていた。

 

「こりゃ中止かな.......」

 

女子達の水着姿を楽しみにしていた猿山だったが、この台風では臨海学校が無くなるだろうとほぼ確信しており、気が滅入っていた。

 

「なんとかなんねーかな」

 

叶わない事をポツリと呟くと、ララの大声がどこからか聞こえた。

それに驚愕して慌てながら外に出ると、空を覆っていた雲が弾け飛び、快晴に変わっていた。

 

「どうなってんだこりゃ.......ララちゃんパワーか?宇宙の帝王の娘ってすげーんだなぁ.......」

 

有り得ない話だとしても目に映るのは全て現実。

宇宙人のおかしさをその身で感じつつ、明日の臨海学校を楽しく過ごすために、猿山は早くに寝た。

 

「.......やっべ」

 

そして、寝坊した。

猿山は全力で集合場所へ向かい、結果として間に合ったものの息も絶え絶え、楽しい臨海学校が始まるというのに、バスで死んでいた。

 

「ねーリト、猿山大丈夫?」

 

「寝坊したっぽいな。そんで走ってこれなんだと思う」

 

「おーい猿山ー?」

 

肩を指で突くも返答はない。

ララはとりあえず目を覚まさせるために試行錯誤する。

 

「.......ハッ!近くに女の子の気配がする!」

 

カッと目を見開いて起きた猿山。

そして近くにいる美少女というのがララだと理解した。

 

「ララちゃん、バスが動いてる時はあんまり動いちゃダメだぜ?」

 

「うーん、でも猿山が心配だったから」

 

「女の子に心配かけるのは俺らしくねーなぁ.......」

 

そう言った後、タオルを顔に被せてそのまま眠りに落ちた猿山。

傍から見れば確実に死亡していた。

 

「ララ、とりあえず寝かせとこう。多分またすぐ目覚ますだろ」

 

「うん、そうだね」

 

ララは春菜の隣の座席に戻り、窓から見える景色を楽しんでいた。

 

「地球ってキレイな所が沢山あるねー、春菜!」

 

「地球?」

 

そして旅館に到着した頃には猿山もすっかり元気に戻っており、旅館の女将である高美をナンパした校長は拳を食らっていた。

 

「相変わらずつれないなぁ、高美ちゃん♡」

 

「この臨海学校って.......もしかして校長があの女将に会いたいための企画なんじゃねーか?」

 

「ありえるな」

 

《えー、今から三日間の臨海学校!みんな自然と大いに触れあって、楽しい思い出を作ってください!》

 

素早く切り替え、いつもの様に生徒の前で話す校長。

その後も女将から綺麗なアッパーを食らっていた。

 

《というワケで今夜はさっそく恒例の肝だめし大会があります!お楽しみにー!!》

 

それから生徒達は各班に別れて部屋で自由時間を過ごしていた。

待ちに待った入浴時間に覗きを決行しようとした男子達だったが、先に校長が見つかったせいで集団から制裁を受けているのを見て、すごすご男風呂へ帰るのだった。

 

《さて!では今から肝だめしのペアをくじ引きで決めまーす!》

 

その後、顔をボコボコに腫らした校長の指示で各クラス男女それぞれくじを引いた。

同じ番号同士がペアというシステムである。

 

「オレ的にはやっぱり春菜ちゃんと.......」

 

「なんだっけな。ゴールしたらカップルになれるんだったっけ?」

 

「おう。必ずその後結ばれるって」

 

「俺は女の子と回れるなら問題なし!」

 

女風呂を覗こうとした時偶然聞こえたジンクスを信じ、リトは春菜とペアになれる事を強く願った。

 

「春菜何番?」

 

「5番よ」

 

「!」

 

このタイミングで聞こえる春菜の番号。

余りの偶然に、リトは神が味方していると確信した。

 

「(春菜ちゃんは5番.......5番.......5番!どうかオレにチャンスを!)」

 

13番だった。

 

「(やっぱダメかぁーー!!)」

 

「あ、リト13番なの!?やったー!私とおんなじぃー♡」

 

そう言って13番の紙を持ってリトに近づくのは、ララだった。

 

「なにぃいいーーっ!?」

 

そして春菜のペアはというと。

 

「よろしく」

 

「あー、よろしく」

 

猿山だった。

 

「(なんでだ神様ぁああっ!!)」

 

頭を抱えるリト。

対してララはとても嬉しそうだった。

 

《では肝だめし大会、スタート!!》

 

 

 

 

 

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