「ふぉふぉふぉ、わしは召喚術の神じゃ。」
学校への登校中にいきなり足元に現れた魔法陣、それが強く光ったと思ったら世界が白黒になって停止し、目の前にこの謎のお爺さんがあらわれた。
召喚術の神と名乗ってきたが私は何処かの誰かに召喚されたということなのだろうか。
「さっそくじゃがこのサイコロを振るがよい。出た目の数だけチートを授けよう。」
混乱する私をよそにサイコロを手渡してくる爺さん。ただサブカル好きとしてはこの展開に胸が躍らないわけがない。異世界チートで俺tueeなんてよくあるが、逆説的に多くの人が楽しめる王道コンテンツでもあるということ。
だが同時にアンチテーゼな作品もあるわけで、この爺さんがいきなりだまして悪いが……なんて展開になる可能性もある。
「その前に質問してもいいですか?」
「ふぉふぉふぉ、よいぞ。答えられる範囲で答えよう。」
「私は無事に帰れますか?」
一番重要な事、もし帰れないとか言われたら最悪二次被害の防止と憂さ晴らしで、召喚先の奴らを殲滅するぐらいの事はするつもりだ。拉致犯罪者で敵の相手に情けをかける必要などないのだから。
「無事に帰れると保証する。もし召喚先で死亡した場合はお主の記憶から今の時間は消えて、今まで通りの生活を送れる。そして召喚者の条件を達成できればチートと記憶を持って帰ることが出来る。なに、ちょっとしたボーナスゲームのようなものじゃと思えばよい。」
随分とこちらに有利な条件で逆に怪しいが、疑いすぎても証明できない以上どうしようもない。私はサイコロを振った。
「ふむ4じゃな、では3つのチートを授けよう。まずはこれを。」
といって手渡されたのはダーツの矢。真っ黒で羽のような飾りが後ろについている以外は普通だ。そしていつの間にか大量の文字が書かれたくるくると回転する板が出現していた。
「あの的に向かってそれを投げるのじゃ。刺さった所に書いてあるチートを授ける。」
「これって外れたらどうなるんですか?」
「因果律の操作によって必ず当たるようになっておるから心配せずともよい。」
言われた通り適当に投げてみても全て的のどこかに当たっていた。
「では『全体攻撃』『全防御貫通攻撃』『即死攻撃』の3つのチートを授けよう。召喚者の希望である魔王軍を全滅させるまで頑張るがよいぞ!」
直後に私の足元が丸くぽっかりと空洞になり私はそこに落ちていく。突然の事に驚きバタバタと手足を動かしていると、ドスン!と尻から地面に付いた。
痛む尻をさすりながら見回せば、そこは煌びやかな装飾が施された部屋で、ファンファーレがうるさいほど鳴り響いていて、私の前には笑顔を浮かべた王様らしき人がいる。私の周りには魔法陣が描かれておりそれが強く発光していて、これが召喚の魔法陣かな?と思い王様の方を見るとそこにはさっきの召喚術の神がいた。
「おめでとう勇者よ!お主は見事魔王軍を全滅させた!チートを持って元の世界に帰ることが出来るぞ!」
「は?」
周りを見れば召喚された時と同じように世界が灰色になり止まっている。そしてぐにゃりと輪郭が歪みはじめて形を変えると、私が召喚されたときの場所の景色に変わっていた。
「あの、私召喚されてすぐここに来たんですれけど?まだ何もしてないんですけど?」
「ん?お主召喚された時に尻もちをついたじゃろ?あれが攻撃となって全体攻撃の効果で世界中の魔王軍に防御無視の即死ダメージが入ったことで魔王軍は全滅じゃ。お主は見事召還者の希望である、魔王軍全滅を達成したのじゃ!」
解せぬ。チートで俺tueeしてハーレム作って、そんな王道展開も無しに即帰還とか想定外すぎる。
「これってやり直しとかは……。」
「時間遡行のチートがあれば出来るが、お主には無いから無理じゃな。それで、チートと記憶は要るのかの?」
「あっそれは要ります」
まあ貰えるなら貰っておこう。この現代社会での活用方法も何時何処で使う事になるかもわからないが、手札はあるに越したことはない。
「よし、これでチートと記憶の継承は終わりじゃ。ではな。」
召還術の神はそれだけ言って煙のように消えた。そして灰色の止まった世界に色が戻り始め、世界はまた元通りに動き始めた。
白昼夢だったのかと思う程あっさりと終わったやり取り、もしかしたら本当に夢でも見ていたのかもしれない。私はそんな考えを頭をふって追い出し一歩踏み出した。
ファンファーレが鳴り響いた。