帝国封印超越者 作:フルト・フルト=フルト
これからはコソコソと投稿していきたいと思います。
アルシェのレベリングに来たらアンデッドに襲われている集団を見付けた。モモンガとしては目の前で人が死ぬところを見たくないと思っていたのでモモンガとしても手助けしようと思っていた。
相手に知性的な相手がいないことを確認したこともある。正義の味方ではないが、流石に目の前で死なれたら寝覚めが悪い。人の営み、生存競争、戦争などであればそこまで手を出そうと考えないが、自分の目に映る範囲内であれば手助けしようと考えていた。
正直、目の前で見かけなかったら彼らが死んでいたとしても悲しむこともなかっただろう。冒険者やワーカーが死のうが興味がないというべきか。魔法省の人間や騎士団の人間が死ねばモモンガとして関係がある部署の者なので悲しむだろう。
それをジルクニフかフールーダ、アルシェから聞けば悲しむ。それ以外に情報を得る手段がない。それが俗世から切り離されたモモンガの情報源だからだ。
その三人がわざわざモモンガに報告するとなれば大事だろう。そうでなければ軍人や冒険者は日常的に死ぬ。モンスターを狩っているのだから命のやり取りがあって当たり前だ。
これでモモンガが誰も死なないように力を貸せば法国の二の舞であり、またわけのわからない国が増えてしまう。帝国にそうなって欲しくはないのでモモンガは研究以上の手助けをしない。帝国の戦争行為に一切手を出さないのはそういう理由だ。
ともかくモモンガは目の前の三人を助けることにする。まずはアルシェに指示を出した。
「アルシェ、上から援護してくれ。俺も下から彼らを援護する。エルダーリッチを倒してみせろ」
「わかりました。先生。<
アルシェが魔法で飛び出す。その間にモモンガは前方の三人組へ近寄り、アンデッド達から距離を取るために一つの魔法を使った。
「<
掌で電撃の球が大きくなり、最大まで膨れ上がった後アンデッドと人間の間に叩き落とした。込めたMPも最低限だったので威力はそうでもない。むしろ着弾後に電撃を暴発させる効果こそを狙った魔法だったので、砂が巻き上がって目隠しになればいいと思って放った魔法だ。
それでも第三位階魔法なのでこの世界ではかなり威力がある方であり、それだけで周りにいたスケルトン系のアンデッドは消滅していたが。
その魔法が第三位階という、魔法が発展している帝国でも使える者が限られた魔法だとわかったワーカーチームは逃げつつ驚きの声を上げる。
「どこかの有名なチームの誰かか⁉︎それとも魔法省の⁉︎」
「ヘッケラン、そんなこといいから今の内に逃げる!態勢を立て直すなら距離が必須!」
三人ともモモンガの方へ逃げてくる。その間にアルシェが第三位階魔法で絨毯爆撃を仕掛けてエルダーリッチ以外の有象無象を焼き払っていた。そうすればエルダーリッチだけに集中できるからだ。
エルダーリッチには下位アンデッドを呼び出すスキルがあるが、まず数を減らすことは正解だ。空を飛んでいるからといってスケルトンアーチャーもいたので弓矢の面制圧によって傷を負う可能性もあった。
それにスキルを使おうとすれば隙が産まれる。その瞬間を狙い撃つことだってできる。アルシェの戦い方は大正解だった。
その様子を確認して、モモンガは三人組に話しかける。
「君達、こちらへ。君達の獲物を横取りするような真似になってしまったが、命を落とすよりはマシだろう」
「……助けてもらった、という認識でいいんでしょうか?旦那」
「たまたま視界に入ったからな。エルダーリッチは不運だったと言えるだろう。
「そんなことより、あんな小さな子を一人で戦わせて大丈夫なんですか⁉︎あなたが魔法で援護するべきじゃ……!」
双剣を持っていた人間と話しているところにハーフエルフの女性が割り込んで来た。アルシェがたった一人で戦っていたことが気になったのだろう。幼い子は強くない、という認識があるのかもしれないがそれはモモンガからすれば間違いだと言えた。
見た目なんて何も判断材料にならない。この世界は悲しいことに産まれた時からある程度の才能が決まっている。才能と環境が大事だが、そもそもの才能という下地がなければ強くなれるきっかけにもならない残酷な世界だ。
本物の天才は幼少期から魔法の才能を発揮していたり、身体能力が高かったりする。ぶっちゃけフールーダだって一見ただのお爺さんにしか見えないが帝国最強戦力だ。
アルシェという産まれ持った才能が有用なもので、しかもここ最近はモモンガと一緒に鍛え上げる環境もあった。幼少期から帝国の中枢で学んでいたという土台もある。
そんな幼い少女は、この世界でもかなりの上澄みに位置するという事実に助けられた三人は気付いていなかった。
第三位階魔法である<
一人よりは二人の方が勝率が高い。協力関係なら当然の足し算だ。
だが、ここでモモンガが手を出したらアルシェの成長に繋がらない。だからこそここは様子見だ。もちろん見殺しにするつもりはないので危なかったら助けるが、やれるところまでは一人でやらせる。
それがレベリングだ。モモンガが弱らせてトドメだけ刺させるというのは姫プレイ及びパワーレベリングであり、また違う手段だ。それをやらせるつもりはない。
せっかくの成長の場面なのでこの場面でどうすれば良かったのかという戦場での頭の働かせ方も学んで欲しかった。ただ脳死で倒してもいざという時に動けなくては困る。万が一モモンガの工房が法国にでも見付かったら自力で逃げてもらわなければならない。今はそんな非常時にも動けるような訓練のようなもの。
だからこそ、モモンガは動かない。
「必要ない。俺の弟子はエルダーリッチ程度に負けないからな」
モモンガの宣言とほぼ同時に、ドカン!という爆発音が辺りに響く。それがトドメの合図だったようでそれ以降大きな音は聞こえなかった。その証拠にアルシェは空からモモンガの元へ戻ってきた。
まだ第三位階魔法しか使えないアルシェだが、それでも十分に戦うことができたのはアルシェの実戦経験が少ないながらも実戦的な理論を知っているからこそ戦う際にもその理論を使って状況を優位に運んでいた。
エルダーリッチも空を飛べる上にかなりMPが多い魔法詠唱者なのだが、アルシェの<
モモンガは当然の結果に頷き、襲われていた三人組は自分達が逃げるしかなかった存在に一人で勝ってしまったうら若き少女に対して驚きのあまり顎が外れていた。
「先生、終わりました」
「ああ、及第点だ。同格にあれだけ対処できたのなら強くなるのもすぐだろう。……流石に一人であれ以上のアンデッドを倒せなんて言わないからな」
「……こんな小さい子が。スゲー……」
エルダーリッチを倒したことに剣士の男が純粋に感心していた。いくら魔法のエリートとはいえ確実に自分よりも歳下の少女が一方的に倒してしまえばこうもなる。
「さて、君達は冒険者かな?なんというか……うん、バランスが悪い。せめて二人、前衛職と魔法詠唱者を一人ずつ足すべきだ。三人でカッツェ平野は幾ら何でも自殺行為だぞ?神官がいたとしても魔力が尽きればアンデッドも脅威だろう?」
「ごもっとも。あ、あとオレら冒険者じゃなくワーカーだぜ。ほら、プレートないだろう?」
「うん?そうか、そうやって判断するのか。世俗に疎いのはまずいのは問題だな」
男の首元を見て頷くモモンガ。冒険者もワーカーも使用したことがないので区別なんてついていなかった。そういう職種があるのだということは知っていたが、会ったこともなければ依頼も出していないのでわかりはしない。
帝都をぶらついてもわざわざ首元なんて気にも留めず、有名人の顔も知らないのだからわかるはずがなかった。
「えーっと、お二人は帝国の人間でいいんだよな……?それでワーカーを知らないって」
「帝国魔法省にいるが、個人的に依頼をしたことはないからな。もしかしたら間接的に利用していたかもしれないが、魔法省にいると騎士団が必要な物は持ってきてくれたり護衛したりしてくれるから必要としたことはないな」
「なるほど。それは冒険者にも
ワーカーの男が二人、モモンガの言葉に納得する。ハーフエルフの女性は話し合いは二人に任せたのか会話に入ってこなかった。
そこから三人を加えたモモンガ達は近くの街に戻ることにした。ワーカーの三人、ヘッケラン・ロバーデイク・イミーナが逃走劇のせいで疲弊していて、これ以上留まるのは危険だと判断したためだ。
モモンガも無理をするつもりはなく、せっかく助けた人間を見殺しにするつもりはなかった。道中話しながらモモンガはワーカーについて聞き出す。
「冒険者組合を通していないフリーランス、のようなものか。帝国は騎士団のせいで冒険者が下火だとは聞いたが……。ワーカーの方が多いのか?」
「王国とかに比べればって話だぜ。王国は冒険者が中心だが、帝国はワーカーの方が勢力は多いってだけ。モモンガの旦那は何でカッツェ平野に来てたんだよ?何かの実験か?」
「まあそんなところだ。幽霊船とかも興味があるが、それは見付かれば良い程度に考えてただけで目的は果たしている」
「へえ。……さっき私達にバランスが悪いって言ってた割には、先生方は魔法詠唱者二人で来てたみたいだけど?そんなに実力に自信があるってこと?」
「まあ、スケリトル・ドラゴンにさえ出会わなければどうとでもできるからな。その実力はさっき見せた通りだ」
本当なら第六位階魔法まで無効化にされるスケリトル・ドラゴンなんてモモンガには簡単に倒せるが、それを言う必要はない。フールーダも魔法への絶対耐性があると言われてきたスケリトル・ドラゴンを第七位階魔法で倒せた時にはその事実に驚いていた。
現状人間でできるのはフールーダだけで、そのフールーダすらもその事実を隠しているのでモモンガが公表する理由はない。
その他のアンデッドならアルシェを庇いながらもモモンガなら圧殺できる。プレイヤーのモモンガからすればカッツェ平野とはその程度の難易度でしかない場所だ。
「一応君達は前衛二、後衛一だが魔法詠唱者の便利性は多々ある。支援魔法に各種属性の攻撃魔法は戦略の幅が増えるぞ。それにできたら神官のロバーデイクには魔法に集中できるような中衛に下がれるように他の前衛が一人欲しいところだ。アタッカーはヘッケランがいるから、できたらタンク職だな。牽制をしつつ盾でガードができる人間がいると一気に戦力が安定するぞ」
「理想はそうなんだろうけどなあ。ワーカーに充てなんてあんまないわけよ。特に優秀な魔法詠唱者なんて魔法省に行くのがほとんどで前線に来る奴は少ないぜ」
「そうでもないぞヘッケラン。魔法組合に顔を出してみると良い。魔法省をドロップアウトした者やフリーの魔法詠唱者がいる。値段を交渉すれば依頼にもついてきてくれるはずだ」
そんなアドバイスをするモモンガ。アルシェを鍛えることと同じで、初心者パーティーを育てることにユグドラシル時代でもあまりやらなかったことから純粋に楽しんでいた。
モモンガも二十年に渡る逃避行の冒険はそれなりに楽しかった。遊びで戦士職の真似事をした時期もあったし、色々な景色を見に行くことが未知だらけで興奮したことを思い出す。
彼らは依頼があるために完全に自由な旅路とはいかないだろうが、自分達が強くなったり依頼を達成した時の高揚感などは格別なものがあるのだろうと、ユグドラシル時代に経験したことからそんな推測をしていた。
そんな旅は、フールーダやアルシェが自分の元からいなくなった時で良いだろうと達観していた。それは帝国に仕える必要がなくなった時で良いだろうと。
結局百年も生きてしまったのだ。当分寿命に悩まされないのだろうと思うと、何事も悠長に考えられる余裕がモモンガにはできていた。
百年の揺り返しや法国のことなど懸念事項はあるが、モモンガは積極的に介入する気はない。世界を荒らすつもりなら考えるが、モモンガのように静かに暮らそうとするならプレイヤーは放置する予定だ。
法国は全面戦争とかをするわけでもなければこれも無視をするつもりだ。
今は純粋に魔法関連の開発が楽しい。アルシェを育てるのが楽しい。そんな気構えだけ持った隠居老人のような感覚だった。
だから帰って、アルシェから言われた一言は嬉しいものだった。
「先生。第四位階使えるようになったみたい」
「ほう。やっぱりエルダーリッチはそれだけ強敵だったか。うんうん、これからもっと研究の幅が広がりそうじゃないか」
この時アルシェ、十四歳。
人類史にも残るスピードで成長を遂げていく、才女としての産声を世界に示していた。