私はよく夢を見る。
目が覚めたらベッドの上。畳敷きの布団なんかじゃない。そんな夢。
あの日、私はヒスイ地方なんていう場所にいた。呼び出された。強引に別の世界に連れて来られた。
そこはずっと昔の日本みたいな村、コトブキムラ。
田舎にだってあんな場所はない。不便で大変な場所。
ずっとホームシックだった。生活に少し慣れてきたけれど、元の世界が恋しくてたまらない。
だからよく夢に出る。あの懐かしい日々の。
テレビもある。冷蔵庫もある。ベッドもある。そんな普通の暮らしの夢。
だけど今日の夢は少し変だ。
起きたらベッドの上。だけどいつもの夢の中の私の部屋じゃない。
テレビがある。パソコンがある。ゲーム機がある。観葉植物がある。でも全部見たことの無いものばかり。
そしてとにかく部屋が広い。何畳あるの?
あと扉じゃなくて、部屋に階段が直結している。不思議な間取り。
階段を降りると、そこにあるのはやっぱり知らない部屋。
女の人がいる。直感的に私のお母さんってことも分かる。
「ショウ! さっきジュンくんがあなたを呼びに来たわよ。なんだかよくわからないけど大急ぎなんだって!」
ジュンくん? 誰その子?
夢の中って不思議ね。ストーリーがあるんだもの。怖い夢だって楽しい夢だって。
今回の夢は、まずそのジュンくんに会いに行くって感じね。
「そうだショウ。草むらに入っちゃダメよ! 野生のポケモンが飛び出すからね。自分のポケモンを持っていれば大丈夫なんだけど……」
家を出る時にお母さんがくれたアドバイス。
逆じゃない? 野生のポケモンに襲われないためにも、草むらに入ってないと危ない、でしょ? やっぱり夢だから変な設定になっているわ。
家を出るとそこはコトブキムラじゃない景色。私の元の世界でもない。
家屋の作りは少し近代的になったけど、道路がまだコンクリで舗装されてないわね。
また変な夢。でもってジュンくんの家は・・・あそこかしら?
「どんッ!!」
家の玄関に立った私に、突然家から男の子が飛び出してきた。
「なんだってんだよー! ってショウか! おい! 湖に行くからさ、はやく来いよな! いいかショウ! 遅れたら罰金100万円な!」
え? 小学生? 見た目の話じゃなくて会話の内容が。ジュンくん、いくら私の夢の産物だからって、もう少しこう落ち着きというか。
しかも忘れ物を思い出して部屋に入っちゃって、今度は遅れたら1000万円って。
先が思いやられるけど、話の流れ的に一緒に行くしかないわね。
こうしてジュンくんに誘われるままに到着したのはシンジ湖。
やっぱり夢だから色々ごちゃごちゃね。地形とか。だってシンジ湖まで行く道にこんな村なんて無いし。地形も変わってるし。
でもシンジ湖はやっぱりシンジ湖。綺麗な場所。
しかも湖の側にいたのは、変なおじさんとテル先輩。テル先輩の服装もなんだか現代チックなオシャレさん。
私は「テル先輩」って呼んだけど、テル先輩とおじさんは少し不思議そうな顔をしながら私たちをスルーして湖エリアから出て行っちゃった。
あれ? 私何か変な事言った?
ポツンと残されたのは私。それとカバンの落とし物。たぶんあの2人の持ち物ね。
まだそんなに遠くに行ってないハズだし、すぐに回収して教えてあげなきゃ。
って思った矢先に、草むらからムックルが飛び出してきたわ!
え? ムックルが? 逃げないで襲ってくるの?
「わわッ! ポッポケモン!? なんだってんだよー!」
ジュンくんは慌てた拍子にカバンを開けちゃった。私とジュンくんはカバンの中にモンスターボールがあるのを見つけたわ。
「モンスターボールだ!! これで戦おう!」
ほんと、モンスターボールね。だけど私が知ってるのと何か違うわ。
何と言うかメカメカしいというか、金属っぽい。
でも使い方さえ同じなら問題ないわ。夢の中って、たまにいつもと道具の使い方が違ったり、体の動かし方が変になっちゃったりするけど。
今回は心配ご無用。私が選んだボールから飛び出したヒコザルが、あっという間にムックルを蹴散らしてくれたわ。
ムックルを蹴散らした私たち。
湖から離れると、さっきのおじさんとテル先輩がいたわ。
「コウキから聞いたが、ポケモンを使ったそうだな? 見せたまえ」
コウキから聞いた? 好機? 後期? 高貴?
私がポカンとしている間に、おじさんは「そうか、そういうことか」って自分一人で納得し始めて、研究所に帰るぞって帰っちゃった。
しかもコウキって呼ばれてたのはテル先輩。先輩もおじさんについて行っちゃった。
う~ん、変な夢。とりあえずジュンくんと一緒に家に帰ることになった私。
お母さんに報告すると、おじさんはどうやらマサゴタウンのナナカマド博士ってことが分かった。
で、次はこのヒコザルを返しにいかなきゃいけないってことになったわ。
マサゴタウンに到着するとテル先輩ならぬコウキくんが私を出迎えてくれた。
案内されるままにナナカマド博士に会うと、ヒコザルを私にプレゼントしてくれることになったの。
しかも私が初めてなのにポケモンと息が合っていた、センスがあるってことでポケモン図鑑を作るのに協力してほしいって話になったわ。
あれ?
この流れ・・・
ラベン博士と最初に会った時みたいな。
ナナカマド博士、デンボク団長が年とったみたいな顔してるのに。
嫌な予感しかしない。
あの大変な図鑑埋め作業、夢の中だと分かっていてもやりたくない。
でも面倒なことを任せてくるのって、いかにもデンボク団長ムーブ。
私、もう図鑑埋め終わってるのに。
シンオウ地方の全てのポケモンに会ってくれ、って言われても。
シンオウ地方? ヒスイ地方じゃないから、ヒスイの成果ノーカウント?
うわぁ嫌だぁ~
でもさすがは夢の中。
どうやらこのポケモン図鑑はいちいち調査しなきゃ埋まらないわけじゃなくて、出会ったポケモンを自動的に登録してくれるみたいなの。
科学・・・じゃなくて、夢の力ってスゲー!
でも絶対手間!