ゼロの人造人間使い魔   作:筆名 弘

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4か月ぶりでございます。

第六十一話を投稿いたします。


 第六十一話

 

 

 ティファニアの好奇心は未だかつて無いほど刺激されていた。ウエストウッド村に隠れ住むようになって早数年。村の子供たちと姉代わりであるマチルダ以外と接する機会がほとんどなかった彼女は、今の状況に余りにも興味をかき立てられていた。

 突如として空から轟音と共に迫り来る見たこともない形状のフネ、それを苦も無く防いでしまった長身異形の亜人はマチルダの使い魔だという。さらに炎上していたフネからほうほうの体で這い出してきたのは、自分と同じく尖った耳を持つ一組の男女。母以外では生まれて初めて出会う、エルフだった。

 

 

 (セルがいなかったら、私も子供たちも命は無かったと思う。それにしてもマチルダ姉さんが使い魔を召喚していたなんて。この前、帰って来た時は何も言っていなかったのに)

 

 

 生来、好奇心旺盛なティファニアはすぐに疑問の答えをマチルダに求めた。

 

 

 「ねえ、マチルダ姉さんはいつセルを使い魔にしたの?」

 

 

 「え、い、いつってそれは……」

 

 

 想定していなかった質問にしどろもどもになるフーケ。すかさずセルがフォローする。

 

 

 「主が私を召喚したのは、二ヶ月ほど前の事だ。それまで勤めていたトリステイン魔法学院を一身上の都合で退職する際に人手代わりの使い魔を求めての事だと聞いている」

 

 

 「えっ!? マチルダ姉さん、魔法学院を辞めてしまったの?」

 

 

 「あ、ああ、その、色々あってね」

 

 

 「心配は無用だ。すでに次の就職先は決まっている。王都ロンディニウムでの教職が内定しているそうだ」

 

 

 「はあ!? あ、あんた何を言って……」

 

 

 「ああ、そういえば皆に土産を配るのを忘れていたな、我が主よ」

 

 

 困惑するフーケを余所に長身異形の亜人は自身の尾の先端を漏斗状に変化させ、中から複数の袋を取り出す。それらの袋にフーケは見覚えがあった。ウエストウッド村のみんなの為に用意した土産を入れていたものだった。森の近くで休憩を取っていた時にこの亜人に無理矢理担ぎ上げられ村に拉致された際に馬と一緒に置きっぱなしになっていたはずだった。

 

 

 「おみやげ!?」

 「やった!」

 「おいらのは!?」

 「あたちおにんぎょうさんがいい!」

 

 

 土産という言葉に反応したのか唐突に小屋の扉が開き、外で聞き耳を立てていたであろう子供たちが亜人の持っている袋に殺到した。

 

 

 「もう! みんなお外で待っててねって言ったのに」

 

 

 「……いや、いいよテファ。袋を持って広場に行っておいで。ちゃんとみんなの分のお土産があるからさ。勿論、あんたの新しいハープもね」

 

 

 「あ、ありがとう姉さん。ほら、みんなもちゃんとお礼を言わなきゃダメよ」

 

 

 テファに促された子供たちの舌っ足らずな感謝の言葉を聞き、セルから受け取った袋を皆で持って広場に向かう子供達を見送りながらフーケは内心毒づいた。

 

 

 (適当なこと抜かしやがって! 何がロンディニウムの教職が内定している、だ! しかもあたしの荷物までいつの間にか掠め取っておいて!)

 

 

 子供たちとティファニアが居なくなったのを見計らったのか、それまで大人しくお茶を飲んでいた二人組のエルフの片割れが口を開いた。

 

 

 「さてと、おいしい紅茶もごちそうになったことだし、ちょっと私たちのフネの状況を確認しておきたいんだけどいいかしら?」

 

 

 「あぁ!? あんたらには聞きたいことが山ほどあるん……」

 

 

 ルクシャナの問いに即座に噛みつこうとするフーケだが、例の如く長身異形の亜人が割り込んできた。

 

 

 「いいだろう。だが、余計な事は考えるな。私はお前達の動向を常に監視している」

 

 

 「……わかったわ」

 

 

 神妙に頷いたルクシャナと項垂れたままのアリィーは連れ立って小屋を出た。後には主従の一人と一体だけが残された。

 

 

 

 

 

 「……一体何のつもりだ?」

 

 

 「あのエルフ達の事ならば問題はない。テファや子供達に害を及ぼすなら即座に始末するまでだ」

 

 

 「そんなこと聞いちゃいない!」

 

 

 (くそ、よくも『マチルダの使い魔』だなんて見え透いた嘘を。わざわざそう名乗ったのは多分あの子に警戒心を抱かせない為のはずだ。つまり、あいつはテファを利用しようとしている。なんとしてもあの子だけは守らなければ。でも、どうやって?……この化け物が相手じゃ戦うことも逃げることも無理な話だし、ましてや色仕掛けや金なんか通用しない。何とかこいつをテファから離さないと)

 

 

 懊悩するフーケの脳裏に桃色髪の少女が浮かぶ。かつて自分の仕事を邪魔したいけ好かない大貴族のご令嬢、それが今や『救国の戦乙女』として諸国に名を知られた英雄となった少女。

 

 

 (そうだ! 新しい『場違いな工芸品』を見つけたとか言ってトリステインに誘き寄せて、あのヴァリエールのガキに押し付ければ……)

 

 

 フーケがトリステインにおいて最初にセルと出会った時、この長身異形の亜人は王国屈指の名門貴族ヴァリエール家の三女ルイズの使い魔として振舞っていた。詳しく聞いてはいないが、この亜人はご主人さまには秘密にして自分を使っていたはず。大貴族のご令嬢なんかを頼るのは癪だが、どうにかあの桃色髪に渡りをつけてこの化け物を抑えなければ。

 

 フーケは知らない。目の前の長身異形の亜人が、彼女の想像を遥かに超えた超常の存在だという事を。

 

 

 「そういえば伝えていなかったか。フーケ、私はおまえが会う『二体目』のセルだ」

 

 

 「はぁ? 言ってる意味が判らないんだけど」

 

 

 「このハルケギニアにセルという亜人は四体存在しているのだ。おまえが知るトリステインのセルと私は『別個体』だ」

 

 

 「え? ちょ、ちょっと待っておくれよ。あんた一体何を……」

 

 

 「フーケ。おまえとの雇用契約は今この場で解消する。もう『場違いな工芸品』を探す必要はない」

 

 

 「なっ!?」

 

 

 「フフフ、大切なティファニアと子供たちの傍に居てやるといい」

 

 

 「……」

 

 

 「さて、我が主マチルダよ。アルビオン戦役を終結へと導いた『蒼光の戦乙女』ルイズ・フランソワーズ・ルブラン・ド・ラ・ヴァリエールは『虚無の担い手』だ。その強大な力を大陸列強は等しく把握している。当然どの国も『虚無』の存在を喉から手が出るほど欲しているだろう。戦役で大きな痛手を受けたアルビオンもな」

 

 

 「何が言いたい?」

 

 

 「ティファニアは、アルビオン王弟モード大公の遺児にして忌むべきエルフの血を受け継ぐハーフエルフ。さらには神にも等しい始祖の力を振るう『虚無の担い手』だ。その存在が公になれば途轍もなく大きな火種となるだろう」

 

 

 「!?……何が、言いたい?」

 

 

 「そして、二人組のエルフが乗っていたフネ。当然、大陸外から航行してきたのだろう。相応の長距離を火を噴きながら、な。あるいは多くの者の目に留まったかもしれんな」

 

 

 慇懃無礼にしてまるで全てを見透かしたかのような長身異形の亜人の言葉にフーケの忍耐も限界を迎えた。力の限りに叫ぶ。

 

 

 「だからっ! 何がっ! 言いたいんだよっ!?」

 

 

 「これからもティファニアと子供たちの平穏と命を守る為には力が必要だ。国家すらも問題としない強大な力がな」

 

 

 「それが、あんただって言うのかい?」

 

 

 「他に選択肢があるとでも?」

 

 

 「……この、悪魔」

 

 

 その時、フーケには目の前の異形の存在が確かに、恐るべき『悪魔』に視えた。だが、『悪魔』は平然と彼女に言い放った。

 

 

 「おまえの覚悟はその程度か? 命に代えても守りたいモノがあるならば、例え相対する相手が『悪魔』であろうとも、これ幸いと利用してみせろ」

 

 

 「言いたい放題に言いやがって」

 

 

 遠くからティファニアと子供たちの無邪気な声が聞こえてくる。フーケは決断した。

 

 

 (テファ、みんな……)

 

 

 「ああ、くそ、わかったよ! この悪魔野郎! せいぜいあんたを利用してやる! でかい口叩いたんだ。全世界を敵に回してもあたしたちを守ってみせろよ!」

 

 

 「承知した、我が主よ」

 

 

 (こいつはあたしたちを、いやテファを守るだろう。文字通りに世界を敵に回したとしても……自分の目的を果たす、その時までは、ね。いいよ、出し抜いてやろうじゃないか。全てお見通しだと云わんばかりのそのツラ、絶対に青ざめさせてやるから!)

 

 

 例え、どのような事態に直面してもセルの顔色が青ざめるかどうかはセル自身にとっても謎である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……これからどうするんだ、ルクシャナ?」

 

 

 長身異形の亜人の念動力によって村外れに移動された『アヌビス』号を見上げながら若きエルフの騎士アリィーは最愛の女性に問いかけた。

 

 

 「この浮遊大陸は蛮族の支配域で、ほんの数か月前までは戦争状態だったらしい。ネフテスに戻ろうにも肝心の『アヌビス』号は半壊状態だし大陸から離れるのさえ難しいだろう。その上、あの『悪魔』……小型とはいえ軍の偵察艇の墜落を一瞬で抑え込んでしまうほどの念力なんて聞いたこともない。それにビダーシャル様のお話が確かならアレは単独で蛮族の大艦隊をも滅ぼす力を持っているという。話半分だとしても戦うことはおろか逃げる事すら……」

 

 アリィーは、一刻も早くネフテスへと戻りたかった。しかし、彼らの翼となるはずの『アヌビス』号は、船体はほとんど無傷だったもののフネの心臓部である魔導機関は大破しており、さらに機密扱いの新型であった為、その場での修理など不可能だった。よしんば何らかの手段で首尾よくネフテスに戻れたとしても、評議員からの枢密任務の偽造、半ば強奪ともいうべき新型偵察艇の出撃と墜落による喪失、とどめに自身が属する部族の族長類縁の女性の拉致容疑。『ファーリス』席の剥奪どころか重罪咎者の烙印を押され、無限禁錮刑に処されてもおかしくはなかった。

 アリィーは絶望に囚われようとしていた。

 

 

 「ハーフエルフって初めて見たけど、私たちとほとんど変わらないのね。ただ……あの胸だけは本物なのかしら? 気になる、実に気になるわね」

 

 

 ルクシャナは、ハーフエルフの少女の肉体的特徴にご執心であった。自身の容貌にそれなりの自負があったルクシャナだったが、ティファニアの神々しいまでの美貌と母性の象徴ともいうべき豊かな胸にひどい敗北感を痛感していたのだ。

 

 

 「あの、ルクシャナ? 僕の話ちゃんと聞いてたかい? 今の状況がどれだけ深刻なのか……」

 

 

 「ジタバタした所で状況は変わらないわよ。それに何かあっても誇り高き『ファーリス』が私を守ってくれるんでしょ?」

 

 

 「そ、それは勿論! 例え僕の命に代えても君だけは」

 

 

 「ああ、そういう自分はどうなっても、とかいうのはいいから。私たち二人が、必ず生き延びなきゃダメだからね、アリィー……私はね、アリィー。あなたさえ傍に居てくれれば、どこでだって生きていけるもの」

 

 

 わずかに目元を潤ませながらの婚約者の言葉にアリィーは奮い立った。

 

 

 「ルクシャナ……くっ、わかったよ! 『ファーリス』の誇りにかけて僕たちが無事ネフテスに戻れるように全力を尽くす!」

 

 

 (まあ、あの亜人がその気なら何をどうしようがアリィーの言う通り手詰まりだろうけど、多分あのハーフエルフの子が傍にいる限りは無茶はしないと思うわ)

 

 

 瞳に輝きを取り戻した婚約者を尻目に冷静に状況を分析するルクシャナ。種族に限らず男という存在は悲しい生き物なのであろうか。

 

 

 (それに叔父様はあの亜人が『月の悪魔』かもしれないと言っていたけど、本当にそうなのかしら? 伝承の通りなら、そもそも意思の疎通なんて出来るわけがないわ)

 

 

 『全てに終焉を齎す月の悪魔』

 

 

 ネフテスに限らずエルフの全氏族に連綿と伝えられる伝承において、それは『大いなる意志』とその慈悲と恩恵を授けられる全てに滅びを齎す存在とされ、『災厄』、『滅びの王』、『星の終焉』とも呼ばれていた。純然たる破壊の化身であり、完全なる消滅は不可能な超常の存在。どれほど強大な力を持っていようとも、あの亜人がそのような存在だとはルクシャナには考えられなかった。

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 ――ネフテス国首都アディール郊外イスケンデルン空軍基地

 

 

 「一体誰が『アヌビス』号の出撃を許可したのだ!? あれには最高機密の新型魔法機関が搭載されているのだぞ!」

 

 

 ネフテス空軍の兵器廠が併設されている国内最大の基地ではてんやわんやの騒ぎが起こっていた。兵器廠の機密格納庫に秘匿されていたはずの最新型長距離偵察艇『アヌビス』号が慣熟飛行の名目で出撃していた事が発覚したのだ。直接責任者であるヤズデギルド空将は周囲の士官たちに烈火の如く怒りをぶちまけていた。

 サハラの空を守るネフテス空軍の主力艦艇は『竜曳船』と呼ばれ、風石によって浮力を得る点ではハルケギニアのフネと同じだが、数十頭の風竜に船体を曳航させることで推進力を得ており、速力や旋回性能では大きく上回っていた。さらに空軍の研究開発工廠では近年、新式の魔法機関の開発に成功。それは火の魔石を利用した内燃機関であり、『竜曳船』のように風竜を必要としない為、小型の船体でも高い速力と長距離航行を実現し得る画期的な発明であった。その後、数基の先行量産型が同時期に試作された高機動船体に搭載され、二艇の偵察艇が完成した。エルフに古くから伝わる聖人の名を与えられたそれらは来るべき蛮族域への一大侵攻作戦、『精霊救済戦争』において空軍の先駆けとして華々しく初陣を飾るはずであった。

 

 

 「そ、それがアリィー空佐がビダーシャル評議員からの第一級枢密指定任務の為に使用するとの事で……」

 

 

 「ファーリスの青二才か。ちっ、カウンシルの犬め、どこで『アヌビス』号の情報を手に入れたのだ?」

 

 

 ネフテス空軍において単独行動権を与えられている独歩空佐であり、評議会直属の騎士『ファーリス』でもあるアリィーは空軍上層部にとっては目障りな存在であった。公的には空軍の最終指揮権は評議会ではなく統領テューリュークの専権事項となっているが、評議会の影響力も決して小さくはなかった。

 

 

 「我が空軍が『鉄血』に汚された水軍の能無し共より優位に立つ為には、新型魔法機関の量産による強力な航空打撃艦隊の創立が必要不可欠なのだぞ!」

 

 

 空軍と双璧を成すネフテス水軍には正規の指揮命令系統とは異なる血が浸透していた。それは『鉄血』という名の意志であった。元々、空軍と水軍の間には、自分たちこそがネフテスを守る第一の剣であるという自負心が互いに燻ぶっていた。これまではその対立が表面化することはなかったが、水軍上層部に多数のシンパを持つ対蛮族強硬派の集団『鉄血団結党』の首班エスマイールが上席評議員に選出されると急速に顕在化。さらにネフテス軍の総力を結集した『災厄撃滅艦隊』の総司令にエスマイールが任命された事で決定的となった。

 

 水軍の後塵を拝するなど誇り高き我が空軍にとってあってはならない。それはヤズデギルドを含む空軍上層部の総意であった。

 

 

 

 

 「く、空将閣下、び、び、ビダーシャル評議員がお見えになりました!」

 

 

 「ふん! 事なかれ主義の弱腰共めが。どの面下げて事後承諾を求めに来たのだ?」

 

 

 直属の幕僚から声をかけられたヤズデギルド空将は、件の評議員が平身低頭して詫びを入れに来たと思い、尊大な態度を隠そうともせずに振り返った。

 直後に彼は、軽率な自分を呪った。

 

 

 ガシッ

 

 

 「あぐっ」

 

 

 「どういう事だッ!? 私のルクシャナが空軍の偵察艇で蛮族域に出撃しただとぉ! この基地の管理体制は一体全体どうなっているのだッ!? おい、聞いているのか!」

 

 

 ネフテスの最高意思決定機関である中央評議会『カウンシル』を構成する二百四十名の評議員の中でも十二名しか選ばれない上席評議員の一人であり、議会随一の穏健派として『ネフテスの良心』とも呼ばれていたビダーシャル上席評議員は、イスケンデルン空軍基地の司令官でもあるヤズデギルド空将の左右の襟を掴み上げ、普段からは想像もつかない剣幕で空将を詰問しはじめた。

 

 

 「ちょっ、ぐ、ぐるじいのぐぅえぇ……」

 

 

 「ルクシャナに万が一の事があったらどう責任とるつもりだ、ああッ!?」

 

 

 エルフ族は優れた先住魔法の行使手だが肉体的には華奢であり、総じて膂力では蛮族には及ばない。それはヒト族とエルフ族の共通認識であったが、哀れな空将閣下の両足は地面を離れていた。

 

 

 「……ぐぇ」

 

 

 空軍きっての武闘派ヤズデギルド空将は、落ちた。

 その場に居合わせた幕僚や兵士たちがあまりの事態に呆然としていると、ヤズデギルド空将を開放したビダーシャルは、上席評議員に相応しい威厳を以って周囲に命じた。

 

 

 「ヤズデギルド空将は、不慮の事故によって人事不省に陥った。緊急事態につき現時刻をもって私が当基地の臨時指揮権を掌握する!」

 

 

 「「「「えっ?」」」」

 

 

 評議員個人の権能に軍の指揮代行権が含まれる事は基本的には、無い。

 

 

 「直ちにルクシャ、もとい『アヌビス』号の捜索隊を編成しろ! 旗艦は『アヌビス』号の予備艇とし、私が搭乗して指揮を執る!」

 

 

 

 

 

 最終的にはビダーシャルのこの暴挙は、ヤズデギルド空将旗下の筆頭幕僚が決死の覚悟でイスケンデルン空軍基地を脱出、その足で中央評議会の統領補佐室に転がり込んで、泣きながらに状況を説明した事で統領テューリュークの知るところとなる。最高指導者直々の突っ込みをくらっては、さしものビダーシャルも姪と部下の探索を断念せざるを得なかった。

 その後、ビダーシャルは評議会から短期の謹慎処分を言い渡され、複数の役職を解かれる事となった。その中には『災厄撃滅艦隊』の副司令職も含まれており、エルフ族史上最大最強との誉れも高い大艦隊の司令部は、『鉄血団結党』の息がかかった人員で占められる結果となった。

 

 近い将来、この処分が自身の命を助けることになるとは、神ならぬビダーシャルには知る由もなかった。

 

 




第六十一話を投稿いたしました。


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