「知らない天井だ」
ふと目を開けると見慣れない天井があった。体を起こして周りを見渡すと赤制服と黒制服の少女が2名。これは間違いなく夢である。夢の中でも目を瞑り寝ようとするが、声がかかる。
「いや、起きろよ!」
夢の登場人物の一人である赤制服の少女が私を起こそうとする。夢の住人のくせになんてうるさいやつなんだ。いいから寝させてくれ。まだこちらは寝足りないんだ。再度寝直そうとするが、赤制服の少女が邪魔をする。意地でも寝てやる。
「フキさん、私に任せてください」
ようやく赤制服の少女が離れた。これでようやく寝直せると思いふとんを被り寝直した。
「いたッ!?」
すると、突然頬に鋭い痛みが現れる。とういうか痛い、痛い、痛い!たまらず跳ね起きると黒髪のロングヘアの少女が目の前でこちらを見下げている。
「ようやく起きましたか」
「図太いなおまえ」
このアマ、頬をつねりやがった。キッと睨んでもこの少女はどこ吹く風と知らんぷり。なんて奴だ。少しぐらい悪びれろよ。
「おはようございます。ようやく起きましたか」
「・・・」
腹いせに無視しているとこちらの頬きにまた手を伸ばしてつねろうとしたので仕方なく返事をした。決して暴力に屈したわけではない。
「おはようございます。あなた達に起こされるまでとても快眠でした。」
「はぁ、そうですか。ては、さっそくですがあなたには私達について来てもらいます」
私の皮肉にもこの少女はなんの反応も示さない。いつか絶対おんなじ目に合わせてやると心に誓う。
「行きますよ。ついてきてください」
そう急かさないでほしい。こちらは、起きたばかりだというのに。内心で文句を垂れながら暴力少女の後ろでテクテクと歩いてついてく。
道中少女に「ここはどこですか」とか「あなた達、何者?」とか「私は誰?」などと色々質問したのに赤制服の少女と黒制服の少女は私の質問を無視する。絶対この子達コミュ症じゃん。なんて思っていると、扉の前についた。
赤制服の少女が扉をノックし、お手本のような「失礼します」という掛け声で扉を開けて部屋の中に入る。中に入るとマッシュルームカットの中年女性が椅子に座っていた。
「捕縛対象を連れて参りました!」
「ご苦労」
なにやら聞きづてならない単語が聞こえた。捕縛対象?間違いなくこの場では私のことを指しているだろう。絶対コンテナ港の件だよな。
「さて、初めまして佐藤さら。私は楠木。この組織の司令に当たる者だ。」
なぜか、私の名前を知ってやがる。いや拉致相手の名前を知ってるのは普通なのか?なんて考えてると奴が出てきてしまった。
【初めまして。私は佐藤さくら。人違いです。】
【初めまして。私は宮本武蔵。人違いです。】
挨拶ぐらい普通にさせてくれよ選択肢よ。この選択に何の意味があるというのだ。
「初めまして。私は佐藤さくら。人違いです。」
すると目の前の人物が呆れたような目線で見てくるし、制服少女達がこちらを睨んでくる。居心地が悪すぎる。はぁ、早く帰りたい。
「では、早速だが君は何者だ?」
どうやら佐藤さくらのくだりは無視してくれるらしい。ありがたい。しかし、何者と聞かれたらただのJKとしか答えようがない。
「ただの女子高生です」
「だろうな。君の経歴を見たが何一つ怪しいこところがなかった。強いて言うなら一年半前に両親が事故で他界しているぐらいだ」
この人、人の心無いんか?急にぶっ込んできやがった。というか私の両親の事故も私が関与しているのではないかと疑ってる。まぁ、気にはしないけど。
「気を悪くしたなら謝ろう」
「いえ、大丈夫です」
「そう言ってもらえると助かる。では、本題に入るがなぜ君はあんなところにいた?」
ですよねー。やっぱり聞いてきますよねー。この問いに私は相手が納得する答えを出せない。
なぜかと言うと、急に朝目覚めたら選択肢が見えるようになり体の自由を奪われましたなんて言えないからだ。間違いなく精神科をおすすめされる。生憎そんな残念キャラを定着させたいわけではないのでそれらしく答えるほかない。
「散策ですよ。自分が住む土地を見て回りたいなんて誰でも思うことでしょ?」
「学校を休んでもか?」
そういえば学校休んでたな。どうしようこれ。話題転換しよう。
「あの学校があるので帰っていいですか。次も欠席したら友人達が心配するんで」
「安心しろ私から高校側に伝えとく。それに小、中、高と友人らしき友人がいないのは調査済みだ」
プライバシーが侵害されている。とういうかなんで私の交友関係まで分かるんだよ!後恥ずかしから友達いなかったことを暴露しないで!
「・・・フッ」
赤制服の少女が今の話を聞いて笑いを堪るように顔を背けやがった。とういうか笑うなよ!
キッと赤制服の少女を睨むが小馬鹿にしたような目線をこちら向けてくる。少しイラッとしたが私は大人なので顔には出さないよう努める。
「で、君はなぜあんなところにいた」
「散策ですよ」
「答える気はないようだな」
はぁ、とため息をつかれた。答えられないからしかたないだろう。そこは諦めてくれ。
すると楠木さんが再び真剣な目つきで顔を見上げる。嫌な予感がする。冷や汗がダラダラだ。
「さて突然だが君には我々の組織に入ってもらう」
その言葉を聞いた瞬間私は部屋から逃走を図ろうとしたが会えなく捕まった。
「観念しろ」
「大人しくしててください」
おのれ、この恨みいつか晴らさせてもらうぞ!
「君にはDirectAttack通称DA所属のリコリスになってもらう」
「DA?リコリス?」
「あぁ、そうだ」
楠木さんがDAとリコリスについて長々と説明し始めた。
簡単に言うとどうやらDAとは秘密裏に国の治安維持を任された組織であり、その組織に所属するエージェントをリコリスというらしい。つまり私にこの組織に入れと言うことはお国のために命をかけ馬車馬の如く働けということなのだろう。やはりこの人に人の心は無い。
「それを断った場合は?」
「その時は・・・」
わざとらしく言葉を濁しやがった。どうやら私は高校生の身でブラック企業に入社が決まったらしい。さらば私の青春!
「分かりました。私は御社に入社させていただきます。」
「我々も嬉しいよ。優秀な人材が入ってくれて」
何が優秀な人材だ。脅すような真似して勝手に入れたくせに。
「さて詳しいことははまた後で話す。今は部屋に帰るといい」
「えっ!家に帰っていんですか!!」
楠木さんがこちらを見てニヤッとした。なんだか嫌な予感がする。
「喜べ今日からここが君の家だ」
私は絶望した。
主人公は選択肢に強要されなくてもフザけた言い回しをします。